企業会計原則(11)重要性の原則 - 会計処理と財務諸表での表示を簡便化するための伝家の宝刀!

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■ 重要だから一般原則扱いされている!

会計(基礎編)

今回は『企業会計原則』における『一般原則』の学習の第11回目となります。今回は、「重要性の原則」になります。

『企業会計原則』の全体構成は下図の通りです。

財務会計(入門編)_企業会計原則の構造

そして、その3部構成の『一般原則』の構成は次の通りです。

財務会計(入門編)_一般原則の体系

この「重要性の原則」は本則(原則)の一般原則に記載があるのではなく、下記の通り注解のTOPに位置するものです。一般原則として記載されていないものの、その重要性から一般原則に準じるというか、一般原則と同様の取り扱いがされています。

企業会計原則 注解

注1 重要性の原則の適用について

(一般原則二、四及び貸借対照表原則一)

企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。

重要性の原則は、財務諸表の表示に関しても適用される。

重要性の原則の適用例としては、次のようなものがある。

(1) 消耗品、消耗工具器具備品その他の貯蔵品等のうち、重要性の乏しいものについては、その買入時又は払出時に費用として処理する方法を採用することができる。

(2) 前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。

(3) 引当金のうち、重要性の乏しいものについては、これを計上しないことができる。

(4) たな卸資産の取得原価に含められる引取費用、関税、買入事務費、移管費、保管費等の付随費用のうち、重要性の乏しいものについては、取得原価に算入しないことができる。

(5) 分割返済の定めのある長期の債権又は債務のうち、期限が一年以内に到来するもので重要性の乏しいものについては、固定資産又は固定負債として表示することができる。

「重要性の原則」は、一般原則の体系には含まれていないのですが、会計全般にかかわる包括的原則であることが一般原則に類似するということで、大抵の教科書では一般原則の一部として説明がなされます。

 

■ なぜ、「重要性」を問うことに意味があるのか?

「重要性の原則」とは、企業会計原則にしたがって会計処理を行い、財務諸表という形式をとって会計情報を表示する際、相対的な比重や相対的危険性を考慮して、原則や手続きの適用に弾力性を持たせることを認めるものです。つまり、相対的に見て、ウェイトの高い事項や危険性の大なるものは重要性があるとして、企業会計原則に定める本来の厳格な手続きを適用することを強制し、その一方で重要性が無いと認めた項目については簡便な方法を容認するというものです。

ここでいう厳格性とは、

① 「正規の簿記の原則」にしたがい、規定通りの会計処理の対象とする
② 独立した科目として表示することで、簡略的または包括的な表示は禁止

することを意味します。

こうした会計処理と表示の2面で厳格性の有無をわざわざ断り書きする意味は、「明瞭性の原則」と「計算経済性」の両立を図ろうとするところにあります。会計、特に制度会計は誰かに伝えて、会計情報を活用してもらう「情報会計」の側面が強くあります。誰かにとって分かりやすい表示であるためには、僅少な金額や取り立てて重要でない取引をわざわざ一目につくように独立表示させない方が、企業会計全体を掴みやすくなるかもしれません。また、厳密に細かい会計処理を施したところで、大勢に影響がない所にコスト(実際にかかる経費や労力・作業時間など)をかけても、得られる情報量が大したものでない場合は、省略した方が会計帳簿の維持コストも節約できますし、同じコストでもっと重要な所に注力できる、というメリットも生じる、と考えるわけです。

財務会計(入門編)明瞭表示の構成

「明瞭性の原則」からは、次のようなものが重要性の観点から判断されるべきです。
① 科目設定・・・会社全体の会計実態が分かるように適切な科目体系にする
② 科目表示・・・大事なものをごちゃまぜにしない
③ 金額表示・・・総額で表示し、例えば売上高と売上戻しを相殺しない

財務会計(入門編)正規の簿記の原則と重要性と誘導法

「正規の簿記の原則」からは、次のようなものが重要性の観点から判断されるべきです。
① B/S完全性の原則により、全ての会計取引は貸借対照表に計上する
② その中から重要でない取引は、簡便的にP/Lにて損益取引として計上する
③ そこまでの重要性もない場合は、簿外資産・簿外負債として一切の表示を省略する

 

■ 「重要性」とは何に対しての重要性なのか?

まず、重要性のランクを図示します。

財務会計(入門編)重要性の原則の適用ランク

会計的な重要性という概念には広範な程度の差異を含む階層的な意味合いがあり、上記のように3階層に便宜的に分別されます。まずは、制度会計ルール的に、重要性が乏しいものと乏しくないものに2分割され、後者がさらに、通常のものと特別なものに分かれます。

重要性の乏しいものは、会計処理も表示も簡略化が許容されます。重要性が乏しくないもので通常なものは、会計処理も表示も厳格に企業会計原則に沿った取り扱いが適用されます。重要性が乏しくなくて特別に大事なものに関しては、会計処理は厳格に処置された後、会計情報の有用性を高めるために、さらに将来な表示が求められます。例えば、子会社に対する債権債務や取引高などが有価証券報告書で詳細に開示されていることが挙げられます。

では、重要性の決め手には何があるでしょうか。

財務会計(入門編)重要性の判断の2面性

【質的な面】
財務諸表の明瞭性を維持することで、企業の財政状態と経営成績を正しく表示し、資本と利益との明確に区分して理解できるようにすること、会計的不正が介入することを防止可能なように財務諸表記載項目を設定し、それぞれにしかるべき会計処理が行われることを担保するものです。

【量的な面】
各勘定科目の金額の相対的比重の高さから判断し、比較的金額の大きな取引は独立科目として誤解が生じないように正規の簿記の手続きを施し、逆に、比較的金額の小さな取引には簡便的な処置と他の勘定科目と一括的な表示をしても、財務報告の真実性を歪めない程度の簡略化を認めるものです。

 

■ 「重要性の原則」に対する会計実務家の本音

会計実務に携わっている方にとっては、必ずこの「重要性の原則」を頭に浮かべながら日々の会計処理に挑んでいるはずです。どこまで詳細にかつ厳格に会計処理すべきか、自分の残業時間との勝負になっているはずだから。(^^;)

それゆえ、一体、どの勘定科目なら簡便的な処理で済ますことができるか、一体、いくらまでなら包括表示が許されるか、興味があるところだと思います。ここで奥歯に物が挟まる言い方しかできないのは筆者にとっても歯がゆいのですが、もうそれは「ケースバイケース」としか、言いようがありません。

だって、金額的僅少だと言っても、兆円企業と億円企業とでは、絶対値でかなりの差があることは明らかだからです。また、経過勘定や一部の棚卸作業を省略できるか否かは、その企業の正常営業循環の安定度次第になるので、一概には言えません。

ただし、上記の「質的な重要性」と「量的な重要性」は「or条件」ではなく、必ず「and条件」で適用されねばなりません。重要性のない取引とは、金額も十分に小さいし、処理も簡便化しても公表財務諸表の理解を妨げないものであるべきだからです。

唯一つだけ言えるのは、会計士や上司が「それは重要性の原則の観点から、無視し得るので簡単な方法で行きましょう」と唱え始めたら、その人の会計的な実力をまず疑ってみるクセをつけることは大事かもしれませんね。(^^;)

財務会計(入門編)企業会計原則(11)重要性の原則 - 会計処理と財務諸表での表示を簡便化するための伝家の宝刀!

(参考)
⇒「会計原則・会計規則の基礎(1)会計原則の基本構成を知る
⇒「会計原則・会計規則の基礎(2)戦後の日本経済の出発点のひとつとなった『企業会計原則』の誕生
⇒「企業会計原則(1)真実性の原則とは
⇒「企業会計原則(2)正規の簿記の原則とは
⇒「企業会計原則(3)資本取引・損益取引区分の原則とは - 会計実務ではないがしろにされているけれど
⇒「企業会計原則(4)明瞭性の原則とは(前編)- 財務諸表によるディスクロージャー制度の包括的な基本原則
⇒「企業会計原則(5)明瞭性の原則とは(中編)- 読めばわかる財務諸表のための 区分表示の原則、総額主義の原則
⇒「企業会計原則(6)明瞭性の原則とは(後編)読めばわかる財務諸表のために記載する注記 会計方針、後発事象
⇒「企業会計原則(7)継続性の原則とは(前編)相対的真実を守りつつ、比較可能性と信頼性のある財務諸表にするために
⇒「企業会計原則(8)継続性の原則とは(後編)変更できる正当な理由とは? 過年度遡及修正と誤謬の訂正の関係まで説明する
⇒「企業会計原則(9)保守主義の原則とは - 期間損益計算と予見計算におけるキャッシュアウトを最小限に抑えて企業体力を温存するために
⇒「企業会計原則(10)単一性の原則とは - 形式多元は認めるけど実質一元を求める。二重帳簿はダメ!
⇒「企業会計原則(11)重要性の原則 - 会計処理と財務諸表での表示を簡便化するための伝家の宝刀!
⇒「企業会計原則」(原文のまま読めます)
⇒「企業会計原則 注解」(原文のまま読めます)

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