原価計算基準(12)原価の諸概念③ 標準原価の一番簡単な求め方

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■ 標準原価と原価標準の違いをおさらいしてから、条文を見ていく

原価計算基準にて様々な原価概念を3つの対立軸でまとめたのが、今回からご紹介する「基準四 原価の諸概念」です。基準四では、

① 製品原価に使う消費量と価格の算定基準
実際原価 と 標準原価

② 財務諸表上の収益との対応関係
製品原価 と 期間原価

③ 集計される原価の範囲の違い
全部原価 と 部分原価

の3軸、6種類の原価概念を順に説明しています。さあ、今回は標準原価の求め方から見ていきます。

では詳細な説明に入る前に、「基準一」から「基準六」までの全体像はこちら。

原価計算(入門編)原価計算基準の一般的基準の構成

前回のおさらいですが、原価計算基準では、「標準原価」という用語は、製品単位当たりの標準原価、すなわち「原価標準」と厳密には用語を使い分けていないことを説明しました。

標準原価 = (標準価格 × 標準消費量) × 実際生産量
= 製品単位当たり標準原価 × 実際生産量

上式の左辺の「標準原価」と右辺の一部にある「製品単位当たり標準原価」は、共に「標準原価」という言葉が用いられています。右辺の方は、「原価標準」と呼び分ける方が混乱が少なくて済みます。

これから、原価計算基準における標準原価についての条項を読んでいきますが、当面は「原価標準」をどうやって求めるか、「原価標準」の求め方で標準原価にもいくつかの種類があります、ということを見ていきたいと思います。

 

■ 標準原価は、価格、操業度、能率で計算していきます

まずは、関連する条項をご覧ください。
(少々長いので、後から細切れで解説していきます)

2 標準原価とは、財貨の消費量を科学的、統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し、かつ、予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。この場合、能率の尺度としての標準とは、その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。

標準原価計算制度において用いられる標準原価は、現実的標準原価又は正常原価である。

現実的標準原価とは、良好な能率のもとにおいて、その達成が期待されうる標準原価をいい、通常生ずると認められる程度の減損、仕損、遊休時間等の余裕率を含む原価であり、かつ、比較的短期における予定操業度および予定価格を前提として決定され、これら諸条件の変化に伴い、しばしば改訂される標準原価である。現実的標準原価は、原価管理に最も適するのみでなく、たな卸資産価額の算定および予算の編成のためにも用いられる。

正常原価とは、経営における異常な状態を排除し、経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し、これに将来にすう勢を加味した正常能率、正常操業度および正常価格に基づいて決定される原価をいう。正常原価は、経済状態の安定している場合に、たな卸資産価額の算定のために最も適するのみでなく、原価管理のための標準としても用いられる。

標準原価として、実務上予定原価が意味される場合がある。予定原価とは、将来における財貨の予定消費量と予定価格とをもって計算した原価をいう。予定原価は、予算の編成に適するのみでなく、原価管理およびたな卸資産価額の算定のためにも用いられる。

原価管理のために時として理想標準原価が用いられることがあるが、かかる標準原価は、この基準にいう制度としての標準原価ではない。理想標準原価とは、技術的に達成可能な最大操業度のもとにおいて、最高能率を表わす最低の原価をいい、財貨の消費における減損、仕損、遊休時間等に対する余裕率を許容しない理想的水準における標準原価である。

上記で、標準原価制度で用いられる標準原価の種類には、説明順に、
① 現実的標準原価
② 正常原価
③ 予定原価
④ 理想標準原価

の4種類があります。この分類基準は、

① 能率
② 操業度
③ 価格
④ 使用目的

となっており、①から③が、標準原価を求める計算要素の区別となっています。まずは、この計算要素を順に確認していきます。

① 能率
原価計算要素となる、例えば、原材料(材料費)、労働力(労務費)、設備(製造間接費)といった経営リソースを製造プロセスに投入した分と、産出された製品の比率のことを意味します。より少ない経営資源の投入から、より多い製品を産出できると、それは「能率」がよい、と認識されます。

② 操業度
生産活動に供される生産設備の稼働時間や、そこで働く人の労働時間など、生産能力のある施設が例えば1年間にどれくらいの時間、生産活動に投下できる時間を有しているかを計算したものです。設備投資する際に机上計算で出される理想的なものもあれば、実際に、材料不足や停電、機械の故障などの影響を加味した、実際に記録された操業時間のこともあります。

③ 価格
材料費ならば購入価格、労務費ならば賃金、製造間接費ならば、減価償却費など、取得原価を月割り計算した価格が該当します。実際に残業代や欠勤などを考慮する前の、平均的な計画・予定された支払賃金をここでは採用することにします。

 

■ 原価標準は、価格、操業度、能率を使って実際に求めてみる!

標準原価は、原価標準に実際生産量をかけたものですから、まずは、前章の計算要素は、標準原価の前に、原価標準を求めるために使用されます。

原価計算(入門編)標準原価の求め方

例をシンプルにするために、いくつかの仮定を置きます。まず、原価要素は、工場で働く工員へ支払われる賃金だけとします。年収:500万円の工員が一人で働くものとします。次に、雇われた工員が働く工場は、1ヶ月が20日、1日で8時間だけ稼働することとして、

12ヵ月×20日×8時間 = 1920時間/年

多少は、残業時間により稼働調整が発生するとみて、これを計算しやすく端数分、80時間/年だけとします。

1920時間/年 + 80時間/年 = 2000時間/年

これが、この工場の年間操業度と設定します。

では、この工員さんの時間当たりの労賃はいくらになるでしょうか。これが標準価格ということになります。

500万円/年 ÷ 2000時間/年 = 2500円/時間

ここに、この工場で生産される製品にかかる標準的な加工時間が、科学的・統計的手法で調べ上げられていて、10時間/個であるとします。

この製品の原価標準(仮)は、次のように計算されます。

2500円/時間 × 10時間/個 = 25000円/個

ここで「能率」が登場します。あくまで、上記の原価標準は、机上計算で求められたものです。生産ラインでものづくりをしていれば、製作・加工途中で失敗作もでてしまって、売り物にならずに、時間と材料費を無駄にすることもあるかもしれません。または、工員さんが製品を作ろうとしても、材料が手元に届かずに、待っている無駄な時間がたまに発生したりします。こうした、経営資源のインプットと製品というアウトプットの関係から、普通に工場を運営していても不可避的にかつ継続的に発生する多少の無駄も「標準」として、事前に計算する原価として許容しておこうという考え方があります。

上記の例では、工場の正常運転と認めたうえで統計的に計測された生産性(能率)が机上計算の80%と仮にします。

机上計算の10時間/個 ÷ 80% = 12.5時間/個

さすれば、こうした正常な範囲で把握した不能率を加味した原価標準は、

2500円/時間 × 12.5時間/個 = 31250円/個

であると求めることができました。

こうやって、①能率、②操業度、③価格 を考慮して、「標準原価」(厳密には「原価標準」)を求めることができました。

さて、次回は、こうして求められた「標準原価」が、① 能率、② 操業度、③ 価格、そして、④ 使用目的 の組み合わせにより、いくつかの種類分けがなされているので、それぞれの特徴と使い方についての考察となります。

⇒「原価計算 超入門(2)実際原価と標準原価
⇒「原価計算基準(1)原価計算の一般基準の体系を整理 - ざっと原価計算基準の世界観を概括してみる!
⇒「原価計算基準(10)原価の諸概念 実際原価とは
⇒「原価計算基準(11)原価の諸概念② 標準原価と原価標準の違いを本当に分かっていますか?
⇒「原価計算の歴史 - 経営課題の変遷と原価計算技法・目的の対応について
⇒「原価計算基準」(全文参照できます)

原価計算(入門編)原価計算基準(12)原価の諸概念③ 標準原価の一番簡単な求め方

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