業績管理会計の基礎(4)マネジメント・コントロール・システムのための責任会計制度とは?

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■ マネジメント・コントロール・システム(MCS)を有効に機能させるためには

MCSを有効に機能させるために必要な道具は、次の通りです。

① 管理プロセス(PPBRサイクル)
② 業績評価指標
③ 会計組織

MCSは、多数の人の集合体である組織を円滑に進めるための装置です。企業活動は、オーケストラになぞらえられることがあります。もちろん、構成員一人一人の演奏能力が低ければ、いい音楽を奏でられることは稀有でしょう。しかし、仮に優れた音楽家がただ集まっただけでも、いい演奏をすることができません。そういう優れた音楽家を導き、全体としてまとまった、演出効果の高い演奏を可能にする指揮者がいて初めて、コンサートは成功するでしょう。

MCSにも、そうしたオーケストラの指揮者のような効果が期待されます。MCSは、

① 方向付け
② 動機付け
③ 経営資源と活動能力の最大発揮

を期待されるものです。これは、指揮者が個々の音楽家の演奏の演出を考え、個々の音楽家が最高のパフォーマンスを演じられるようにモチベートし、最後にオーケストラとして、最高のメンバ構成と練度を用意させるものと同様です。

前回まで、①管理プロセス(PPBRサイクル)、②業績評価指標について説明してきましたので、今回から「③会計組織」について説明していきたいと思います。なぜ「組織」ではなく、「会計組織」なのか? それは、MCSを機能させる器として、人や集団を考えた時に、当然「組織」行動が必要となりますがそれだけでは不十分だからです。

というのは、業績評価指標で組織目標が適切に示された後に、それを実行に移すためには、各組織の活動目標をしっかりと意識する必要があるからです。ここで「会計」の語を付すのは、別段、借方、貸方の会計仕訳で表されるような会計数値(売上やコスト、資産など)だけでなく、生産性や品質などの計数もハンドリングする必要があるからです。

管理会計という分野は、計数管理できる対象は全て、己の領域であると考えています。こういう管理会計観に則ると、企業活動において定量的に数値で表現できるものは、全て管理会計数値ということになります。それゆえ、単なる「組織」ではなく、そうした業績管理指標の達成のために活動する組織を「会計組織」と呼び習わしているのです。いささか、傲慢な言葉遣い、ご容赦ください。(^^;)

 

■ 「会計組織」は「会計責任」でデザインされて企業内に配置される!

それでは、「会計組織」はどのように分類・配置されるのでしょうか?

「組織」と言えば、「営業部」「工場」「品質保証部」「経理部」「事業部」「カンパニー」など、様々な職掌やミッションによって分類されています。これを「会計組織」としては、与えられた「会計責任」にしたがって、次の4つ(筆者は5つ)で分類します。

① コストセンター(原価中心点:Cost Center)
② レベニューセンター(収益中心点:Revenue Center)
③ プロフィットセンター(利益中心点:Profit Center)
④ インベストメントセンター(投資中心点:Investment Center)
⑤ エクスペンスセンター(費用中心点:Expense Center) ← 論者によって定義が異なる

① コストセンター(原価中心点:Cost Center)
自部門で発生したコストに責任を持つ組織のことで、工場や事業所(仕入購買品を扱う)がその典型例です。製品・半製品やサービスといったこの組織のアウトプットと、その提供に費やされたコストの結びつきが強いのが特徴です。そうしたアウトプットの生産性の追求、最小インプットから最大アウトプットを得る効率性、与件の経営資源の制約内で最大のアウトプットを算出する経済性も問われます。

こう記述すると、コストだけ守っていれば、コストダウンだけやっていれば問題ないかとの誤解も生じるでしょう。これは以下の各組織にも共通して言えるのですが、自組織に課せられた会計責任を果たすと共に、守るべき制約や条件も同時に達成しなければなりません。工場では、QCD(Quality, Cost, Delivery)の3点を同時達成することを厳命されます。コスト(C)だけ達成しても、品質的に不適合製品を出したり、顧客への製品引渡しの納期遅れを決して軽視してはいけないのです。

② レベニューセンター(収益中心点:Revenue Center)
自部門で稼得した収益に責任を持つ組織のことで、営業部や販売店がその典型例です。注意点は2つ。会計用語で「収益」とは「利益」「儲け」のことではなくて、「売上」「収入」のことを指します。また、レベニューセンターでもコストは発生しますが、そのコストの発生高と自部門の収益とは直接結びつけて会計責任を問われることは学問的・理論的には行いません。あくまで、収益(売上)最大化を目標として活動する組織です。

さはさりながら、売上を最大化するために機会損失(販売ロス)を無くすために、在庫をいくら積み増してもいいとか、工場の操業度に無関心でいい、というわけではありません。当然、レビュニューセンターも、売上高以外の制約事項の同時達成を申し渡されるのはコストセンターと同じです。

③ プロフィットセンター(利益中心点:Profit Center)
自部門で発生したコストと収益の双方に責任を持つ組織のことで、コストと収益の差額である利益を指標とした目標の達成を課せられます。会社によってその名称や立ち位置は様々ですが、「事業部」「事業本部」「セグメント」「カンパニー」など、ある一定規模の大組織が分類されることが多いものです。1960年代以降に登場した、分権的な「事業部制組織」の発展と共に、皆に意識され出したものです。

ただし、留意点として2つ。
・自部門の利益のために他部門(全社)の利益を犠牲にしてはいけない
・評価される利益の質と定義は慎重に決められなければならない

詳しい解説は後に譲るとして、個々では2つ目の留意点に簡単に言及すると、本社共通費を回収しきった利益で評価するか、自部門(自事業部)で直接発生したコストだけを吸収した事業部利益だけで評価していいかについて、全社規模の利益管理制度に則って適切に利益評価される必要があるということです。

④ インベストメントセンター(投資中心点:Investment Center)
投資決定に関する権限まで与えられた組織のことで、一般的には、投資収益性(ROI)が評価指標に用いられます。会社によって名称や立ち位置は様々ですが、「カンパニー」「事業本部」「中間事業持株会社」「ドメイン」などという呼称が用いられるものは、このインベストメントセンターである可能性が高いと言えましょう。

投資収益性 = 稼得利益 ÷ 投下資産 × 100 (%)

会計技法的な論点としては、上記の投資収益性(ROI)は、あくまで比率なので、利益の絶対額を表していないというものです。その場合、使用した資本にかかる資本コストを絶対額で示し、それを稼得利益から差し引くことで、「残余利益」という絶対額による利益指標で評価することもあります。

一般的には、上記4つで語られます。よって、「⑤ エクスペンスセンター」に関する解説は次の機会までお楽しみに。(^^)

業績管理会計(入門編)_会計責任と財務諸表

 

■ 「会計責任」と「責任会計」のまとめ

MCSは、多種多様な人材を、多機能にわたる各種組織を、ひとつの会社に束ねて管理するプロセスであるため、様々な計数で客観的かつ可視的に評価される必要があります。そうした計数を提供する一番の大所が会計数値です。そうした各組織ごとに、目標として課せられる会計数値を張り付けて、各組織の経営目標を達成させるように動機付けようとする仕組みを、責任会計(Responsibility Accounting)と言います。

経営トップは、株主をはじめとするステークホルダーに対して、健全な財政状態と良好な企業業績を果たす義務があります。企業業績は簡単に言うと期間損益に代表される会計数値です。この期間損益を、やれ収益だ、やれコストだと、各組織の目標に適切に分解して、各組織が自分の裁量で自部門の会計目標を達成したら、自然と会社全体と会計目標が達成されるよう、各組織に会計的な数値による縛り・目標を与えること。その与えられた会計的目標を「責任」と呼び代えたとき、それぞれの組織に課せられたものを「会計責任」というのです。

それでは、経営者が自由裁量で各組織に会計責任を設定してもいいのでしょうか? 当然、会社法的には会社自治が認められているので、また管理会計制度は経営者が自由裁量で決定していいので、その限りではOKです。しかし、会計責任制度の目的を達成するためには、各組織が各組織の裁量と器量で、それぞれの会計責任を果たそうと活動することで、全社の会計目標が達成されるように制度設計しておく必要があります。

それゆえ、各組織に課せられる会計責任の設定方針として、「管理可能性基準(Controllability principle)」が尊重されなければなりません。管理者の業績評価は、当該管理者の管理できる範囲内で行われるべき、というものです。例えば、工場長に売上責任や、営業所長に生産ラインの稼働率を目標設定することは、一義的にはこの原則に違反するものと言えます。
(ただし、筆者の実務経験と論理的帰結から、制度設計次第では、このような目標設定も可能ではありますが、、、(^^;) 果たしてそれが有効に機能するかどうかは、吟味してからの問題には間違いありません。)

どこまで行っても、責任会計制度は、「管理可能コスト」と「管理不能コスト」の峻別と運用の妙とは切っても切り離せないようです。(^^;)

業績管理会計(入門編)_業績管理会計の基礎(4)マネジメント・コントロール・システムのための責任会計制度とは?

↓簡単な(入りやすい)順に並べてあります。

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