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原価計算基準(24)製造原価要素の分類基準 ②機能別分類 個別論点:活動基準原価計算

管理会計_アイキャッチ原価計算(入門)
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■ まず「機能」の意味の復習から

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前回に引き続き、原価計算における勘定科目の区分の仕方として2番目に取り上げられている「機能別分類」の各論について説明したいと思います。

前回、「機能別分類」における「機能」の意味について、次のように定義しました。

「機能とは、提供されるべき製品(またはサービス)を生み出すために、企業内でどういった活動がなされるのか、付加価値を生み出すプロセスの種類を識別するものである」

プロセス(活動)が製品産出のための製造行為そのものであれば、「加工費」と呼ばれることが多いでしょう。修繕行為ならば「修繕費」、検品作業ならば「検品作業費」と名付けられるかもしれません。

製品/サービスを直接的に産出するための作業はその企業(工場)においても、メインストリームとなるのが普通なので、その作業内で使用される材料は、「主要材料費」と呼び、直接的な生産・製造活動ではない作業で使用する材料費を「補助材料費」と呼ぶことには合点がいくと思います。

もう一度ここで本文を確認してみましょう。

(二) 機能別分類

機能別分類とは、原価が経営上のいかなる機能のために発生したかによる分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを機能別に分類する。この分類基準によれば、たとえば、材料費は、主要材料費、および修繕材料費、試験研究材料費等の補助材料費、ならびに工場消耗品費等に、賃金は、作業種類別直接賃金、間接作業賃金、手待賃金等に、経費は、各部門の機能別経費に分類する。

原価計算基準(原文)

賃金(労務費)については、賃金の発生理由にしたがって、「作業種類別直接賃金」「間接作業賃金」「手待賃金」という分類がなされていますが、原価管理の現場では、もうあまり馴染みのないものになっていると感じています。皆さんの職場では如何でしょうか?

■ 原価管理への役立ちの視点から「機能費」を見る

その昔、少品種大量生産(マスプロダクション)が当たり前だった時代、総合原価計算で製品別原価を算出するのは普通のことでした。予定原価または標準原価を計算し、実際原価計算との差異を分析します。

この原価差異分析の過程において、もはや勘定科目別の「作業種類別直接賃金」「間接作業賃金」「手待賃金」という分類は分析の主役たり得ません。操業度差異、時間差異、賃率差異として、予定原価または標準原価とのブレ幅を見て、原価低減の作戦を練るのが通常でした。

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勘定科目別に、賃金(労務費)を作業種類別直接賃金」「間接作業賃金」「手待賃金」という発生態様の別に分析するということは、賃金(労務費)のそもそもの発生原因を探る、そのもの以外の何ものでもありません。

原価計算(入門編)_原価計算で配賦計算するところ
この図表において、賃金(労務費)がこのような描かれ方をするところに実は深い意味があるのです。

材料費は、製品原価を求める際にどの部門で発生したか、あるいはどういう理由で発生したかを知るより、製品/サービスが有する機能そのもの(ユーザ・インターフェースだったり、駆動系だったり、計算機能そのものであったり)に対して、いくら発生したかが重要です。ですので、いきなり製品別にどの材料をいくつ使用していくらになったかを直接的に把握するのが常です。

また、経費は、部門別に把握すると、その部門が「機能」を概ね代表してくれるので、ひとまず部門別に集計(これを部門別計算という)した後、部門費をとある製品別に配賦するための配賦基準でひもづけてあることで、製品別の経費がいくらだったかを知るようにします。

さて賃金(労務費)の原価管理の要諦と製品へのひもづけ方にはどんな方法が採られるのが一般的なのでしょうか? そしてそれにはいったいどんな意味があるのでしょうか?

■ 労務費は加工費として製品当たり原価を算出するのが一般的

どうしてもBlogのような平面(2次元)で「原価計算基準」という文章を頭から説明しようとすると、条文間を飛び回るような説明が必要なケースに遭遇します。できるだけ初学者にもわかりやすいように、順序良く説明することを心掛けているのですが、ここでは一部諦めて、条文先取りの合わせ技で説明することをお許しください。

第一節 製造原価要素の分類基準
八 製造原価要素の分類基準
(三) 製品との関連における分類
必要ある場合には、直接労務費と製造間接費とを合わせ、又は直接材料費以外の原価要素を総括して、これを加工費として分類することができる。

原価計算基準(原文)

いきなり製品に跡付けることができる「材料費」と、部門別計算を前提にしている「経費」
とは異なり、「賃金(労務費)」は、どっちつかずでして、経費とひとまとめにして「加工費」として処理してもいいし、「直接労務費」として材料費のように独立させて、製品にひもづけてもいい、という規定になっています。

これには2つの真意が隠されていると思ってください。

    1. 労務費を経費と独立させて管理するのは面倒くさいので「加工費」にひとまとめにしたい
    2. 結局、労務費と経費に分けて別々の配賦基準を用いることの意味が見いだせない

「原価計算基準」が制定された時代(今もそうかもしれませんが)、圧倒的に総合原価計算の適用範囲が広かったので、総合原価計算をコンピュータやERPもなかった時代にやり切るには、「加工費」でひとくくりにして原価計算をしないと手が追い付かなかったのも事実です。

また、同じ部門で組み立て作業や切削作業をしているのに、そこで発生する部門費用を「労務費」と「経費」に区別することは簡単ですが、それぞれを、直接作業時間(ヒトの作業時間)と機械作業時間(機械の運転時間)という配賦基準値を2組用意して、バラバラで製品に配賦することの有意義性があまり感じられないのです。

どうせ、組立部門における組み立て作業の全てに係る作業を効率化しないと、製品原価を低減できないので、組立部門全体の問題としてコストダウンに取り組みます。自動化・省力化を図って人手から機械化する場合は、労務費が減った分、機械の減価償却費と燃料費(重油だったり電気代だったり)がかさむことになります。どちらか一方だけを相手にしていては、コスト削減施策がやりにくいのです。

■ やっぱりアングロサクソンはすごかった、、、ABCって!

活動基準原価計算(ABC:Activity-Based Costing)という原価計算手法は、ロバート S. キャプラン(Robert Samuel Kaplan)が1980年代に提唱したものです。彼は、バランスト・スコアカード(BSC:Balanced Score Card)の提唱者でもあります。

活動基準原価計算の原形
販売部門におけるセールスマンの人件費と旅費交通費。あなたなら、どうやって製品に配賦しますか? 販売費(販売部門費)だって「総原価」の一部ですよ。どうやって“製品”(当然この場合、生産しただけではなくて、顧客に販売された“商品”として)に配賦したら、①製品原価もなるべく精緻に捉えられ、かつ、②原価低減活動にも役立てられる情報にできるか、について、活動基準原価計算(ABC:Activity-based Costing)は実に見事に練られたコンセプトです。

販売活動を直接、ひとつひとつの販売された製品にひもづけることは難しいでしょう。でも、どういう販売活動したら製品が売れたのかはわかります。しかも、どういう販売活動にいくら、どんな費目でコストが発生したかを認識することも相対的に容易になります。前者が「アクティビティドライバー」で、製品と活動をひもづけて、後者が「リソースドライバー」で活動とリソース(コストの発生元)をひもづけるのです。

しかる後に、リソースドライバーとアクティビティドライバーをつなぎ合わせると「コストドライバー」が完成します。これで、販売部門費を製品(商品)に配賦することができました。

活動基準原価計算(ABC)は、いわゆる加工費や間接費(一般的には販管費を含む)をできるだけ無理なく製品に配賦するだけでなく、どうしたら製品配賦されるコストを下げることができるか、ヒントも示してくれます。そうです、販売される製品(商品)単位当たりの活動量をどうしたら下げられるか、を考えればよいのです。

ヒトは、発生コストを上下させることより、活動量を調整することの方が得意なのではないでしょうか?

とはいえ、現在、ABCのブームが去っている(と筆者は感じている)理由はまた別の機会にお話ししたいと思いますが、これで、製造原価要素を「機能別分類」することの意味を追求すると、活動基準原価計算(ABC)に行き着くことが理解頂けたと思います。

さて、次回予告。さらに、「機能別分類」からちょっと飛び出して、今度は「材料費」について、部品表(BOM:Bills of Materials)との関連についてさらっとお話しするつもりです。^^)

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