■ 「トヨタ」は突き抜けられるか!?
トヨタの最近の動向から、今回は筆者が持つ2つの着眼点を説明したいと思います。ひとつは、「部品共通化によるコストダウン」、もうひとつは、「オープンアーキテクチャーによる市場創造」についてです。
2015/1/7|日本経済新聞|朝刊
トヨタ その先へ(3) 幻の提携
まずは、「部品共通化」への取り組みについて。
■ 「TNGA」対「MQR」
トヨタは、「TNGA:トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー」、これに対して、独VWは「MQB(モジュラー・トランスバース・マトリックス)」という取り組みの中で、部品の共通化による大幅なコストダウンを図ろうとしています(VWはすでに実現していますが)。
新興国で、カローラがゴルフに市場を奪われた要因として、この部品共通化の進展の差異がそのまま市場での価格競争力の差異に現れた、とされています。
前章にて引用した記事内容を大胆(極端)に図示すると、下記のようになります。
部品共通化を図る設計・デザインから共通化することで、「規模の経済」が働き、その効果は、生産現場における生産効率(段取り替えなどの非付加価値時間の短縮など)を通じて、加工費の削減にまで及ぶことになります。
こうした後退に対して、トヨタは、
① 部品共通化による徹底したコスト削減
② 開発リードタイム短縮(モデルチェンジの容易化)による市場変化への即応
を目指しています。
「「部品の共通化は手段だ。商品をよくするんだ」。技術担当の専務役員、吉田守孝(57)らは「TNGA」と名付けた車づくりの抜本改革に躍起だ。」
ここでちょっとだけ、TNGAによる取り組み概要を図解しておきます。
1.商品ラインナップの明確化
「もっといいクルマづくり」の要件をまとめる上で、生産する車種を4つのゾーンにジャンル分けして、ゾーンごとにそれぞれ異なる顧客が求めるデザイン、走行性能、乗り心地、装備などを明確化しました。
2.アーキテクチャーの整理
モジュール化するところと個別最適を図るところを分離。徹底的にコストダウンを図るところと、徹底的に顧客ニーズを取り込むところを意識した設計思想を持ち込むことにしました。
3.効果の発現
(1) 基本性能の向上 →
(2) グルーピング開発による部品・ユニットの賢い共用化 →
(3) 仕入れ先と協力して原価を低減 →
(4) 商品力向上
というサイクルを回すことを考えています。
■ 新市場の創造 - まずは「自動運転技術分野」
もうひとつ、グーグルとの提携が幻に終わったことも新聞記事内では触れられていました。
「12年春、専務役員の伊原保守(現副社長、63)は米シリコンバレーのグーグル本社にいた。「車の制御情報の使い方を教えてほしい」。グーグルの自動運転部門トップ直々の提携申し入れに伊原は前向きに応じた。
しかし、自動車とIT(情報技術)の巨人による握手は幻と消えた。「安全に関する車の基幹システムを握られかねない」と、トヨタ技術部が猛反発したからだ。」
こうした対応を聞くにつけ、クリステンセン氏の提唱した「イノベーションのジレンマ」というコンセプトをどうしても思い出してしまいます。
以下、WiKiから引用。
「優良な企業が合理的に判断した結果、破壊的イノベーションの前に参入が遅れる前提を5つの原則に求めている。
1.企業は顧客と投資家に資源を依存している
4.組織の能力は無能力の決定的要因になる
5.技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない
トヨタは、新聞記事によると、
「グーグルは車を単なる移動手段からビッグデータの収集などの機能を持つ社会インフラの一部に据えようとしている。トヨタは専従チームを立ち上げグーグルを追うが、エコカーのように自前主義で先行できるかはわからない。ITの進化のスピードは速い。デンソーなども含めグループ総力戦で臨む。」
既に、一般車で30個、高級車には80個の半導体が、シャーシ系、情報系、パワートレイン系、ボディ系、安全系といったところに搭載されています。自動車はもはや走るコンピューター。
トヨタの「自動走行システム」に関する「破壊的イノベーション」は、自前主義で実現できるか、要経過観察です。
さて、新市場の創造ということでは、「燃料電池車」の話もしないわけにはいきません。次回は、これに触れたいと思います。
今回はここまでです。
次回予告:
「(ビジネスTODAY)究極エコカー この指止まれ トヨタが燃料電池車の特許公開、市場創出へ陣営づくり」
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