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■ 上期、世界純利益ランキングが出ました

経営管理会計トピック
今年度上期決算データを使って、完成車メーカーの世界純利益ランキング記事が掲載されました。
「世界の自動車大手で日本勢が快走している。2014年度上期の純利益を比較したところ、トヨタ自動車が首位を堅持、ホンダと日産自動車も順位を上げた。国内で消費増税の逆風は吹くが、好調な北米市場や円安を味方に付けたうえ、原価低減策も引き続き効果を発揮している。米国や韓国勢が失速するなか、日本勢の好調ぶりが目立ってきた」
記事では、上記のように、日本勢の躍進の様子が記述されています。

2014/11/21付 |日本経済新聞|朝刊
自動車、日本勢が快走 トヨタ、純利益首位を堅持 今年度上期、ホンダ・日産自も浮上 米韓勢は失速

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「米調査会社ファクトセットのデータを使い、14年度の上期(日本企業は14年4~9月期、海外企業は1~6月期)の純利益を比較した」
上記のように、3ヵ月の期ズレはありますが、一応世界ランキングが出ましたので、ちょっとグラフ化して眺めてみようと思います。

■ 分かりにくい時は可視化する

まずは、新聞に掲載されていたランキングを一部省略して転載します。
 経営管理会計トピック_上期自動車販売と純利益_ランキング
数字の根拠を確認するのが他人の作成したデータを分析する際の礼儀だと思っているため、一応今回も最低限確認しました。ランキングの中の「純利益」は国に依らず、「親会社説」に伴う「純利益」でした。日本流に言うと、一律、「少数株主利益」が控除されています。まず利益の定義のばらつきはありません。次に、為替レートですが、14年6月末日を採用していました。こちらは計算の簡便化のため仕方がないでしょう。
では分析に移ります。
業界の専門家や、計数分析のプロならば、この表だけを見て、あれこれコメントすることはできるのでしょう。しかし、筆者のような愚鈍者には、このままでは何の直観も働きません。そこで、いつもの通り、多分こういうストーリーかなあと仮説をもって、このランキング表をグラフ化したいと思います。
その仮説とは、「自動車産業は規模の利益が効き、販売台数に比例して収益性が高まる」というものです。縦軸に「純利益」、横軸に「販売台数」をプロットします。そうすると、仮説通りだと、右肩上がりの散布図が完成するはずです。そして、円の大きさ(1台当たり純利益)も、右上に行くほど大きくなる、と思っていました。。。
そして作成されたのが下記グラフです。
経営管理会計トピック_上期自動車販売と純利益_グラフ
結論から言うと、仮説はものの見事に外れてしまいました。

■ 1台当たり純利益指標が意味するもの

まず、世界販売上位10社は大きく3グループに分類されそうです。
① 世界シェアを追い、コストダウンも追及するメガプレイヤー
トヨタ、VW(独)がこのグループです。規模の拡大のため、生産能力への設備投資を積極的に行い、合わせて、車台の共通化や生産性の向上など、コストダウン(カイゼン)にも余念がなく、高収益がもたらされています。トヨタとVW(独)の1台当たり利益の差異は、円安とレクサスに代表される高級車シェア増大効果によるものだと思われます。
② 規模の拡大を追わず、高級車の独自市場を守るわが道を行くプレイヤー
BMW(独)、ダイムラー(独)がこのグループです。いずれも、1台当たり純利益がTOP2位に入っており、100万台クラスの生産規模ながら、後述の第3グループのいずれの企業より大きい純利益を稼いでいます。会社としても1台当たりの高収益性も、無理な過剰投資はしない、ブランドと独自マーケティングの展開で、自社市場を守っている戦略の賜物です。
③ 規模の拡大競争に収益性が追い付いていないプレイヤー
ホンダ、現代自(韓)、日産自、上海汽車(中)、フォード(米)、GM(米)がこのグループです。よくグラフをご覧頂くと、販売台数が増えれば増えるほど、会社の純利益額も1台当たりの純利益額も減少していっていることが分かります。メガプレイヤーとしてのトヨタ、VW(独)とのシェア拡大競争に乗って、設備投資やラインナップ充実、新興国進出、新技術車(EV、PHV等)の投入、各種ITCへの先行投資等、元々規模の大きいところと真っ向勝負を挑んで、体力を消耗していることが分かると思います。
ホンダ、現代自(韓)のポジションから、GM(米)のポジションまで、目には見えない隠されたルートがぼんやりと見えませんか?
最後に、1台当たりの純利益指標ということは、税制や為替の違い、金融販売事業の優劣、設備投資のタイミング、自動車セグメント以外への投資等、会社の総合的な収益性を販売台数で除算しているため、会社の総合力を販売台数あたりで示していることになります。
こういう指標は、完成車の製造販売メーカーとして、車の売り切りビジネス時代は有効でしたが、これからは自動走行システムそのもの、燃料電池車の運用インフラの運営等も、事業領域に組み込まれていくはずですので、徐々に、この種の指標では見えて無いものが増えていくのでしょう。
実は、ここにマツダや富士重が加わるとまた違った業界地平線がみえるのですが、それは新聞記事の分析を超えるので機会が別途あった時にご紹介したいと思います。

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小林 友昭会計で経営を読む■ 上期、世界純利益ランキングが出ました 今年度上期決算データを使って、完成車メーカーの世界純利益ランキング記事が掲載されました。 「世界の自動車大手で日本勢が快走している。2014年度上期の純利益を比較したところ、トヨタ自動車が首位を堅持、ホンダと日産自動車も順位を上げた。国内で消費増税の逆風は吹くが、好調な北米市場や円安を味方に付けたうえ、原価低減策も引き続き効果を発揮している。米国や韓国勢が失速するなか、日本勢の好調ぶりが目立ってきた」 記事では、上記のように、日本勢の躍進の様子が記述されています。 2014/11/21付 |日本経済新聞|朝刊 自動車、日本勢が快走 トヨタ、純利益首位を堅持 今年度上期、ホンダ・日産自も浮上 米韓勢は失速(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「米調査会社ファクトセットのデータを使い、14年度の上期(日本企業は14年4~9月期、海外企業は1~6月期)の純利益を比較した」 上記のように、3ヵ月の期ズレはありますが、一応世界ランキングが出ましたので、ちょっとグラフ化して眺めてみようと思います。 ■ 分かりにくい時は可視化するまずは、新聞に掲載されていたランキングを一部省略して転載します。   数字の根拠を確認するのが他人の作成したデータを分析する際の礼儀だと思っているため、一応今回も最低限確認しました。ランキングの中の「純利益」は国に依らず、「親会社説」に伴う「純利益」でした。日本流に言うと、一律、「少数株主利益」が控除されています。まず利益の定義のばらつきはありません。次に、為替レートですが、14年6月末日を採用していました。こちらは計算の簡便化のため仕方がないでしょう。 では分析に移ります。 業界の専門家や、計数分析のプロならば、この表だけを見て、あれこれコメントすることはできるのでしょう。しかし、筆者のような愚鈍者には、このままでは何の直観も働きません。そこで、いつもの通り、多分こういうストーリーかなあと仮説をもって、このランキング表をグラフ化したいと思います。 その仮説とは、「自動車産業は規模の利益が効き、販売台数に比例して収益性が高まる」というものです。縦軸に「純利益」、横軸に「販売台数」をプロットします。そうすると、仮説通りだと、右肩上がりの散布図が完成するはずです。そして、円の大きさ(1台当たり純利益)も、右上に行くほど大きくなる、と思っていました。。。 そして作成されたのが下記グラフです。 結論から言うと、仮説はものの見事に外れてしまいました。 ■ 1台当たり純利益指標が意味するものまず、世界販売上位10社は大きく3グループに分類されそうです。 ① 世界シェアを追い、コストダウンも追及するメガプレイヤー トヨタ、VW(独)がこのグループです。規模の拡大のため、生産能力への設備投資を積極的に行い、合わせて、車台の共通化や生産性の向上など、コストダウン(カイゼン)にも余念がなく、高収益がもたらされています。トヨタとVW(独)の1台当たり利益の差異は、円安とレクサスに代表される高級車シェア増大効果によるものだと思われます。 ② 規模の拡大を追わず、高級車の独自市場を守るわが道を行くプレイヤー BMW(独)、ダイムラー(独)がこのグループです。いずれも、1台当たり純利益がTOP2位に入っており、100万台クラスの生産規模ながら、後述の第3グループのいずれの企業より大きい純利益を稼いでいます。会社としても1台当たりの高収益性も、無理な過剰投資はしない、ブランドと独自マーケティングの展開で、自社市場を守っている戦略の賜物です。 ③ 規模の拡大競争に収益性が追い付いていないプレイヤー ホンダ、現代自(韓)、日産自、上海汽車(中)、フォード(米)、GM(米)がこのグループです。よくグラフをご覧頂くと、販売台数が増えれば増えるほど、会社の純利益額も1台当たりの純利益額も減少していっていることが分かります。メガプレイヤーとしてのトヨタ、VW(独)とのシェア拡大競争に乗って、設備投資やラインナップ充実、新興国進出、新技術車(EV、PHV等)の投入、各種ITCへの先行投資等、元々規模の大きいところと真っ向勝負を挑んで、体力を消耗していることが分かると思います。 ホンダ、現代自(韓)のポジションから、GM(米)のポジションまで、目には見えない隠されたルートがぼんやりと見えませんか? 最後に、1台当たりの純利益指標ということは、税制や為替の違い、金融販売事業の優劣、設備投資のタイミング、自動車セグメント以外への投資等、会社の総合的な収益性を販売台数で除算しているため、会社の総合力を販売台数あたりで示していることになります。 こういう指標は、完成車の製造販売メーカーとして、車の売り切りビジネス時代は有効でしたが、これからは自動走行システムそのもの、燃料電池車の運用インフラの運営等も、事業領域に組み込まれていくはずですので、徐々に、この種の指標では見えて無いものが増えていくのでしょう。 実は、ここにマツダや富士重が加わるとまた違った業界地平線がみえるのですが、それは新聞記事の分析を超えるので機会が別途あった時にご紹介したいと思います。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します