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V12が米国で脚光、中間層拡大見込み12カ国 インドなど、イスラム教徒多く(前編)- BRICs、Next-11、VISTA、VIP、CIVETS、VITAMINの次がコレ!

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■ 新興国市場でフォーカスすべき国のリストが次々と誕生していますが、あなたはNICsを覚えていますか?

経営管理会計トピック

アナリストたちが、自身のレポートを世に売り出すために、また自社の金融商品の販売を伸ばすために、様々なネーミングセンスを競っていますが、その昔、「NICs:Newly Industrialized Countries(新興工業国)」というのがありました。香港、シンガポール、大韓民国、台湾のアジア四小龍が、急速な工業成長で1970年代及び1980年代に世界的な重要性を増したことから名づけられたもので、その後、香港と台湾を国扱いすることに中華人民共和国が不快感を示し、「NIEs:Newly Industrialized Economies(新興工業経済地域)」と呼び換えられた代物です。これらはきちんと、中学高校の地理の教科書に掲載されていたものでした。

2016/6/20付 |日本経済新聞|夕刊 V12が米国で脚光、中間層拡大見込み12カ国 インドなど、イスラム教徒多く

「【ニューヨーク=伴百江】BRICSはもう古い?――。中間層の拡大で急成長が見込める世界12カ国を指す「V(ベロシティー)12」という新たな新興市場のコンセプトが米国で注目を浴びている。従来の枠組みに代わる潜在成長力の大きい国・地域で特に中間層の拡大に企業は膨大な商機を見いだせるという。
米広告大手オグルヴィ・アンド・メイザーが中間層の収入や購買力平価の比較、消費者への聞き取り調査をもとに12カ国をはじき出した。ベロシティーは「速力」などの意味を持ち、V12は新たな中間層が勢いよく伸びていく国々を指す。
V12はインド、中国、パキスタン、インドネシア、バングラデシュ、ナイジェリア、エジプト、フィリピン、ベトナム、ブラジル、メキシコ、ミャンマーで構成する。2015年からの10年間で中間層の人口が拡大する上位12カ国だ。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は、同記事添付の該当国のイメージ図を転載)

20160620_V12市場の中間層人口の伸び_日本経済新聞夕刊

「オグルヴィによると、15年時点の12カ国の人口は約40億人。そのうち中間層は18億人だが、それが25年までに27億人に増え、10年間で8億人の中間層が生み出される。「少数派だった新興国の中間層が多数派になる転換点だ」(オグルヴィのグローバル会長、マイルス・ヤング氏)という。
12カ国の新中間層の特徴は、女性の活躍が社会の発展や起業で原動力になる点だ。イスラム教徒を対象にしたサービスや商品への需要拡大も大きい。国よりも特定の都市が技術革新の中心になっているという。
インドやパキスタン、バングラデシュなどではイスラム教徒の中間層が多く「世界の企業がこれらの市場の潜在成長力を見込んで商機を逃さないためには、イスラム教徒のニーズに応えることは不可欠だ」(ヤング氏)とみられる。」

共通する特徴としては、
① イスラム教圏が多いこと
② 中間層人口がすでに多いか、これから急増が見込まれていること

人口ボーナスによる経済成長が望めることが利点とされていますが、BRICsからは、ロシア、南アフリカが脱落しています。イスラム教の戒律に沿って作る「ハラル製品」への取り組みが、膨張するイスラム市場でのビジネスでは重要になってくる模様です。

ちなみに、ヒンズー教徒が大半との印象であるインドが、実はイスラム人口の最大国となる見込みであることは意外だったでしょうか。

2016/7/2付 |日本経済新聞|朝刊 イスラム人口の6割、アジアに集中 高まる購買力 市場広がる

「イスラム教徒人口は世界で約16億2千万人。うち62%をアジア太平洋地域が占める(10年推計)。1億6千万人の人口の9割がイスラム教徒のバングラデシュは昨年、ミャンマーやベトナムと同じ「低中所得国」となるなど購買力も上昇中だ。

(下記は、同記事添付の2050年のイスラム人口の予想表を転載)

20160702_2050年にはインドが世界大題のイスラム人口国になる_日本経済新聞朝刊

「インドもイスラム教徒が人口比率で1割強だが、将来はインドネシアを抜いて世界最大のイスラム人口大国になるとの推計もある。」

 

■ 新興国フォーカスリストの数々をここで確認してみましょう!

いろいろなリストがあると、それぞれの比較をしたくなるのが世の人情というものです。ひとまとめになっているサイト(NAVER 新興国市場を考える!ポストBRICsはどこだ?まとめ)を参考に下記に再整理してみました。粗製乱造のそしりは免れないと思いますが。。。

1.BRICs(BRICS)(BRIC)
B(ブラジル)・R(ロシア)・I(インド)・C(チャイナ=中国)の4カ国を表し、ます(最後のsは英語で複数形を表すs)と投資銀行ゴールドマン・サックスのエコノミストであるジム・オニールによって書かれた2001年11月30日の投資家向けレポート『Building Better Global Economic BRICs』で初めて用いられ、世界中に広まりました。その後、南アフリカ共和国(S)を加えた5ヶ国で、BRICSとも総称するようになりました。

当初の選出基準は次の通り。
・国土が広大で、天然資源が豊富である
・人口が多く、若い労働力が豊富にある
・労働力単価が安く、低コストで製品を生産できる
・人口が多いので、市場としても有望である

 

2.Next-11(N-11)(ネクストイレブン)
米投資銀行のゴールドマン・サックス及びエコノミストのジム・オニールが研究論文(2007/3/28)において、BRICs諸国に次いで21世紀有数の経済大国に成長する高い潜在性があるとした11ヶ国の総称になります。「BRICsの次に成長してくる新興国11ヶ国」という位置づけで、相対的に、BRICsに世界中の投資(投機?)マネーが集中してきたので、それでは旨味が無い、ということで、青田買いの意味で選出しました。

ベトナム、フィリピン、インドネシア、韓国、パキスタン、バングラデシュ、イラン、ナイジェリア、エジプト、トルコ、メキシコ

 

3.VISTA
BRICsに続く新興成長国グループとして2006年11月にBRICs経済研究所のエコノミスト・門倉貴史氏が命名しました。ベトナム(Vietnam)、インドネシア(Indonesia)、南アフリカ(South Africa)、トルコ(Turkey)、アルゼンチン(Argentina)の5カ国が対象国です。地理的なバランスと高成長のための条件、すなわち豊富な天然資源、労働力の増加、外資の導入、政情の安定、購買力のある中産階級の台頭を勘案して、新興国からポスト BRICs の候補として選出されました。

 

4.VIP
ゴールドマン・サックスがBRICsを提唱したのが2001年11月からちょうど10年が経ち、日経ビジネスが「ポストBRICs」の有力候補として取り上げたのが、ベトナム、インドネシア、フィリピンの頭文字をつないだ「VIP」です。

「要人」を意味する「VIP(Very Important Person)」に引っかけているわけですが、日本にとってはこの3カ国はいずれも「Very Important Partner(極めて重要なパートナー)」になる可能性を秘めています。

ポストBRICs、「VIP」経済圏
ベトナム、インドネシア、フィリピンの潜在力
日経ビジネスONLINE

 

5.CIVETS(シベッツ)
世界最大級の英系金融グループであるHSBCが唱えているのがCIVENTSです。
「CIVENTS」はコロンビア(Colombia)、インドネシア(Indonesia)、ベトナム(Vietnam)、エジプト(Egypt)、トルコ(Turkey)、南アフリカ(South Africa)の頭文字。ちなみにCivetはアフリカやアジアの熱帯地域に生息する、マングースに近い哺乳類。かつては香水の材料として乱獲され、シャネルの5番にも使われていた媚薬の原料です。

BRICsにも言えることですが、まず人口が多く、市場の拡大余地が大きいこと。そして、この6カ国に関しては特に若者の人口が多く、人口が増えており、潜在的な中間層が存在します。2030年には12億人まで膨らむとも予想される厚い中間層です。やはり、BtoCビジネスのボリュームゾーンを厚く形成することができることが有望市場である条件という見方になります。

(参考)
BRICsの次を狙うCIVETSの追い上げ|YUCASEE media

 

6.VITAMIN
経営コンサルタント・経済評論家の大前研一さんが著書「お金の流れが変わった!―新興国が動かす世界経済の新ルール 」(PHP新書)の中で提唱しているポストBRICsが”VITAMIN”です。

VITAMINとはベトナム、インドネシア、タイ、トルコ、アルゼンチン、南アフリカ、メキシコ、イラン、イラク、ナイジェリアの頭文字を取ったもので、5000万以上の人口を抱え、且つ平均年齢が25~30歳前半で若い国。そして、低賃金でしかも優秀な頭脳を持つ労働力があります。ポイントは、世界の投資(投機?)マネーがどこに流れているか?ということ。

 

■ 新興国市場の選び方

以上から、特に、人口ボーナスを享受できる国が多くリストアップされていますが、
① 人口(特に若年層)の増加率が高い → 生産人口が増える
② 人口規模がそもそも大きい → 消費者市場としても有望
③ 現時点では一人当たり所得が低い → 労働集約的な産業ならコスト競争力が高い
④ これから教育水準があがる予兆がある
⑤ 政情が安定している、金融市場の法制度がある程度整っているなど、ビジネスインフラの基礎がなっている

というあたりが選択規準となるでしょうか。それプラス、文化的な面で、イスラム圏の国が多いので、

① ハラル認証
② イスラム金融
③ ラマダン (期間中、およびその前後の消費動向を踏まえ)

辺りを考慮に入れたビジネス展開を考えるべき、という感じでしょうか。

では、統計的にこれらリストアップされた国々はどういう状況か、そしてそうした市場に対して日本企業はどう対処するべきか? できるだけ早く後編をお届けしたいと思います。

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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