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そうか、君は課長になったのか。(19)「人事評価」では自分を押し殺す - 己の価値観から離れてみる

本レビュー
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■ 好き嫌いで人事評価をしてはいけないか?

コンサルタントのつぶやき

このシリーズは、現在、東レ経営研究所特別顧問:佐々木常夫さんの16万部を超える「課長本」の決定版の1冊から、私が感銘を受けた言葉をご紹介(時には、私のつまらないコメント付きで)するものです。

佐々木さんのご紹介:オフィシャルサイト

課長(管理職)になって、2番目に悩むであろう、課長あるあるは、「人事評価」をどう決めるかです。人事評価は極めて重要な課長の仕事で、正しい評価は部下のモチベーション向上と成長に大きく作用します。年度末の一大事業が今年もやってきました。

佐々木さんによりますと、

人事評価は本来、給与・処遇の差をつけるために行うべきものではありません。そうではなく、部下の現状を正しく評価することによって、これから身に付けなければならない能力・技術・人間力について自覚させるとともに、君が上司として指導するためのものです。ここを履き違えると、出発点で間違ってしまいます。

そしてこの「正しい評価」が技術的に難しいものとなります。佐々木さんは、部下のことをできるだけ好きになれば、人事評価で過ちを犯すことが少なくなると指摘されています。そのこころは、人間は誰しもその人固有の人生観や評価尺度を持ち、その人生観や尺度に合わない言動をする部下に厳しい評価をついついしてしまう、というのがその理由です。

しかしそれは本当(真理・適正)なのでしょうか?

佐々木さんは、己自身の価値観や主義主張から一歩離れて、客観的に、冷静に部下を評価しなさい、と説いていますが、私は、この「客観的」というものがくせものであると考えています。

 

■ 好き嫌いという判断は何に対して下されるものなのかが重要!

あなたが、「この人は好き」とか「あの人は嫌い」という判断をする際に、その人の何を持って「好き・嫌い」と認識しますか? 多くの人が、自分と同じ価値観を持っている人、あるいは自分が良いと信じているビリーフ(信念)を共有していたり、それを言動によって体現している人に、共感を持って「好き」と考えているはずです。その感情と完璧に無縁に人事評価をはたしてすることが可能なのでしょうか?

あなたの仕事観に次のようなものがあるとします。

1)「仕事は何でも引き受けて、無理にこなしているうちに何とかできるようになる」

または、

2)「仕事は完遂できると自信があるものだけを着実にやるべき」

1)のビリーフは、自己成長のために、積極的にちょっと無理目の仕事でも貪欲に取りに行って、量をこなしていかないと職業人としての成長が無い、という仕事観を持っているということです。

2)のビリーフは、できもしない仕事を引き受けて、穴を空けたり、納期に遅れたりしたら、顧客や上司に迷惑をかける。そんな職業人は、その業種のプロとして失格だ! という仕事観を持っているということです。

課長ともなれば、それなりに職業人としての経験を積んできた人ばかりです。そういう人は自己の成功体験を十中八九持っていて、確固たるビリーフを持っているはず。そんな人が、部下を評価する際に、これまでの自分自身のスキルや経験から完全に自由になって、いわゆる客観的に、部下を評価する、ということが本当に成立するのでしょうか?

職業人として、本当に大事と思っていること、それを実践している部下のことは必ず「好き」になっているはずです。自分と同じビリーフを共有しているにもかかわらず、嫌いな部下がいるとしたら、それはその部下の人間性そのものが嫌いなのでしょう。

そうです。もうお分かりになりましたか? 私の言説が極論に感じられたかもしれませんが、人間性を好き(嫌い)になる、ということと、ビリーフを共有している人に好感を持つ(共有していない人に嫌悪感を持つ)ということは、好悪の感情の発生対象が完全に異なるのです。

人事評価は、ビリーフの共有・非共有に基づく、好悪の判断でやっても、それは課長の守られるべき特権です。だって、そのビリーフにしたがって、これまで仕事上で成功してきたし、その成功体験を次世代に伝える義務もあるからです。特権を持っている以上、その特権を行使して、組織として業績が悪化したら、その責任も取るのが課長なのですから。

仕事上、部下のことが好きか嫌いか? それは、ビリーフの共有・非共有からくるものか、人間性からくるものか? 前者ならば、その感情にしたがって人事評価しても、そう間違いは起こらないはずです。むしろ、「客観的に」という教科書的な言説に捉われて、直観を無視した作為的な人事評価は必ずどこかに歪みがあるはずです!

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