企業会計原則(12)損益計算書原則 - 費用収益対応の原則とは

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■ 損益計算の基本方式から始めよう!

会計(基礎編)

今回から『企業会計原則』における『損益計算書原則』を順番に解説していきます。まずは、損益計算とは何か、簡単に概念説明から入ります。

『企業会計原則』の全体構成は下図の通りです。

財務会計(入門編)_企業会計原則の構造

そして、ここから、『損益計算書原則』の構成を下記に図示します。

財務会計(入門編)_損益計算書原則の体系

損益計算書(P/L)は、損益計算するための財務諸表ということになります。では損益計算とはいったい何を指すのでしょうか。損益計算の基本方式には2つの方法が存在します。

【損益法】
損益 = 当期収益 - 当期費用

【財産法】
損益 = 期末純資産 - 期首純資産
※ 純資産:資産 - 負債 = 資本(ここでは概念的に。実際の制度会計はもう少し複雑です)

損益計算とは、「利益」という資本価値の増殖分を明らかにする計算手法をいいます。通常は1年等、決算期間毎に計算されるものなので、「期間損益」と呼称することもあります。資本価値とは、株主から出資してもらった会社の基本財産部分のことです。ここでは、制度会計の複雑な表示上の問題はいったん脇に置いといて、「純資産」とか「資本」と一般的に呼ばれるものと理解してください。これが1年間でどれくらい増えたかを示すのが「期間損益」や「利益」であり、それを損益法を用いて計算する財務諸表が損益計算書である、という建付けです。

では、そもそもの「財産法」「損益法」の違いを簡単に説明します。株式会社の歴史からは、先に「財産法」が登場します。「財産法」は「静態論会計」の理論に基づき、財産価値のある(法律的にとか現金の裏付けのあるとか)資産の増分を直接、2時点間の財産額を差し引くことで計算します。現代風には、期首期末の貸借対照表の純資産の部の差し引きの要領です。

これに対し、「損益法」は「動態論会計」の理論に基づき、継続企業の収益力表示のための損益計算に力を入れます。企業はひとつの決算期間(通常1年)を超えて永続するもの、ゴーイングコンサーンの公準に基づき、ひとつひとつの会計期間でどれくらい儲けることができたかを価値の増殖としての「利益」「期間損益」で表示しようと意図して計算されます。これは、現代の損益計算書における主要な計算目的となっています。それゆえ、継続企業の収益力表示となるような「期間損益」を計算すること自体が目的となったため、期間損益計算に邪魔な要素は、貸借対照表によせて計上されるので、現在の貸借対照表を用いて「財産法」的な損益計算は厳密な意味ではできない風になっています。
(ただし、何が財産法的ではないかが分かっているので、それをよけて計算することは不可能ではありません)

(参考)
⇒「企業会計の基本的構造を理解する(2)動態論的貸借対照表とは? 収支計算と期間損益計算のズレを補正する損益計算書の連結環
⇒「企業会計の基本的構造を理解する(3)静態論 vs 動態論、財産法 vs 損益法、棚卸法 vs 誘導法。その相違と関連性をあなたは理解できるか?

 

■ 費用収益対応の原則

企業が損益計算書を用いて期間損益を計算する目的は、「企業の経営成績を明らかにすること」です。経営成績を測定するものが期間損益であり、期間損益は当期に発生する費用と収益の差分で計算されるものです。この費用と収益を今期の分として紐づける基本原則が「費用収益対応の原則」ということになります。

第二 損益計算書原則

一 損益計算書の本質

損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない。

そもそも、なぜ費用と収益を対応させないといけないのでしょうか? 一つの会計期間における価値の犠牲の上に、何らかの収益がもたらされていれば、その間の因果関係に基づいて、価値増殖の対応計算をするのが費用と収益を対応させる建前となります。

費用は、原因・努力
収益は、結果・成就

の関係にあり、その差額概念である「利益」は、その会計期間における「業績指標性」と「処分可能性」を兼ね備えた期間損益として計算されると考えられているのです。ここでいう「業績指標性」とは1年間どれだけ儲けたから、これだけ頑張ったのだと認められるということで、「処分可能性」は会社の基本財産以上に増えた価値だから、株主に配当金として分配しても資金的裏付けがあるので大丈夫だよね、という考え方になります。

では次に、その費用と収益の間の相互関係がどのように認められるのかを見ていきましょう。

 

■ 費用と収益が組んず解れつしての対応関係をひとつずつ確認する

損益計算書は、段階利益表示に伴って、いろいろな収益と費用のグルーピング分けがなされています。ここでは読者の方々はある程度のこのグルーピングの意味を理解されている前提で、下図を用いて説明します。

財務会計(入門編)科目別の費用収益の対応関係

「実現主義」の考え方に則って収益(売上高)を計上します。その収益を稼得するために価値を犠牲にした分を、「発生主義」の考え方に則って計算された費用のうち、「費用収益対応の原則」に当てはまるものだけを今期の費用とします。この費用という言葉は、ここでは「原価」を含むものとして使用します。

売上収益をあげるために必要・不可避の価値減少で、金額も売上収益に比例して増減するものは「売上原価」として、最も緊密な関係性・対応関係にあるものとして費用計上します。「個別的対応(直接的対応)」というのは、製商品/サービス一単位の売上と費用(原価)が1対1で対応しているものが分かるものという意味です。

売上収益を上げるために必要・不可避の価値減少ですが、売上収益高と1対1の対応関係はないものを次に考えます。これらは売上収益と「期間的対応(間接的対応)」にあると考えます。この1年間の売上高を稼得するために支出したことは分かっているけれど、製商品/サービスの1単位のどれに該当するかを明らかにすることが難しいものです。

その中で、価値犠牲にした金額が売上収益高と比例的であるものは販売費、比例的ではないものを一般管理費と一般的にざっくり分類します。

ここで、特論として貸倒損失や商品評価損に触れておきます。これらの科目は、必ずしも売上収益をあげるために必要不可欠ではありませんが、経常的にビジネスを行っている場合には、発生が不可避である費用です。信用取引をおこない、一定の在高製商品を保持していれば、経常的に発生せざるを得ないため、これらも上図のカテゴリに無理やり収めるとしたら、一般管理費のグループに入ることとして概念整理をしておきます。

最後に、期間対応の不完全性にも触れなければなりません。販管費(販売費および一般管理費を便宜的に一括りにする際の呼称)の多くは、経常的に発生ものについて、期間収益に対応する期間費用として便宜的に処理されます。ここで便宜的と言っているのは、決算期に近い日付での営業活動は、もしかすると翌期の売上獲得に貢献している活動かもしれないが、簡便的な処理として当期の費用として処理してしまう、ということを意味しています。

したがって、個々の費用の支出項目について来期以降の収益と対応するものを調査分析して繰延処理しない限り、会計期間という概念を使った費用と収益の対応も不完全なものとなってしまうのです。しかしながら、現在のJGAAPでは、特別の支出項目(繰延資産として費用繰延が認められているもの)を除いてはそのような処理をすることはありません。

その理由は下記の通りです。

① 個々の費用項目について、次期以降の収益と対応する費用科目の金額を算出しようとすれば、かえって費用計上の恣意性の介入余地を与えてしまう恐れがある

② 経常的な支出である性質を持つ科目であるならば、簡略な取り扱いをしたとしても、厳格な処理として、一部繰延処理をした場合とさほど結果が変わらない可能性が高い

②については、「重要性の原則」にある通り、かえって期間損益の理解の妨げになる可能性があるともいえるのです。

(参考)
⇒「企業会計原則(11)重要性の原則 - 会計処理と財務諸表での表示を簡便化するための伝家の宝刀!

ここまで、損益計算書原則の体系と、最初に語られるべき「費用収益対応の原則」についての説明でした。

(参考)
⇒「会計原則・会計規則の基礎(1)会計原則の基本構成を知る
⇒「会計原則・会計規則の基礎(2)戦後の日本経済の出発点のひとつとなった『企業会計原則』の誕生
⇒「企業会計原則」(原文のまま読めます)
⇒「企業会計原則 注解」(原文のまま読めます)

財務会計(入門編)企業会計原則(12)損益計算書原則 - 費用収益対応の原則とは

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