業績管理会計の基礎(5)責任会計制度の基本 プロフィットセンターやコストセンターをどう設定するか?

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■ (前回の補足)エクスペンスセンターの解説から

前回からMCSを有効に機能させるための三種の神器のひとつ、「会計組織」について議論しています。今回は、「会計組織」の構成方法について説明します。責任会計制度において、会計組織の種類には、以下の5種類がありました。

① コストセンター(原価中心点:Cost Center)
② レベニューセンター(収益中心点:Revenue Center)
③ プロフィットセンター(利益中心点:Profit Center)
④ インベストメントセンター(投資中心点:Investment Center)
⑤ エクスペンスセンター(費用中心点:Expense Center)

①から④までは一般的なのですが、⑤ エクスペンスセンター は専門家でも定義と扱い方にバリエーションがありますので、ここではその中でも2つの代表的な説明をご紹介したいと思います。

(1)コストセンターの亜種として定義
コストセンターは、インプット(投入される原価要素)と、アウトプット(製品やサービス)の価値を共に、貨幣価値で結び付けて管理することができます。投入原価が100円で、算出プロダクトの原価について減耗損等が無ければ、同じく100円といったように。

この視点において、アウトプットを金額に置き換えて評価することのできない組織ユニットで、収益や利益、投資収益性で評価されないモノは、コストセンターの亜種として、エクスペンスセンターとして分類します。大きな括りの中に、2種類のエクスペンスセンターが存在します。

⑤-1.技術費用中心点(Engineering Expense Center)
生産プロセスにおいて、製造部門、物流部門、倉庫部門、品質保証部門などが該当する。物流サービスや品質保証活動を、ひとつひとつのサービス単位について貨幣価値でいくらか、といった金額評価で業績評価はしない。次工程への直行率、輸送リードタイム、不良品検出率のような、金額的評価より業務KPIによる活動指標による評価が中心となる。

⑤-2.自由裁量費用中心点(Discretionary Expense Center)
R&D部門、広告宣伝部門など、当該部門からのアウトプットされるサービス等が貨幣価値に置き換えて評価することがそもそも難しい上、非財務指標としても定量化すら困難を伴う部門が該当する。一般的に、P/L上、販売管理費用で処理される部門のほとんどが含まれる。

ここまでが、従来の定説となります。あくまで、EECやDECは、コストセンターの亜種という位置づけとなります。

 

■ エクスペンスセンターの第2の定義の必要性

(2)一般的な責任会計組織を構成する小さな部門としての定義
集合体として、コストセンター、レベニューセンター、プロフィットセンター、インベストメントセンターを構成する小さな部門ひとつひとつを指す。会社組織の中で、財務的数値の予実差異管理をする最小単位とする。

工場にも「製造1課」、営業本部にも「営業第1Gr.」、経理部にも「予算課」という最小部門が存在します。それら部門が単独で、プロフィットセンターになったり、レベニューセンターになったりすることもあるかもしれませんが、同時に、その部門単位で原価・経費、場合によっては投資(発注ベース、実行ベース)や売上高、人員などの予算(目標値)を立てていると思います。そうした、予算を立てて、実績との差異を分析・管理する最小組織ユニットを、責任会計制度上、組織ツリーの中に収めるために、「エクスペンスセンター」として位置付ける考え方があります。

全社ベースでの業績管理の仕組み作りを円滑に進めるための組織デザイン、会計責任構造の設定に有効であるため、筆者はこちらの方を実務では採用しています。前者の(1)で経営管理の仕組みを構築した経験もありますが、実務家には、コストセンターの亜種として、EECやDECがあるという使い分けに心理的なハードルが高いと思われます。そこで現在は(2)で基本的に仕事を進めさせて頂いております。(^^;)

こうすることで、実際の会社組織マスタから、会計責任構造を下図のように、多層的にデザインすることが可能になります。

業績管理会計(入門編)_会計責任構造

こう表現することで、ひとつには、レベニューセンターにも費用が発生することを明示することができます。営業部門で費用が発生せずに、収益(売上)だけを管理する、というのは無理がありますから。もうひとつは、レベニューセンターでは、収益と費用の両方が計上されますが、その両者を結びつけて、利益管理するべきものではない、ということも素直に理解することができます。

例えば、レベニューセンターでは、製品売上高が計上されますが、その製品の製造費用は、お隣のコストセンターで計上されます。レベニューセンターの配下には、エクスペンスセンターがぶら下がり、そこで、営業経費(販売管理費、広告宣伝費など)が計上されます。

業績管理会計(入門編)_レベニューセンター周辺のP/L項目の整理

よく見られるのが、レベニューセンターの安易な疑似プロフィットセンター扱いで、上図の「営業差益」でレベニューセンターを利益評価してしまう間違いです。営業差益を管理利益指標として、営業部門費のシーリングに使う用途ならば、会計的牽制として意味があると言えます。しかし、その営業部門の収益性指標として営業差益を用いるのは間違いです。なぜなら、営業差益には、営業部門が販売する製商品・サービスの仕入れコストが考慮されていないからです。また、広告宣伝費や販促費、営業スタッフ人件費など、特定の商材の売上げときっちり対応できる営業経費ばかりではないので、厳密に営業経費と売上の対応関係を想定するのには無理がある場合があります。

と同時に、営業部門の権限だけでは、その製商品・サービスの仕入コストを管理できなければ、取扱い商材の損益管理をすることはできません。もし、上位の会計責任者がこの営業部門に営業差益で持って利益評価をしたならば、この営業部門の責任長は、売上を伸ばすか、手持ちの営業経費を削るしかありません。しかし、どれくらい売り上げを伸ばせばいいのか、または、どれくらいの手持ちの営業経費を削ればいいのか、その目安となる目処は、営業差益からは導くことは難しいでしょう。どの商材にも仕入れコストがかかるのですから。

 

■ つまるところ、会計責任は管理可能指標で評価されるべきであるという原則

権利あるところに義務がある。責任あるところに権限がある。これらは表裏一体の関係です。

投資権限があり、同時に投資収益性の責任が課せられているのが、インベストメントセンターです。

収益と費用のバランスを取る権限があり、同時に損益責任が課せられているのが、プロフィットセンターです。

収益(売上)の最大化のための販売施策を選択する権限があり、同時に収益最大化の会計責任を課せられているのが、レベニューセンターです。

コストコントロール権限を有しており、同時にコスト発生責任(コスト最小化責任)が課せられているが、コストセンターです。

そこまで割り切って、明確に責任と権限を明確にすると、人間は与えられた指示と目標への理解度が高まり、業績管理者が意図するように行動できるように促すことができます。その一方で逆作用も発生することに留意する必要もあります。

会計責任は、分権化組織に相応しい財務統制管理手法です。それぞれの組織に相応しい会計責任を明確に示して、その枠で活動に掣肘をかけ、権限を与えます。その方法が不適切な場合は、それぞれの組織の会計責任を全うすることだけにかまけて、いわゆる全体最適より個別最適を追っかけてしまうような矛盾が起きかねません。

例えば、レベニューセンターである営業部門が、製造ラインの繁忙を全く考慮せずに、売りやすいものからだったり、注文が入った都度だったり、営業都合で工場へ製造依頼をかけます。そうすると、製造ラインでは、繁忙差が大きくなり、操業度差異が暴れて、コスト削減に失敗するかもしれません。

一方で、整然とした生産計画を元に、ギリギリまでコストダウンを目指した硬直的な生産ラインを構築し、コストセンターとしてコスト最小化を実現できる生産体制を工場側が用意したとします。そうすると、営業部門側は市場における需要変動に追随できずに、欠品や売り逃しに直面してしまい、レベニューセンターとして、収益最大化に失敗する可能性があります。

このように、分権化を進め、会計責任を明確にしすぎることで、全体最適が失われ、かえって全社損益が悪化する恐れが生じます。経営管理者として、口酸っぱく「全体最適を考えて行動計画を立て、実践しなさい」と唱え続けなくてならない場合、考えられる原因は、会計責任構造自体に欠陥があるか、各組織ごとに与えた会計責任を代表する財務管理指標の設定が誤っていると思われます。

各々の会計責任組織の目標整合性と、相互依存関係に留意しつつ、会計責任に準じて、相応しい業績評価指標を設定してあげる必要があるのです。

↓簡単な(入りやすい)順に並べてあります。

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