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原価計算基準(19)原価計算の一般的基準 ②原価管理のための一般基準 – 原価管理は誰かの努力と使命感によって行われている!

原価計算(入門)
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■ 原価計算の理論的総括のつづき

さて、原価計算基準の「第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準」の最終項にようやく辿り着きました。ここらで原価計算基準の一回目の中締めと参ります。ここまでが理論紹介でこの後は処理の解説になりますので。

原価計算(入門編)原価計算基準の体系

これが原価計算基準の体系となります。まだ、最初の箱が終わろうとしている所です。

では詳細な説明に入る前に、「基準一」から「基準六」までの全体像はこちら。

原価計算(入門編)原価計算基準の一般的基準の構成

原価計算基準における「六 原価計算の一般的基準」を簡単にまとめると次の3つになります。

(1)財務諸表作成のための一般的基準
(2)原価管理のための一般的基準
(3)予算管理のための一般的基準

前回は(1)の説明でしたので、今回は(2)以降となります。

 

■ 原価は誰かの努力と責任によって作られている!

(2)原価管理のための一般的基準
この規定は、基準一(三)原価管理目的に対応する原価計算処理に必要な要件を示したものです。この要件を満たすために、次の7つの原価処理が求められています。

① 責任区分明確化の原則
② 管理的原価分類の原則
③ 物量計算の原則
④ 標準設定の原則
⑤ 比較性の原則
⑥ 差異分析・報告の原則
⑦ 計算能率の原則

では、本文を読みながら簡単な解説を付していきます。どうしても、性質の理解のためということから、この項は本文の規定を読み込むことが理解への早道と思いますので。

六 原価計算の一般的基準

(二) 原価管理に役立つために、

5 原価計算は、経営における管理の権限と責任の委譲を前提とし、作業区分等に基づく部門を管理責任の区分とし、各部門における作業の原価を計算し、各管理区分における原価発生の責任を明らかにさせる。

① 責任区分明確化の原則
原価管理に限定したお話ではなく、一般的に管理会計は誰かの責任になっている数字の管理権限は同一人格に与えられるべき、即ち責任と権限の範囲と質が一致している必要があります。原価管理においては、それぞれの原価責任が明確になっており、そのうえで、その与えられた範囲におけるコストコントロールの権限が管理担当者に移譲されている必要があるのです。

 

 6 原価計算は、原価要素を、機能別に、また直接費と間接費、固定費と変動費、管理可能費と管理不能費の区分に基づいて分類し、計算する。

② 管理的原価分類の原則
財務諸表作成目的の観点だけに限定すれば、材料費、労務費、経費といった形態別分類だけで事足ります。しかし、部門別に原価管理するためには、費用発生の原因を形態別で捉えるだけでは不足しており、例えば、サービス費、販売費、製造費、調達費、生産技術費など、機能別の原価管理部門ごとに識別する必要があります。それぞれの責任部門において原価管理を最も効率的に行うために、さらに固変分解や管理可能分類を行うことは理に適っているのです。

 

 7 原価計算は、原価の標準の設定、指示から原価の報告に至るまでのすべての計算過程を通じて、原価の物量を測定表示することに重点をおく。

③ 物量計算の原則
標準原価や原価標準のくだりで説明しましたが、原価は、単価×数量で表現されるものです。

製品原価1 = 単価 × 数量
= @8円 × 5個
= 40円

製品原価2 = (価格 × 消費量)× 生産量
= ねじの購入単価 × 製品1個当たりのねじ消費量 × 製品の生産数量
= (@2円/本 × 4本)× 5個
= @8円/個 × 5個
= 40円

原価要素を価格面と物量面とに分けて管理しようとするのですが、ここには従来の原価管理の普遍的な経験則が効いています。というのは、一般的に、購入単価は市場を通じて外部から決められる性質が強い一方で、物量面は社内の生産ライン内で専ら管理できる性質が強いのです。それゆえ、生産管理現場への干渉度合の強弱でもこのような原価分解は理屈に合っていました。もちろん、時代の趨勢とものづくり形態が様々に進化している現在では、あくまで一般的傾向として受け取ってください。

原価計算(入門編)原価標準カード

⇒「原価計算基準(11)原価の諸概念② 標準原価と原価標準の違いを本当に分かっていますか?

 

■ 原価管理は暴れ川の治水のごとく、たゆまぬ努力によって!

 8 原価の標準は、原価発生の責任を明らかにし、原価能率を判定する尺度として、これを設定する。原価の標準は、過去の実際原価をもってすることができるが、理想的には、標準原価として設定する。

④ 標準設定の原則
原価管理は、目標原価や標準原価と実際原価の差異分析(差額分析)に基づいて行われます。ドラッカーばりの目標管理とかPDCA理論によって、原価標準の設定(P)→原価能率の測定(D)→差異分析(C)→改善策の実行(A)の手順で行われます。差異分析の時点で、先述の物量とともに価格にも標準を設定する標準原価計算制度、または、実際原価計算制度の下でも、並行して原価標準に基づく原価差異を求めることもできます。

原価計算(入門編)標準原価の求め方

⇒「原価計算基準(12)原価の諸概念③ 標準原価の一番簡単な求め方

 9 原価計算は、原価の実績を、標準と対照比較しうるように計算記録する。

⑤ 比較性の原則
この原則は元々、業績評価目的で記述されたものと解されています。しかし、業績評価そのものではなく、その前提として、実績と標準から、差異を算出することを意図しているわけではなくて、その差異分析のための実績値と標準値の比較可能性を担保できるようにデータを揃えておくようにという注意書きと理解した方が分かりやすいでしょう。それは、次項とワンセットと読むのです。

原価計算(入門編)原価標準の設定の意味

 

 10 原価の標準と実績との差異は、これを分析し、報告する。

⑥ 差異分析・報告の原則
本項は、先項とワンセットにして、経営管理者が必要な原価改善措置が講じることができるように、原価差異を算定し、分析結果を経営管理者に報告することの重要性を喚起したものです。このとき、差異分析が活用されるのは、事前管理と事後管理、両方の場面に共通しているのは言うまでもありません。

原価計算(入門編)事前・事後管理プロセス

⇒「原価計算基準(14)原価の諸概念⑤ 標準原価を使ってどうやって管理会計するんですか?

 

 11 原価計算は、原価管理の必要性に応じて、重点的、経済的に、かつ、迅速にこれを行なう。

⑦ 計算能率の原則
当たり前のことかもしれませんが、長年同じ製品を製造・販売している中で、毎年の原価も暴れることなく、生産能率も維持されているところより、常に原価が暴れて、生産能率の変動の大きい、先読みが難しい箇所を重点的に注目し、手厚く管理することは経営の要諦です。そのことを改めて思い起こさせてくれるのが本項なのです。

また、管理作業というものは、長年継続していくと、毎年例外的な事項が発生し、その都度管理項目が増え、管理粒度を細かくし、報告レポートの種類が増えるものです。原価管理部門を設定する際にも、作業単位ごとに細分化しすぎて、原価証跡を責任部署に跡付けることが困難になれば、そもそもの原価管理目的が本末転倒な事態を引き起こすのです。そこで、適切な粒度で原価管理単位を設定することを常に意識する必要性をあることを思い起こしてくれる項目となっています。

⇒「原価計算基準(1)原価計算の一般基準の体系
⇒「
原価計算の歴史 - 経営課題の変遷と原価計算技法・目的の対応について
⇒「原価計算基準(18)原価計算の一般的基準 ①財務諸表作成のための一般基準 – 取得原価主義に基づいた全部実際原価を提供する
⇒「原価計算基準(全文参照できます)

原価計算(入門編)原価計算基準(19)原価計算の一般的基準 ②原価管理のための一般基準 - 原価管理は誰かの努力と使命感によって行われている!

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