Pocket

■ 株式投機はタイミングがミソ

経営管理会計トピック
短期間で株式売買を繰り返し、収益を上げるスタンスで株式投資をされている方への投資指南にはならないのですが、「財務分析」=「指標をどういう観点で見るか」、という実例として、今回、「ROE」という財務指標を投機家目線で眺めてみたいと思います。

2015/1/23|日本経済新聞|朝刊 (スクランブル)高ROE株、買い疲れ 投資家は改善度に注目

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「原油安に欧州不安。株式相場の先行き不透明感が強まるなか、海外投資家の注目を一身に集めてきた自己資本利益率(ROE)の高い銘柄に「買い疲れ」の兆しが見え始めた。2013年からの株高局面を主導した一部の高ROE株から、これから大きな改善が期待できる銘柄へ――。投資マネーは次の候補に狙いを定め、動き始めている。」
短期間での株式売買、ここではあえて敬意を込めて「株式投機」と呼びますが、短期売買では、値動きに追随し、売買タイミングを見計らう所に醍醐味があります。
「高い」時に売って、「安い」時に買う。
「人の行く裏に道あり花の山」
高ROE株を買って、儲かるか否かは、あくまでタイミングの問題です。
なにせ、「価格差」こそが儲けの源泉なのですから。
そこに、「高ROE」である必然はないわけです。

■ 2014年にブームを引き起こした「ROE」に着目した資金移動状況

下表は、参照した新聞記事に掲載された「業種別の高ROEと低ROE銘柄の買い意欲」を示すチャートになります。これは、2015年1月の直近の動きになります。
経営管理トピック_業種別ROE格差と株価
このチャートが示す通り、足元では、高ROEから低ROEへ人気がシフトした、というのです。
高くなれば売られ、安くなれば買われる、相対的なものです。ということは、2014年までは、高ROE銘柄とされたものに買いが集中して、存外に株価が上昇してしまった、という理屈になります。その証拠が、同記事に掲載されていた下記チャートになります。
経営管理トピック_ROEとPBR別資金流入状況
「なぜ、ROE8%で高低を2分しているか」、は後で説明するとして、ROEが8%以上=高ROE銘柄には、2014年9月までの2年間、買いが集中していたことを示しています。買われれば株価は上がります。上がれば売られます。その売りが、ひとつ前のチャートで示されている2015年の最近の動きということになります。
ここから、経営者が高株価維持のため、高ROEを演出するために、「高配当や自社株買いなどによる株主還元強化」=「ROEの分母を小さくする」ことを行っても、持続的に株価は維持できないことは明らかです。
ROEは、業種業態にもよりますが、何年も前の先行投資が今年実って利益として回収された事実を示すものなので、あくまで「結果指標」なのです。決算発表にて、経営者が、これまでの中期事業戦略の結果報告として、投資家に成績発表するものなのです。
したがって、お子さんの1学期の通知表の「1」~「5」の数字分布を見て、「1学期は頑張ったね」と誉めてあげることはできても、「2学期の成績はさらによくなるね」、と期待をかけることは、子供自身にとって、不要なプレッシャーとなります(筆者の家庭の場合はです、、、)。

■ 目標ROE=8%の理由

高ROEかどうかの分岐点は、どうも「8%」らしいです。
そのことについては、個々の企業の市場環境(成長ステージか成熟ステージか、ボラティリティが高いか低いか)、競合の数と質(残存者利益を享受できているか、先行者利益をとりに行っているのか)、マクロの経済状況(成長率やインフレ率)などによって、目標とすべきROE水準が一律「8%」と固定されるものではない、というのが、企業経営の目線から見た筆者の持論です。
⇒「(創論)ROE重視と日本経済」などなど。
(さらに本ブログの検索機能で「ROE」と検索してヒットする記事に目を通して頂ければ幸いです)
しかしながら、個々の企業の競争環境は問わず、ひろく株式市場では、「8%」という数字で合意形成されています。筆者は、それに対して迎合もしませんが否定もしません。市場は、参加者の全体意思が反映されているものなので、市場参加者が「8%」と考えれば「8%」が正しいのです。
ずいぶん昔にも、適正株価についての議論がありました。「PER革命」。この言葉、懐かしくないですか? (年齢がばれますか、、、)
では、日本の上場企業のROEの分布状況について、日経新聞記事からチャートを転載させていただきます。

2015/2/3|日本経済新聞|朝刊 (目覚める資本)「ROE」底上げ不可欠

「日本企業が長年低水準にとどまっていた自己資本利益率(ROE)の引き上げに動き始めた。2013年度の上場企業平均は8.6%に改善した。だが社数ベースで見ると4%台の企業が最多で、なおROEが低位にある企業の資本効率の底上げが不可欠となる。」
経営管理トピック_ROEの分布
足元では、全社平均は8%。社数では4%台が多いので、皆が4→8%へ倍増を企図していると感じでしょうか?
つぎに、ROEと株価のバランスについて、これまた日経新聞からチャートを転載させていただきます。

2015/2/3|日本経済新聞|電子版 「8%の法則」 ROEが変える日本株の景色

「自己資本利益率(ROE)を株式投資にどううまく活用していくのか――。日本の投資家を長年悩ませてきたなかなか答えが見つからない難題だ。実際、日本ではROEが必ずしも有効な投資尺度としては機能してこなかったという事実もある。だが企業の資本効率向上を日本経済全体の成長戦略の大きな柱に掲げる政府の後押しもあり、企業の間ではROE重視の機運が高まるばかり。遅ればせながら日本でも始まった「ROE革命」は、これまで見慣れてきた株式市場の景色を大きく変える可能性を秘めている。」
経営管理トピック_ROE8%の壁
見事、ROE=8%の分岐点より右側で、PBRとROEが正の相関関係を形成します。左側は、そのまま「解散価値」=「PBR=1倍」に株価が張り付いています。
このグラフから分かることは、
「ROEが8%を超えると、ROEに正比例で株価が値付けされる」
ということであって、
「ROEが8%を超える銘柄を購入すると、株式投資で儲かる」
ということでは決してない、ということです。
冒頭の説明に戻りますが、短期間での株式売買で儲けるためには、株価の変動(値動き)の「さや」をとることが肝要で、その際に、ROEの水準は何ら関係ないことになります。
くどいようですが、「ROE」と「PBR」が「ROE≧8%」で、右肩上がりの正の相関を示している、ということは、ROEの水準が8%以上であれは、適切な値付けがすでに株式市場でなされていることを証明しているにすぎないのです。
それでは、筆者の投資スタンスは何か?
それは、「バイアンドホールド戦略」です。
なぜかって? つまり、高値掴みをしてしまっていて、損切りすると、売却損が実現してしまうからです。
お粗末!
P.S.
よく投資ブログで「○○万円儲けました」「投資指南します。今は○○が買い時です!」という記事を目にすることもあるのですが、本当の儲け話は誰もタダで言いませんよ。人に買わせといて、値上がりしたところで、自分は売り抜ける。そういう株価操縦を目的とした「風説の流布」に該当する情報には、賢明な読者の方々は、耳を傾けることないよう、心から願っております。

(Visited 317 times, 1 visits today)
Pocket

小林 友昭とことんROE■ 株式投機はタイミングがミソ 短期間で株式売買を繰り返し、収益を上げるスタンスで株式投資をされている方への投資指南にはならないのですが、「財務分析」=「指標をどういう観点で見るか」、という実例として、今回、「ROE」という財務指標を投機家目線で眺めてみたいと思います。 2015/1/23|日本経済新聞|朝刊 (スクランブル)高ROE株、買い疲れ 投資家は改善度に注目 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「原油安に欧州不安。株式相場の先行き不透明感が強まるなか、海外投資家の注目を一身に集めてきた自己資本利益率(ROE)の高い銘柄に「買い疲れ」の兆しが見え始めた。2013年からの株高局面を主導した一部の高ROE株から、これから大きな改善が期待できる銘柄へ――。投資マネーは次の候補に狙いを定め、動き始めている。」 短期間での株式売買、ここではあえて敬意を込めて「株式投機」と呼びますが、短期売買では、値動きに追随し、売買タイミングを見計らう所に醍醐味があります。 「高い」時に売って、「安い」時に買う。 「人の行く裏に道あり花の山」 高ROE株を買って、儲かるか否かは、あくまでタイミングの問題です。 なにせ、「価格差」こそが儲けの源泉なのですから。 そこに、「高ROE」である必然はないわけです。 ■ 2014年にブームを引き起こした「ROE」に着目した資金移動状況 下表は、参照した新聞記事に掲載された「業種別の高ROEと低ROE銘柄の買い意欲」を示すチャートになります。これは、2015年1月の直近の動きになります。 このチャートが示す通り、足元では、高ROEから低ROEへ人気がシフトした、というのです。 高くなれば売られ、安くなれば買われる、相対的なものです。ということは、2014年までは、高ROE銘柄とされたものに買いが集中して、存外に株価が上昇してしまった、という理屈になります。その証拠が、同記事に掲載されていた下記チャートになります。 「なぜ、ROE8%で高低を2分しているか」、は後で説明するとして、ROEが8%以上=高ROE銘柄には、2014年9月までの2年間、買いが集中していたことを示しています。買われれば株価は上がります。上がれば売られます。その売りが、ひとつ前のチャートで示されている2015年の最近の動きということになります。 ここから、経営者が高株価維持のため、高ROEを演出するために、「高配当や自社株買いなどによる株主還元強化」=「ROEの分母を小さくする」ことを行っても、持続的に株価は維持できないことは明らかです。 ROEは、業種業態にもよりますが、何年も前の先行投資が今年実って利益として回収された事実を示すものなので、あくまで「結果指標」なのです。決算発表にて、経営者が、これまでの中期事業戦略の結果報告として、投資家に成績発表するものなのです。 したがって、お子さんの1学期の通知表の「1」~「5」の数字分布を見て、「1学期は頑張ったね」と誉めてあげることはできても、「2学期の成績はさらによくなるね」、と期待をかけることは、子供自身にとって、不要なプレッシャーとなります(筆者の家庭の場合はです、、、)。 ■ 目標ROE=8%の理由 高ROEかどうかの分岐点は、どうも「8%」らしいです。 そのことについては、個々の企業の市場環境(成長ステージか成熟ステージか、ボラティリティが高いか低いか)、競合の数と質(残存者利益を享受できているか、先行者利益をとりに行っているのか)、マクロの経済状況(成長率やインフレ率)などによって、目標とすべきROE水準が一律「8%」と固定されるものではない、というのが、企業経営の目線から見た筆者の持論です。 ⇒「(創論)ROE重視と日本経済」などなど。 (さらに本ブログの検索機能で「ROE」と検索してヒットする記事に目を通して頂ければ幸いです) しかしながら、個々の企業の競争環境は問わず、ひろく株式市場では、「8%」という数字で合意形成されています。筆者は、それに対して迎合もしませんが否定もしません。市場は、参加者の全体意思が反映されているものなので、市場参加者が「8%」と考えれば「8%」が正しいのです。 ずいぶん昔にも、適正株価についての議論がありました。「PER革命」。この言葉、懐かしくないですか? (年齢がばれますか、、、) では、日本の上場企業のROEの分布状況について、日経新聞記事からチャートを転載させていただきます。 2015/2/3|日本経済新聞|朝刊 (目覚める資本)「ROE」底上げ不可欠 「日本企業が長年低水準にとどまっていた自己資本利益率(ROE)の引き上げに動き始めた。2013年度の上場企業平均は8.6%に改善した。だが社数ベースで見ると4%台の企業が最多で、なおROEが低位にある企業の資本効率の底上げが不可欠となる。」 足元では、全社平均は8%。社数では4%台が多いので、皆が4→8%へ倍増を企図していると感じでしょうか? つぎに、ROEと株価のバランスについて、これまた日経新聞からチャートを転載させていただきます。 2015/2/3|日本経済新聞|電子版 「8%の法則」 ROEが変える日本株の景色 「自己資本利益率(ROE)を株式投資にどううまく活用していくのか――。日本の投資家を長年悩ませてきたなかなか答えが見つからない難題だ。実際、日本ではROEが必ずしも有効な投資尺度としては機能してこなかったという事実もある。だが企業の資本効率向上を日本経済全体の成長戦略の大きな柱に掲げる政府の後押しもあり、企業の間ではROE重視の機運が高まるばかり。遅ればせながら日本でも始まった「ROE革命」は、これまで見慣れてきた株式市場の景色を大きく変える可能性を秘めている。」 見事、ROE=8%の分岐点より右側で、PBRとROEが正の相関関係を形成します。左側は、そのまま「解散価値」=「PBR=1倍」に株価が張り付いています。 このグラフから分かることは、 「ROEが8%を超えると、ROEに正比例で株価が値付けされる」 ということであって、 「ROEが8%を超える銘柄を購入すると、株式投資で儲かる」 ということでは決してない、ということです。 冒頭の説明に戻りますが、短期間での株式売買で儲けるためには、株価の変動(値動き)の「さや」をとることが肝要で、その際に、ROEの水準は何ら関係ないことになります。 くどいようですが、「ROE」と「PBR」が「ROE≧8%」で、右肩上がりの正の相関を示している、ということは、ROEの水準が8%以上であれは、適切な値付けがすでに株式市場でなされていることを証明しているにすぎないのです。 それでは、筆者の投資スタンスは何か? それは、「バイアンドホールド戦略」です。 なぜかって? つまり、高値掴みをしてしまっていて、損切りすると、売却損が実現してしまうからです。 お粗末! P.S. よく投資ブログで「○○万円儲けました」「投資指南します。今は○○が買い時です!」という記事を目にすることもあるのですが、本当の儲け話は誰もタダで言いませんよ。人に買わせといて、値上がりしたところで、自分は売り抜ける。そういう株価操縦を目的とした「風説の流布」に該当する情報には、賢明な読者の方々は、耳を傾けることないよう、心から願っております。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します