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制管一致について(2)その前に制制一致の問題があります!パート2:会計基準差異とIFRS導入

所感
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■ 制度会計ルールに従っても、なぜか評価基準として使えない財務諸表

コンサルタントのつぶやき

筆者が本当に取り上げたい本題は、「制管不一致」なのですが、その前に「制制不一致」問題を語る必要があり、前回は、日本における①金商法会計、②会社法会計、③税法会計に横たわる差異について思いを語らせて頂きました。

⇒「制管一致について(1)その前に制制一致の問題があります!

今回は、引き続き「制制不一致」パート2として、グループ連結経営における子会社間の制制不一致について議論をしたいと思います。

この領域は次の過去投稿も参考にしてください。

⇒「国際会計基準IFRSが変える(上)グループ経営のインフラに 共通モノサシ、内需企業も

ここで、国内外の子会社を統一の会計基準で横並びするために、あえてIFRSで制度決算を行わせ、統一的な会計ルールで各社の業績評価を行おうとする会社が増えていることに苦言を呈させて頂きました。

そのポイントを再掲します。

(1)固定資産の耐用年数を統一することで、税前利益を算出するルールは統一することができても、各国における税法との調整額が逆に広がることになり、税引後利益またはキャッシュフローベースでは、全く統一効果が発揮されていない業績結果となる

(2)「のれん」の償却の有無でP/Lの利益表示額は同じルールで算出できたとしても、賢い投資家は、会計的利益で企業価値を評価するものではなく、キャッシュフローをベースに企業価値評価をする。よって、「のれん」償却ルールを無理にIFRSで合わせなくても、キャッシュフロー基準では、とっくの昔に横並びの評価ができる

(3)制度会計ルールだけに従っていては、各国の資本コストの違い(調達金利の差異)をそのままその子会社の実力値として財務諸表に表すことができない。会計的利益から資本コストを控除したものを「残余利益」という。制度会計ルールを問わない「残余利益」の計算は、無理にIFRSで各社の制度会計基準を合わせなくても、行えるはずだが、、、

裏を返すと、
① 各国税法を加味したキャッシュフローベースの業績は、制度会計ルールを統一しても、各社の横並び評価を実現できない
② 「のれん」償却の有無等、期間損益計算ルールを統一しても、社外からは、その横並び評価数値は信頼されることは少ない
③ 資本コストを加味した残余利益なら、各国子会社の真っ当な横並び評価ができそうなのだが、残余利益は制度会計ルールに捉われない管理会計の領域で計算されるものなので、IFRSでの会計基準統一が残余利益の算出に影響することはない

ということになり、いくら制度会計ルールをグローバルで統一しても、子会社の真っ当な横並び比較はできないことになります。

 

■ タックスヘイブンやパナマ文書で明らかになったタックスプランニングの危うさ

グローバル企業の中でも真の競争力を求める先進企業は、各国の制度会計ルール(税法含む)も自社グループの業績向上に有効利用するものです。つまり、各国税制の裏をかき、合法的に課税所得を最小化するタックスプランニングを実施します。

最近の例では、アップルがEUからアイルランドを経由した取引で税逃れをしていると強く非難されていることで有名になりました。

つまり、いわゆる「会計」の世界で、真の意味で「制制一致」を希求するなら、各国の税法も統一されなければ、本当にグローバルレベルで「制制一致」は成し得ないことになります。会計実務世界で、理想論的に、何か「制度会計基準」を1つに決めれば、各国に散らばる子会社を真っ当に横並び比較できるとか、グローバル企業同士の競争力を推し量るために、全ての比較対象企業がIFRSを採用していれば、公表用財務諸表を眺めているだけで、競争力の良し悪しが分かるとか、そういうことは全くの幻想であることは明らかです。

それゆえ、筆者は次のように考えています。

(1)「制管不一致」を語る前に「制制不一致」を語る必要がある
(2)全ての企業がIFRSを導入すれは、それだけで自動的に「制制一致」が満たされることはない
(3)税制も、全ての課税国で統一されるという仮定を持ち出さない限り、単純横並び比較のための「制制一致」は実現できない
(4)そんな、会計リテラシーの無い人の意見に合わせて、「制制一致」をお題目としたIFRS導入には意味はない

ふうーっ。これでようやく「制制一致(不一致)」に関して言いたいことを全部書くことができました。次回は本題となる「制管一致(不一致)」のテーマを語りたいと思います。

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