原価計算基準(22)製造原価要素の分類基準 ①形態別分類

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■ どうして、原価計算基準で原価科目の分け方を示しているのか?

原価計算基準には、原価計算のためのルールが記述されています。そもそも、どういった費目にしたがって計算対象とされる金額が把握されるのか。原価勘定の区分の仕方にいくつもの流儀があり、また複雑なことに、会計実務においては、それらの分類を組み合わせて財務諸表で表示されたりしています。

当然、中国のように、国家的規模で勘定科目が法定で決まっている国もあれば、日本のように、会社の裁量に任されている国もあります。ビジネスモデルによって多少の色合いは異なりますが、あまり用いる言葉を違えたり、分け方が突飛だと、公衆に向けて公開して、企業業績を理解してもらうというディスクロージャー制度の根幹を揺るがすことにもなりかねません。そこで、ある程度、分類の考え方や用いる名称について、共通理解を得ておきましょう、という意味で、いくつかの定義が用意されています。

当然、管理会計は社内だけで通用する社内用語で十分コミュニケーションできますので、社内だけに目を向ければ、社外の人からの分かりやすさは二の次で、管理目的に準じるのだと考えるのもひとつの方法です。それでも、原価の門外漢には分からない、社外の人(会計監査人を含む)には分からない原価費目名称を使って仕事をしていてはいけないと筆者は思います。

内向きの管理会計だって、外向きの財務会計だって、会計情報は誰かに伝えて、その人の活動を必要に応じて変えてもらうための「情報会計」という側面があるのだから。

(1)形態別分類 (材料費、労務費、経費)
(2)機能別分類 (目的別分類)
(3)製品との関連における分類 (直接費と間接費)
(4)操業度との関連における分類 (変動費と固定費)
(5)原価の管理可能性に基づく分類 (管理可能費と管理不可能費)

(1)形態別分類
① 材料費:物品の消費によって生ずる原価
② 労務費:労働用役の消費によって生ずる原価
③ 経 費:材料費と労務費以外の原価

(2)機能別分類
経営上の機能(製造、修理、試験研究、品質管理など)の目的別に分類
上記の形態別分類の補助として使用される
例)
材料費ならば、「主要材料費」「修繕材料費」など
労務費ならば、「作業別直接賃金」「間接作業賃金」など

(3)製品との関連における分類
・直接費:一定単位の製品の生成に関して直接的に認識できる原価(直接材料費など)
・間接費:一定単位の製品の生成に関して発生額が分からないので、「配賦(はいふ)」と呼ばれる一種の仮説に基づく割り当て計算をして製品にひもづける必要のある原価

(4)操業度との関連における分類
・変動費:操業度の増減に応じて比例的に増減する原価(材料費など)
・固定費:操業度の増減に関わらず変化しない原価(工場の建物減価償却費など)

(5)原価の管理可能性に基づく分類
・管理可能費:原価発生の多寡を管理者が自分の裁量でコントロールできる原価
・管理不能費(管理不可能費):原価発生の多寡を管理者が自分の裁量でコントロールできない原価

以下、原価勘定、原価費目の分類や使い分けについて解説した過去投稿:
⇒「原価計算 超入門(7)全部原価と直接原価の違い
⇒「固定費の配賦の目的をきちんと認識していますか? -共通費と固定費の違い
⇒「限界利益の使い方の誤解を解く - 固定費があるから変動費がある。コストを固変分解する所に限界利益あり!

 

■ なにゆえ形態別分類から始まるのか?

第一節 製造原価要素の分類基準

八 製造原価要素の分類基準

原価要素は、製造原価要素と販売費および一般管理費の要素に分類する。

製造原価要素を分類する基準は次のようである。

(一) 形態別分類  形態別分類とは、財務会計における費用の発生を基礎とする分類、すなわち原価発生の形態による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを材料費、労務費および経費に属する各費目に分類する。

材料費とは、物品の消費によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分する。

1 素材費(又は原料費)
2 買入部品費
3 燃料費
4 工場消耗品費
5 消耗工具器具備品費

労務費とは、労務用役の消費によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分する。

1 賃金(基本給のほか割増賃金を含む。)
2 給料
3 雑給
4 従業員賞与手当
5 退職給与引当金繰入額
6 福利費(健康保険料負担金等)

経費とは、材料費、労務費以外の原価要素をいい、減価償却費、たな卸減耗費および福利施設負担額、賃借料、修繕料、電力料、旅費交通費等の諸支払経費に細分する。

原価要素の形態別分類は、財務会計における費用の発生を基礎とする分類であるから、原価計算は、財務会計から原価に関するこの形態別分類による基礎資料を受け取り、これに基づいて原価を計算する。この意味でこの分類は、原価に関する基礎的分類であり、原価計算と財務会計との関連上重要である。

ここで、平易な言葉と定義に置き換えます。

● 材料費
物品(モノ)を消費することで発生する原価

● 労務費
労働力(ヒト)を消費することによって発生する原価

● 経費
物品、労働力以外の原価財(コト)を消費することによって発生する原価

むしろ、モノとヒト以外は、コトとして、消極的な定義として、つまりその他として「経費」扱いになると考えてください。それは、大本の製造業は、モノとヒトの消費が原価の大半を占めていたという重要性の視点からの分類なのです。原価計算は製造業における期間原価把握のために生み出されたものですから。ただし、現在の製造業は、素材メーカーといえども、経費が占める割合はバカにできません。加工組立業の場合、下手すると、製品原価は経費の塊だったりします。あの巨大工場の減価償却費は、だって「経費」に含まれるのだから。

 

■ 原価計算制度が財務会計と有機的結合のもとで実施されるための表示

話の先取りをしてしまうと、一般的な財務諸表作成目的で行われる原価計算は、

(1)形態別分類 (材料費、労務費、経費)
(2)機能別分類 (目的別分類)
(3)製品との関連における分類 (直接費と間接費)

の3つの分類の組み合わせで原価勘定体系が構成されることが圧倒的多数事例となります。

原価計算(入門編)財務報告目的で材料費を分類

そしてなぜ、この順番なのか?
それは、原価計算プロセスの3ステップを思い出してください。

①費目別計算
②部門別計算
③製品別計算

①においては、どんな発生理由で、どんな名目の原価が発生したかを知りたいので、それは形態別分類で。

②においては、しっかりと部門別の業務目的が定義されていれば、それぞれの部門における機能別(目的別)原価がいくらかを知りたくなるはず。逆に言うと、業務目的別に部門が分けられているかもです。

②においては、製品に対し、直課(賦課)すべき原価なのか、配賦せざるを得ない原価なのか、製品への原価の紐づけ方法を左右する一番の決め手となる「直接費」か「間接費」かを知ることが大切なポイントになります。

最後に、財務会計上の費用測定基準と原価計算上の原価金額(価額)の把握基準の似て非なる特徴について。財務会計は、費用の測定(いくらか)を「支出」に基づいて行いますが、原価計算は原価の測定を「消費」に基づいて行います。

例えば、5月に材料を100円分購入し、対価を現金で支払ったとします。その内、80円分だけ使って(消費して)、残りの20円分は月末の棚卸資産となったら、製造原価に持っていく材料費は80円だけです。

例えば、工場の製造ラインに入っている正社員のAさんが5月の給与を30万円受け取ったとして、給与計算が20日締めだったら、その5月度給与の内、5月の労務費は20万円だけとなるのです。だって、20日分だけの労働力の提供の対価を計算しなければならないから。

まあ、以下の期間で昇給とか残業が無ければ、
① 4月21日~4月30日
② 5月1日~5月20日
③ 5月21日~5月31日

この①の期間と②の期間が行って来いなので、5月20日にもらった5月度給与をそのままそっくり5月度の労務費に充てても、重要性の原則の範囲内なら問題ないとするのが実務的だとは思いますが。(^^;)

ご参考にしてください。

⇒「原価計算基準(1)原価計算の一般基準の体系を整理 - ざっと原価計算基準の世界観を概括してみる!
⇒「原価計算基準(18)原価計算の一般的基準 ①財務諸表作成のための一般基準 – 取得原価主義に基づいた全部実際原価を提供する
⇒「原価計算 超入門(5)基本的な原価計算の流れ -製品原価を求めてみる
⇒「原価計算基準」(全文参照できます)

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