■ まずは困難法則から
このシリーズは、G.W.ワインバーグ著『コンサルタントの秘密 - 技術アドバイスの人間学』の中から、筆者が実地で参考にしている法則・金言・原理を、筆者のつまらないコメントや経験談と共にご紹介するものです。
コンサルタントが自分の仕事に対するミッションコンプリートに力を入れれば入れるほど、頑張れば頑張るほど、問題解決ができないこと、依頼主を変えてあげることができないことが多く発生します。これは、「ワインバーグのふたごの法則」として既にご紹介済み。
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(7)ワインバーグのふたごの法則 - たいていの場合、人がどれほど頑張っても意味のあることは起こらない」
それでも、努力に努力を重ね、問題解決に成功したと思ったら、すぐに次の課題がやってくる無間地獄がコンサルタントを口を開けて待っていることを、「ルウディーのルタバガ法則」としてご紹介済み。
⇒「コンサルタントの秘密 – 技術アドバイスの人間学(8)ルウディーのルタバガ法則 - 第一番の問題を取り除くと、第二番が昇進する」
そういうあまたの困難も乗り越え、それでもコンサルタント業を続けていくためには、何らの勇気づけの言葉が必要かもしれません。それは、できないこと、失敗することと上手に付き合う法を説いたものです。
困難法則
失敗を容認できない人はコンサルタントとしては成功できない。
ワインバーグ氏はこれを裏からも次のように諭してくれています。
中にはコンサルンタントとして成功している人のあるのだから、失敗とつき合うことも可能なはずだ。
コンサルタントとして成功を続けている人は、100%失敗しない人(「私、失敗しないので。」(『ドクターX』米倉涼子風)か、仮に失敗した時でもうまい対処法を身に着けている人のどちらかのようです。
えっ、私ですか? 毎日、失敗の連続で、あまりの失敗の多さに麻痺してしまい、何とかコンサルタントを続けていられる状態なので、私の経験はあてにはなりません。(^^;)
■ つぎは高度困難法則へ
「ルウディーのルタバガ法則」の通り、どうして問題は絶えることなく、目の前に現れるのでしょうか? そういう受け身で考えがちですが、ワインバーグ氏の視点は逆の発想で、むしろ、人とは問題を解くことを必要とするもので、特にコンサルタントになる人間は他の人よりその傾向が強いものなのだそうです。三度の飯を食べるのと同じくらい日常の習慣となっているのが問題を見つけ、問題を解くことなのです。
そしてコンサルタントという職種はさらにたちが悪く、問題が無ければ、問題を作ってしまいかねないのです。それは、営業的理由(依頼主から次の発注をもらうため)である場合もあるのですが、それにも増して、コンサルタントがコンサルタントたる自覚を保ち続けるために、むしろ自分の矜持を保つために、問題を発見してくるのです。
高度困難法則
第一番の問題を取り除いたとき、第二番を昇進させるのはキミだ。
どんな場合でも、どんな場所でも問題を見つけてしまう能力は、コンサルタントにとって最大の財産であるとともに、最悪の職業病でもあるのです。コンサルタントは問題と解決すべき対象として、目の敵にして片付けることに最大限の努力を傾注するのですが、同時に、常に問題と同居、背中合わせの人生を素直に受け入れて共存する心も持ち合わせていないとやっていけないのです。
このことは、絶え間なく次から次へとやっと来る問題を解決しようとすることをあきらめる境地に達しなければならない、と言っているのではなく、いつかは問題を根絶できる時が来る、という幻想を捨てなければならない、という意味を有しているのです。
絶対に、必ず、という強迫観念を捨て、いつか問題は根治できるという幻想を捨てることで、リラックスして目の前の問題だけに集中することができ、目の前の問題を解決し続けている間は、コンサルタントとして存在価値も証明できているし、職業人としても収入の心配がいらなくなる、というわけです。
心の安寧と収入の安定の両立。
コンサルタントとしてそれを手にできる人は、上記のようなマインドを持つ人だけなのです。
えっ、私ですか? 到底無理ですね。問題が解けるかどうか、次にどんな問題がやってくるか、いつもハラハラドキドキして、心が休まるときがありませんから。(^^;)
■ 究極の最高度困難法則とは?
ワインバーグ氏のデスクの上には下記のような詩が飾ってあるのだそうです。
ひと財産作りたければスターになりたまえ。
広く、遠く、広げたまえ。
だが太陽を変えたいなら、
一番手近からはじめたまえ。
ワインバーグ氏によるコンサルタントの定義は、誰かの依頼の元に、タスクを遂行し、問題を解決しようとする人、というものです。依頼主という自分以外の他人の問題を解決するのが仕事なのです。自分の頭の上の蠅ですら追えない者が他人の問題に首を突っ込んで無事でいられるはずがないでしょう(笑)。
それゆえ、一人前のコンサルタントたるもの、依頼主のごだごだに手を出す前に、まず自分の問題を片付けておくことが肝要なのです。それは、依頼主と自分自身の問題が複雑に絡み合っている場合は特に、その絡み合いをまず一本一本解きほどいてから、相手の問題に対処するのです。
同じような趣旨の言葉が儒教の教科書のひとつ『礼記』に残っています。
修身斉家治国平天下(しゅうしん、ちこく、せいか、へいてんか)
天下を平らかに治めるには、まず自分のおこないを正しくし、次に家庭をととのえ、次に国を治めて次に天下を平らかにするような順序に従うべき(出典 三省堂/大辞林 第三版)
ワインバーグ氏は、こう続けています。
最高度困難法則
自分の手助けをすることは、他人の手助けをするよりもっとむずかしい。
そして、本書は、この法則について、いかに対処すべきかを残り340ページあまりで我々にヒントを授けてくれるのだそうです。さあ、一人前のコンサルタントになるため、もしくは一流のコンサルタント使いになるためのヒントをもらうために、このまま読み続けていきましょうか。(^^)
コメント