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香り立つ!コーヒー市場 農園からカップまで…老舗の次なる“1杯” UCC上島珈琲社長・上島昌佐郎 2016年6月16日 TX カンブリア宮殿

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■ コーヒー人気 沸騰中! ブーム支えるUCCの実力

コンサルタントのつぶやき

今、巷ではコーヒーの家飲みブーム。そんな日本のコーヒー文化を戦後から牽引し、川上から川下まで一貫したコーヒー事業を展開するのが「UCC」(ウエシマ コーヒー カンパニー)。

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UCC上島珈琲社長・上島昌佐郎(45歳)。

番組公式ホームページより

UCCの顔① コーヒー豆の輸入
現在、日本はコーヒー豆を年間43万トン輸入しているが、その20%超をUCCが取り扱っている。輸入した豆は、たった一人の鑑定士が味・香りをチェックする。

UCCの顔② 豆の焙煎
その後、豆は自社開発した焙煎マシンへ。独自の技術を使って、スチームで焙煎し、温度も自動コントロール。ムラなく焙煎できるようになり、香り70%アップ(当社比)。

UCCの顔③ 焙煎豆の卸
焙煎した豆は、業務用として卸し、喫茶店やコンビニでコーヒーとなる。その卸の仕事にもプロがいる。店の要望に応じて豆を独自にブレンドし、取引先オリジナルのブレンドコーヒーを客に出せるようにする。UCCにはコーヒーアドバイザーなる社内資格制度があり(現在100名)、豊富なコーヒーに対する知識を持ち、コーヒーの入れ方まで指導できるほどだ。

UCCの顔④ 家庭用コーヒーの販売
焙煎した豆を粉にしたものは、レギュラーコーヒー用として主に家庭に販売。このジャンルでは16年連続シェアトップ。

UCCの顔⑤ 缶コーヒー製造・販売
これも挽きたての豆から作っている。

UCCの顔⑥ コーヒーチェーン運営
複数のカフェチェーンも持っている。上島珈琲店など全国に約650店舗を展開。ここ上島珈琲店では、ダブルネルドリップ方式という独自の製法(抽出した液体をさらに粉に通す)でお客に提供する。

UCCの顔⑦ 自社農園経営
ハワイとジャマイカに自社農園を持っている。

上島社長は世界中を回り、コーヒー農園の開拓を進めている。

「世界的にコーヒーの消費量が伸びているが、生産量が追いついていない。(需要に)応えられなくなるのではという危機感がある。」

実は今、世界中でコーヒーブーム。おなじみの世界的コーヒーチェーン(スターバックスなど)をはじめ、「サードウェーブ」と呼ばれる豆や淹れ方にとことんこだわった珈琲店も台頭。日本ではコンビニで本格的なコーヒーが楽しめるようになり、需要が急増。国内コーヒー消費量は3年連続過去最高を更新している。

さらに、

コーヒー豆に輸入量(米農務省まとめ)
1位 EU 273万トン
2位 アメリカ 144万トン
3位 日本 42万トン

11位 インド 6万トン
12位 タイ 5.4万トン
13位 中国 5.1万トン

と、アジア諸国の消費量が急増しており、今後は豆の奪い合いになると想定されている。そこで、UCCでは生産量を増やそうと、5年前にベトナム事務所を開設し、現地の農園を栽培から収穫の方法まで直接指導している。現在ベトナムでは20の農園と取引を始めている。同じような取り組みは、エチオピアでも行っている。

コーヒーの全てを知り尽くしているUCC。グループ売上高は3348億円だ。

「創業以来のスローガンは、“カップから農園まで”。カップから農園までを通じておいしいコーヒー作りをする。」

今、日本はコーヒーブームだが、世界は?

「アメリカでもコーヒーブームだし、ヨーロッパでも高付加価値のコーヒーが広がっている。アジアでも今、コーヒーが飲まれ始めている。良質な「アラビカ」という豆の消費が非常に伸びている。一方、生産がなかなか追いついていない状況。産地まで入って、生産者と一緒に取り組んで、いいものができたら適正な価格で買う。その代わり、いいものはどういうものかを教える必要もある。お互い理解し合うことで、もっといいものを作る。生産者にとってはモチベーションにつながるし、我々もいいものを作ってもらって、販売できる。そういう取り組みを強化している。」

村上氏から質問。
「多角化する中で、UCCのコア事業とは?」

「これがコアというのは正直ない。原点はコーヒーをとことん突き詰めていくこと。コーヒーの魅力を最大限に発揮できるようにすること。その中で新製品や新しい抽出方法が出てきたり、それを実現するためには機械も作らないとダメ。そのスタンスが我々のアイデンティティー、オリジナリティーじゃないかと思う。プライドも含めて、我々は“コーヒー屋”。」

 

■ 世界初の“缶コーヒー” 知られざる誕生秘話

現社長の祖父(UCC創業者)、故上島忠雄氏。日本にコーヒー文化を根付かせ、日本のコーヒーの父と呼ばれた忠雄。その生涯は挑戦の連続だった。1910年(明治43年)奈良県生まれ。丁稚奉公を経て、神戸で1933年(昭和8年)「上島忠雄商店」創業。ジャムやバターを取り扱う食料品店を開いた。醤油のようでまずそうと思っていたコーヒーを口にして、これはおいしい、いける! 日本人にも必ず飲まれるようになると確信。コーヒー豆も焙煎卸業へ。1951年(昭和26年)「上島珈琲株式会社」を設立。いち早くコーヒー豆の輸入にも乗り出した。そして焙煎豆を引っ提げ、全国の喫茶店を回る日々。

そんなある日、忠雄は駅の売店で瓶詰めのミルクコーヒーを買って飲んだ。しかし、列車の出発時刻になり、飲み残したまま瓶を返す羽目に。人一倍倹約家だった忠雄はもったいないことをしたと後悔しきり。何度もそのシーンを思いだし、考えていると、缶コーヒーのアイデアが頭の中に閃いた。缶コーヒーそのものが世の中になかった時代。開発を始めるといきなり壁が。缶にミルクコーヒーを入れると、缶の鉄分とコーヒーが化学反応し、真っ黒に変色してしまった。その後も失敗の連続。これでは無理という空気感が社内に漂った。

(忠雄)
「コーヒー屋としての魂を缶コーヒーに吹き込むんや。」

ついに1969年、いつでもどこでも飲める世界初ミルク入り“缶コーヒー”が遂に完成。3色のパッケージ。工夫は勘の内側に。特殊なコーティングを施し、化学反応を防いだのだ。当時としては画期的な商品。それが、全く売れなかった。そこで、缶コーヒー誕生の翌年に開かれた大阪万博で、パビリオンや売店に缶コーヒーを売り込んだ。暑い夏、どこでも買えて、冷えた缶コーヒーは大人気。大勢の人に認知された缶コーヒーは大ヒット商品に。スタートの危機を乗り越えたミルク入り缶コーヒーは、これまで累計販売150億本。UCCを代表する商品となった。

「コーヒー屋の我々が一番にやらずして誰がやるんだと。」

ミルクコーヒーに続くイノベーションは業界初、“ブラック”缶コーヒー。コーヒー屋の意地で、缶コーヒーながらコーヒー豆100%、香料なし。1987年発売。缶コーヒーの市場に、新たにブラック市場を創出。

 

■「コーヒー屋」の名にかけて… 常に仕掛ける“次なる1杯”

世の中にないコーヒーを創り出すDNAは現社長にも受け継がれている。

「何かもっとコーヒーで楽しませられないか、もっとコーヒーの魅力を伝えたい。新しいチャレンジをしている最中。」

今売り出しているのは、黒ビールそっくりの新感覚の「アイスブリュードコーヒー」。クリーミーな泡が楽しめる。

 

■「常にチャレンジし続ける」 パイオニア企業の流儀

UCCの業界を常に変革してきた歴史

1933年 創業後 コーヒーの焙煎卸 開始
1969年 世界初 缶コーヒー発売
1970年 業界初 フルオートメーション工場
        業界初 粉の真空パック開発
1981年 業界初 海外に直営農園開設(ジャマイカ)
1987年 業界初 ブラック缶コーヒー発売

(村上氏)
「缶コーヒーは世界初でエポックメイキング的(画期的)な商品で収益性もすごいものだったと思うが、後発メーカーも参入してきて、だんだんコモディティ化していくと、会社は傾いていくのが普通だが、UCCはどうやってそんな危機を乗り越えたのか?」

「常にチャレンジしている。現状に満足することなく常にチャレンジし続ける。結果として新しいイノベーションや新しい製品が生まれる。」

(村上氏)
「缶コーヒーの大成功には満足しなかったということですね」

「もちろん、収益的には良かったと思うが、それとは別に、「コーヒーをもっと広げたい」とか「いつでもどこでもおいしいコーヒーを飲めるようにしたい」という思いがあった。それに対してはまだまだゴールじゃなかった。」

“収益”ではなく、“思い”のゴールに向けて走れ

(村上氏)
「そういうの(チャレンジ精神)は、創業者の忠雄さんから連綿と続いているものなのでしょうか?」

「伝統というか、我々にとっては当たり前。コーヒーはすごくデリケートな飲み物。土をいじるところから始まり、品種選びと精選方法、保存・焙煎・保管・抽出のプロセスなど、やり方次第でコーヒーの味は本当に変わる。もっとチャレンジをして、コーヒーの魅力を伝えていく。コーヒーの新しい魅力を発見したり、作っていくことをやり続ける。」

 

■ 塩鮭にも合うコーヒー!? 最新マシンのマジック

缶コーヒーを生み出した研究室で、今、新発想の研究がおこなわれている。UCC展示商談会「WHO’S FOODS」で、最新鋭マシン、「UCCフードマッチングシステム」がお披露目された。コーヒー鑑定士の舌を再現したもの。まずセンサーで飲み合わせたい食品の成分を分析。最適なコーヒーを導き出すものだ。

例:
ショコラケーキ × 苦いコーヒー
チャーハン × マイルドなコーヒー
塩鮭 × 酸味のあるコーヒー

フードマッチングシステムの原理を簡単に。食品の味を、
①苦味
②渋味
③塩味
④苦味の後味
⑤旨味
⑥酸味

に分類し、食べ合わせ(飲み合わせ)の食品とコーヒーの味を合成して、すべての軸でまんべんなく高い数値を出せるような組み合わせになっていると、すばらしく食べ合わせがおいしく感じられるというカラクリを科学的に証明したもの。

これを使って様々な料理に合うコーヒーを提案できる。それまで取引の無かった新規販売ルート開拓を狙う。

イノベーションでコーヒー市場の拡大を。

 

■ “コーヒー茶漬け”もアリ!? UCCが仕掛ける驚き戦略

「コーヒーにも苦味だけじゃなく酸味系やマイルド系もある。適切なコーヒーを合わせることでお互いを補い合う。料理をよりおいしく食べてもらえる。(鮭茶漬けのようなコーヒー茶漬けのようなものでも)チャレンジしてみたい。うちの会社では、そういうのも面白い、やってみようか、となるのでは。(コーヒー茶漬けのアイデアというのも)新しいコーヒーの魅力だし、1杯でも多くのコーヒーを楽しんでもらえたら。」

「もちろん食後の飲料として楽しんでもらうのは当然、もう一歩踏み込んで食中のドリンクや、場合によっては、食前のカクテル代わりに、おしゃれなコーヒーを飲んでもらう。いろいろな形があるのではないか。」

(村上氏)
「コーヒーへのリスペクトがあって、コーヒーはもっと活躍できるはずだという思いがあるんですよね。」

「コーヒーでもっとお客を喜ばせたい、驚かせたい。コーヒーにできることはまだまだあるんじゃないかと常に思う。」

 

■ お茶文化にもコーヒーを! UCCの飽くなきチャレンジ

台湾・台北市。ここで根付いているのはお茶文化。今年4月、UCCが経営する「COFFEE LOVER’s PLANET」をオープンさせ、本格的カフェとして殴り込んだ。そうすると、店は連日大盛況に。その特徴は、世界中から選りすぐった22種類の豆。客は気に入った豆を購入し、ドリップやサイフォンなど、7種類の抽出方法から好きな淹れ方を選ぶ。すると、コーヒーのプロが目の前で極上の1杯にしてくれるのだ。この香りと味が大評判。コーヒーの様々な可能性を模索するUCC。その川下は世界中に広がっていく。

 

■ 編集後記

上島さんに質問した。
「UCCは、
缶コーヒーの優位性を失っても
衰退しませんでした、なぜですか」
反応は興味深いものだった。
質問の意味がわからない
という表情になったのだ。
やがて
「当社はコーヒーへの
リスペクトが最優先なので、
缶コーヒーの先行開発と
大成功などで満足しないんです」
そんなニュアンスの答えが返ってきた。
びっくりした。
扱う商品への
リスペクトがすべてに優先する、
そんな会社は強い。
負けようがない。
どんな成功にも満足せず
挑戦を続けるという
モチベーションを、
常に、そしてごく自然に
維持しているからだ。

コーヒー、我が愛
村上龍

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