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■ ネットワークインフラの会社も黙っていません

経営管理会計トピック

前回」は、ハードウェア会社の日立が、単品からインフラへ。自社製品の販売(製造業)からインフラ運営といったサービス業への展開が本格的に始動しそうだというお話しをしました 今回は、通信機器大手のノキア、通信キャリアのNTTコミュニケーションズの動きを簡単に見ていきたいと思います。

2社の取り組みを見る前に、「ビッグデータ」「IoT」に関する事業領域の鳥瞰図を再掲します。

経営管理トピック_ビッグデータとIOTのビジネス環境

2015/4/16|日本経済新聞|朝刊 ノキア、仏アルカテル買収 1.9兆円、通信インフラ強化 エリクソンを追う

  (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「【ロンドン=黄田和宏】フィンランド通信機器大手のノキアは15日、同業の仏アルカテル・ルーセントを買収すると発表した。ノキアは携帯基地局などの通信インフラ事業を強化している。経営統合により業界シェアを高め、最大手エリクソン(スウェーデン)や新興国に強い中国の華為技術(ファーウェイ)と互角に競争できる体制を整える。」

(2015年4月16日:日本経済新聞朝刊より下図転載)

経営管理会計トピック_ノキアのアルカテル買収_日本経済新聞朝刊2015年4月16日掲載

単なるインフラ業界における「規模の経済」を享受しようとするM&A話かと思いきや、

「通信機器各社は次世代の携帯通信規格である第5世代(5G)の技術開発を競っており、ノキアはアルカテル傘下の研究機関であるベル研究所の開発力を取り込み、研究開発を強化する。両社を合計すると、開発人員は4万人を超え、研究開発費は昨年実績で47億ユーロと業界トップクラスになる。
ネットワーク技術はあらゆるモノをインターネットでつなぐ「IoT」の普及で高い技術力が求められており、こうした分野で競争力を高めたい考えだ。」

ここにも「IoT」がキーワードとして登場してきます。

5G」の特徴は3つ。「高速通信(10Gビット/秒)」、ネットワークからクルマなどのハードウェアを制御する際に不可欠な「低遅延」や、2020年には300億~500億のモノがインターネットに接続するIoTを支えるための「大量接続」。代表的な技術として、「NFV(ネットワーク機能の仮想化)」というのがあり、これは必要な時に必要なネットワークをサービスに割り当てる『ネットワークスライス』という概念。これによってネットワークを自在にデザインし、クルマや家電など製品やサービスごとに最適化しようというものです。

次世代の携帯通信規格「5G」はもはや音声通信のためではなく、「IoT」のために開発されているといっても過言ではありません。その競争に勝利するため、ノキアは、株式交換(アルカテル1株に対して、自社株を0.55株割当)で、時価換算での買収額は156億ユーロ(約1兆9700億円)相当になります。

ノキアのラジーブ・スーリCEOは、「経営統合により、次世代通信ネットワーク技術で主導権を握る」とこの買収劇の動機を隠そうとせず言い切っています。キャッシュアウトなく、技術を買った、典型的なR&A(Research & Aquisition)です。

ノキアは、事業鳥瞰図でいうところの「通信・ネットワーク」を主戦場に、「ビッグデータ」「IoT」市場に殴り込みです。

 

■ 最後は日本の通信キャリアがIoTにかけているお話です

2015/4/18|日本経済新聞|朝刊 IoT向けシステム NTTコム、世界展開 188カ国で利用可能に

「NTTコミュニケーションズは、様々なモノをインターネットにつなぐ「インターネット・オブ・シングス(IoT)」向けシステムを世界展開する。様々なネットワークを一元管理できる技術などを活用し、世界188カ国で利用できるようにする。自動車や家電などがネットにつながるIoTシステムに世界規模で対応して、需要拡大に備える。」

具体的には、
「ソフトウェアで様々なネットワークを管理する「SDN」技術などを活用する。NTTコムが持つデータセンターや顧客のシステムなどが、様々な機器と世界規模で安全にデータをやりとりできるようになる。NTTコムが世界130拠点以上で展開するデータセンターにおいて集めた情報を処理し、各国の情報保護規制などにも柔軟に対応できる。2016年度のサービス開始を目指す。」

それでは、「SDN(Software-Defined Network)」とは何でしょうか。
(会計やマネジメントに興味がある読者でITはそれほどという方は、下図だけ眺めても分かるようにしています)

経営管理会計トピック_SDN

クラウド環境で種々のサービスやネットワーク機器が提供されている時、場合によっては「仮想化」といって、バーチャルなデータやサービス環境がネットワーク上に構築されていたりします。従来は、ネットワークやクラウドを構成する個々の「ルータ」「ファイヤーウォール」「スイッチ」「VLAN」「ロードバランサー」などは、その種類ごとにコントローラ(制御するしくみ)が存在して、バラバラに対応する必要がありました。

クラウド環境では、一夜にして膨大な数のサーバがネットワーク上で動的に生成・消滅・移動することも多く、ネットワーク管理者がひとつひとつの機器を手作業で設定していては、現実的なネットワーク(クラウド)環境の維持はできません。

そこで、「Open Flow」等の通信規約を事前に決めておいて、そうしたネットワーク機器の設定情報を、一括でしかもソフトウェア上(モニタ画面を見るだけ)で管理できるようにしたものが「SDN」なのです。しかも、「API(Application Programming Interface)」越しでも利用できるので、全く別のアプリケーションサービスから「SDN」の機能だけを呼び出して使用することもできるのです。

NTTコミュニケーションズは、数百億の機器がネットワークに接続されて、しかもクラウド上にいろんな作業ができるソフトがそれらの情報を処理する「IoT」におけるネットワークの運用・維持業務が今以上に大変になることを睨んで、そうした作業の効率化ができる「SDN」を使用したネットワーク環境の提供自体をこれからの「ビッグデータ」「IoT」時代にニーズが高まるサービスと考え、積極的に投資しています。

NTTコミュニケーションズは、NTTグループ内での事業重複があってすっきりしないのですが、「ビッグデータ」「IoT」における事業鳥瞰図では、「演算機能」に位置する「クラウド」と組み合わせた「通信・ネットワーク」での管理サービスで差別化を図り、競争優位を築こうとしています。

通信キャリアも「ビッグデータ」「IoT」という金鉱を目の前にして、どう儲けるか、虎視眈々と狙いを「IoT & クラウド」に定めている、というお話でした。

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ビッグデータとIoTのどこで儲けるか(3)http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭テクノロジー5G,IOT,NTTコミュニケーションズ,SDN,ノキア,ビッグデータ■ ネットワークインフラの会社も黙っていません 「前回」は、ハードウェア会社の日立が、単品からインフラへ。自社製品の販売(製造業)からインフラ運営といったサービス業への展開が本格的に始動しそうだというお話しをしました 今回は、通信機器大手のノキア、通信キャリアのNTTコミュニケーションズの動きを簡単に見ていきたいと思います。 2社の取り組みを見る前に、「ビッグデータ」「IoT」に関する事業領域の鳥瞰図を再掲します。 2015/4/16|日本経済新聞|朝刊 ノキア、仏アルカテル買収 1.9兆円、通信インフラ強化 エリクソンを追う   (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「【ロンドン=黄田和宏】フィンランド通信機器大手のノキアは15日、同業の仏アルカテル・ルーセントを買収すると発表した。ノキアは携帯基地局などの通信インフラ事業を強化している。経営統合により業界シェアを高め、最大手エリクソン(スウェーデン)や新興国に強い中国の華為技術(ファーウェイ)と互角に競争できる体制を整える。」 (2015年4月16日:日本経済新聞朝刊より下図転載) 単なるインフラ業界における「規模の経済」を享受しようとするM&A話かと思いきや、 「通信機器各社は次世代の携帯通信規格である第5世代(5G)の技術開発を競っており、ノキアはアルカテル傘下の研究機関であるベル研究所の開発力を取り込み、研究開発を強化する。両社を合計すると、開発人員は4万人を超え、研究開発費は昨年実績で47億ユーロと業界トップクラスになる。 ネットワーク技術はあらゆるモノをインターネットでつなぐ「IoT」の普及で高い技術力が求められており、こうした分野で競争力を高めたい考えだ。」 ここにも「IoT」がキーワードとして登場してきます。 「5G」の特徴は3つ。「高速通信(10Gビット/秒)」、ネットワークからクルマなどのハードウェアを制御する際に不可欠な「低遅延」や、2020年には300億~500億のモノがインターネットに接続するIoTを支えるための「大量接続」。代表的な技術として、「NFV(ネットワーク機能の仮想化)」というのがあり、これは必要な時に必要なネットワークをサービスに割り当てる『ネットワークスライス』という概念。これによってネットワークを自在にデザインし、クルマや家電など製品やサービスごとに最適化しようというものです。 次世代の携帯通信規格「5G」はもはや音声通信のためではなく、「IoT」のために開発されているといっても過言ではありません。その競争に勝利するため、ノキアは、株式交換(アルカテル1株に対して、自社株を0.55株割当)で、時価換算での買収額は156億ユーロ(約1兆9700億円)相当になります。 ノキアのラジーブ・スーリCEOは、「経営統合により、次世代通信ネットワーク技術で主導権を握る」とこの買収劇の動機を隠そうとせず言い切っています。キャッシュアウトなく、技術を買った、典型的なR&A(Research & Aquisition)です。 ノキアは、事業鳥瞰図でいうところの「通信・ネットワーク」を主戦場に、「ビッグデータ」「IoT」市場に殴り込みです。   ■ 最後は日本の通信キャリアがIoTにかけているお話です 2015/4/18|日本経済新聞|朝刊 IoT向けシステム NTTコム、世界展開 188カ国で利用可能に 「NTTコミュニケーションズは、様々なモノをインターネットにつなぐ「インターネット・オブ・シングス(IoT)」向けシステムを世界展開する。様々なネットワークを一元管理できる技術などを活用し、世界188カ国で利用できるようにする。自動車や家電などがネットにつながるIoTシステムに世界規模で対応して、需要拡大に備える。」 具体的には、 「ソフトウェアで様々なネットワークを管理する「SDN」技術などを活用する。NTTコムが持つデータセンターや顧客のシステムなどが、様々な機器と世界規模で安全にデータをやりとりできるようになる。NTTコムが世界130拠点以上で展開するデータセンターにおいて集めた情報を処理し、各国の情報保護規制などにも柔軟に対応できる。2016年度のサービス開始を目指す。」 それでは、「SDN(Software-Defined Network)」とは何でしょうか。 (会計やマネジメントに興味がある読者でITはそれほどという方は、下図だけ眺めても分かるようにしています) クラウド環境で種々のサービスやネットワーク機器が提供されている時、場合によっては「仮想化」といって、バーチャルなデータやサービス環境がネットワーク上に構築されていたりします。従来は、ネットワークやクラウドを構成する個々の「ルータ」「ファイヤーウォール」「スイッチ」「VLAN」「ロードバランサー」などは、その種類ごとにコントローラ(制御するしくみ)が存在して、バラバラに対応する必要がありました。 クラウド環境では、一夜にして膨大な数のサーバがネットワーク上で動的に生成・消滅・移動することも多く、ネットワーク管理者がひとつひとつの機器を手作業で設定していては、現実的なネットワーク(クラウド)環境の維持はできません。 そこで、「Open Flow」等の通信規約を事前に決めておいて、そうしたネットワーク機器の設定情報を、一括でしかもソフトウェア上(モニタ画面を見るだけ)で管理できるようにしたものが「SDN」なのです。しかも、「API(Application Programming Interface)」越しでも利用できるので、全く別のアプリケーションサービスから「SDN」の機能だけを呼び出して使用することもできるのです。 NTTコミュニケーションズは、数百億の機器がネットワークに接続されて、しかもクラウド上にいろんな作業ができるソフトがそれらの情報を処理する「IoT」におけるネットワークの運用・維持業務が今以上に大変になることを睨んで、そうした作業の効率化ができる「SDN」を使用したネットワーク環境の提供自体をこれからの「ビッグデータ」「IoT」時代にニーズが高まるサービスと考え、積極的に投資しています。 NTTコミュニケーションズは、NTTグループ内での事業重複があってすっきりしないのですが、「ビッグデータ」「IoT」における事業鳥瞰図では、「演算機能」に位置する「クラウド」と組み合わせた「通信・ネットワーク」での管理サービスで差別化を図り、競争優位を築こうとしています。 通信キャリアも「ビッグデータ」「IoT」という金鉱を目の前にして、どう儲けるか、虎視眈々と狙いを「IoT & クラウド」に定めている、というお話でした。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します