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言葉を大切にするコンサルティング(1)用語を適切に使い分ける

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類語の使い分けに敏感になろう

コンサルティングの仕事は、クライアントとコンサルタントの対話から始まり、対話で終わると考えています。

対話はいろんなツールを用いて行われますが、言葉(自然言語)を用いたコミュニケーションがその多くを占めているでしょう。それは、書き言葉と話し言葉を問わず、です。

認識の齟齬がないように、また、相手にできるだけ共感をもって仕事をできるように、資料や会話で用いる言葉もできるだけ適切に使うことが望まれます。今回は、普段接している方との対話の中で、私が気になった類語の使い分けをご紹介します。

「きてい」

仕事柄、会社内のルール策定のお手伝いをすることが多いので、複数の基準・規定・ルールなどの全体構成や、ひとつひとつの文章の選定に過度なまでに神経を使います。その集中力をいつも削いでくれるのが「規程」と「規定」という漢字(読みは「きてい」で同じ)の誤用・混同です。

「規程」は、特定の目的のために定められた一連の条項の全体をひとまとまりとして表した言葉です。「規定」は、物事のありさまややり方を決まった形に定める行為そのものか、その行為によって定められたルール自体を意味する言葉です。

特に後者の定められたルールを文章で書いたものは、その一つ一つの文章の単位を「条文(じょうぶん)」と呼んだりしますが、「規定」はその「条文」と一般的なビジネスの場合はほぼ同義と考えてください。

つまり、「社内規程」という一連のルールブックの中に、複数の項目からなる「規定(=条文)」が含まれているという関係になります。話し言葉では、この差異は表に出ないのですが、PowerPoint資料やWord資料の中で両者を混同して書くと、読み手に違和感を覚えさせます。すると、読み手の理解度が下がってしまうので要注意です。

最近は、キーボード操作で文章作成が行われるため、弊害として漢字変換ミスも多発します。ときには、「規程」「規定」に加えて、「既定」が登場してきたりするので、さらに混乱を大きくさせます。

「なおざり」と「おざなり」

これは主に話し言葉での混同が目立ちます。

つぎのサイトの説明が一番簡単で分かりやすかったです。

Q:「おざなり」と「なおざり」とは、どう違うのでしょうか?

A:現代語として考えた場合、両方に共通している部分は、「いい加減な対応だ」ということです。そして異なるのは、「おざなり」は「いい加減ではあるにせよ、何らかの対応をする」のに対して、「なおざり」は「多くの場合、何の対応もしない」という点にある、と言うことができます。

外部リンク 「おざなり」? 「なおざり」?|最近気になる放送用語|NHK放送文化研究所

「なおざり」
語源は諸説あるが、「なほ(直・猶)+さり(去)」が有力なもののひとつ。10世紀には使用例があり、「なほ」は「そのまま何もせずにいること」、「去り」は「遠ざける」という意味があり、「なおざり」は「何もしないで距離を置いておく(放っておく)」という意味となる。

「おざなり」
「御座(敷)の形<なり>」を縮めたもの。
19世紀初めには使われ始めており、宴会の席(御座敷)などで表面的に形ばかりを取り繕った言動のことを指したもの。

「最近の新入社員研修は『なおざり』にしかなされていない」
⇒新入社員に対して教育らしきことはほとんど何もしない、という放置プレーと解釈される。

「最近の新入社員研修は『おざなり』になっている」
⇒新入社員に対していい加減ではあってもひとまず教育はしている、という不十分だなという印象を与える。

私は、日本語には最初に「なおざり」という言葉が存在し、それが明治以後、英語の輸入によって、「おざなり」という言葉が使われ始めたと邪推しています。その根拠は、私も受験英語で悩まされた「クジラ公文」に代表される比較級の用例の影響が日本語に出たのではないかという推測です。^^)

The wallet has no more than 10,000 yen.
(= The wallet has only 10,000 yen.)
日本語訳:財布には1万円しかない

The wallet has not more than 10,000 yen.
(= The wallet has at most 10,000 yen.)
日本語訳:財布に入ってるのは、多くて1万円だ

外部リンク 「no」と「not」の違いを理解しよう|比べて分かる英語

「目的」と「目標」

経営戦略論でもさんざん語られていることですが、「目的(purpose)」は、実現しようとしてめざす事柄か、または、その事柄をやろうとする行動のねらい・動機のことを意味します。

「目標(objective)」は、射撃の的(まと)や、行軍の宛先など、そこまで行こうとか、なしとげようとして設けた目当てを指しています。

例えば、「世界一の会社になる」という目的を実現するために、「売上高世界一の会社になる」という具体的な目標を設定してこれを達成しようと努力することは、「目的」と「目標」がきちんと切り分けて頭の中で整理されていることになります。欲を言えば、目的の方を、「世界一の顧客満足を実現する」と置いて、その努力の成果を、売上世界一という目標の達成度で推し量る、とすると、もっと違いをはっきりさせることができるでしょう。

俗説では、クラウゼヴィッツが「戦争論」の中で、「目的はパリ(の占領を行って賠償金/有利な条約の獲得等の政治的意図を達成する)、目標はフランス軍(並みのプロイセン軍の練度を得る、またはフランス軍の撃破)」という定義が一番、「目的」と「目標」の意味の違いを際立たせるとされています。

「目標」の定義文に射撃・行軍という用語が見られるように、「objective」「target」という英語が当てられるように、そもそも軍事用語が起源のようなのですが、クラウゼヴィッツはフランス軍とパリという説明は著書の中では触れていない、というのがどうやら真相のようです。同時代の「参謀総長モルトケ」の発言が起源のようです。

外部リンク 「目的はパリ、目標はフランス軍」|Die Webpage von Fürsten Tod

神は細部に宿る

ミース・ファンデル・ローエ(1886~1969/ドイツのモダニズム建築家)

コンサルタントが言葉を用いる職人なら、ビジネス文書における言葉遣いには、下記のように重言を避けるなど、細心の注意を払っておきたいものです。^^)

みなさんからご意見があれば是非伺いたいです。右サイドバーのお問い合わせ欄からメール頂けると幸いです。メールが面倒な方は、記事下のコメント欄(匿名可)からご意見頂けると嬉しいです。^^)

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