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■ 原価の種類にはいろいろある!

管理会計(基礎編)

原価計算の超入門その2は、原価の種類を説明します。標題にもあるように、大別して、「実際原価」と「標準原価」という2分法で原価を区分する見方があります。

ここで、読者の方々をいたずらに混乱させるつもりは毛頭ないのですが、「実際原価」と「標準原価」以外にもよく使われる「●●原価」という言葉を書き出してみます。

見積原価、予定原価、歴史的原価、目標原価、直接原価、部分原価、全部原価、機会原価、製品原価、期間原価、差額原価、付加原価、現金支出原価、取替原価、埋没原価、回避可能原価、事前原価、事後原価、過去原価、未来原価、、、

このように、「●●原価」という用語が多数存在するのは、「原価」を様々な視点で、複数パターンに分類する考え方が、その根底に存在するからです。今回は、まず皆さんに知っておいてほしい、「実際原価」と「標準原価」といった対立軸での原価の見方を説明したいと思います。原価計算の歴史と原価計算の目的を理解するのに、まず知るべき最小必要限度の原価区分だからです。

高田直芳の実践会計講座 原価計算

■ 本当は、「歴史的原価」と「予定原価」なんですけどね!

まず、下記チャートをご覧ください。この世界観では、原価は大きく2つのグループに分類されます。左は、「歴史的原価」=「会社がその製品を作るのにかかったコストをすべて集めた原価」、右は、「予定原価」=「会社がその製品を作るのに、これくらいかかるだろうなと推測したコストを集計した原価」です。「予定原価」の方は、実務でもよく耳にしますし、「原価計算基準」にも記載のあるある程度有名な用語ですが、「歴史的原価」というのは、かなり突っ込んだ教科書にしか記載の無い用語です。

原価計算(入門編)_原価の種類

「歴史的原価」の本質的意義は、「実際」に、会社が対象製品を作ろうとして、お金を支出した、その貨幣価値で客観的に、「いくら」と金額を測定できる原価のことを言います。ここでいう「支出」は、「買掛金」「支払手形」など、信用取引で入手したものも含む(これを『発生主義』とか、『取得原価主義』という)ものとお考えください。左記の小難しい『●●主義』なる用語は、別シリーズで解説します。「実際にかかったコスト」だとしても、そのすべてを「実際原価」と呼べないところが原価計算の世界の最初のハードルでしょう。そして、ここを説明しない入門書が世に多すぎます。「実際にお金を払って、発生したコスト」は、ひとまずアカデミックには、「歴史的原価」と呼んでおきます。

原価計算

■ 最初は、価格決定(売価決定)のために原価計算が誕生しました!

ここから、原価計算の目的の変遷に従って、新しい原価概念が次々と誕生していった経緯をもって、最初の原価分類を解説していきます。まず、近代工業が勃興し、大規模工場で大量に同じ製品を作り始めたとき、一つ一つの製品をいくらで販売すると、どれくらい儲かるか、工場経営者は知りたいと思うようになりました。それまでは、実際に作ってみて、かかったコストが分かってから、利益をオンして販売していたので、作る前に、または作っている最中に、製品の原価を知る必要はなかったのです。

原価計算(入門編)_原価計算と利益計算の基本式

上記チャートにあるように、原価は、「単価×数量」に因数分解されます。一体いくらのコストで製品を作ることができるか、「単価」と「数量」の両面でコスト分析をすることになりました。その後、会社経営の予算や経営者の目標設定から、利益計画や利益見通しを立てる必要が生じるとします。そこで、利益目標を達成するには、コストを見積もると、予定原価がいくらぐらいになりそうだから、これくらいの売価(販売単価)で製品を売らないと、採算が合わない、とか利益目標を達成できない、という「価格決定」のために、まず、その都度見込みをはじき出す「見積原価」が誕生しました。

稲盛和夫の実学―経営と会計

■ 次に、財務諸表を作成するために原価計算が必要になりました!

外部の利害関係者に、その会社の経営の透明性を証明し、経営を任された経営者がズルをしていないか、きちんと財務諸表を公表することが一般的になってきました。そのために、会社から出ていったお金でどれだけの製品を作って、その内、今期は何個販売されたかを、きちんと、継続的に、会計帳簿に記録していく必要があります。さらに、その当時の製造業のものづくりの特徴にも留意しなければなりません。「少品種大量生産」=極めて同種のものを、長い期間にわたって作り続ける、ものです。そこでは、大量の同種の製品を、安定した品質で、安定した(あまり変動しない)コストで作り続ける能力が、工場に求められました。

原価計算(入門編)_実際原価と異常原価の違い

上記チャートをご覧ください。この時代の工場というのは、常に、同じ条件で製品を作り続けた場合、当たり前にかかるコストは結構あらかじめ予測がつく、と考えられ、そういう普通なら実際に発生するコストは大体このレンジ(幅)に収まる、という原価勘が働き、これをもって「正常原価」と呼ぶことにしました。当然、「実際に」会社から出ていったお金をベースに原価を計算するのですが、その支出が通常の生産条件からハズれた場合、それは「異常」な事態とみなし、「異常」な事態の元で発生したコストは「異常原価」として、通常の財務諸表上では、製品原価(または売上原価)を構成する要素から外すことにしました。

例えば、新たに生産ラインに配属された新人さんが、熟練工の3倍以上の100時間かかって製品を作り、その時使用した材料が、市況品で相場が高騰し、通常の10倍の値段で仕入れるしかなかった場合、原価を構成する「単価」も「数量」も、正常な状態ではない、ということができます。その上、新人さんは、製品づくりの際に、不手際で失敗作をひとつ出してしまい、正常な状態なら6個作り出さねばならないところ、5個しか完成品を仕上げることができなかった、ということも起こり得ます。

こうした異常な条件で、「正常原価」からハズれた「異常原価」の発生分は、「個当たりの製品原価」「原価単価」を計算する中から除外することにしたのです。だから、原価計算の世界の常識や、「原価計算基準」でいうところの「実際原価」とは、「異常原価」を含まない「正常原価」というのが本質なのです。実際にかかった「歴史的原価」と「正常原価」の差額の「異常原価」は、従来の日本の会計基準では、「製品原価」に含めずに、「営業外費用」「特別損失」などといった項目で、損益計算書に広義のコストとして計上する必要があります。

それゆえ、財務諸表には、必ず「歴史的原価」が計上されるということができます。ただし、その内の「正常原価」のみが原価計算の常識で言う「実際原価」という名で、主に「製品原価」として表記され、「異常原価」は含まない概念として定義されたのです。ですので、会計・原価の分野に特化していない一般的なビジネスパーソンが会計屋とお話する際、「実際原価」という用語を、「実際にかかったコスト」の意味で使っているのか、「正常なコスト」の意味で使っているのか、きちんと発言者の意図を確認する必要があります。
(筆者がこの点を強調するのは、実体験から、原価計算システムの設計をする場面で、生産現場担当者、経理担当者、SEの間で、「実際原価」なる用語定義が、微妙にズレていることによく出くわすからです)

図解&設例 原価計算の本質と実務がわかる本

■ 最後に、生産現場の目標管理のための指標となる原価情報が必要になりました!

ピーター・ドラッカー氏を持ち出すまでもなく、その現場でも「目標管理」というものは大事なものです。当時は、大量生産される製品のひとつひとつの原価(製品個当たりの原価=単価)は、工場内で「実際に発生したコスト」をすべて集計してきて、出来上がった製品個数で割り算して計算していました。そこで、「実際に発生したコスト」というのが、毎日、毎月、毎半期、毎年、工場によって期間の長短こそあれ、株価のように上下に大きく変動していては、この単位当たりコストが暴れてしまい、現場での「原価管理」「生産管理」に大きな支障を与えてしまうことが多々ありました。

その生産ラインが理想とする、もしくは当面の目標に設定すべき、原価とは何か? 日々の生産活動の目標にするべく、大量生産向けの生産ラインが安定的に(良好な品質のものを、いつもと同じコストで)、完成品を作り出すために、基準を作りたい。そういう気持ちを受けて、

① 過去の生産現場の生産実績を統計的に分析
② 設計図や生産技術レベル、生産設備能力から科学的に分析

された「目標原価」を設定することを目指しました。これを広く「標準原価」と呼び習わすことにしたのです。「見積原価」はその都度作る・使うもの。「標準原価」は、必要に応じて改訂は行いますが、継続的に同一のものを使い続けることが原則となる所が違います。だって、目標値がころころ変わると目標管理できないでしょ!

「標準原価」をつかった現場での目標管理のやり方は、下記チャートをご参照ください。

原価計算(入門編)_標準原価による目標管理

生産現場に、投入する経営資源の「単価」と「数量」、集計された「総原価」金額、生産量、単位当たりの製品原価(単価)の、それぞれを、「標準」=「目標」と「実際」がどれだけ乖離しているのかを明らかにし、それぞれの要素で、なぜその乖離が発生しているのかを解明し、次の生産機会(来期とか次原価計算期間)にその「カイゼン」を生かす。そうした、いわゆるPDCAサイクルを回すための道具として、「標準原価」は使用されるようになりました。

ただし、最近になって、「標準原価」が「カイゼン」や「目標管理」の道具として、効用が下がってきたことは否めません。「標準原価」がその効果を発揮したのは、同じ製品を長い期間にわたって作り続けるとき、そして大量的に安定的に生産物量が変化しないという条件がそろっているとき、毎期毎期の目標値として、漸次改訂されながらも、活用できるとき。現代の、製品ライフサイクルが非常に短くなった、生産条件が不安定(すぐに海外移管がなされたり、生産数量が大きく変動したりなど)な場合は、その効果も半減します。

初めてでもよくわかる 原価計算

■ まとめ - 原価計算の入り口の説明方法について

どうでしたか? ただ、用語の定義として「実際原価」や「標準原価」を解説した文章をいくら読んでいても、なぜそうした原価概念が生まれたのか、そしてどうやって使うのか、その原価概念が持っている目的は何か? こうしたことを平易な文章でまず理解することが、深淵なる原価計算の世界の入り口でやるべきことだと筆者は思うのですがね。

いきなり、かの原価計算の世界で有名な、

「予定単価でも実際単価でも、消費数量が実際量だったら、そこで計算された原価は実際原価である」

という一文に出会っても、「どうして予定単価を使っているのに、実際原価と呼べるの?」という疑問を払しょくすることはできません。でも、ここまでお読み頂いた読者の方なら、もうすでに腑に落ちていますよね。

ここでいう「実際原価」というのは、「正常原価」のこと。そしてその「正常性」を担保しているのが、「予定単価」である、というカラクリなのです。そして、せっかく「正常性」を担保している「予定単価」を使って「実際原価」を計算しても、「予定単価」と「実際単価」の差額は、「発生主義」「取得原価主義」という簿記の考え方により、財務諸表に掲載されるのです。その掲載方法にいくつもの論点があるのですがね。それはまた後日!

原価計算(入門編)_原価計算 超入門(2)実際原価と標準原価




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原価計算 超入門(2)実際原価と標準原価http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/03/9313ed6460f7d58b8e62d9b27fdfc19d-e1428166718340.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/03/9313ed6460f7d58b8e62d9b27fdfc19d-150x150.jpg小林 友昭原価計算(入門編)PDCA,予定原価,原価計算,実際原価,標準原価,正常原価,歴史的原価,異常原価,目標管理,見積原価■ 原価の種類にはいろいろある! 原価計算の超入門その2は、原価の種類を説明します。標題にもあるように、大別して、「実際原価」と「標準原価」という2分法で原価を区分する見方があります。 ここで、読者の方々をいたずらに混乱させるつもりは毛頭ないのですが、「実際原価」と「標準原価」以外にもよく使われる「●●原価」という言葉を書き出してみます。 見積原価、予定原価、歴史的原価、目標原価、直接原価、部分原価、全部原価、機会原価、製品原価、期間原価、差額原価、付加原価、現金支出原価、取替原価、埋没原価、回避可能原価、事前原価、事後原価、過去原価、未来原価、、、 このように、「●●原価」という用語が多数存在するのは、「原価」を様々な視点で、複数パターンに分類する考え方が、その根底に存在するからです。今回は、まず皆さんに知っておいてほしい、「実際原価」と「標準原価」といった対立軸での原価の見方を説明したいと思います。原価計算の歴史と原価計算の目的を理解するのに、まず知るべき最小必要限度の原価区分だからです。 高田直芳の実践会計講座 原価計算 ■ 本当は、「歴史的原価」と「予定原価」なんですけどね! まず、下記チャートをご覧ください。この世界観では、原価は大きく2つのグループに分類されます。左は、「歴史的原価」=「会社がその製品を作るのにかかったコストをすべて集めた原価」、右は、「予定原価」=「会社がその製品を作るのに、これくらいかかるだろうなと推測したコストを集計した原価」です。「予定原価」の方は、実務でもよく耳にしますし、「原価計算基準」にも記載のあるある程度有名な用語ですが、「歴史的原価」というのは、かなり突っ込んだ教科書にしか記載の無い用語です。 「歴史的原価」の本質的意義は、「実際」に、会社が対象製品を作ろうとして、お金を支出した、その貨幣価値で客観的に、「いくら」と金額を測定できる原価のことを言います。ここでいう「支出」は、「買掛金」「支払手形」など、信用取引で入手したものも含む(これを『発生主義』とか、『取得原価主義』という)ものとお考えください。左記の小難しい『●●主義』なる用語は、別シリーズで解説します。「実際にかかったコスト」だとしても、そのすべてを「実際原価」と呼べないところが原価計算の世界の最初のハードルでしょう。そして、ここを説明しない入門書が世に多すぎます。「実際にお金を払って、発生したコスト」は、ひとまずアカデミックには、「歴史的原価」と呼んでおきます。 原価計算 ■ 最初は、価格決定(売価決定)のために原価計算が誕生しました! ここから、原価計算の目的の変遷に従って、新しい原価概念が次々と誕生していった経緯をもって、最初の原価分類を解説していきます。まず、近代工業が勃興し、大規模工場で大量に同じ製品を作り始めたとき、一つ一つの製品をいくらで販売すると、どれくらい儲かるか、工場経営者は知りたいと思うようになりました。それまでは、実際に作ってみて、かかったコストが分かってから、利益をオンして販売していたので、作る前に、または作っている最中に、製品の原価を知る必要はなかったのです。 上記チャートにあるように、原価は、「単価×数量」に因数分解されます。一体いくらのコストで製品を作ることができるか、「単価」と「数量」の両面でコスト分析をすることになりました。その後、会社経営の予算や経営者の目標設定から、利益計画や利益見通しを立てる必要が生じるとします。そこで、利益目標を達成するには、コストを見積もると、予定原価がいくらぐらいになりそうだから、これくらいの売価(販売単価)で製品を売らないと、採算が合わない、とか利益目標を達成できない、という「価格決定」のために、まず、その都度見込みをはじき出す「見積原価」が誕生しました。 稲盛和夫の実学―経営と会計 ■ 次に、財務諸表を作成するために原価計算が必要になりました! 外部の利害関係者に、その会社の経営の透明性を証明し、経営を任された経営者がズルをしていないか、きちんと財務諸表を公表することが一般的になってきました。そのために、会社から出ていったお金でどれだけの製品を作って、その内、今期は何個販売されたかを、きちんと、継続的に、会計帳簿に記録していく必要があります。さらに、その当時の製造業のものづくりの特徴にも留意しなければなりません。「少品種大量生産」=極めて同種のものを、長い期間にわたって作り続ける、ものです。そこでは、大量の同種の製品を、安定した品質で、安定した(あまり変動しない)コストで作り続ける能力が、工場に求められました。 上記チャートをご覧ください。この時代の工場というのは、常に、同じ条件で製品を作り続けた場合、当たり前にかかるコストは結構あらかじめ予測がつく、と考えられ、そういう普通なら実際に発生するコストは大体このレンジ(幅)に収まる、という原価勘が働き、これをもって「正常原価」と呼ぶことにしました。当然、「実際に」会社から出ていったお金をベースに原価を計算するのですが、その支出が通常の生産条件からハズれた場合、それは「異常」な事態とみなし、「異常」な事態の元で発生したコストは「異常原価」として、通常の財務諸表上では、製品原価(または売上原価)を構成する要素から外すことにしました。 例えば、新たに生産ラインに配属された新人さんが、熟練工の3倍以上の100時間かかって製品を作り、その時使用した材料が、市況品で相場が高騰し、通常の10倍の値段で仕入れるしかなかった場合、原価を構成する「単価」も「数量」も、正常な状態ではない、ということができます。その上、新人さんは、製品づくりの際に、不手際で失敗作をひとつ出してしまい、正常な状態なら6個作り出さねばならないところ、5個しか完成品を仕上げることができなかった、ということも起こり得ます。 こうした異常な条件で、「正常原価」からハズれた「異常原価」の発生分は、「個当たりの製品原価」「原価単価」を計算する中から除外することにしたのです。だから、原価計算の世界の常識や、「原価計算基準」でいうところの「実際原価」とは、「異常原価」を含まない「正常原価」というのが本質なのです。実際にかかった「歴史的原価」と「正常原価」の差額の「異常原価」は、従来の日本の会計基準では、「製品原価」に含めずに、「営業外費用」「特別損失」などといった項目で、損益計算書に広義のコストとして計上する必要があります。 それゆえ、財務諸表には、必ず「歴史的原価」が計上されるということができます。ただし、その内の「正常原価」のみが原価計算の常識で言う「実際原価」という名で、主に「製品原価」として表記され、「異常原価」は含まない概念として定義されたのです。ですので、会計・原価の分野に特化していない一般的なビジネスパーソンが会計屋とお話する際、「実際原価」という用語を、「実際にかかったコスト」の意味で使っているのか、「正常なコスト」の意味で使っているのか、きちんと発言者の意図を確認する必要があります。 (筆者がこの点を強調するのは、実体験から、原価計算システムの設計をする場面で、生産現場担当者、経理担当者、SEの間で、「実際原価」なる用語定義が、微妙にズレていることによく出くわすからです) 図解&設例 原価計算の本質と実務がわかる本 ■ 最後に、生産現場の目標管理のための指標となる原価情報が必要になりました! ピーター・ドラッカー氏を持ち出すまでもなく、その現場でも「目標管理」というものは大事なものです。当時は、大量生産される製品のひとつひとつの原価(製品個当たりの原価=単価)は、工場内で「実際に発生したコスト」をすべて集計してきて、出来上がった製品個数で割り算して計算していました。そこで、「実際に発生したコスト」というのが、毎日、毎月、毎半期、毎年、工場によって期間の長短こそあれ、株価のように上下に大きく変動していては、この単位当たりコストが暴れてしまい、現場での「原価管理」「生産管理」に大きな支障を与えてしまうことが多々ありました。 その生産ラインが理想とする、もしくは当面の目標に設定すべき、原価とは何か? 日々の生産活動の目標にするべく、大量生産向けの生産ラインが安定的に(良好な品質のものを、いつもと同じコストで)、完成品を作り出すために、基準を作りたい。そういう気持ちを受けて、 ① 過去の生産現場の生産実績を統計的に分析 ② 設計図や生産技術レベル、生産設備能力から科学的に分析 された「目標原価」を設定することを目指しました。これを広く「標準原価」と呼び習わすことにしたのです。「見積原価」はその都度作る・使うもの。「標準原価」は、必要に応じて改訂は行いますが、継続的に同一のものを使い続けることが原則となる所が違います。だって、目標値がころころ変わると目標管理できないでしょ! 「標準原価」をつかった現場での目標管理のやり方は、下記チャートをご参照ください。 生産現場に、投入する経営資源の「単価」と「数量」、集計された「総原価」金額、生産量、単位当たりの製品原価(単価)の、それぞれを、「標準」=「目標」と「実際」がどれだけ乖離しているのかを明らかにし、それぞれの要素で、なぜその乖離が発生しているのかを解明し、次の生産機会(来期とか次原価計算期間)にその「カイゼン」を生かす。そうした、いわゆるPDCAサイクルを回すための道具として、「標準原価」は使用されるようになりました。 ただし、最近になって、「標準原価」が「カイゼン」や「目標管理」の道具として、効用が下がってきたことは否めません。「標準原価」がその効果を発揮したのは、同じ製品を長い期間にわたって作り続けるとき、そして大量的に安定的に生産物量が変化しないという条件がそろっているとき、毎期毎期の目標値として、漸次改訂されながらも、活用できるとき。現代の、製品ライフサイクルが非常に短くなった、生産条件が不安定(すぐに海外移管がなされたり、生産数量が大きく変動したりなど)な場合は、その効果も半減します。 初めてでもよくわかる 原価計算 ■ まとめ - 原価計算の入り口の説明方法について どうでしたか? ただ、用語の定義として「実際原価」や「標準原価」を解説した文章をいくら読んでいても、なぜそうした原価概念が生まれたのか、そしてどうやって使うのか、その原価概念が持っている目的は何か? こうしたことを平易な文章でまず理解することが、深淵なる原価計算の世界の入り口でやるべきことだと筆者は思うのですがね。 いきなり、かの原価計算の世界で有名な、 「予定単価でも実際単価でも、消費数量が実際量だったら、そこで計算された原価は実際原価である」 という一文に出会っても、「どうして予定単価を使っているのに、実際原価と呼べるの?」という疑問を払しょくすることはできません。でも、ここまでお読み頂いた読者の方なら、もうすでに腑に落ちていますよね。 ここでいう「実際原価」というのは、「正常原価」のこと。そしてその「正常性」を担保しているのが、「予定単価」である、というカラクリなのです。そして、せっかく「正常性」を担保している「予定単価」を使って「実際原価」を計算しても、「予定単価」と「実際単価」の差額は、「発生主義」「取得原価主義」という簿記の考え方により、財務諸表に掲載されるのです。その掲載方法にいくつもの論点があるのですがね。それはまた後日!現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します