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■ 中国における「国家資本主義」の萌芽

経営管理会計トピック
前回」のドイツにおける「クラスター資本主義」に続いて、今回は、中国の「国家資本主義」を取り上げます。

2014/12/9付 |日本経済新聞|朝刊
中国、独占企業シフト 国内競争重視やめ収益集中 インフラ世界進出

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「中国の習近平指導部が自国企業による国内市場の独占・寡占を推進している。巨大な国内市場で上がる収益を有力企業に集中させ、海外進出や輸出拡大を後押しする狙いだ。鉄道や電力、IT(情報技術)では大型企業による市場独占が進み、1社でシェアが8割超に達する例も相次ぐ。国内競争を重視してきた従来政策を転換し、国を挙げて先進国勢との世界競争に臨む。」

■ 厳密には中国共産党による産業政策ですが

世界の各国首脳が、トップセールスを展開し、主にインフラ(鉄道、原発、プラントなど)産業の技術の輸出に汗をかいているニュースをよく見聞きします。
中国のやり方が他国とどう違うのでしょうか? それは、市場における競争原理を曲げて、産業全体の育成ではなく、自国の個別企業の体力増強に努め、コスト耐性を得て輸出競争に勝ち抜く施策を実施している点です。
なにも、本ブログで「中国はアンフェアだ」と非難するつもりは毛頭ありません。したたかに世界市場で立ち回る、GDP世界第2位の国の施策をよく分析し、官民上げて対抗処置をとらないと、中国企業の後塵を拝しますよ、というだけのことです。
中国の個別企業の強化策は以下の2つです。

① 国内市場における独占・寡占度を上げ、新興国への輸出の際のコストダウンの原資を捻出する
(つまり、国内の消費者余剰を独占企業の利潤に付け替える)

② 独占企業の利潤を高水準に保つために、徹底した外資企業の市場競争力のそぎ落とし
(つまり、生産者余剰を中国資本へ移転させる)

①の国内市場における寡占度上昇については、鉄道車両では、中国南車と中国北車の合併新会社によるほぼ独占、鉄道保守設備は8割、送電網運営では8割、石油製品は6割超など、国有企業を使ったシェア拡大路線を採っています。
まあ、第2次世界大戦で敗戦国となった日本もかつて、「財閥解体」ということで、企業競争力を米国から削がれた歴史もありますしね。基本的に、「規模の利益」を享受できる業種は、会社の土台が大きい方が利潤が高くなります。多額かつ長期の設備投資が可能になるのと、巨額の共通固定費にかかる平均コストを低減させることが可能になりますので。ただし、インフラ産業など、業種は限られると思いますが。
現在の国有企業優先は、民間企業を圧迫する「国進民退」として、国有企業への批判が国内でも高まっています。
また、最近の取り組みとして、「混合所有制」というのがあります。公的資産への民間投資拡大を意味しており、中国政府はこの制度下で国有企業が営利への意識を高め、経済全体の効率が改善することを期待するものです。
これについては、この新聞記事内にて、次のように語られています。
「習指導部は一方で民間資本の参入などをテコに経営の効率化を促す国有企業改革も進める。官民を挙げて世界で戦える「強い企業」を生み出し、「走出去(海外に打って出る)」戦略を加速する構えだ。」

■ なりふり構わない自国企業の保護

②の外資からの国内企業の保護については、やり方が3つあります。
◆ 一つ目は、外資の合併や提携を認めないこと。

2014/12/9付 |日本経済新聞|朝刊
外資、保護政策に戸惑い 独禁当局の狙い撃ち懸念

「外資にとって最大の不透明要因が中国の独占禁止法当局だ。最近も丸紅による米穀物大手ガビロン買収や、A・P・モラー・マースク(デンマーク)など欧州海運大手3社の提携に当局が「待った」をかけて話題を集めた。しかし国内大手の独占は容認する構えだ。
独フォルクスワーゲンや米クライスラーなど自動車大手に対しても、独占行為があったとして当局が制裁金を科した。外資大手の間では「中国メーカーも同様の商慣行を続けているのに、なぜか外資だけが狙われる」(自動車大手)との懸念が消えない。」

◆ 二つ目は、独禁法で外資に制裁を課し、商取引を牽制したうえで、価格競争力を削ぐこと。

2014/9/25付 |日本経済新聞|朝刊
GM「中国の価格妥当」 独禁法調査に反論 補修部品巡り

「中国当局は11日、VWとクライスラーに対し、部品価格などを不正につり上げたとして、合計約3億1千万元(約55億円)の罰金を科すと発表。8月には日本の自動車部品メーカーなど12社の独禁法違反を摘発、うち10社に合計12億3500万元の支払いを命じた。」

2014/9/12付 |日本経済新聞|朝刊
中国、独VW・米クライスラーに罰金計54億円 「独禁法違反」 日本車も調査

「中国当局は8月、日本の自動車部品メーカーなど12社の独禁法違反を摘発し、このうち10社に合計12億3500万元の罰金支払いを命じた。完成車大手への制裁は今回が初めてで、監視の網は広がっている。
IT(情報技術)分野では、スマートフォン(スマホ)向け半導体で高いシェアを持つ米クアルコムについて「支配的地位の乱用」の疑いで調査を進めている。当局は12日にクアルコム幹部と最終面談し、近く調査と処罰内容を公表するとしている。
米マイクロソフト(MS)に対してもソフトの抱き合わせ販売の疑いで調査に入っている。
進出企業の間では、中国当局が独禁法を国内産業保護のための「外資たたき」に利用しているとの懸念が強まっている。米国や欧州連合(EU)の在中国商工会議所は「進出企業の投資環境は日増しに悪化している。公平性を確保してほしい」との声明を発表している。」
◆ 三つ目は、自国企業の輸出規制に手心を加えること。

2014/12/5付 |日本経済新聞|朝刊
(真相深層)あふれ出る鋼材、通商摩擦の火種 中国から輸出急増、背景に課税逃れ? アジアに保護主義の気配

「発端は2010年7月。中国は普通鋼に限って輸出品にかかる増値税(消費税)を還付しない措置を打ち出した。輸出を合金などの高付加価値品にシフトさせる狙いだ。ところが増えたのは「名ばかり高級鋼」。ボロンは鋼材に0.0008%含まれるだけで合金と認められるため、鋼材各社は本来必要のない鋼材にもボロンを添加し始めた。事態を重くみた中国政府が昨年から詳細な輸出量を調べると、ボロン鋼は主要品目の輸出量の8~9割に上った。
価格の9~13%にあたる還付金は「値下げの原資となっている可能性が高い」(鉄鋼商社のメタルワン)。加えてアジア諸国の多くは合金の輸入関税が低い。マレーシアは普通鋼の熱延鋼板で20%だが合金は非課税だ。合算すれば本来の価格より3割安くできる。
9月、北京。経済産業省や鉄鋼メーカーの幹部はホテルで中国・商務部の幹部らと向かい合った。「ボロン鋼は中国の輸出政策の趣旨と異なるのでは」。日本側の問いかけに中国側は制度変更への動きを伝えたうえで、「解決には時間がかかる」と理解を求めたという。」
うーん、APECブルーを実現できる程の指導力がある政府(共産党)が言うセリフでしょうかね?
いずれにせよ、相手は主権国家なので、絶対的権力者。ここは冷静に、落ち着いて、頭脳戦で勝ち抜くしかないですね。えっ?筆者に妙案がないかって? そんなの持ち合わせていたら今頃、衆議院選に立候補していましたよ!(^^;)

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小林 友昭経済動向を会計で読む■ 中国における「国家資本主義」の萌芽 「前回」のドイツにおける「クラスター資本主義」に続いて、今回は、中国の「国家資本主義」を取り上げます。 2014/12/9付 |日本経済新聞|朝刊 中国、独占企業シフト 国内競争重視やめ収益集中 インフラ世界進出 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「中国の習近平指導部が自国企業による国内市場の独占・寡占を推進している。巨大な国内市場で上がる収益を有力企業に集中させ、海外進出や輸出拡大を後押しする狙いだ。鉄道や電力、IT(情報技術)では大型企業による市場独占が進み、1社でシェアが8割超に達する例も相次ぐ。国内競争を重視してきた従来政策を転換し、国を挙げて先進国勢との世界競争に臨む。」 ■ 厳密には中国共産党による産業政策ですが 世界の各国首脳が、トップセールスを展開し、主にインフラ(鉄道、原発、プラントなど)産業の技術の輸出に汗をかいているニュースをよく見聞きします。 中国のやり方が他国とどう違うのでしょうか? それは、市場における競争原理を曲げて、産業全体の育成ではなく、自国の個別企業の体力増強に努め、コスト耐性を得て輸出競争に勝ち抜く施策を実施している点です。 なにも、本ブログで「中国はアンフェアだ」と非難するつもりは毛頭ありません。したたかに世界市場で立ち回る、GDP世界第2位の国の施策をよく分析し、官民上げて対抗処置をとらないと、中国企業の後塵を拝しますよ、というだけのことです。 中国の個別企業の強化策は以下の2つです。 ① 国内市場における独占・寡占度を上げ、新興国への輸出の際のコストダウンの原資を捻出する (つまり、国内の消費者余剰を独占企業の利潤に付け替える) ② 独占企業の利潤を高水準に保つために、徹底した外資企業の市場競争力のそぎ落とし (つまり、生産者余剰を中国資本へ移転させる) ①の国内市場における寡占度上昇については、鉄道車両では、中国南車と中国北車の合併新会社によるほぼ独占、鉄道保守設備は8割、送電網運営では8割、石油製品は6割超など、国有企業を使ったシェア拡大路線を採っています。 まあ、第2次世界大戦で敗戦国となった日本もかつて、「財閥解体」ということで、企業競争力を米国から削がれた歴史もありますしね。基本的に、「規模の利益」を享受できる業種は、会社の土台が大きい方が利潤が高くなります。多額かつ長期の設備投資が可能になるのと、巨額の共通固定費にかかる平均コストを低減させることが可能になりますので。ただし、インフラ産業など、業種は限られると思いますが。 現在の国有企業優先は、民間企業を圧迫する「国進民退」として、国有企業への批判が国内でも高まっています。 また、最近の取り組みとして、「混合所有制」というのがあります。公的資産への民間投資拡大を意味しており、中国政府はこの制度下で国有企業が営利への意識を高め、経済全体の効率が改善することを期待するものです。 これについては、この新聞記事内にて、次のように語られています。 「習指導部は一方で民間資本の参入などをテコに経営の効率化を促す国有企業改革も進める。官民を挙げて世界で戦える「強い企業」を生み出し、「走出去(海外に打って出る)」戦略を加速する構えだ。」 ■ なりふり構わない自国企業の保護 ②の外資からの国内企業の保護については、やり方が3つあります。 ◆ 一つ目は、外資の合併や提携を認めないこと。 2014/12/9付 |日本経済新聞|朝刊 外資、保護政策に戸惑い 独禁当局の狙い撃ち懸念 「外資にとって最大の不透明要因が中国の独占禁止法当局だ。最近も丸紅による米穀物大手ガビロン買収や、A・P・モラー・マースク(デンマーク)など欧州海運大手3社の提携に当局が「待った」をかけて話題を集めた。しかし国内大手の独占は容認する構えだ。 独フォルクスワーゲンや米クライスラーなど自動車大手に対しても、独占行為があったとして当局が制裁金を科した。外資大手の間では「中国メーカーも同様の商慣行を続けているのに、なぜか外資だけが狙われる」(自動車大手)との懸念が消えない。」 ◆ 二つ目は、独禁法で外資に制裁を課し、商取引を牽制したうえで、価格競争力を削ぐこと。 2014/9/25付 |日本経済新聞|朝刊 GM「中国の価格妥当」 独禁法調査に反論 補修部品巡り 「中国当局は11日、VWとクライスラーに対し、部品価格などを不正につり上げたとして、合計約3億1千万元(約55億円)の罰金を科すと発表。8月には日本の自動車部品メーカーなど12社の独禁法違反を摘発、うち10社に合計12億3500万元の支払いを命じた。」 2014/9/12付 |日本経済新聞|朝刊 中国、独VW・米クライスラーに罰金計54億円 「独禁法違反」 日本車も調査 「中国当局は8月、日本の自動車部品メーカーなど12社の独禁法違反を摘発し、このうち10社に合計12億3500万元の罰金支払いを命じた。完成車大手への制裁は今回が初めてで、監視の網は広がっている。 IT(情報技術)分野では、スマートフォン(スマホ)向け半導体で高いシェアを持つ米クアルコムについて「支配的地位の乱用」の疑いで調査を進めている。当局は12日にクアルコム幹部と最終面談し、近く調査と処罰内容を公表するとしている。 米マイクロソフト(MS)に対してもソフトの抱き合わせ販売の疑いで調査に入っている。 進出企業の間では、中国当局が独禁法を国内産業保護のための「外資たたき」に利用しているとの懸念が強まっている。米国や欧州連合(EU)の在中国商工会議所は「進出企業の投資環境は日増しに悪化している。公平性を確保してほしい」との声明を発表している。」 ◆ 三つ目は、自国企業の輸出規制に手心を加えること。 2014/12/5付 |日本経済新聞|朝刊 (真相深層)あふれ出る鋼材、通商摩擦の火種 中国から輸出急増、背景に課税逃れ? アジアに保護主義の気配 「発端は2010年7月。中国は普通鋼に限って輸出品にかかる増値税(消費税)を還付しない措置を打ち出した。輸出を合金などの高付加価値品にシフトさせる狙いだ。ところが増えたのは「名ばかり高級鋼」。ボロンは鋼材に0.0008%含まれるだけで合金と認められるため、鋼材各社は本来必要のない鋼材にもボロンを添加し始めた。事態を重くみた中国政府が昨年から詳細な輸出量を調べると、ボロン鋼は主要品目の輸出量の8~9割に上った。 価格の9~13%にあたる還付金は「値下げの原資となっている可能性が高い」(鉄鋼商社のメタルワン)。加えてアジア諸国の多くは合金の輸入関税が低い。マレーシアは普通鋼の熱延鋼板で20%だが合金は非課税だ。合算すれば本来の価格より3割安くできる。 9月、北京。経済産業省や鉄鋼メーカーの幹部はホテルで中国・商務部の幹部らと向かい合った。「ボロン鋼は中国の輸出政策の趣旨と異なるのでは」。日本側の問いかけに中国側は制度変更への動きを伝えたうえで、「解決には時間がかかる」と理解を求めたという。」 うーん、APECブルーを実現できる程の指導力がある政府(共産党)が言うセリフでしょうかね? いずれにせよ、相手は主権国家なので、絶対的権力者。ここは冷静に、落ち着いて、頭脳戦で勝ち抜くしかないですね。えっ?筆者に妙案がないかって? そんなの持ち合わせていたら今頃、衆議院選に立候補していましたよ!(^^;)現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します