■ 結構手間暇かけてGPIFの株式自主運用の話をまとめたのですが。。。
朝刊を読んで、、、下記の解説記事が本当の参考資料になってしまいました。GPIFの株式自主運用見送りの本当の理由が知りたいものです。
⇒「「企業支配」の懸念焦点 公的年金の株直接投資解禁 銀行並み上限5%案 - GPIF改革によせる利害関係者からの期待と批判 日本経済新聞より」
2016/2/9付 |日本経済新聞|朝刊 株の自主運用認めず GPIF巡り社保審 政府・与党で最終判断へ
「公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に株式の自主運用を解禁するかを巡り、厚生労働省の社会保障審議会は8日、認めないことでほぼ意見が一致した。GPIFが直接株式を持つと、国家の企業支配につながるとの懸念が強かった。審議会の意見を踏まえ、政府・与党が今国会に提出予定の公的年金改革の関連法案に盛りこむか最終判断する。」
パッシブ運用に限定でかつ、議決権を外部委託しても、それでもGPIFに自主運用を認めないとは、とある一部の既存金融機関が裏からプレッシャーを相当かけたとしか思えませんが。。。
「審議会で了承した論点整理では、(1)自主運用の全面解禁(2)部分解禁(3)見送り――の3案を併記した。このうち、日経平均株価など指数に連動した運用成績を目指す「パッシブ運用」に限って、議決権を外部に委託して、部分的に自主運用を認めるべきだとの意見が複数の委員からあったが、「一部の意見」にとどめた。」
普通の株式運用ではボラティリティ(リスク)が高いので、リスクオフになるデリバティブの活用は認める方向で最終決着はしてほしいです。
「自主運用は見送り、「早急に手当てが必要なデリバティブ(金融派生商品)の規制緩和」などに限るという意見が多かったとした。」
■ とどのつまり、年金基金の議決権行使を恐れているのか。。。
下記の箇所を読んで、一部金融機関からの競業避止が裏の意図かと思いきや、議決権行使を産業界全体が恐れていることが分かりました。
「自主運用の解禁は経団連や連合出身の委員を中心に反対意見が強かった。GPIFが直接株式を保有して、株主総会で議決権行使をするようになると、企業経営への影響力を強めることができるという懸念があるためだ。8日の審議会でも「企業支配や市場をゆがめる懸念を払拭できない」との声があった。」
しかしですね、議決権行使助言会社のISS辺りからのアドバイスに従い、米公的年金2位のカリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)がトヨタの種類株発行について「NO」を表明しましたことはまだ記憶に新しいことです。
⇒「トヨタの新型株 米公的年金2位は反対海外での賛否分かれる」
公的年金基金が議決権を行使することは、企業支配や市場を本当に歪めるのでしょうか?株主権は大別して、
① 配当請求権
② 残余財産分配権
③ 議決権
の3つあり、①②は経済的請求権で、③が経営参加権です。この経営参加は究極的には①②の権利で享受できる経済権の最大化を目指して、口を出す、ということです。株式会社は、株主からの出資で成り立っている法人です。所有主は株主です。その意見を聞きたくない投資家は市場から排除する、という考えは、株式会社制度の根幹を揺るがす基本ルールの否定です。
ただですね、5%までの所有制限をかけるとか、種類株式の発行で議決権の占有率の調整をするとか、MBOで公開市場から退出するとか、確かに創意工夫の余地はいろいろあります。
でも、そもそも公開企業である以上、どんな株主が登場してきても、すべてを受けて立つ、肝の据わった経営者であったり、嘘偽りのない、合理的な経営計画を持ち得ていたりすれば、怖くないのですがね。むしろ、年金基金は長期保有スタンスのはずなので、株主と株価安定には寄与すると思うのですが。よっぽど経営に自信のない経営者が多いのですね。
(これは完全に嫌味です!)(^^;)
その裏に、フランス政府のフロランジュ法など、公的セクターからの経営権への浸食などを恐れているのなら、既にあの手この手であらゆる規制が公的セクターからかけられているわけです。規制緩和を叫びながら、一方で議決権行使で経営に口出しする。公的セクターの二枚舌も困りますが、むしろ、議決権行使(プロキシーファイト)で決着するのが資本の論理で簡単明快、とも思うのであります。
⇒「日産「切り札」が威力 仏政府から譲歩勝ち取る 「会社法308条」ルノー株買い増しで議決権消す」
最終決着まで、この議論の推移を見守っていきたいと思います。
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