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アフォーダンス - 用意した側の想定通りに気持ちよくユーザに使ってもらうために留意すべきこと

所感
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■ それ、本当にユーザの立場になって考えていますか?

コンサルタントの仕事のほとんどは、誰かを説得して、誰かを想定通りに動いてもらうために汗をかくことにつきます。我々の努力はその全てがユーザのために注がれなければなりません。しかし、時には、コンサルタントの想定する方向へユーザを軟着陸させる必要が生じることもあります。その際、私は、「アフォーダンス(Affordance)」を重要視しています。デザイン思考から。

さて、下図をご覧ください。3つのドアが並んでいます。

20180701_アフォーダンス

皆さんなら、A、B、Cのドア、いずれが気持ちよく通りたいと思われるでしょうか?

アフォーダンスとは、製品や環境に備わる物理的特徴を意味し、それらはその機能や使い方に影響を及ぼします。製品や環境の形状はまんま、あっちを立てるとこちらが立たずの好例です。丸い車輪は、回転運動には適しますが、静止状態を維持するのには適しません。一方で、四角形は、静止状態を保つのに効果的ですが、回転運動は不得手です。

ボタンは、「押す」という操作に適し、取っ手は、「引く」という動作に適します。望ましいアフォーダンスを持つ製品や環境は、有効に機能して、設計者が余計な苦労をする必要がありません。そして何より、ユーザが直感的に使いこなすことができ、使用感にいささかの違和感もありません。

それゆえ、製品や環境をデザインする際には、正しい使い方(と設計者が考えている使い方)と寸分違わないアフォーダンスを製品や環境に備えさせる必要があるのです。適切なアフォーダンスを備えた製品や環境は、ユーザから的外れな機能を期待されることも、ユーザから意図しない使われ方をすることもないのです。

ここで、アフォーダンスを持ち出したのは、先日のクライアントとの会議後の議事録レビューの際に、

・プロジェクト最終報告会なのに、「決定事項」が記載されていない
・議事録への記載の順番と、記載された項目に振られた番号が異なる

という議事録を作成していた若手に、「一体この議事録を発行して、ユーザに何をしてもらいたいのか?」はなはだ疑問(不満!?)に感じたからです。

さて、冒頭のA、B、Cのドアですが、あなたなら、どのドアを押す(または引く)ことを選びたくなりましたか?

Aのドアは、「Push」と但し書きがありながら、通常は引くための「取っ手」がつけられており、このAのドアは、一体、押すと開くのか、それとも引くと通れるのか、ぎょっとして一瞬判断に迷うことと推察します。

Bのドアは、ただ平らなプレートが付いているので、これは押して開くドアだと直感的に分かると思います。

Cのドアは、左手で押すことを促している点がBのドアと異なる点です。これは社会的な決まり事として、どちらかというと右手が利き手であることを前提に建物などの構造物が出来上がっているので、多くのサウスポーで無い人にとっては、CよりBのドアの方が、押すことに躊躇いが少ないことでしょう。

(エレベータの停止階を定めるボタン、自動改札機、自動販売機など、右手で使うことを前提にした構造物を思い出してください)

ということで、プロジェクト最終報告会の議事録では、まず、決定事項が何かを記述し、報告書の段落の順番で討議内容が備忘録として付いていなくてはいけないのですよ。仮に、重要な課題順に記載する場合は、「取っ手」や「ボタン」のように、「重要事項」という見出しや、「重要性の順番で記載している」という注記をきちんとつけてくださいね。(^^)

⇒「(芸術と科学のあいだ)(62)モノとヒトの間にも相互作用 福岡伸一 2015年4月19日 日経新聞(朝刊)より

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