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■ 今時、午後3時で業務終了が許される業界

経営管理会計トピック
コンビニやファミレスは当然として、今では、カラオケボックス、居酒屋、レンタカー、レンタルビデオ、さらには郵便局まで、24時間営業している店舗を目にすることが増えました。その一方で、旧態依然の対応を崩さない業界があります。それは銀行です。

2015/1/9|日本経済新聞|朝刊
(真相深層)張り子の「24時間宣言」 振込時間、全銀協が延長方針 政官と民、足並みそろわず

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「他行宛ての銀行振込は午後3時を過ぎれば翌日扱い。こんな銀行サービスの旧弊を変えようと、全国銀行協会が2018年にも他行向け振り込みの時間を延ばすと決めた。成長戦略の一環として金融インフラ高度化を求める政府の要請に応じた形だが、肝心の「24時間365日の即時決済」への道筋はあいまいなまま。世界の潮流になりつつある「いつでも即時決済」への道のりは遠い。」

■ まずは、関係者の言い分と議論の流れ

新聞記事では、
全銀協は、昨年12月に公表した報告書で、「世界最先端の決済サービスを提供する」と宣言したものの、今回決めたのは、「24時間対応が可能になるような銀行界共有の新システム(全銀システム)をつくる」ところまで。
時間延長に後ろ向きな銀行もあり、「24時間365日対応の即時決済をいつ使えるかはまだわからない」(大手銀行幹部)というのが実情とのこと。
銀行側の言い分として、
① 午後3時以降の振込みを翌営業日に回す前提で人員シフトを敷いている
② 24時間対応となると、各行がそれぞれコンピュータ投資の積み増しを迫られる
だそうです。
そこで、すぐに時間延長しない代わりに、数年かけて新しいシステムを導入し、2018年から平日午後6時までの延長を業界最低の基準とする案が浮上。
これに対し、振り込みの24時間化を念頭に成長戦略に「資金決済の高度化」を盛り込んだ安倍晋三首相のメンツがつぶれるとして、午後6時案は立ち消えになった。
何と危機感のない銀行業界。「護送船団方式」でいまだに業界全体が政府に保護されているからと安心しきっている様子が窺えます。
普通の業界なら、人員シフト強化やIT投資負担増は、「できません」で通りますか?
「赤信号、皆で渡れば、、、」、業界全体が示し合わせてサボタージュしていれば差はつかない、ということらしいですが、既にネット銀行などに、手数料の無料化等、決済サービスで差別化戦略をとられて、困ってはいないんでしたっけ?

■ 世界の決済サービスの流れ

新聞記事によると、
英国では、08年に先進国でいち早く24時間の即時送金サービスである「フォスター・ペイメント」を導入、取引額に上限を設けて小口決済に特化する一方で、個人顧客の利用手数料を無料
スウェーデンでは、携帯電話番号を指定すれば、口座番号が分からなくても送金できる銀行界共通のインフラが整備済み
銀行業態ではなく、資金決済サービスということなら、米ペイパルや、中国のアリババ集団など他業種の決済サービスが普及しており、そのうち、ビットコイン等の仮想通貨での決済も普通になることでしょう。
全銀協の言う「世界最先端」とは。。。

■ ただ、愚痴を言っていても始まらないので

銀行業界がそんなに決済サービスにシャカリキになれない事情は、旧来の業態である銀行の損益計算書(P/L)を見ると、実は納得できます。
(出典:全国銀行業協会 – 各種統計資料
都市銀行5行、地方銀行64 行、地方銀行Ⅱ41 行、信託銀行4行および新生銀行、あおぞら銀行の合計116 行の、FY13の合算損益計算書をお示しします。
経営管理トピック_全国銀行のPL
決済サービスによる売上は、「その他の役務収益」に含まれます。全てではありません。全額としても売上の14.4%にしかなりません。一方で、経費の方は、「その他の役務費用」と「物件費」に分かれます。「物件費」は、建物の減価償却費なども含まれるので、全額が決済サービス向けのIT投資とは言えませんが、上記の表で赤字にした数字だけを対比すると、決して決済サービスはそれ単体で利益になるビジネスには思えません。
また、決済は他行宛の取引も扱う必要があるので、決済システムは、それに参加する全行が投資負担を相応にする必要があります。したがって、自行だけが抜け駆けして、決済サービスを24時間対応する、と決めても、業界全体の賛同・協力が必要なので実行不可能です。
次に、チャネル別の決済サービスの金額と取扱件数の構成比の推移をグラフでお示しします。
経営管理トピック_全国銀行のチャネル別決済サービス_数表
経営管理トピック_全国銀行のチャネル別決済サービス_金額_グラフ
経営管理トピック_全国銀行のチャネル別決済サービス_件数_グラフ
金額はほとんど、インターネット決済が占めていますが、件数で見ると、ATMが2013年でもまだ4分の1も残っています。この取引分に対応するためには、ATMを収めておく建物の運営コスト、いくら無人機といえども、人間によるマニュアルサービスも必要ですし、ATM本体へのハードウェア投資もばかになりません。
ここで、銀行の肩を持つつもりもありませんが、銀行窓口の利用者が、手持ちのモバイル・デバイスを持ち寄って、行員の指導の下、自分のモバイルで決済できるようにすればいいのではないでしょうか? (BYODです)
んでもって、データセンタも行外に置いて、決済アプリもパブリック・クラウドで提供する。。。
企業の枠を超えているから、SaaSでいいじゃん。
そこまでやれば、「世界最先端」になると思いますが。。。 お粗末!!!
⇒似たような話は東証でもやりました。
(真相深層)東証改革「失われた14年」 現物株の取引時間拡大またも見送り 日本足踏み世界は先へ

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小林 友昭経済動向を会計で読む■ 今時、午後3時で業務終了が許される業界 コンビニやファミレスは当然として、今では、カラオケボックス、居酒屋、レンタカー、レンタルビデオ、さらには郵便局まで、24時間営業している店舗を目にすることが増えました。その一方で、旧態依然の対応を崩さない業界があります。それは銀行です。 2015/1/9|日本経済新聞|朝刊 (真相深層)張り子の「24時間宣言」 振込時間、全銀協が延長方針 政官と民、足並みそろわず (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「他行宛ての銀行振込は午後3時を過ぎれば翌日扱い。こんな銀行サービスの旧弊を変えようと、全国銀行協会が2018年にも他行向け振り込みの時間を延ばすと決めた。成長戦略の一環として金融インフラ高度化を求める政府の要請に応じた形だが、肝心の「24時間365日の即時決済」への道筋はあいまいなまま。世界の潮流になりつつある「いつでも即時決済」への道のりは遠い。」 ■ まずは、関係者の言い分と議論の流れ 新聞記事では、 全銀協は、昨年12月に公表した報告書で、「世界最先端の決済サービスを提供する」と宣言したものの、今回決めたのは、「24時間対応が可能になるような銀行界共有の新システム(全銀システム)をつくる」ところまで。 時間延長に後ろ向きな銀行もあり、「24時間365日対応の即時決済をいつ使えるかはまだわからない」(大手銀行幹部)というのが実情とのこと。 銀行側の言い分として、 ① 午後3時以降の振込みを翌営業日に回す前提で人員シフトを敷いている ② 24時間対応となると、各行がそれぞれコンピュータ投資の積み増しを迫られる だそうです。 そこで、すぐに時間延長しない代わりに、数年かけて新しいシステムを導入し、2018年から平日午後6時までの延長を業界最低の基準とする案が浮上。 これに対し、振り込みの24時間化を念頭に成長戦略に「資金決済の高度化」を盛り込んだ安倍晋三首相のメンツがつぶれるとして、午後6時案は立ち消えになった。 何と危機感のない銀行業界。「護送船団方式」でいまだに業界全体が政府に保護されているからと安心しきっている様子が窺えます。 普通の業界なら、人員シフト強化やIT投資負担増は、「できません」で通りますか? 「赤信号、皆で渡れば、、、」、業界全体が示し合わせてサボタージュしていれば差はつかない、ということらしいですが、既にネット銀行などに、手数料の無料化等、決済サービスで差別化戦略をとられて、困ってはいないんでしたっけ? ■ 世界の決済サービスの流れ 新聞記事によると、 英国では、08年に先進国でいち早く24時間の即時送金サービスである「フォスター・ペイメント」を導入、取引額に上限を設けて小口決済に特化する一方で、個人顧客の利用手数料を無料 スウェーデンでは、携帯電話番号を指定すれば、口座番号が分からなくても送金できる銀行界共通のインフラが整備済み 銀行業態ではなく、資金決済サービスということなら、米ペイパルや、中国のアリババ集団など他業種の決済サービスが普及しており、そのうち、ビットコイン等の仮想通貨での決済も普通になることでしょう。 全銀協の言う「世界最先端」とは。。。 ■ ただ、愚痴を言っていても始まらないので 銀行業界がそんなに決済サービスにシャカリキになれない事情は、旧来の業態である銀行の損益計算書(P/L)を見ると、実は納得できます。 (出典:全国銀行業協会 - 各種統計資料) 都市銀行5行、地方銀行64 行、地方銀行Ⅱ41 行、信託銀行4行および新生銀行、あおぞら銀行の合計116 行の、FY13の合算損益計算書をお示しします。 決済サービスによる売上は、「その他の役務収益」に含まれます。全てではありません。全額としても売上の14.4%にしかなりません。一方で、経費の方は、「その他の役務費用」と「物件費」に分かれます。「物件費」は、建物の減価償却費なども含まれるので、全額が決済サービス向けのIT投資とは言えませんが、上記の表で赤字にした数字だけを対比すると、決して決済サービスはそれ単体で利益になるビジネスには思えません。 また、決済は他行宛の取引も扱う必要があるので、決済システムは、それに参加する全行が投資負担を相応にする必要があります。したがって、自行だけが抜け駆けして、決済サービスを24時間対応する、と決めても、業界全体の賛同・協力が必要なので実行不可能です。 次に、チャネル別の決済サービスの金額と取扱件数の構成比の推移をグラフでお示しします。 金額はほとんど、インターネット決済が占めていますが、件数で見ると、ATMが2013年でもまだ4分の1も残っています。この取引分に対応するためには、ATMを収めておく建物の運営コスト、いくら無人機といえども、人間によるマニュアルサービスも必要ですし、ATM本体へのハードウェア投資もばかになりません。 ここで、銀行の肩を持つつもりもありませんが、銀行窓口の利用者が、手持ちのモバイル・デバイスを持ち寄って、行員の指導の下、自分のモバイルで決済できるようにすればいいのではないでしょうか? (BYODです) んでもって、データセンタも行外に置いて、決済アプリもパブリック・クラウドで提供する。。。 企業の枠を超えているから、SaaSでいいじゃん。 そこまでやれば、「世界最先端」になると思いますが。。。 お粗末!!! ⇒似たような話は東証でもやりました。 「(真相深層)東証改革「失われた14年」 現物株の取引時間拡大またも見送り 日本足踏み世界は先へ」現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します