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■ 時価総額を超えるキャッシュを持っている企業の株価は適正なのか?

経営管理会計トピック

世の中には不可解なことが満ち溢れています。銀行が日銀の当座預金口座にお金を預けると、マイナス金利が付くことになるのですから。大変興味深い時代にたまたま居合わせて、それはそれで楽しく経済状況を眺めています。さて、企業会計と株式市場の間にも、一見すると、不可解な状態が発生しています。なんと、株主から見た企業価値(株主価値)を時価総額と定義すると、その時価総額よりも現預金を多く手元に留保している企業が少なからずあるというのです。

2016/2/17付 |日本経済新聞|朝刊 (スクランブル)動くか「100兆円の山」 マイナス金利が迫る活用

「16日の日経平均株価は続伸した。株式市場は世界金融危機の再来さえ織り込み始めたかのような底知れぬ恐怖からひとまず解放された。そして日銀はこの日、マイナス金利の実際の適用を開始した。手元のキャッシュが減価していく新たな世界の始まりだ。マイナス金利は投資家のみならず、日本企業が長年築き上げてきた「巨大な山」を動かすよう迫っている。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

下記は、これまで企業が社内に現預金(手元流動性)をどれだけため込んでいるかを示した同記事添付のグラフになります。

20160217_企業が抱えるキャッシュは過去最高水準_日本経済新聞朝刊

なんと、あのバブル時代を超えて、その額は100兆円に迫ろうとしています。その昔は「ハゲタカ」、最近では「アクティビスト」と呼ばれる物言う株主が、この企業がため込んだキャッシュを、株主に還元せよ(簡単に言うと、株主に引き渡せ)と、声高に叫んでいるようです。

「日本ではアクティビストによる余剰資金の還元要求はこれまで、特殊な株主による「強欲な要求」として他の投資家たちの賛同を得にくかったのは確か。ましてや企業をや、だ。」

「だがマイナス金利という新たな日本の金融環境ではどうだろうか。かつてドイツの経済学者シルビオ・ゲゼルが提唱した「スタンプ貨幣」のように、持っているだけでキャッシュの価値は減価していく。「マイナス金利下では多額の余剰金融資産を保有する企業は罪深い存在になる」。みずほ証券の菊地正俊氏はいう。」

まあ、バブル期は総資産に占める構成割合が20%を超えていましたが、現在は12%そこそこです。ですが金額は過去最高となっています。

 

■ 時価総額を超えるキャッシュを持っている企業の株価は適正なのか?

「上場企業がデフレ経済下でバランスシートに積み上げたキャッシュの山は100兆円の大台が迫る。その山の岩盤を形成するキャッシュリッチ企業が変革の波にさらされつつある。マイナス金利は日本の株式市場の風景を一変させる爆発力を秘めている。」

と、経済紙の株式欄なので、株価にどう影響するか、という視点での記事内容になるのは仕方ないのですが、それより、次の添付表の数字にびっくりしました。

20160217_時価総額より大きい現金を保有する企業も_日本経済新聞朝刊

ランキング表トップの名村造船所は、時価総額より企業が保有している現預金(有利子負債分を差し引いて、ネットキャッシュと呼ばれる)の方が多いという珍しい状況が発生していることでした。株主にはいろいろな権利が会社法にて保証されておりまして、その中に、「残余財産分配請求権」というものがあります。この権利を名村造船所に現在時点で行使すると、例えば、100円でこの会社の株式を購入して、会社の解散に立ち会うと、その瞬間に154.4円が手に入るというわけ。これは、名村造船所に、船を新造したり、修繕したりするビジネスをするより、会社を清算して、残余財産を既存株主に配分した方が、株主の手に入る金が増えるということを意味します。これは経営者にとって、PBR1倍割れより厳しい現実を突き付けられたものです。

事業を継続した方が、企業価値(キャッシュに換算したもの)が小さくなる。これは経営者にとって看過できない事実に違いありません。しかし、どうしてこういう事態が起きるのでしょうか。そこには必ず経済合理性が潜んでいるはずです。

そこで、名村造船所の直近の第3四半期決算情報を用い、筆者独自の「資金状態表」を作成してみました。

20160225_名村造船所_FY2016第3四半期_資金運用状態

まあ、貸借対照表(B/S)の勘定増減比較を、必ず正数になるように、左右並べ替えただけなのですが、会社の資金移動、どこから資金を調達し、何で運用したかをパッと理解するにはあまりに簡単な手法なのです。

右側(資金の調達側)に、「現預金」があるということは、この9ヶ月で、名村造船所は、現預金を、売掛金の増加や、在庫の増加に費やした、ということを示しています。それでも、中には約30億円の借入金を返済もしているので、それ程、資金ショートにおびえる必要もなさそう。利益剰余金がプラスで、資金調達側にいるということは、損益計算書(P/L)上も、利益が出ているということ。特別利益などで益出しも一部しているのですが、実は営業利益から黒字になっています。まあ、営業利益は前年同期比で、68%減となってしまいましたが。

それでも、
手元流動性 > 時価総額

というのは、財務諸表を眺め、資金状態表を眺めているだけでは解せません。

しかし、その原因は、きちんとディスクローズされていました。
・主力の新造船事業において、資材高騰や為替レートの変動により採算悪化の可能性があること
・工事損失引当金がさらに発生する可能性があること

実は、第3四半期決算にて、工事損失引当金が期初に比べて、1,455百万円増加しており、さらにこれが膨らむ可能性があるとの注記があったのです。これが、12月末時点の現預金:817億円を減額する可能性を株式市場は感じ取ったわけです。2月25日終値ベースで、時価総額:452億円。実に、株式市場は近い将来に向けて、365億円以上の現預金が消失する可能性を見ているわけです。ちょうどこの9ヶ月の利益剰余金の増額分の10倍の減価があるとの予想です。

経営者や社内関係者にとっては納得いかないかもしれませんが、株式を利を生む金融商品とみなして購入した投資家にとって、名村造船所は単なるキャッシュマシーン。その割引現在価値が452億円で、保有現金の約半分の価値と見られている。それはひとえに、会社の中長期の収益性に対する株式市場からの信頼をどう取り付けるかにかかっていると言っても過言ではありません。

 

■ もうひとつキャッシュリッチ企業のランキングをご紹介します

日をあまりおかず、12月の第三四半期決算の各種ランキングが毎日掲載されており、その中に上記に関連するものがあったのでご紹介しておきます。

2016/2/24付 |日本経済新聞|朝刊 4~12月期決算番付(6) 実質手元資金の多い企業 自動車・機械など製造業上位

「3月期決算の上場企業(金融・電力など除く)で2015年12月末時点の実質手元資金が多い順にランキングしたところ自動車や機械、電子部品など製造業が上位に並んだ。手元資金が豊富にあると環境変化に応じた機動的な経営判断がしやすい半面、資本効率の低下にもつながる。政府からの賃上げ要請などで資金使途に注目が集まり、成長投資や株主還元に振り向ける動きが広がっている。」

「手元資金は企業が保有する現預金や短期の有価証券などの合計だ。今回は保有する手元資金から有利子負債を差し引いた「ネットキャッシュ」が多い順にランキングした。」

(下記は同記事添付の、ネットキャッシュの絶対額の大きい順のランキング表を転載)

20160224_手元資金の多い主な企業_日本経済新聞朝刊

こちらは、概ね、絶対額によるランキングだったためか、企業規模の大きい会社が並び、概ね業績も良好な会社が名を連ねています。

新聞記事では、代表的な企業の資金使途についてコメントが付されています。

● ソニー
「昨年、26年ぶりとなる公募増資や新株予約権付社債(転換社債=CB)などで約4200億円を調達した。資金は画像センサーなど電子部品の設備投資や研究開発費に使う方針」

● 信越化学工業
「約1700億円で米国にエチレンプラントを建設する計画だ。北米のシェールガスで安くエチレンを生産し、コスト競争力を高める。18年前半の稼働予定で、手元資金を成長投資に振り向ける」

● ヤフー
「無借金で手元資金は5208億円に上る。採算の良いネット広告事業で利益を積み上げてきた。豊富な資金は本業の競争力を高めるシステム投資やM&A(合併・買収)に使う。2月には宿泊予約サイト大手の一休を945億円で買収した」

● ファナック
「年間の純利益の8割を配当と自社株買いに充てる方針だ。今期は最大300億円の自社株買いを実施する」

● SMC
「年間配当を10円増やして200円にする」

いずれも、好調な企業業績の結果から積み上がった、またはCBなどで新規に資金調達した資金を、①M&Aや設備投資などの成長投資、②株主還元(現金配当+自社株買い)に使用するとのまとめになっています。

コーポレートファイナンス理論上は、企業の株主価値は、企業がこれから稼ぐキャッシュフローの割引現在価値の総和と一致するとのこと。これを信奉すれば、現在時点で企業が保有している現預金を含む換金価値のある財産の時価評価額以上になるケースも考えられます。そして、この2つの企業価値観を合成すると、下限が解散価値で、上限が割引現在価値というレンジに入っていると、適正な株価といえましょう。しかし、それは、

解散価値 < 割引現在価値

だった時のお話し。

また引き合いに出して、関係者の方々には悪いのですが、名村造船所は、

ネットキャッシュ価値(817億円) > 解散価値 > 割引現在価値(452億円)

という不等式が成立していることになります。

つまり、その株価形成には、ある程度の経済合理性があると類推されるということ。しかしながら、817億円と452億円の間に正解があるという方は、名村造船所の株式をこれから買い向かうことでしょう。それは、投資家個人の許容する「自分勝手割引価値」が人それぞれであるから。5%で許されている人もいれば、8%や20%の機関投資家もあるはず。つまり、言いたいことは、「株価は、最後は投資家自身が許容する割引価値で決まる」でした。勿体付けたにもかかわらず、シンプルな解で申し訳ありませんでした。
m(_ _)m
そんな簡単に適正株価が分かったら、筆者も今頃大金持ちですから。


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(スクランブル)動くか「100兆円の山」マイナス金利が迫る活用 -手元流動性の高いキャッシュリッチ企業の株主価値は?http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭会計で経営を読むアクティビスト,キャッシュリッチ,ネットキャッシュ,割引現在価値,名村造船所,手元流動性,時価総額,株主権,株主還元,残余財産分配請求権,解散価値■ 時価総額を超えるキャッシュを持っている企業の株価は適正なのか? 世の中には不可解なことが満ち溢れています。銀行が日銀の当座預金口座にお金を預けると、マイナス金利が付くことになるのですから。大変興味深い時代にたまたま居合わせて、それはそれで楽しく経済状況を眺めています。さて、企業会計と株式市場の間にも、一見すると、不可解な状態が発生しています。なんと、株主から見た企業価値(株主価値)を時価総額と定義すると、その時価総額よりも現預金を多く手元に留保している企業が少なからずあるというのです。 2016/2/17付 |日本経済新聞|朝刊 (スクランブル)動くか「100兆円の山」 マイナス金利が迫る活用 「16日の日経平均株価は続伸した。株式市場は世界金融危機の再来さえ織り込み始めたかのような底知れぬ恐怖からひとまず解放された。そして日銀はこの日、マイナス金利の実際の適用を開始した。手元のキャッシュが減価していく新たな世界の始まりだ。マイナス金利は投資家のみならず、日本企業が長年築き上げてきた「巨大な山」を動かすよう迫っている。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 下記は、これまで企業が社内に現預金(手元流動性)をどれだけため込んでいるかを示した同記事添付のグラフになります。 なんと、あのバブル時代を超えて、その額は100兆円に迫ろうとしています。その昔は「ハゲタカ」、最近では「アクティビスト」と呼ばれる物言う株主が、この企業がため込んだキャッシュを、株主に還元せよ(簡単に言うと、株主に引き渡せ)と、声高に叫んでいるようです。 「日本ではアクティビストによる余剰資金の還元要求はこれまで、特殊な株主による「強欲な要求」として他の投資家たちの賛同を得にくかったのは確か。ましてや企業をや、だ。」 「だがマイナス金利という新たな日本の金融環境ではどうだろうか。かつてドイツの経済学者シルビオ・ゲゼルが提唱した「スタンプ貨幣」のように、持っているだけでキャッシュの価値は減価していく。「マイナス金利下では多額の余剰金融資産を保有する企業は罪深い存在になる」。みずほ証券の菊地正俊氏はいう。」 まあ、バブル期は総資産に占める構成割合が20%を超えていましたが、現在は12%そこそこです。ですが金額は過去最高となっています。   ■ 時価総額を超えるキャッシュを持っている企業の株価は適正なのか? 「上場企業がデフレ経済下でバランスシートに積み上げたキャッシュの山は100兆円の大台が迫る。その山の岩盤を形成するキャッシュリッチ企業が変革の波にさらされつつある。マイナス金利は日本の株式市場の風景を一変させる爆発力を秘めている。」 と、経済紙の株式欄なので、株価にどう影響するか、という視点での記事内容になるのは仕方ないのですが、それより、次の添付表の数字にびっくりしました。 ランキング表トップの名村造船所は、時価総額より企業が保有している現預金(有利子負債分を差し引いて、ネットキャッシュと呼ばれる)の方が多いという珍しい状況が発生していることでした。株主にはいろいろな権利が会社法にて保証されておりまして、その中に、「残余財産分配請求権」というものがあります。この権利を名村造船所に現在時点で行使すると、例えば、100円でこの会社の株式を購入して、会社の解散に立ち会うと、その瞬間に154.4円が手に入るというわけ。これは、名村造船所に、船を新造したり、修繕したりするビジネスをするより、会社を清算して、残余財産を既存株主に配分した方が、株主の手に入る金が増えるということを意味します。これは経営者にとって、PBR1倍割れより厳しい現実を突き付けられたものです。 事業を継続した方が、企業価値(キャッシュに換算したもの)が小さくなる。これは経営者にとって看過できない事実に違いありません。しかし、どうしてこういう事態が起きるのでしょうか。そこには必ず経済合理性が潜んでいるはずです。 そこで、名村造船所の直近の第3四半期決算情報を用い、筆者独自の「資金状態表」を作成してみました。 まあ、貸借対照表(B/S)の勘定増減比較を、必ず正数になるように、左右並べ替えただけなのですが、会社の資金移動、どこから資金を調達し、何で運用したかをパッと理解するにはあまりに簡単な手法なのです。 右側(資金の調達側)に、「現預金」があるということは、この9ヶ月で、名村造船所は、現預金を、売掛金の増加や、在庫の増加に費やした、ということを示しています。それでも、中には約30億円の借入金を返済もしているので、それ程、資金ショートにおびえる必要もなさそう。利益剰余金がプラスで、資金調達側にいるということは、損益計算書(P/L)上も、利益が出ているということ。特別利益などで益出しも一部しているのですが、実は営業利益から黒字になっています。まあ、営業利益は前年同期比で、68%減となってしまいましたが。 それでも、 手元流動性 > 時価総額 というのは、財務諸表を眺め、資金状態表を眺めているだけでは解せません。 しかし、その原因は、きちんとディスクローズされていました。 ・主力の新造船事業において、資材高騰や為替レートの変動により採算悪化の可能性があること ・工事損失引当金がさらに発生する可能性があること 実は、第3四半期決算にて、工事損失引当金が期初に比べて、1,455百万円増加しており、さらにこれが膨らむ可能性があるとの注記があったのです。これが、12月末時点の現預金:817億円を減額する可能性を株式市場は感じ取ったわけです。2月25日終値ベースで、時価総額:452億円。実に、株式市場は近い将来に向けて、365億円以上の現預金が消失する可能性を見ているわけです。ちょうどこの9ヶ月の利益剰余金の増額分の10倍の減価があるとの予想です。 経営者や社内関係者にとっては納得いかないかもしれませんが、株式を利を生む金融商品とみなして購入した投資家にとって、名村造船所は単なるキャッシュマシーン。その割引現在価値が452億円で、保有現金の約半分の価値と見られている。それはひとえに、会社の中長期の収益性に対する株式市場からの信頼をどう取り付けるかにかかっていると言っても過言ではありません。   ■ もうひとつキャッシュリッチ企業のランキングをご紹介します 日をあまりおかず、12月の第三四半期決算の各種ランキングが毎日掲載されており、その中に上記に関連するものがあったのでご紹介しておきます。 2016/2/24付 |日本経済新聞|朝刊 4~12月期決算番付(6) 実質手元資金の多い企業 自動車・機械など製造業上位 「3月期決算の上場企業(金融・電力など除く)で2015年12月末時点の実質手元資金が多い順にランキングしたところ自動車や機械、電子部品など製造業が上位に並んだ。手元資金が豊富にあると環境変化に応じた機動的な経営判断がしやすい半面、資本効率の低下にもつながる。政府からの賃上げ要請などで資金使途に注目が集まり、成長投資や株主還元に振り向ける動きが広がっている。」 「手元資金は企業が保有する現預金や短期の有価証券などの合計だ。今回は保有する手元資金から有利子負債を差し引いた「ネットキャッシュ」が多い順にランキングした。」 (下記は同記事添付の、ネットキャッシュの絶対額の大きい順のランキング表を転載) こちらは、概ね、絶対額によるランキングだったためか、企業規模の大きい会社が並び、概ね業績も良好な会社が名を連ねています。 新聞記事では、代表的な企業の資金使途についてコメントが付されています。 ● ソニー 「昨年、26年ぶりとなる公募増資や新株予約権付社債(転換社債=CB)などで約4200億円を調達した。資金は画像センサーなど電子部品の設備投資や研究開発費に使う方針」 ● 信越化学工業 「約1700億円で米国にエチレンプラントを建設する計画だ。北米のシェールガスで安くエチレンを生産し、コスト競争力を高める。18年前半の稼働予定で、手元資金を成長投資に振り向ける」 ● ヤフー 「無借金で手元資金は5208億円に上る。採算の良いネット広告事業で利益を積み上げてきた。豊富な資金は本業の競争力を高めるシステム投資やM&A(合併・買収)に使う。2月には宿泊予約サイト大手の一休を945億円で買収した」 ● ファナック 「年間の純利益の8割を配当と自社株買いに充てる方針だ。今期は最大300億円の自社株買いを実施する」 ● SMC 「年間配当を10円増やして200円にする」 いずれも、好調な企業業績の結果から積み上がった、またはCBなどで新規に資金調達した資金を、①M&Aや設備投資などの成長投資、②株主還元(現金配当+自社株買い)に使用するとのまとめになっています。 コーポレートファイナンス理論上は、企業の株主価値は、企業がこれから稼ぐキャッシュフローの割引現在価値の総和と一致するとのこと。これを信奉すれば、現在時点で企業が保有している現預金を含む換金価値のある財産の時価評価額以上になるケースも考えられます。そして、この2つの企業価値観を合成すると、下限が解散価値で、上限が割引現在価値というレンジに入っていると、適正な株価といえましょう。しかし、それは、 解散価値 < 割引現在価値 だった時のお話し。 また引き合いに出して、関係者の方々には悪いのですが、名村造船所は、 ネットキャッシュ価値(817億円) > 解散価値 > 割引現在価値(452億円) という不等式が成立していることになります。 つまり、その株価形成には、ある程度の経済合理性があると類推されるということ。しかしながら、817億円と452億円の間に正解があるという方は、名村造船所の株式をこれから買い向かうことでしょう。それは、投資家個人の許容する「自分勝手割引価値」が人それぞれであるから。5%で許されている人もいれば、8%や20%の機関投資家もあるはず。つまり、言いたいことは、「株価は、最後は投資家自身が許容する割引価値で決まる」でした。勿体付けたにもかかわらず、シンプルな解で申し訳ありませんでした。 m(_ _)m そんな簡単に適正株価が分かったら、筆者も今頃大金持ちですから。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します