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■ 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が株式の直接投資を始める!

経営管理会計トピック

GPIFが自身の判断で直接株式の売買・保有ができるように法改正を行おうという動きがあります。アベノミクスによる株価維持・向上策の一環として、次の矢を放とうとしています。

2016/1/27付 |日本経済新聞|朝刊 「企業支配」の懸念焦点 公的年金の株直接投資解禁 銀行並み上限5%案

「厚生労働省が検討している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式の自主運用の解禁を巡る調整が難航している。直接株式を持てば株主総会で議決権を行使し、「企業支配につながる」と産業界が警戒しているためだ。企業経営への影響を抑えるため、厚労省はGPIFが直接保有できる株式を1社につき最大5%に制限する案の検討に入った。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

ということで、GPIFの紹介が同日記事にありましたので、おさらいの意味も込めてまずこれを下記に転載してみます。

「▼GPIF 公的年金の積立金を運用する独立行政法人。英語名のガバメント・ペンション・インベストメント・ファンドの頭文字からGPIFと呼ばれる。特殊法人の年金福祉事業団から運用を引き継いだ年金資金運用基金を2006年4月に改組して生まれた。14年10月に国内外の株式比率を資産の半分に高める運用改革を決めた。」

GPIF 世界最大の機関投資家

成り立ちは分かったけど、我々の年金をどういうスキームで運用しているのか。いまいちピンときませんね。こういうときはGPIFのホームページに突撃です。

● 年金積立金管理運用独立行政法人 GPIFについて知る
http://www.gpif.go.jp/gpif/index.html

まずは、「年金積立金の管理・運用のしくみ」から見てみましょう。

20160127_年金積立金の管理・運用のしくみ_GPIF

このチャート下部の「運用受託機関」と「金融市場」の部分にご着目下さい。GPIFは株式については、信託銀行や投資顧問会社を通じて間接的に株式を売買し、しかも投信など、金融商品としても間接的な所有を心掛けていました。これを個別株式が直接売買できるようにする、という改革案なのです。

ちなみに、GPIFは、2014年10月末に、基本ポートフォリオを見直し、国内株式を12%から25%に引き上げると発表しています。

 

2014/11/31付 |日本経済新聞|朝刊 GPIF、運用見直しを決定 国内株25%に引き上げ

「約130兆円の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は31日、運用の基本ポートフォリオ(資産構成割合)を見直し、国内株式を現行の12%から25%に引き上げると発表した。許容範囲とする上下の変動率は6%から9%に拡大する。国内債券に偏った運用を改め、年金給付の原資を増やす。」

「◎GPIFの資産構成割合

今回発表した割合 6月末時点の比率   これまでの割合

国内債券      35%     51.91%        60%

国内株式      25%     16.79%        12%

外国株式      25%     15.54%        12%

外国債券      15%     10.76%        11%」

じゃあこれを、GPIFのホームページで確認してみましょう。

「基本ポートフォリオ」

20160127_基本ポートフォリオ_GPIF

■ 日経新聞がどうしてこれを問題視しているのか、論点を整理します!

この記事を含めて、2週間近く、日経新聞がコラムを含めて複数回この件を取り上げているので、これらを下記に論点を整理していきます。

2016/1/27(朝刊つづき)

<メリット>
・自主運用で委託先金融機関に払う手数料など年10億円を削減できると試算

<デメリット>
・GPIFが議決権を行使すれば「国家の企業支配につながる」懸念がある

(同記事添付の比較表を転載)

20160127_GPIFの自主運用で議決権行使が問題に_日本経済新聞朝刊

これについては銀行並みの保有制限で緩和策その1を考えており、
「銀行については産業支配を避けるため、保有できる一般事業会社の株式を原則5%までに銀行法で抑えている。懸念を踏まえ厚労省はこの基準を参考にGPIFが保有する株式比率を制限する考え」

現状保有している株式委議決権行使の現状は、
「GPIFは15年3月時点で約32兆円の国内株を持ち、国内市場の7.6%を占める投資家だ。運用委託先の金融機関を通じて株式を取得している現在は議決権の行使を委託先に委ねている。株式を直接保有すれば議決権もGPIFが持つ。」

議決権行使ができるということは、
「株式を多く持てば要求できることが増える。3%以上持てば株主総会の開催を要求でき、10%以上持てば企業の解散を提案できる。過半数を握れば全ての重要案件を決めることができる。」

スチュワードシップコードにも触れており、
「一方、議決権の行使は認める方針だ。政府は機関投資家向けの行動原則で議決権の行使を促し、投資家に経営状態の悪い企業を放置しないよう求めてきた。海外の機関投資家は日本企業のガバナンスに関心が強い。ワシントン州投資委員会エグゼクティブ・ディレクターのテレサ・ホイットマーシュ氏は「議決権を制限すれば投資家は失望する」と警告する。」

次に緩和策2として、
「厚労省はGPIFの議決権行使で政治介入が起きないよう外部委託を検討する。購入株式の議決権行使の指針を作り、委託先の信託銀行にそれに基づく行動を求める日銀を参考にする。カナダやオランダ、スウェーデン、韓国など公的年金の自主運用を認める国は多い。ノルウェー政府年金基金は会計不祥事を起こした東芝の株主総会で一部取締役の選任に反対した。」

逆に、海外のように、公的年金基金が中長期的な視点で、物言う株主として経営を掣肘した方が、ショートターミズムが悪いというのなら、それも改善できると思うのですが。

(参考)
⇒「(経済教室)エコノミクストレンド 企業の短期主義、再び注目 株式非公開の増加も 「悪弊」とまでは言い切れず 鶴光太郎 慶大教授

機関投資家と証券市場

■ 引き続き、日経新聞からコラム・社説を拾っていきます!

日経新聞の度重なる言及は以下の通り

2016/1/31付 |日本経済新聞|朝刊 (社説)まずは年金資金の運用体制改革が必要だ

「私たちはかねて、高い収益が見込めるかわりに損失の可能性も高まる株式投資を増やすのであれば、それにふさわしい責任ある形にGPIFの組織や運用体制を改革すべきだと主張してきた。」

「有識者会議は運用の見直しと同時に、GPIFの組織改革も提言していた。現在は運用に関する権限が理事長に集中している。これでは不安もあるため、金融の専門家などを集めた経営委員会による合議制を基本とするように求めた。運用見直しはすでに実現したのだから、もう一つの柱である組織改革を急ぐべきだ。」

「体制が整い、株式への直接投資を検討するに当たっては、徹底した情報開示と説明責任が求められる。どの会社にどれだけ投資し、議決権はどのような方針に基づきどう行使したのかなど、つまびらかにする必要があるだろう。」

ポイントは2つ。
① 組織改革:理事長の強い権限集中から経営委員会への合議制
② 情報開示:運用成績・手法、意思決定過程、議決権行使に対する説明責任

 

2016/2/2付 |日本経済新聞|夕刊 (十字路)危ういGPIFの自家運用

●手数料節約について
「なぜ今、自家(インハウス)運用なのかがわからない。目的の一つは運用経費の削減という。年間60億円の株式運用の委託手数料は、自家運用で将来的に10億円減ると試算しており、いかにも国民受けがする。しかし、GPIFの運用経費率は既に十分に低い。運用資産に占める委託手数料の比率は0.02%で、資産の8割程度を自家運用している欧米の主な公的年金の20分の1から30分の1だ。」

●情報入手の早期化について
「外部委託では市場情報の入手が遅れるとの理屈も、ふに落ちない。日本株で30兆円もの資産を10社以上の運用会社に運用委託するGPIFは、本来なら国内で最も情報が集中する機関投資家のはず。それでも不十分なら、内部体制に問題があると考えられる。」

●機動的な運用の実現について
「残る名分は機動的な運用の実現だが、年金資金の長期運用にどれだけ機動性が求められるのか。何かよこしまな動機があるのではと勘繰りたくなる。運用が失敗した場合、外部委託なら契約打ち切りですむが、自家運用で同じ規律が維持できるかも疑問だ。」

●スチュワードシップコード順守の実行可能性について
「自家運用はファンド管理が容易なパッシブ運用から始めるというが、実際は簡単ではない。海外の大手運用会社はパッシブでも指数をなぞるだけではなく、市場全体のリターンを高めるために企業との対話に力を入れ始めた。運用会社にスチュワードシップ・コードの順守を迫るGPIFもそうあるべきだが、当初数人程度の人員では難しい。」

日経コラムにはいちゃもんをつける傾向がある筆者もこれには禿同。

 

2016/2/6付 |日本経済新聞|朝刊 (大機小機)GPIFの直接投資の問題点

●GPIFの投資家としての器量の問題について
「当面は市場平均の運用を目指すようだが、将来は個別株への投資を視野に入れる。130兆円規模の年金資金を運用するGPIFも一般の投資家と同様に値上がりを見込める銘柄を買い、そうでない銘柄を売るはずだ。GPIFは直接投資で経験を積むとしており、現時点では投資家としての実力は心もとない。」

●相場操縦(官製相場)のリスクについて
「企業統治にも大きな影響を与えそうだ。資金の規模が大きいだけにGPIFが市場に参入すれば、個別株の需給バランスが崩れかねない。しかも、GPIFは国が全額出資して厚労省が所管する法人だ。一種の官製相場になり、国家が大株主である中国の証券市場と大差なくなる。」

●議決権行使による政府の経営干渉について
「現政権は成長戦略のためには民間の賃上げに介入し携帯電話の料金にも口を出す。間接的に政府が株価に影響力を持つようになれば企業が国の方針に萎縮してしまう可能性がある。万が一、GPIFの投資行動に問題があったときは監視当局が摘発し課徴金を課さねばならない。当局にも相応の覚悟が求められる。」

これに対する処方箋として、31日の社説同様、GPIFの組織改革を提言しています。
「厚労省の社会保障審議会と年金部会には、こうした問題に知見を有すると思われる資本市場法や株式会社法などの専門家は見当たらない。部会では労使ともに強く反対意見を述べたとのことだが、審議会のあり方を含めゼロベースで見直すべきだ」

官製相場の暴落が始まる――相場操縦しか脳がない米、欧、日 経済 (エコノ・グローバリスト)

■ この辺でGPIF側の努力も取り上げておかないと公平ではありませんね!

言われっぱなしのGPIFでもありません。

2016/1/28付 |日本経済新聞|朝刊 企業価値高める運用会社に委託額厚く GPIF、基準を変更

「公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は株式の運用を委託している運用会社の評価基準を変える。企業価値の向上に向けた投資先の企業との対話に積極的な運用会社を高く評価し、委託する資産の配分を増やす。運用会社に投資先との対話を促し、運用成績の改善につなげる。」

「GPIFが28日、発表する。機関投資家の行動原則である「日本版スチュワードシップ・コード」に基づく措置だ。GPIFは直接、株式を持てないため、民間の運用会社に委託している。今後は運用各社に委託する資産配分を決める際、スチュワードシップ活動の評価点を高める。」

GPIFは昨年、運用会社がどのような活動をしているかを調べたとのことで、「一部で親会社との利益相反の懸念について、組織的な対応をしていない事例があった」と説明しています。スチュワードシップコード、ちゃんと活用しているぞ、GPIFは。

 

2016/2/8付 |日本経済新聞|朝刊 (風速計)GPIF、損失回避に規制の壁

「「じくじたる思いだ」。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道・最高投資責任者は1月28日の社会保障審議会で漏らした。GPIFは2015年7~9月期に7.9兆円の損失を出した。運用成績は市場平均とほぼ同じだが、価格変動リスクを避けるデリバティブ(金融派生商品)が使えれば、損失を少なくできたという思いが強い。」

両手縛って何とかしろ。どこでも聞くお話ですね。

「今のGPIFは円高で運用資産に損失が出ないように為替ヘッジ(差損回避)をしようとしても、市場参加者の多い市場デリバティブが使えない規制の「壁」がある。店頭デリバティブは使えるものの、相対取引なのでGPIFの投資行動が市場に伝わりやすく、為替相場に影響を及ぼす可能性がある。
社保審ではGPIFのガバナンス強化と運用規制の緩和を議論し、デリバティブの活用拡大も検討されている。ガバナンスは合議制の導入で大筋合意したものの、運用規制は年初からの相場の変調もあり、慎重な意見が複数の委員から出ている状況だ。」

デリバティブにも、積極的に利益を出そうとして使うものと、リスクを低く抑えるために使うものがあります。要は使い方次第なので、そのリスク(ボラティリティ)低減のためにGPIFがデリバティブを使えるようにするのは、ちゃんと運用のプロを雇って、意思決定過程を透明化すれば、是非やってもらいたいものですね。

「調整が難航しているのは、GPIFの株式自主運用の解禁などハードルの高い施策があるため。ただリスクにおびえるあまりに、損失を回避するための方策も導入できなくなるようなら、皮肉と言わざるを得ない。」

ここにきて、日経新聞も論調を微妙に調整・バランスさせてきたみたいです。同テーマで日刊紙をタテ読み(時系列で追っていく)すると、いろいろな方の意図とかが見えてきて面白いですよ。

マイナス金利

図解入門ビジネス最新投資ファンドの基本と仕組みがよ~くわかる本[第3版] (How‐nual Business Guide Book)

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「企業支配」の懸念焦点 公的年金の株直接投資解禁 銀行並み上限5%案 - GPIF改革によせる利害関係者からの期待と批判 日本経済新聞よりhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭経済動向を会計で読むGPIF,官製相場,年金積立金管理運用独立行政法人,議決権行使■ 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が株式の直接投資を始める! GPIFが自身の判断で直接株式の売買・保有ができるように法改正を行おうという動きがあります。アベノミクスによる株価維持・向上策の一環として、次の矢を放とうとしています。 2016/1/27付 |日本経済新聞|朝刊 「企業支配」の懸念焦点 公的年金の株直接投資解禁 銀行並み上限5%案 「厚生労働省が検討している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式の自主運用の解禁を巡る調整が難航している。直接株式を持てば株主総会で議決権を行使し、「企業支配につながる」と産業界が警戒しているためだ。企業経営への影響を抑えるため、厚労省はGPIFが直接保有できる株式を1社につき最大5%に制限する案の検討に入った。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます ということで、GPIFの紹介が同日記事にありましたので、おさらいの意味も込めてまずこれを下記に転載してみます。 「▼GPIF 公的年金の積立金を運用する独立行政法人。英語名のガバメント・ペンション・インベストメント・ファンドの頭文字からGPIFと呼ばれる。特殊法人の年金福祉事業団から運用を引き継いだ年金資金運用基金を2006年4月に改組して生まれた。14年10月に国内外の株式比率を資産の半分に高める運用改革を決めた。」 GPIF 世界最大の機関投資家 成り立ちは分かったけど、我々の年金をどういうスキームで運用しているのか。いまいちピンときませんね。こういうときはGPIFのホームページに突撃です。 ● 年金積立金管理運用独立行政法人 GPIFについて知る (http://www.gpif.go.jp/gpif/index.html) まずは、「年金積立金の管理・運用のしくみ」から見てみましょう。 このチャート下部の「運用受託機関」と「金融市場」の部分にご着目下さい。GPIFは株式については、信託銀行や投資顧問会社を通じて間接的に株式を売買し、しかも投信など、金融商品としても間接的な所有を心掛けていました。これを個別株式が直接売買できるようにする、という改革案なのです。 ちなみに、GPIFは、2014年10月末に、基本ポートフォリオを見直し、国内株式を12%から25%に引き上げると発表しています。   2014/11/31付 |日本経済新聞|朝刊 GPIF、運用見直しを決定 国内株25%に引き上げ 「約130兆円の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は31日、運用の基本ポートフォリオ(資産構成割合)を見直し、国内株式を現行の12%から25%に引き上げると発表した。許容範囲とする上下の変動率は6%から9%に拡大する。国内債券に偏った運用を改め、年金給付の原資を増やす。」 「◎GPIFの資産構成割合 今回発表した割合 6月末時点の比率   これまでの割合 国内債券      35%     51.91%        60% 国内株式      25%     16.79%        12% 外国株式      25%     15.54%        12% 外国債券      15%     10.76%        11%」 じゃあこれを、GPIFのホームページで確認してみましょう。 「基本ポートフォリオ」 ■ 日経新聞がどうしてこれを問題視しているのか、論点を整理します! この記事を含めて、2週間近く、日経新聞がコラムを含めて複数回この件を取り上げているので、これらを下記に論点を整理していきます。 2016/1/27(朝刊つづき) <メリット> ・自主運用で委託先金融機関に払う手数料など年10億円を削減できると試算 <デメリット> ・GPIFが議決権を行使すれば「国家の企業支配につながる」懸念がある (同記事添付の比較表を転載) これについては銀行並みの保有制限で緩和策その1を考えており、 「銀行については産業支配を避けるため、保有できる一般事業会社の株式を原則5%までに銀行法で抑えている。懸念を踏まえ厚労省はこの基準を参考にGPIFが保有する株式比率を制限する考え」 現状保有している株式委議決権行使の現状は、 「GPIFは15年3月時点で約32兆円の国内株を持ち、国内市場の7.6%を占める投資家だ。運用委託先の金融機関を通じて株式を取得している現在は議決権の行使を委託先に委ねている。株式を直接保有すれば議決権もGPIFが持つ。」 議決権行使ができるということは、 「株式を多く持てば要求できることが増える。3%以上持てば株主総会の開催を要求でき、10%以上持てば企業の解散を提案できる。過半数を握れば全ての重要案件を決めることができる。」 スチュワードシップコードにも触れており、 「一方、議決権の行使は認める方針だ。政府は機関投資家向けの行動原則で議決権の行使を促し、投資家に経営状態の悪い企業を放置しないよう求めてきた。海外の機関投資家は日本企業のガバナンスに関心が強い。ワシントン州投資委員会エグゼクティブ・ディレクターのテレサ・ホイットマーシュ氏は「議決権を制限すれば投資家は失望する」と警告する。」 次に緩和策2として、 「厚労省はGPIFの議決権行使で政治介入が起きないよう外部委託を検討する。購入株式の議決権行使の指針を作り、委託先の信託銀行にそれに基づく行動を求める日銀を参考にする。カナダやオランダ、スウェーデン、韓国など公的年金の自主運用を認める国は多い。ノルウェー政府年金基金は会計不祥事を起こした東芝の株主総会で一部取締役の選任に反対した。」 逆に、海外のように、公的年金基金が中長期的な視点で、物言う株主として経営を掣肘した方が、ショートターミズムが悪いというのなら、それも改善できると思うのですが。 (参考) ⇒「(経済教室)エコノミクストレンド 企業の短期主義、再び注目 株式非公開の増加も 「悪弊」とまでは言い切れず 鶴光太郎 慶大教授」 機関投資家と証券市場 ■ 引き続き、日経新聞からコラム・社説を拾っていきます! 日経新聞の度重なる言及は以下の通り。 2016/1/31付 |日本経済新聞|朝刊 (社説)まずは年金資金の運用体制改革が必要だ 「私たちはかねて、高い収益が見込めるかわりに損失の可能性も高まる株式投資を増やすのであれば、それにふさわしい責任ある形にGPIFの組織や運用体制を改革すべきだと主張してきた。」 「有識者会議は運用の見直しと同時に、GPIFの組織改革も提言していた。現在は運用に関する権限が理事長に集中している。これでは不安もあるため、金融の専門家などを集めた経営委員会による合議制を基本とするように求めた。運用見直しはすでに実現したのだから、もう一つの柱である組織改革を急ぐべきだ。」 「体制が整い、株式への直接投資を検討するに当たっては、徹底した情報開示と説明責任が求められる。どの会社にどれだけ投資し、議決権はどのような方針に基づきどう行使したのかなど、つまびらかにする必要があるだろう。」 ポイントは2つ。 ① 組織改革:理事長の強い権限集中から経営委員会への合議制 ② 情報開示:運用成績・手法、意思決定過程、議決権行使に対する説明責任   2016/2/2付 |日本経済新聞|夕刊 (十字路)危ういGPIFの自家運用 ●手数料節約について 「なぜ今、自家(インハウス)運用なのかがわからない。目的の一つは運用経費の削減という。年間60億円の株式運用の委託手数料は、自家運用で将来的に10億円減ると試算しており、いかにも国民受けがする。しかし、GPIFの運用経費率は既に十分に低い。運用資産に占める委託手数料の比率は0.02%で、資産の8割程度を自家運用している欧米の主な公的年金の20分の1から30分の1だ。」 ●情報入手の早期化について 「外部委託では市場情報の入手が遅れるとの理屈も、ふに落ちない。日本株で30兆円もの資産を10社以上の運用会社に運用委託するGPIFは、本来なら国内で最も情報が集中する機関投資家のはず。それでも不十分なら、内部体制に問題があると考えられる。」 ●機動的な運用の実現について 「残る名分は機動的な運用の実現だが、年金資金の長期運用にどれだけ機動性が求められるのか。何かよこしまな動機があるのではと勘繰りたくなる。運用が失敗した場合、外部委託なら契約打ち切りですむが、自家運用で同じ規律が維持できるかも疑問だ。」 ●スチュワードシップコード順守の実行可能性について 「自家運用はファンド管理が容易なパッシブ運用から始めるというが、実際は簡単ではない。海外の大手運用会社はパッシブでも指数をなぞるだけではなく、市場全体のリターンを高めるために企業との対話に力を入れ始めた。運用会社にスチュワードシップ・コードの順守を迫るGPIFもそうあるべきだが、当初数人程度の人員では難しい。」 日経コラムにはいちゃもんをつける傾向がある筆者もこれには禿同。   2016/2/6付 |日本経済新聞|朝刊 (大機小機)GPIFの直接投資の問題点 ●GPIFの投資家としての器量の問題について 「当面は市場平均の運用を目指すようだが、将来は個別株への投資を視野に入れる。130兆円規模の年金資金を運用するGPIFも一般の投資家と同様に値上がりを見込める銘柄を買い、そうでない銘柄を売るはずだ。GPIFは直接投資で経験を積むとしており、現時点では投資家としての実力は心もとない。」 ●相場操縦(官製相場)のリスクについて 「企業統治にも大きな影響を与えそうだ。資金の規模が大きいだけにGPIFが市場に参入すれば、個別株の需給バランスが崩れかねない。しかも、GPIFは国が全額出資して厚労省が所管する法人だ。一種の官製相場になり、国家が大株主である中国の証券市場と大差なくなる。」 ●議決権行使による政府の経営干渉について 「現政権は成長戦略のためには民間の賃上げに介入し携帯電話の料金にも口を出す。間接的に政府が株価に影響力を持つようになれば企業が国の方針に萎縮してしまう可能性がある。万が一、GPIFの投資行動に問題があったときは監視当局が摘発し課徴金を課さねばならない。当局にも相応の覚悟が求められる。」 これに対する処方箋として、31日の社説同様、GPIFの組織改革を提言しています。 「厚労省の社会保障審議会と年金部会には、こうした問題に知見を有すると思われる資本市場法や株式会社法などの専門家は見当たらない。部会では労使ともに強く反対意見を述べたとのことだが、審議会のあり方を含めゼロベースで見直すべきだ」 官製相場の暴落が始まる――相場操縦しか脳がない米、欧、日 経済 (エコノ・グローバリスト) ■ この辺でGPIF側の努力も取り上げておかないと公平ではありませんね! 言われっぱなしのGPIFでもありません。 2016/1/28付 |日本経済新聞|朝刊 企業価値高める運用会社に委託額厚く GPIF、基準を変更 「公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は株式の運用を委託している運用会社の評価基準を変える。企業価値の向上に向けた投資先の企業との対話に積極的な運用会社を高く評価し、委託する資産の配分を増やす。運用会社に投資先との対話を促し、運用成績の改善につなげる。」 「GPIFが28日、発表する。機関投資家の行動原則である「日本版スチュワードシップ・コード」に基づく措置だ。GPIFは直接、株式を持てないため、民間の運用会社に委託している。今後は運用各社に委託する資産配分を決める際、スチュワードシップ活動の評価点を高める。」 GPIFは昨年、運用会社がどのような活動をしているかを調べたとのことで、「一部で親会社との利益相反の懸念について、組織的な対応をしていない事例があった」と説明しています。スチュワードシップコード、ちゃんと活用しているぞ、GPIFは。   2016/2/8付 |日本経済新聞|朝刊 (風速計)GPIF、損失回避に規制の壁 「「じくじたる思いだ」。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道・最高投資責任者は1月28日の社会保障審議会で漏らした。GPIFは2015年7~9月期に7.9兆円の損失を出した。運用成績は市場平均とほぼ同じだが、価格変動リスクを避けるデリバティブ(金融派生商品)が使えれば、損失を少なくできたという思いが強い。」 両手縛って何とかしろ。どこでも聞くお話ですね。 「今のGPIFは円高で運用資産に損失が出ないように為替ヘッジ(差損回避)をしようとしても、市場参加者の多い市場デリバティブが使えない規制の「壁」がある。店頭デリバティブは使えるものの、相対取引なのでGPIFの投資行動が市場に伝わりやすく、為替相場に影響を及ぼす可能性がある。 社保審ではGPIFのガバナンス強化と運用規制の緩和を議論し、デリバティブの活用拡大も検討されている。ガバナンスは合議制の導入で大筋合意したものの、運用規制は年初からの相場の変調もあり、慎重な意見が複数の委員から出ている状況だ。」 デリバティブにも、積極的に利益を出そうとして使うものと、リスクを低く抑えるために使うものがあります。要は使い方次第なので、そのリスク(ボラティリティ)低減のためにGPIFがデリバティブを使えるようにするのは、ちゃんと運用のプロを雇って、意思決定過程を透明化すれば、是非やってもらいたいものですね。 「調整が難航しているのは、GPIFの株式自主運用の解禁などハードルの高い施策があるため。ただリスクにおびえるあまりに、損失を回避するための方策も導入できなくなるようなら、皮肉と言わざるを得ない。」 ここにきて、日経新聞も論調を微妙に調整・バランスさせてきたみたいです。同テーマで日刊紙をタテ読み(時系列で追っていく)すると、いろいろな方の意図とかが見えてきて面白いですよ。 マイナス金利 図解入門ビジネス最新投資ファンドの基本と仕組みがよ~くわかる本 (How‐nual Business Guide Book)現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します