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■ 社長がIRで弱音を吐いてはいけません!

経営管理会計トピック

よっぽど、たちの悪い機関投資家や記者に責められたのでしょうか? 筆者の目からすれば、業績良好なモーションコントロール技術を核とした事業を展開するナブテスコ。その社長がつい本音を漏らしてしまった瞬間です。

2016/2/13付 |日本経済新聞|朝刊 (決算トーク)ナブテスコ 中計の数字目標やめようか

「「次の中期経営計画では数字の目標をやめようかな」と話すのは、ナブテスコの小谷和朗社長。2016年度を最終年度とする中計では利益目標が未達で終わりそうだ。ロボット用減速機や航空機部品は順調な一方、「中国の油圧機器など新興国での成長を期待していた事業が未達になる」という。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は、同記事添付の小谷和朗氏の写真を転載)

20160213_小谷和朗_日本経済新聞朝刊

「急な円高などで事業環境が大きく変わるなか、投資家からは「短期の数字や成長へのビジョンは必要だが(数年先の数字は)あまり意味がない」と言われたという。今春から次の計画の策定を本格化するが、「出し方を変えないといけないかも」と悩ましげだった。。」

これぞ、ショートターミズム(短期主義)の悪弊ここに極まれり。

(参考)
⇒「(経済教室)エコノミクストレンド 企業の短期主義、再び注目 株式非公開の増加も 「悪弊」とまでは言い切れず 鶴光太郎 慶大教授

御社は、多関節ロボットを動かす油圧機器、鉄道のブレーキやドア開閉の制御機器をお造りなのですよね。そういう技術開発は、収益獲得に先立ち、常に先行投資となって、多大な固定費負担を以後に続く製品販売期間でどれだけ回収できるかについて、絶えず先を見ていく経営が必要ではないかと思うわけです。

そのために、中長期の市場動向を読み、そこでの獲得シェアとマージン率を読み、経営目標としての、収益および利益見通しが無いと、怖くて怖くて、設備投資や開発投資にお金をどれだけ振り向ければよいか、心配ではありませんか。当たらないから目標を立てない、当たらないから、外部のステークホルダーからやいのやいの言われるから、中計の数値目標の開示を止めようかな、なんて、御社のファンだからこそ投資をした株主たちはがっかりすると思います。

しかも、直近5年間のROEは、12~15%台。投資家に対して決して恥ずかしくない業績ではありませんか。

20160215_ナブテスコ_ROE推移

ナブテスコのホームページ 財務ハイライトより
 (http://www.nabtesco.com/finance/highlights.html

良い株主 悪い株主

■ 翌日の日経新聞では次のような発言が報道されました!

こちらも、小稿ですが、きっちり読んでいますよ!

2016/2/14付 |日本経済新聞|朝刊 (ニュース一言)ナブテスコ 小谷社長

「日銀のマイナス金利政策によって投資意欲に火が付くことはない。設備費用など足元の計画は基本的に手元資金で賄う。金利が高くても安くても投資する時にはする」

「制御機器大手、ナブテスコの小谷和朗社長はマイナス金利の効果に懐疑的だ。制御機器は商用車などに使われる。「ローン金利が下がればトラックが買いやすくなり、増収につながる可能性はある」としながらも「戦略に織り込むものではない」と明言する。」

きちんと市場特性を先読みして、金利変動は「戦略=将来の数値目標?」に織り込まずに、計画策定する意思をお持ちであることを、きちんとお示しになられているじゃありませんか!? もっと自信を持ってください。中計が目標未達であっても、その理由を分析し、戦略点検に活用し、改善策と共に開示して投資家の理解を得ることは、経営者の立派な責務ではないかと考えています。

図解入門ビジネス最新中期経営計画の基本がよ~くわかる本[第2版] (How‐nual Business Guide Book)

■ 実際の財務数値を見てみましょう! 設備投資、減価償却費、研究開発費はどうか?

御社のホームページ、IRライブラリーに次のような資料がありますね。

IRライブラリー 野村インベストメントフォーラム2015プレゼンテーション資料(PDF 4065kb)

https://www.nabtesco.com/pdf/c437c561cd0ea8b395ed4a52d9f70146.pdf

しかもその題が、「中長期的な成長に向けて」

20160215_ナブテスコ_中長期的な成長に向けて_表紙

投資家は、こういうのが知りたいのですよ。

その中のP17がこれ。

20160215_ナブテスコ_中長期的な成長に向けて_設備投資額・研究開発費・減価償却費

将来投資を背伸びしない範囲でストレッチしているか、それを本物の投資家は見ていると思います。御社は、FY14実績ベースで、売上高研究開発費比率が3.1%。同期の売上高営業利益率が10.8%。従って、現在時点の儲けの22.3%を将来投資に振り向けているわけです。この期は、フリーキャッシュフロー(営業CF+投資CFベース)が+121億円。もっと将来投資に振り向けてもいいくらいです。

それは、御社のビジネスが数多くのニッチトップ事業の集合体だからです。これくらいトップシェアの事業を持っていれば、足元の収益性は大丈夫ではないですか。同資料から、ニッチトップ事業の有り様を説明したスライドをこれでもかというぐらい下記に並べてみます。

20160215_ナブテスコ_中長期的な成長に向けて_精密機器セグメント主要製品

20160215_ナブテスコ_中長期的な成長に向けて_輸送用機器セグメント主要製品

20160215_ナブテスコ_中長期的な成長に向けて_航空・油圧機器セグメント主要製品

20160215_ナブテスコ_中長期的な成長に向けて_産業用機器セグメント主要製品

止めに、良好な財務体質についての御社からのメッセージも受け取っていますから。

20160215_ナブテスコ_中長期的な成長に向けて_Financial Strategy

これほどの良好な業績と成長性のある事業を持っていて、短期投資家から、目先の数字が大事で、数年先の数字はあまり意味がないと言われて、意気消沈して、ついマスコミの前で弱音を吐くなど、普通ではありえないことです。反省して、意を尽くしたIRに務めてくださいませ。

(筆者も名前をさらしての意見陳述をしています。ご意見ご感想、反論、叱咤はこのブログのお問い合わせ欄からどうぞ! 大歓迎です! 受けて立ちます!)

投資家の理解と共感を獲得する IR(インベスター・リレーションズ) (企業広報ブック)

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(決算トーク)ナブテスコ 中計の数字目標やめようか ー いやいや、御社は中長期の投資収益性の事後評価が大切です!http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭会計で経営を読むIR,ROE,ショートターミズム,ナブテスコ,ニッチトップ,中期計画,売上高研究開発費比率,短期主義■ 社長がIRで弱音を吐いてはいけません! よっぽど、たちの悪い機関投資家や記者に責められたのでしょうか? 筆者の目からすれば、業績良好なモーションコントロール技術を核とした事業を展開するナブテスコ。その社長がつい本音を漏らしてしまった瞬間です。 2016/2/13付 |日本経済新聞|朝刊 (決算トーク)ナブテスコ 中計の数字目標やめようか 「「次の中期経営計画では数字の目標をやめようかな」と話すのは、ナブテスコの小谷和朗社長。2016年度を最終年度とする中計では利益目標が未達で終わりそうだ。ロボット用減速機や航空機部品は順調な一方、「中国の油圧機器など新興国での成長を期待していた事業が未達になる」という。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます (下記は、同記事添付の小谷和朗氏の写真を転載) 「急な円高などで事業環境が大きく変わるなか、投資家からは「短期の数字や成長へのビジョンは必要だが(数年先の数字は)あまり意味がない」と言われたという。今春から次の計画の策定を本格化するが、「出し方を変えないといけないかも」と悩ましげだった。。」 これぞ、ショートターミズム(短期主義)の悪弊ここに極まれり。 (参考) ⇒「(経済教室)エコノミクストレンド 企業の短期主義、再び注目 株式非公開の増加も 「悪弊」とまでは言い切れず 鶴光太郎 慶大教授」 御社は、多関節ロボットを動かす油圧機器、鉄道のブレーキやドア開閉の制御機器をお造りなのですよね。そういう技術開発は、収益獲得に先立ち、常に先行投資となって、多大な固定費負担を以後に続く製品販売期間でどれだけ回収できるかについて、絶えず先を見ていく経営が必要ではないかと思うわけです。 そのために、中長期の市場動向を読み、そこでの獲得シェアとマージン率を読み、経営目標としての、収益および利益見通しが無いと、怖くて怖くて、設備投資や開発投資にお金をどれだけ振り向ければよいか、心配ではありませんか。当たらないから目標を立てない、当たらないから、外部のステークホルダーからやいのやいの言われるから、中計の数値目標の開示を止めようかな、なんて、御社のファンだからこそ投資をした株主たちはがっかりすると思います。 しかも、直近5年間のROEは、12~15%台。投資家に対して決して恥ずかしくない業績ではありませんか。 ● ナブテスコのホームページ 財務ハイライトより  (http://www.nabtesco.com/finance/highlights.html) 良い株主 悪い株主 ■ 翌日の日経新聞では次のような発言が報道されました! こちらも、小稿ですが、きっちり読んでいますよ! 2016/2/14付 |日本経済新聞|朝刊 (ニュース一言)ナブテスコ 小谷社長 「日銀のマイナス金利政策によって投資意欲に火が付くことはない。設備費用など足元の計画は基本的に手元資金で賄う。金利が高くても安くても投資する時にはする」 「制御機器大手、ナブテスコの小谷和朗社長はマイナス金利の効果に懐疑的だ。制御機器は商用車などに使われる。「ローン金利が下がればトラックが買いやすくなり、増収につながる可能性はある」としながらも「戦略に織り込むものではない」と明言する。」 きちんと市場特性を先読みして、金利変動は「戦略=将来の数値目標?」に織り込まずに、計画策定する意思をお持ちであることを、きちんとお示しになられているじゃありませんか!? もっと自信を持ってください。中計が目標未達であっても、その理由を分析し、戦略点検に活用し、改善策と共に開示して投資家の理解を得ることは、経営者の立派な責務ではないかと考えています。 図解入門ビジネス最新中期経営計画の基本がよ~くわかる本 (How‐nual Business Guide Book) ■ 実際の財務数値を見てみましょう! 設備投資、減価償却費、研究開発費はどうか? 御社のホームページ、IRライブラリーに次のような資料がありますね。 ● IRライブラリー 野村インベストメントフォーラム2015プレゼンテーション資料(PDF 4065kb) (https://www.nabtesco.com/pdf/c437c561cd0ea8b395ed4a52d9f70146.pdf) しかもその題が、「中長期的な成長に向けて」 投資家は、こういうのが知りたいのですよ。 その中のP17がこれ。 将来投資を背伸びしない範囲でストレッチしているか、それを本物の投資家は見ていると思います。御社は、FY14実績ベースで、売上高研究開発費比率が3.1%。同期の売上高営業利益率が10.8%。従って、現在時点の儲けの22.3%を将来投資に振り向けているわけです。この期は、フリーキャッシュフロー(営業CF+投資CFベース)が+121億円。もっと将来投資に振り向けてもいいくらいです。 それは、御社のビジネスが数多くのニッチトップ事業の集合体だからです。これくらいトップシェアの事業を持っていれば、足元の収益性は大丈夫ではないですか。同資料から、ニッチトップ事業の有り様を説明したスライドをこれでもかというぐらい下記に並べてみます。 止めに、良好な財務体質についての御社からのメッセージも受け取っていますから。 これほどの良好な業績と成長性のある事業を持っていて、短期投資家から、目先の数字が大事で、数年先の数字はあまり意味がないと言われて、意気消沈して、ついマスコミの前で弱音を吐くなど、普通ではありえないことです。反省して、意を尽くしたIRに務めてくださいませ。 (筆者も名前をさらしての意見陳述をしています。ご意見ご感想、反論、叱咤はこのブログのお問い合わせ欄からどうぞ! 大歓迎です! 受けて立ちます!) 投資家の理解と共感を獲得する IR(インベスター・リレーションズ) (企業広報ブック)現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します