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■ M&Aは誰のために行われるのか? 株主と経営者のどちらの利に!?

経営管理会計トピック

本稿では、旧ユニーグループ・ホールディングスが、9月のファミリーマートと経営統合前に身ぎれいにしようと、8月17日にきもの、宝飾品等の販売チェーンである「さが美」を国内ファンドであるアスパラントグループに売却しようとしたところ、ニューホライズンキャピタル(NHC)が対抗買収案を発表して、「さが美」買収を争った事案を取り上げます。M&Aにおける判断基準のよい参考事例になると思いますので。

2016/10/6付 |日本経済新聞|朝刊 (スクランブル)さが美争奪戦が問う 対抗買収「内輪の論理」に一石

「マーケットが少し温まってきた印象だ。起爆剤はM&A(合併・買収)。5日は日立製作所による売却方針が報じられた日立工機株が急騰した。そんな市場でプロたちが注意深く行方を見守るディールがある。呉服店のさが美を巡る争奪戦だ。金融危機後に久々に日本で起きたこの買収合戦は、規模が小さいながらもこの国の市場のあり方に一石を投じている。
発端は、赤字が止まらない非中核事業を売却するというよくある案件だった。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

アスパラントは、旧ユニーグループ・ホールディングスからの提案を受け、8/18からTOB(株式公開買付け)の手続きに着手しました。しかし、この価格が、波紋を呼ぶことになります。

「買い取り株数はユニー保有株と同数。上場を維持するために、ユニー以外の株主が応じないよう買い付け価格を1株56円と直前株価や過去の株価より3割程度低くした。」

(下記は、同記事添付の「対抗案の登場で、さが美株は急騰」を引用)

20161006_対抗案の登場で、さが美株は急騰_日本経済新聞朝刊

何が論点かを整理します。
(1)株主利益の最大化のためには、一番高く買ってくれるところに売却すべきなのではないか?
→ さが美の一般株主の立場からすればアスパラントよりNHCに売却すべし

(2)企業価値最大化のために経営者(取締役)はM&Aを含む経営判断をすべきであり、一時の売却価額に捉われず、中長期的な成長と収益性改善のためのスキーム構築できる先に売却すべきではないか?
→ 旧ユニーグループ・ホールディングスの立場からすればアスパラントに売却すべし!

単純な企業買収事案とすれば、
・アスパラント:株式買収(30億円)
・NHC:株式買収+第三者割当増資(5億円)+ユニー保有債権買取=42億円
となり、さが美の一般株主にも、旧ユニーHD株主にも、NHC案の方が金額条件だけでいうと有利ではないかという見方もできます。

NHCもTOBに踏み切り、公明正大に同条件の買収合戦でけりをつければ、ある意味で公明正大に企業買収事案に決着が付けられるというものですが、日本のM&A市場において、まだまだ関係者の利害関係・それぞれの思惑から、TOBで決着するという風土にはまだなっておりません。

(下記は、同記事添付の「対抗的買収者が現れた主なM&Aの事例」を引用)

20161006_対抗的買収者が現れた主なM&Aの事例_日本経済新聞朝刊

この表で列挙された事案でも、全ての対抗買収者が、同一の条件(TOB)で争ったものばかりではありません。

 

■ どうして日本のM&A市場では、公明正大なTOB合戦でけりをつけないのか?

この事案の顛末は以下の通りです。

2016/10/10付 |日本経済新聞|電子版 ユニファミマ、さが美株を予定通り売却 別の買収提案に応じず

「ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)は11日、旧ユニー傘下の呉服専門店、さが美の売却をめぐり、独立系ファンドのアスパラントグループ(東京・港)のTOB(株式公開買い付け)に応募したと発表した。両社は8月にさが美の売却で合意していたが、9月下旬に別の投資ファンド、ニューホライズンキャピタル(東京・港)がさが美に買収を提案。ユニー・ファミマHDの出方が注目を集めていた。」

(下記は、同記事添付の「決算会見するユニファミマの佐古則男副社長(左)と中山勇副社長(都内、11日)」を引用)

20161010_決算会見するユニファミマの佐古則男副社長(左)と中山勇副社長(都内、11日)_日本経済新聞電子版

ユニー・ファミマHD本社の言い分としては、次の通り。

(1)アスパラント(1株56円)、NHC(1株90円)で買収額ではNHCが上回るが、「信頼関係がない中で売却しても、(さが美の)企業価値を向上できるか疑問だ」として、同日開催の取締役会などで「総合的に判断して結論に至った」」

(2)NHCは、「「さが美の賛同表明がなくてもTOBは実施できるはず」と反論。「(買い付け条件などが)確定できない中で交渉をすると、債権譲渡などを含むアスパラント側との契約の障害になり、我々に賠償責任が発生しかねない」(佐古副社長)と判断した」

NHCは、あくまで被買収会社の賛同を前提とする友好的TOBとして提案しているとし、分かりにくい決着となりました。

これについては、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)に関連項目があります。

20161015_買収防衛策・資本政策_コーポレートガバナンス・コード

原則1-5.によりますと、さが美株主にとって、56円より90円の値段をつけてくれたNHCに売却する方が適切な判断と言えます。アスパラントへは、市場価格より低い株価で旧ユニーHD保有株だけを売り渡し、さが美の一般株主に高値で持ち株を売却する機会を奪ったことになります。

一方で、原則1-6.を斟酌しますと、さが美の一般株主に対して十分な説明があったかどうかについて、すなわち旧ユニーHD保有株だけをアスパラントへ移動させて、支配権の変動をもたらす資本政策を実施したことに対する説明責任を果たしたかどうかについては、本質的な内容に関連するニュースリリースは皆無でしたので、筆者の目からは説明責任を十分に果たしたかどうかについては疑問であるという意見表明をここではさせて頂きます。

 

■ 最後に米国のM&Aルール、「レブロン基準」と「ユノカル基準」を復習します

冒頭で触れた10/6の日本経済新聞の記事内で、米国の「レブロン基準」に言及し、NHCがTOBに踏み切って日本版「さが美基準」を確立したらどうかという挑発的な文言で記事が締めくくられていました。そこで、米国のM&Aルールの代表選手、「レブロン基準」と「ユノカル基準」をご紹介して、本稿を終わりにしたいと思います。

※ 以下の説明をまとめるに当たり、参考にさせて頂いたサイト
レブロン基準|株式会社 みどり未来パートナーズ
ユノカル基準|株式会社 みどり未来パートナーズ
ユノカル基準とレブロン基準|ルナパパ日記

● レブロン基準
1)目的
企業買収の対象会社の取締役は対象会社の競売人として株主利益の最大化を目的として行動しなければならない

2)条件と取締役(経営陣)の行動規範
以下の局面において、取締役は防衛策を講じてはならず、売却価格の最大化を図らなければならない
① 経営陣が、会社自体を売却するか、会社の分割を含む再構築を行うことを決定した場合
② 支配権の移動を伴う組織の再編があり、再編後に支配株主が生じる場合

3)経緯
1985年、化粧品大手のレブロン社(Revlon Corp.)へ大型企業買収を複数手がけた食品会社マッカンドリュース&フォーブス(M&F)が敵対的買収をしかけたが、レブロン経営陣はこれを拒否し、代替案となる企業防衛策として、NYの投資会社との間で友好的買収契約を結んで対抗。その契約内容は、「他の買収者がレブロン株の一定割合以上を取得した場合には、レブロンの資産価値のある部門だけを分割してNYの投資会社に安価で売却する」というもの。M&Fへの対抗措置として、仮にM&Fがレブロンを買収しても手に入れられるのは資産価値の低い部門だけという牽制をかけた。

4)裁判所の結論
「経営者は会社を一旦売りに出すと決めたら、高い値段の相手に売る義務がある」という判断を下し、レブロン経営陣は敗北

(筆者の見解)
レブロン基準によれは、さが美の経営陣は、より高い値段を提示したNHCに株式売却をすべし、ということになります。

● ユノカル基準
1)目的
買収防衛策が、敵対的買収がもたらす脅威との関係において合理的な範囲にとどまっているか、ということの立証責任を対象会社の取締役に課し、過度な防衛策の導入を抑制する

2)条件と買収防衛策の適法性
買収への防衛策が適法かどうかは以下の2つの基準に基づき判断する
① 敵対的M&Aが対象会社の経営や効率性に脅威となるか
② 防衛策が脅威との関係で相対的に適当かどうか

3)経緯
アメリカの石油会社ユノカル社(Unocal Corp.)に買収をしかけたメサ石油(買収王ブーン・ピケンズ)に対抗し、ユノカル社がメサ石油以外の既存のユノカル株主に対してTOBを仕掛けて自己株式を取得する(選択的公開買付:日本法では認められていない)という防衛策を実施したことに対し、メサ側が法令違反として訴えた。

4)裁判所の結論
買収への防衛策が適法かどうかは、①敵対的買収が対象企業の経営や効率性に脅威となる、②防衛策が脅威との関係で適当かどうかで判断する。石油会社ユノカルに買収を仕掛けたピケンズ氏はグリーンメーラー(株を買い集めて企業や株主に買い取りを要求する人)と推認され、ユノカルの経営者側が勝訴

(筆者の見解)
ユノカル基準によれば、さが美の経営陣が企業防衛策(本件では意図せざるNHCへの経営支配権の移動)として、アスパラントへのTOB実施が、経営効率や株主利益を保護するためにのみ必要なものであったか、防衛策がどのように株主利益の保護に寄与するのかを合理的に説明できていたかを問うものであり、マスコミ報道やプレスリリース等に基づく限り、その説明責任は果たされていないと認識しています。

ちなみに、上記の基準は2つとも、とある州での裁判で確立されました。米国で2番目に小さい面積のデラウェア州に、Fortune 500企業の約60%が登記しており、デラウェア州一般会社法による授権法の恩恵と、積み上がった数多くの判例法による恩恵にダブルで預かれるため、米国企業が好んで登記先に選び、デラウェア州で争われた裁判で定まった判例から「レブロン基準」「ユノカル基準」が全米の規範となるのです。

(参考)企業がデラウェア州を選ぶ理由|State of Delaware

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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アスパラントによるさが美買収に見る日本のM&A、TOBの慣例を考える - レブロン基準、ユノカル基準の復習を兼ねてhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭会計で経営を読むM&A,NHC,TOB,さが美,アスパラント,グリーンメーラー,コーポレートガバナンス・コード,デラウェア,ニューホライズンキャピタル,ピケンズ,ユニーグループ・ホールディングス,ユノカル基準,レブロン基準■ M&Aは誰のために行われるのか? 株主と経営者のどちらの利に!? 本稿では、旧ユニーグループ・ホールディングスが、9月のファミリーマートと経営統合前に身ぎれいにしようと、8月17日にきもの、宝飾品等の販売チェーンである「さが美」を国内ファンドであるアスパラントグループに売却しようとしたところ、ニューホライズンキャピタル(NHC)が対抗買収案を発表して、「さが美」買収を争った事案を取り上げます。M&Aにおける判断基準のよい参考事例になると思いますので。 2016/10/6付 |日本経済新聞|朝刊 (スクランブル)さが美争奪戦が問う 対抗買収「内輪の論理」に一石 「マーケットが少し温まってきた印象だ。起爆剤はM&A(合併・買収)。5日は日立製作所による売却方針が報じられた日立工機株が急騰した。そんな市場でプロたちが注意深く行方を見守るディールがある。呉服店のさが美を巡る争奪戦だ。金融危機後に久々に日本で起きたこの買収合戦は、規模が小さいながらもこの国の市場のあり方に一石を投じている。 発端は、赤字が止まらない非中核事業を売却するというよくある案件だった。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます アスパラントは、旧ユニーグループ・ホールディングスからの提案を受け、8/18からTOB(株式公開買付け)の手続きに着手しました。しかし、この価格が、波紋を呼ぶことになります。 「買い取り株数はユニー保有株と同数。上場を維持するために、ユニー以外の株主が応じないよう買い付け価格を1株56円と直前株価や過去の株価より3割程度低くした。」 (下記は、同記事添付の「対抗案の登場で、さが美株は急騰」を引用) 何が論点かを整理します。 (1)株主利益の最大化のためには、一番高く買ってくれるところに売却すべきなのではないか? → さが美の一般株主の立場からすればアスパラントよりNHCに売却すべし (2)企業価値最大化のために経営者(取締役)はM&Aを含む経営判断をすべきであり、一時の売却価額に捉われず、中長期的な成長と収益性改善のためのスキーム構築できる先に売却すべきではないか? → 旧ユニーグループ・ホールディングスの立場からすればアスパラントに売却すべし! 単純な企業買収事案とすれば、 ・アスパラント:株式買収(30億円) ・NHC:株式買収+第三者割当増資(5億円)+ユニー保有債権買取=42億円 となり、さが美の一般株主にも、旧ユニーHD株主にも、NHC案の方が金額条件だけでいうと有利ではないかという見方もできます。 NHCもTOBに踏み切り、公明正大に同条件の買収合戦でけりをつければ、ある意味で公明正大に企業買収事案に決着が付けられるというものですが、日本のM&A市場において、まだまだ関係者の利害関係・それぞれの思惑から、TOBで決着するという風土にはまだなっておりません。 (下記は、同記事添付の「対抗的買収者が現れた主なM&Aの事例」を引用) この表で列挙された事案でも、全ての対抗買収者が、同一の条件(TOB)で争ったものばかりではありません。   ■ どうして日本のM&A市場では、公明正大なTOB合戦でけりをつけないのか? この事案の顛末は以下の通りです。 2016/10/10付 |日本経済新聞|電子版 ユニファミマ、さが美株を予定通り売却 別の買収提案に応じず 「ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)は11日、旧ユニー傘下の呉服専門店、さが美の売却をめぐり、独立系ファンドのアスパラントグループ(東京・港)のTOB(株式公開買い付け)に応募したと発表した。両社は8月にさが美の売却で合意していたが、9月下旬に別の投資ファンド、ニューホライズンキャピタル(東京・港)がさが美に買収を提案。ユニー・ファミマHDの出方が注目を集めていた。」 (下記は、同記事添付の「決算会見するユニファミマの佐古則男副社長(左)と中山勇副社長(都内、11日)」を引用) ユニー・ファミマHD本社の言い分としては、次の通り。 (1)アスパラント(1株56円)、NHC(1株90円)で買収額ではNHCが上回るが、「信頼関係がない中で売却しても、(さが美の)企業価値を向上できるか疑問だ」として、同日開催の取締役会などで「総合的に判断して結論に至った」」 (2)NHCは、「「さが美の賛同表明がなくてもTOBは実施できるはず」と反論。「(買い付け条件などが)確定できない中で交渉をすると、債権譲渡などを含むアスパラント側との契約の障害になり、我々に賠償責任が発生しかねない」(佐古副社長)と判断した」 NHCは、あくまで被買収会社の賛同を前提とする友好的TOBとして提案しているとし、分かりにくい決着となりました。 これについては、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)に関連項目があります。 原則1-5.によりますと、さが美株主にとって、56円より90円の値段をつけてくれたNHCに売却する方が適切な判断と言えます。アスパラントへは、市場価格より低い株価で旧ユニーHD保有株だけを売り渡し、さが美の一般株主に高値で持ち株を売却する機会を奪ったことになります。 一方で、原則1-6.を斟酌しますと、さが美の一般株主に対して十分な説明があったかどうかについて、すなわち旧ユニーHD保有株だけをアスパラントへ移動させて、支配権の変動をもたらす資本政策を実施したことに対する説明責任を果たしたかどうかについては、本質的な内容に関連するニュースリリースは皆無でしたので、筆者の目からは説明責任を十分に果たしたかどうかについては疑問であるという意見表明をここではさせて頂きます。   ■ 最後に米国のM&Aルール、「レブロン基準」と「ユノカル基準」を復習します 冒頭で触れた10/6の日本経済新聞の記事内で、米国の「レブロン基準」に言及し、NHCがTOBに踏み切って日本版「さが美基準」を確立したらどうかという挑発的な文言で記事が締めくくられていました。そこで、米国のM&Aルールの代表選手、「レブロン基準」と「ユノカル基準」をご紹介して、本稿を終わりにしたいと思います。 ※ 以下の説明をまとめるに当たり、参考にさせて頂いたサイト ・レブロン基準|株式会社 みどり未来パートナーズ ・ユノカル基準|株式会社 みどり未来パートナーズ ・ユノカル基準とレブロン基準|ルナパパ日記 ● レブロン基準 1)目的 企業買収の対象会社の取締役は対象会社の競売人として株主利益の最大化を目的として行動しなければならない 2)条件と取締役(経営陣)の行動規範 以下の局面において、取締役は防衛策を講じてはならず、売却価格の最大化を図らなければならない ① 経営陣が、会社自体を売却するか、会社の分割を含む再構築を行うことを決定した場合 ② 支配権の移動を伴う組織の再編があり、再編後に支配株主が生じる場合 3)経緯 1985年、化粧品大手のレブロン社(Revlon Corp.)へ大型企業買収を複数手がけた食品会社マッカンドリュース&フォーブス(M&F)が敵対的買収をしかけたが、レブロン経営陣はこれを拒否し、代替案となる企業防衛策として、NYの投資会社との間で友好的買収契約を結んで対抗。その契約内容は、「他の買収者がレブロン株の一定割合以上を取得した場合には、レブロンの資産価値のある部門だけを分割してNYの投資会社に安価で売却する」というもの。M&Fへの対抗措置として、仮にM&Fがレブロンを買収しても手に入れられるのは資産価値の低い部門だけという牽制をかけた。 4)裁判所の結論 「経営者は会社を一旦売りに出すと決めたら、高い値段の相手に売る義務がある」という判断を下し、レブロン経営陣は敗北 (筆者の見解) レブロン基準によれは、さが美の経営陣は、より高い値段を提示したNHCに株式売却をすべし、ということになります。 ● ユノカル基準 1)目的 買収防衛策が、敵対的買収がもたらす脅威との関係において合理的な範囲にとどまっているか、ということの立証責任を対象会社の取締役に課し、過度な防衛策の導入を抑制する 2)条件と買収防衛策の適法性 買収への防衛策が適法かどうかは以下の2つの基準に基づき判断する ① 敵対的M&Aが対象会社の経営や効率性に脅威となるか ② 防衛策が脅威との関係で相対的に適当かどうか 3)経緯 アメリカの石油会社ユノカル社(Unocal Corp.)に買収をしかけたメサ石油(買収王ブーン・ピケンズ)に対抗し、ユノカル社がメサ石油以外の既存のユノカル株主に対してTOBを仕掛けて自己株式を取得する(選択的公開買付:日本法では認められていない)という防衛策を実施したことに対し、メサ側が法令違反として訴えた。 4)裁判所の結論 買収への防衛策が適法かどうかは、①敵対的買収が対象企業の経営や効率性に脅威となる、②防衛策が脅威との関係で適当かどうかで判断する。石油会社ユノカルに買収を仕掛けたピケンズ氏はグリーンメーラー(株を買い集めて企業や株主に買い取りを要求する人)と推認され、ユノカルの経営者側が勝訴 (筆者の見解) ユノカル基準によれば、さが美の経営陣が企業防衛策(本件では意図せざるNHCへの経営支配権の移動)として、アスパラントへのTOB実施が、経営効率や株主利益を保護するためにのみ必要なものであったか、防衛策がどのように株主利益の保護に寄与するのかを合理的に説明できていたかを問うものであり、マスコミ報道やプレスリリース等に基づく限り、その説明責任は果たされていないと認識しています。 ちなみに、上記の基準は2つとも、とある州での裁判で確立されました。米国で2番目に小さい面積のデラウェア州に、Fortune 500企業の約60%が登記しており、デラウェア州一般会社法による授権法の恩恵と、積み上がった数多くの判例法による恩恵にダブルで預かれるため、米国企業が好んで登記先に選び、デラウェア州で争われた裁判で定まった判例から「レブロン基準」「ユノカル基準」が全米の規範となるのです。 (参考)企業がデラウェア州を選ぶ理由|State of Delaware (注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します