■ 今の特別を未来の当たり前に
株式投資の世界では、ESG投資、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を選別して行う投資の重要性が主張され、実際にその種の投信ファンドが高成績だったりしています。また、環境や社会に配慮した製品やサービスを選んで消費することを、「エシカル(ethical)消費」と呼んだりします。具体的には、途上国の労働者の生活水準向上を目指し、搾取的な取引条件を撤廃(フェアトレードという)して適正価格で仕入れた商材を好んで消費することで、一般的な経済的取引から途上国労働者の生活水準向上を可能にする消費者行動を意味します。
「社会起業家」として、社会貢献に寄与するプロジェクトを商業ベースで行うことの意義を重視して活動する起業家たちの活躍を見聞する機会も増えてきました。資本主義は、サブプライム危機以降、行き過ぎた「強欲資本主義」として批判の矢面に立っている反面、ある意味人間の本質を構成する「欲」をトリガーに、社会善に役立てようとする前述のいくつかの試みに、留飲を下げられる部分も確かにあります。
経営コンサルタントとして、企業経営のあり方について長年、数多くの経営者や意欲的なコーポレートスタッフと議論を重ねてきた経験から、ひとつ感じていることがあります。株式会社のゴールは利益を稼ぎ、それを資本主(株主や金融機関)にお返し、預かったお金の受託者責任を全うすること。それを近視眼的に、重要目標達成指標:KGI(Key Goal Indicator)として目標設定したものがROEやROIC等です。果たして、ステークホルダーとの企業戦略やバリュー、ミッションの共鳴無しに、そうしたKGIの達成は可能なのでしょうか?
KGI達成の前には、必ず、重要業績評価指標:KPI(Key Performance Indicator)が存在します。KGIで設定している財務的成功の前には、高い従業員満足と企業ミッションへの共感が必要で、そうした高いモチベーションに支えられた従業員の意欲的な業務姿勢の結果、高い顧客満足が得られます。顧客からの高い支持(ロイヤリティ)があってこそ、短期的には高い利益率を、長期的にはゴーイングコンサーンとしての財務体質強化を果たすことができるのです。
冒頭のESG投資、エシカル消費の話に戻りますが、これらは、レピュテーションリスク対策といった消極的な話ではなくて、企業がゴーイングコンサーンとして永続的にステークホルダーからの支持を得るための必須条件となるものです。それゆえ、どの企業も当たり前のように取り組むべき事項で、ことさらESG投資、エシカル消費というネーミングの必要がない企業社会の到来に我々は進んでいくべきなのです。
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