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■ 「教養」か、それとも「実学」か? 現代の大学に課せられた使命とは!?

経営管理会計トピック

お二人の著名な論者の大学教育論、これまで何度も目にしてきましたが、丁度、取り上げられた記事の掲載タイミングが近かったので、今回は並べて解説していきたいと思います。

2015/5/25|日本経済新聞|朝刊 (池上彰の大岡山通信 若者たちへ)(46)すぐ役に立つ大学 本来の機能失われる懸念

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「米国の大学といえば、リベラルアーツ教育に力を入れていることで知られています。学部の4年間は、人間としての基礎的な教養を身につけることに重点を置き、専門的な学問は大学院で学ぶというのが一般的なカリキュラムです。」

「「社会から求められる学部」ばかりつくっていたら、社会からの要請がなくなった途端、存在の意味がなくなってしまいませんか。「すぐに役に立つことは、すぐに役に立たなくなる」と喝破した、慶応義塾の塾長だった小泉信三氏の発言を思い出してしまいます。」

20150525_すぐに役立つことは、すぐに役に立たなくなる_日経新聞

(日経新聞当該記事より抜粋)

2015/5/27|日本経済新聞|朝刊 (辛言直言)大学で職業訓練せよ 普通の学生には実学重視 経営共創基盤CEO 冨山和彦氏

「国内の大学を、グローバル人材を育てる「G型」と、ローカル人材を育てる「L型」に分け、大多数のL型大学は職業訓練校化すべきだ――。経営共創基盤の冨山和彦・最高経営責任者(CEO)が昨年秋に文部科学省の有識者懇談会に出した提言は大きな反響を呼んだ。今なぜ大学での職業教育が重要になるのか冨山CEOに聞いた。」

20150527_冨山和彦_日経新聞

(日経新聞当該記事より抜粋)

「大学進学率は今や5割を超え、ほとんどの人は卒業後、職業人になる。学者になるのはほんの一部だ。ところが日本の大学は学術的な一般教養至上主義でやってきて、かみ合っていない。シェークスピアやサミュエルソン経済学などの学術教養は、従来の日本型正規雇用とは相性が良かった。大企業に新卒一括採用で入り、ローテーションで色々な仕事をする前提で、大学では広く浅く教養を身につけ、職場で役立つ技能教育は会社に入ってからでよかった。しかし、そうした就職は今、どんどん減っている」
地域経済の中心はサービス産業で、運転士、介護士、看護師、医師など『ジョブ型』の働き方が多く、この比率が高まっている。そうした産業で働き、より安定した仕事についたり、高い所得を得たりするには技能教育、実学が大事になる。その役割を大学は果たすべきでしょう」

20150527_冨山氏が例に挙げたL型大学に学ぶべき内容_日経新聞

(日経新聞当該記事より抜粋)

 

■ まずは池上氏の「教養主義」の重要性からじっくり味わってみる

池上氏は、この連載コラムにて同様の主張を繰り返されていますが、その中から過去コラムをひとつ抜粋版でご紹介します。

2014/6/16|日本経済新聞|朝刊 (池上彰の大岡山通信 若者たちへ)(2)大学で学ぶ教養 多様な知識 じわり効く

「本紙「私の履歴書」に連載中の福地茂雄さんの6回目(6月6日付)に、次のような記述があります。長崎大学の学生だった頃の回想の部分です。
「近年は大学で一般教養を教えることが少ない。ここで学ぶ心理学や論理学、社会思想史に代表されるリベラルアーツはすぐには役に立たない。ただ人生にじわりと効いてくると思う」」

池上氏としては、まず様々な高等技能を身に付けるためには、リベラルアーツ(教養)をまず身に付けましょう。高等技術を身に付けた人がその技能を発揮するためには、人生や社会への理解が無いと、スキルをただ振り回すだけの人になってしまいますよ、と警句を発せられているのだと思います。

「そんな「すぐには役に立たない」リベラルアーツの教育を担当してほしいと依頼され、東京工業大学で教え始めて3年目を迎えました。ずっと役に立たないことを教えているのではないかとの忸怩(じくじ)たる思いを持ちながら、学生諸君に向き合っています。」
「最近の大学教育は、即戦力の人材を送り出すことを重視し、専門教育偏重に陥っていたのではないか。この反省から、教養教育の再評価が始まりました。東工大リベラルアーツセンターは、そのために設立されました。」

「このところ書店の店頭で目立つのは「教養」を冠した題名の書物の多いことです。『文芸春秋』7月号も「いま日本人に必要な『教養』とは何か」という特集を組んでいます。「教養ブーム」です。
この中でフランス文学者の鹿島茂さんは、大学で教養を学ぶとは、方法論を身につけることだと説いています。ヤマト運輸の小倉昌男さんが吉野家の牛丼をヒントに個人宅配を考えついたという例を引き、「他分野のやり方を応用することで画期的なイノベーションが生まれることがある。教養とは多分野の方法論を学ぶことなんですね」と語っています。
多様な知識や方法論を学生時代に習得する。そういう教養があるからこそ、ビジネスで威力を発揮できる。これぞ教養の効用なのです。」

そして、教養を学ぶということは、そもそもの複数分野の基礎的な考え方、思考法、普遍的な学説から有用な思考プロセスを身に付けさせてくれるもの、実は「実学」におけるスキルを発動させるのに、教養とは“十分条件”である、と主張されています。

 

■ つぎに冨山氏の「実学主義」の緊急性を理解する

氏は、企業教育の在り方が変容したため、企業に人材を送り込む大学側が自らの教育機関としての効能を変える必要があると、日本の教育(人材育成)の競争優位維持のための提言となっているようです。

「「企業が従来、一生懸命に社内教育したのは、会社ごとに独特の仕事の仕方が多く、それを熟知することが生産性を高めたから。しかし、IT化やグローバル化が進み、ものづくりも、他国でも通用するように部品や業務の標準化が進んだ。企業固有スキルよりも業界横断的なスキルの比率が上がっている」
「汎用性の高いスキルの教育を企業単位でするのは合理性がない。転職が簡単になり、企業にはインセンティブもない。そうしたスキルを学校という公共的なところで身につけるのは自然な成り行き。教育機関が昔から果たしてきた役割だ」

一昔は終身雇用で長期雇用と企業内教育が保証されていました。しかし、昨今は、雇用の流動性が高まり、その会社でしか通じないスキルは、転職市場において人材価値を高めることに何ら貢献していません。これは笑い話なのですが、ある中高年がリストラされて、塵埃紹介会社のエージェントにどんなスキルをお持ちですか?と聞かれたとき、「はい、部長ができます」と答えたとか。。。

さらに、規格品の大量生産の時代は終焉を迎えたので、とある企業に就職(就社)して、同じ規格の製品の製造に長年従事することで習熟し、また同じ釜の飯を食う人との密接なコミュニケーションのその会社独自のプロトコルに長けていれば、それなりに一つの会社の中でバリューを出せていた時代も遠い日の思い出となりました。

実は、冨山氏のこの論陣も、「地域創生」といった視点からの提言でもあることは無視できません。

2015/2/5|日本経済新聞|朝刊 (経済教室)地方創生策を問う(中)地域産業の「稼ぐ力」高めよ 冨山和彦 経営共創基盤最高経営責任者

「現代の産業構造は、世界で激烈な競争を繰り広げる大手製造業やIT(情報技術)企業のグローバルな経済圏(Gの世界)と、地域密着で対面型のサービス(流通、運輸、社会福祉、飲食、観光)などを提供するローカルな経済圏(Lの世界)に二分される。農業も大半は後者に属する。」

20150205_GとLの地方版成長戦略の枠組み_日経新聞

(日経新聞当該記事より抜粋)

「円高是正と投資家の期待醸成に効果的な政策がそろうアベノミクス第一幕は、外需型産業や富裕層の多いGの世界に対して有効であり、実際、大きな成果を上げている。しかしGとLの間には垂直的な産業連関がないので、トリクルダウン(富のこぼれ落ち)は起きにくいのと同時に、Gの世界をたたいてもLの世界が潤うわけではない。」

まず日本の経済の質、企業競争のフレームワークにおける2極化に真摯に向き合い、それぞれに有効な手を打つ。

「L型産業は「場」の制約を受けるため、規模よりも密度の経済性が重要で、守りに強い業態が多く、中小企業の比率も高くなる。必ずしも中央の大資本に優位性はなく、世界水準のスーパー経営者も不要。グローバル化による空洞化とも無縁だ。大企業の地方誘致やものづくりベンチャーの育成、農業の活性化も大切だが、より重要なのは地域に密着したL型産業の中堅・中小企業の活性化、地道なレベルアップなのだ。
ここでの中心課題は、先進国で最低レベルの我が国サービス産業の労働生産性と低賃金問題(農林水産業の生産性と賃金水準はさらに低い実態がある)の改善である。
生産性、すなわち「稼ぐ力」向上の原動力は何よりも競争に促されたイノベーション(革新)と集約化、つまり新陳代謝であり、鍵を握るのは「ひと」である。」

L型の労働集約的産業の競争力強化のためには、「ひと」に対する教育である。だから、
・シェークスピアではなく、観光英語
・マイケル・ポーターではなく、簿記会計
・憲法・刑法ではなく、道路交通法と大型第2種免許
ということになるのです。

⇒「(エコノフォーカス)稼げる大卒 どう育てる 就職率低迷、2割が非正規雇用 職業教育重視の動き

 

■ 僭越ながら、最後に私見を

まず、どっちの意見に賛成か、という意見表明の前に、こういう議論を自分の頭で考える訓練をしていただきたいものと思います。できれば複数種類のメディアに触れるのがいいのですが、まずは日経新聞でもいいので、継続的に読んで、記事を理解すること。気になる記事はクリッピング(電子版ではそういうサービスもあります)し、記事を単発のインプットにせず、本ブログの投稿のように、複数の論者の複数の記事を横断的に眺められるようにしておくこと。そうすると、自分なりの意見が心の底からふつふつと湧き上がってきます。

さて、最後の最後に筆者の個人的な見解ですが、「教養派」となります。「実学」の促成栽培による「L型産業の競争力強化」「地方創生」の緊急性にも共感します。でも、急いで実学重視で現状対応型の人材を増やしても、すぐにそのスキルは陳腐化してしまいます。その時に、また新たな技能訓練をする必要が出てきます。

人間は考える葦。自分で考えることをやめてしまうと、単なる炭素の有機結合で動く機械にすぎず、それこそ、人工知能に使われる道具になり下がってしまいます。

筆者も、コンサルタントとして、若手を教育する立場にありますが、「魚」を与えるのではなく、「釣竿」と「釣り方の指南」を与えるようにしています。即効性は犠牲になるのですが、教えられた方は一生モノの財産となると信じています。

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(大岡山通信)池上彰 vs (辛言直言)冨山和彦 大学教育の在り方http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭経済動向を会計で読む池上彰,大岡山通信,辛言直言,冨山和彦,教養,G型,L型■ 「教養」か、それとも「実学」か? 現代の大学に課せられた使命とは!? お二人の著名な論者の大学教育論、これまで何度も目にしてきましたが、丁度、取り上げられた記事の掲載タイミングが近かったので、今回は並べて解説していきたいと思います。 2015/5/25|日本経済新聞|朝刊 (池上彰の大岡山通信 若者たちへ)(46)すぐ役に立つ大学 本来の機能失われる懸念 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「米国の大学といえば、リベラルアーツ教育に力を入れていることで知られています。学部の4年間は、人間としての基礎的な教養を身につけることに重点を置き、専門的な学問は大学院で学ぶというのが一般的なカリキュラムです。」 「「社会から求められる学部」ばかりつくっていたら、社会からの要請がなくなった途端、存在の意味がなくなってしまいませんか。「すぐに役に立つことは、すぐに役に立たなくなる」と喝破した、慶応義塾の塾長だった小泉信三氏の発言を思い出してしまいます。」 (日経新聞当該記事より抜粋) 2015/5/27|日本経済新聞|朝刊 (辛言直言)大学で職業訓練せよ 普通の学生には実学重視 経営共創基盤CEO 冨山和彦氏 「国内の大学を、グローバル人材を育てる「G型」と、ローカル人材を育てる「L型」に分け、大多数のL型大学は職業訓練校化すべきだ――。経営共創基盤の冨山和彦・最高経営責任者(CEO)が昨年秋に文部科学省の有識者懇談会に出した提言は大きな反響を呼んだ。今なぜ大学での職業教育が重要になるのか冨山CEOに聞いた。」 (日経新聞当該記事より抜粋) 「大学進学率は今や5割を超え、ほとんどの人は卒業後、職業人になる。学者になるのはほんの一部だ。ところが日本の大学は学術的な一般教養至上主義でやってきて、かみ合っていない。シェークスピアやサミュエルソン経済学などの学術教養は、従来の日本型正規雇用とは相性が良かった。大企業に新卒一括採用で入り、ローテーションで色々な仕事をする前提で、大学では広く浅く教養を身につけ、職場で役立つ技能教育は会社に入ってからでよかった。しかし、そうした就職は今、どんどん減っている」 地域経済の中心はサービス産業で、運転士、介護士、看護師、医師など『ジョブ型』の働き方が多く、この比率が高まっている。そうした産業で働き、より安定した仕事についたり、高い所得を得たりするには技能教育、実学が大事になる。その役割を大学は果たすべきでしょう」 (日経新聞当該記事より抜粋)   ■ まずは池上氏の「教養主義」の重要性からじっくり味わってみる 池上氏は、この連載コラムにて同様の主張を繰り返されていますが、その中から過去コラムをひとつ抜粋版でご紹介します。 2014/6/16|日本経済新聞|朝刊 (池上彰の大岡山通信 若者たちへ)(2)大学で学ぶ教養 多様な知識 じわり効く 「本紙「私の履歴書」に連載中の福地茂雄さんの6回目(6月6日付)に、次のような記述があります。長崎大学の学生だった頃の回想の部分です。 「近年は大学で一般教養を教えることが少ない。ここで学ぶ心理学や論理学、社会思想史に代表されるリベラルアーツはすぐには役に立たない。ただ人生にじわりと効いてくると思う」」 池上氏としては、まず様々な高等技能を身に付けるためには、リベラルアーツ(教養)をまず身に付けましょう。高等技術を身に付けた人がその技能を発揮するためには、人生や社会への理解が無いと、スキルをただ振り回すだけの人になってしまいますよ、と警句を発せられているのだと思います。 「そんな「すぐには役に立たない」リベラルアーツの教育を担当してほしいと依頼され、東京工業大学で教え始めて3年目を迎えました。ずっと役に立たないことを教えているのではないかとの忸怩(じくじ)たる思いを持ちながら、学生諸君に向き合っています。」 「最近の大学教育は、即戦力の人材を送り出すことを重視し、専門教育偏重に陥っていたのではないか。この反省から、教養教育の再評価が始まりました。東工大リベラルアーツセンターは、そのために設立されました。」 「このところ書店の店頭で目立つのは「教養」を冠した題名の書物の多いことです。『文芸春秋』7月号も「いま日本人に必要な『教養』とは何か」という特集を組んでいます。「教養ブーム」です。 この中でフランス文学者の鹿島茂さんは、大学で教養を学ぶとは、方法論を身につけることだと説いています。ヤマト運輸の小倉昌男さんが吉野家の牛丼をヒントに個人宅配を考えついたという例を引き、「他分野のやり方を応用することで画期的なイノベーションが生まれることがある。教養とは多分野の方法論を学ぶことなんですね」と語っています。 多様な知識や方法論を学生時代に習得する。そういう教養があるからこそ、ビジネスで威力を発揮できる。これぞ教養の効用なのです。」 そして、教養を学ぶということは、そもそもの複数分野の基礎的な考え方、思考法、普遍的な学説から有用な思考プロセスを身に付けさせてくれるもの、実は「実学」におけるスキルを発動させるのに、教養とは“十分条件”である、と主張されています。   ■ つぎに冨山氏の「実学主義」の緊急性を理解する 氏は、企業教育の在り方が変容したため、企業に人材を送り込む大学側が自らの教育機関としての効能を変える必要があると、日本の教育(人材育成)の競争優位維持のための提言となっているようです。 「「企業が従来、一生懸命に社内教育したのは、会社ごとに独特の仕事の仕方が多く、それを熟知することが生産性を高めたから。しかし、IT化やグローバル化が進み、ものづくりも、他国でも通用するように部品や業務の標準化が進んだ。企業固有スキルよりも業界横断的なスキルの比率が上がっている」 「汎用性の高いスキルの教育を企業単位でするのは合理性がない。転職が簡単になり、企業にはインセンティブもない。そうしたスキルを学校という公共的なところで身につけるのは自然な成り行き。教育機関が昔から果たしてきた役割だ」 一昔は終身雇用で長期雇用と企業内教育が保証されていました。しかし、昨今は、雇用の流動性が高まり、その会社でしか通じないスキルは、転職市場において人材価値を高めることに何ら貢献していません。これは笑い話なのですが、ある中高年がリストラされて、塵埃紹介会社のエージェントにどんなスキルをお持ちですか?と聞かれたとき、「はい、部長ができます」と答えたとか。。。 さらに、規格品の大量生産の時代は終焉を迎えたので、とある企業に就職(就社)して、同じ規格の製品の製造に長年従事することで習熟し、また同じ釜の飯を食う人との密接なコミュニケーションのその会社独自のプロトコルに長けていれば、それなりに一つの会社の中でバリューを出せていた時代も遠い日の思い出となりました。 実は、冨山氏のこの論陣も、「地域創生」といった視点からの提言でもあることは無視できません。 2015/2/5|日本経済新聞|朝刊 (経済教室)地方創生策を問う(中)地域産業の「稼ぐ力」高めよ 冨山和彦 経営共創基盤最高経営責任者 「現代の産業構造は、世界で激烈な競争を繰り広げる大手製造業やIT(情報技術)企業のグローバルな経済圏(Gの世界)と、地域密着で対面型のサービス(流通、運輸、社会福祉、飲食、観光)などを提供するローカルな経済圏(Lの世界)に二分される。農業も大半は後者に属する。」 (日経新聞当該記事より抜粋) 「円高是正と投資家の期待醸成に効果的な政策がそろうアベノミクス第一幕は、外需型産業や富裕層の多いGの世界に対して有効であり、実際、大きな成果を上げている。しかしGとLの間には垂直的な産業連関がないので、トリクルダウン(富のこぼれ落ち)は起きにくいのと同時に、Gの世界をたたいてもLの世界が潤うわけではない。」 まず日本の経済の質、企業競争のフレームワークにおける2極化に真摯に向き合い、それぞれに有効な手を打つ。 「L型産業は「場」の制約を受けるため、規模よりも密度の経済性が重要で、守りに強い業態が多く、中小企業の比率も高くなる。必ずしも中央の大資本に優位性はなく、世界水準のスーパー経営者も不要。グローバル化による空洞化とも無縁だ。大企業の地方誘致やものづくりベンチャーの育成、農業の活性化も大切だが、より重要なのは地域に密着したL型産業の中堅・中小企業の活性化、地道なレベルアップなのだ。 ここでの中心課題は、先進国で最低レベルの我が国サービス産業の労働生産性と低賃金問題(農林水産業の生産性と賃金水準はさらに低い実態がある)の改善である。 生産性、すなわち「稼ぐ力」向上の原動力は何よりも競争に促されたイノベーション(革新)と集約化、つまり新陳代謝であり、鍵を握るのは「ひと」である。」 L型の労働集約的産業の競争力強化のためには、「ひと」に対する教育である。だから、 ・シェークスピアではなく、観光英語 ・マイケル・ポーターではなく、簿記会計 ・憲法・刑法ではなく、道路交通法と大型第2種免許 ということになるのです。 ⇒「(エコノフォーカス)稼げる大卒 どう育てる 就職率低迷、2割が非正規雇用 職業教育重視の動き」   ■ 僭越ながら、最後に私見を まず、どっちの意見に賛成か、という意見表明の前に、こういう議論を自分の頭で考える訓練をしていただきたいものと思います。できれば複数種類のメディアに触れるのがいいのですが、まずは日経新聞でもいいので、継続的に読んで、記事を理解すること。気になる記事はクリッピング(電子版ではそういうサービスもあります)し、記事を単発のインプットにせず、本ブログの投稿のように、複数の論者の複数の記事を横断的に眺められるようにしておくこと。そうすると、自分なりの意見が心の底からふつふつと湧き上がってきます。 さて、最後の最後に筆者の個人的な見解ですが、「教養派」となります。「実学」の促成栽培による「L型産業の競争力強化」「地方創生」の緊急性にも共感します。でも、急いで実学重視で現状対応型の人材を増やしても、すぐにそのスキルは陳腐化してしまいます。その時に、また新たな技能訓練をする必要が出てきます。 人間は考える葦。自分で考えることをやめてしまうと、単なる炭素の有機結合で動く機械にすぎず、それこそ、人工知能に使われる道具になり下がってしまいます。 筆者も、コンサルタントとして、若手を教育する立場にありますが、「魚」を与えるのではなく、「釣竿」と「釣り方の指南」を与えるようにしています。即効性は犠牲になるのですが、教えられた方は一生モノの財産となると信じています。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します