原価計算基準(18)原価計算の一般的基準 ①財務諸表作成のための一般基準 – 取得原価主義に基づいた全部実際原価を提供する

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■ ここで原価計算の理論的総括を行います!

さて、原価計算基準の「第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準」の最終項にようやく辿り着きました。ここらで原価計算基準の一回目の中締めと参ります。ここまでが理論紹介でこの後は処理の解説になりますので。

これが原価計算基準の体系となります。まだ、最初の箱が終わろうとしている所です。

原価計算(入門編)原価計算基準の体系

では詳細な説明に入る前に、「基準一」から「基準六」までの全体像はこちら。

原価計算(入門編)原価計算基準の一般的基準の構成

原価計算基準における「六 原価計算の一般的基準」を簡単にまとめると次の3つになります。

(1)財務諸表作成のための一般的基準
(2)原価管理のための一般的基準
(3)予算管理のための一般的基準

 

■ 外部公表用の財務諸表を作成するために真実の原価を計算すること!

(1)財務諸表作成のための一般的基準
この規定は、外部公表用の財務諸表を作成するために、「真実の原価」の要件を確認したものです。この要件を満たすために、次の4つの原価処理が求められています。

① 全部原価の原則
② 信憑性の原則
③ 原価差異適正処理の原則
④ 財務会計との有機的結合の原則

では、本文を読みながら簡単な解説を付していきます。どうしても、性質の理解のためということから、この項は本文の規定を読み込むことが理解への早道と思いますので。

六 原価計算の一般的基準

原価計算制度においては、次の一般的基準にしたがって原価を計算する。

(一) 財務諸表の作成に役立つために、

1 原価計算は原価を一定の給付にかかわらせて集計し、製品原価および期間原価を計算する。すなわち、原価計算は原則として

(1) すべての製造原価要素を製品に集計し、損益計算書上の売上品の製造原価を売上高に対応させ、貸借対照表上仕掛品、半製品、製品等の製造原価をたな卸資産として計上することを可能にさせ、

(2) また、販売費および一般管理費を計算し、これを損益計算書上期間原価として当該期間の売上高に対応させる。

① 全部原価の原則
財務会計(制度会計)での期間損益計算のために、原価計算が行うべきことは、営業利益計算のために、売上高から差し引くべき期間費用を算出することです。その期間費用は、棚卸資産評価に基づく売上原価と期間的集計がされる販管費から構成されます。つまり、直接原価(部分原価)では、外部公表用のP/Lにおける期間損益計算には相応しくないとここで断言しているわけです。

原価計算(入門編)財務諸表作成目的による原価計算制度

⇒「原価計算基準(2)原価計算の目的 - ①財務諸表作成目的、②価格計算目的の盲点を突く!
⇒「原価計算基準(16)原価の諸概念⑦ 全部原価と部分原価 原価計算制度は全部原価を求め、全部の対義語として部分があるが、実質は直接原価しかない件

 

■ 真実の原価は信憑性の高い原価資料から求められること!

2 原価の数値は、財務会計の原始記録、信頼しうる統計資料等によって、その信ぴょう性が確保されるものでなければならない。このため原価計算は、原則として実際原価を計算する。この場合実際原価を計算することは、必ずしも原価を取得価格をもって計算することを意味しないで、予定価格等をもって計算することもできる。また必要ある場合には、製品原価を標準原価をもって計算し、これを財務諸表に提供することもできる。

② 信憑性の原則
原価計算により算定された売上原価、棚卸資産評価額、販管費は、公表用財務諸表の作成のための基礎資料となります。それらの金額の公正妥当性は、客観性や検証可能性を具備したデータから求められることになります。こういう条文は時代の変遷を感じさせますね。IT関連の技術進歩のスピードがものすごい現代では、わざわざ証憑の信憑性を条文で言及する規定があるのは逆に当時のデータ保管維持の苦労がしのばれるところです。(^^)

ただし、ひとつ、原価計算基準ならではの言及があるのは、「予定価格」「標準原価」云々の言及があるところ。これは、財務会計上は、取得原価主義を中心とした実際原価による期間損益計算がベースにあるのですが、これまで学習した通り、予定価格を用いても、学問上は(原価計算基準上は)実際原価と呼ぶ習わしになっているし、正常性が担保されていれば、標準原価を用いても許容されているところです。

⇒「原価計算基準(10)原価の諸概念① 実際原価とは
⇒「原価計算基準(12)原価の諸概念③ 標準原価の一番簡単な求め方
⇒「原価計算 超入門(2)実際原価と標準原価

 

■ 外部公表用原価は全部実際原価であること!

3 原価計算において、原価を予定価格等又は標準原価をもって計算する場合には、これと原価の実際発生額との差異は、これを財務会計上適正に処理しなければならない。

③ 原価差異適正処理の原則
原価計算は、財務諸表作成のために、財務会計機構から原価計算の元データを入手して、原価計算(売上原価、棚卸資産評価額、販管費のそれぞれの金額を求めること)を行い、再び、原価計算結果の売上原価、棚卸資産評価額、販管費の金額を返す営みのことです。それゆえ、予定価格や標準原価を用いた原価計算結果は、原価差額補正処理を経て、全部実際原価と同等の取得原価主義に基づいた原価基礎データとなっている必要があるのです。

原価計算(入門編)原価計算基準における原価管理手続き

ならば、最初から、実際原価計算のみを行えばよいという議論が必ず生じます。ここで原価計算の目的が、財務諸表作成目的だけではなく、原価管理や予算管理のためにも使用されることを前提に複数設定されていることに思いを至らせる必要があります。あちらも立ててこちらも立てるためには、その考え方・使用目的のギャップを原価差額処理で埋めてあげる、ということです。

⇒「原価計算基準(14)原価の諸概念⑤ 標準原価を使ってどうやって管理会計するんですか?
⇒「原価計算基準(6)原価計算制度 - 特殊原価調査とはどう違うのか、内部管理用原価でも制度である理由とは?

 

■ 外部公表用原価は財務会計機構と有機的に結びついていなければならないこと!

4 原価計算は、財務会計機構と有機的に結合して行なわれるものとする。このために勘定組織には、原価に関する細分記録を統括する諸勘定を設ける。

④ 財務会計との有機的結合の原則
これは、先の「③ 原価差異適正処理の原則」の実践的な側面、つまり実際の会計(原価計算)実務における会計データの連携の所作を示したものです。つまり、費目別計算から、製造(仕掛)勘定→製品勘定→損益勘定へ、きちんと勘定連絡に沿って、原価計算結果と財務会計をつないでくださいね、とやり方をご丁寧にも親切にご指導賜っている文言になっているのです。もちろん、間接費については、部門勘定も使ってくださいと馬鹿丁寧にご指示頂いております。

原価計算(入門編)原価計算のフレームワーク

これは、昨今の会計パッケージによる会計処理に慣れた若者にとっては、自分で帳面を手書きで作成することは実務ではほぼなくなったので、勘定連絡図を見ても、ピンとこない人が多くなってきました。いやあ~、時代ですかね。(^^;)

原価計算(入門編)財務会計と原価会計の関係

(本文は、MS Wordを用いて作成しています。校正機能での文章チェックを欠かさないのですが、筆者が文章をおこしている箇所より、基準を抜粋している箇所に訂正チェックが入るのはちょっとどうなのかなと思いますね。まあ、新聞記事の抜粋でも同じことが頻発していますが。。。(^^;))

⇒「原価計算基準(1)原価計算の一般基準の体系
⇒「
原価計算の歴史 - 経営課題の変遷と原価計算技法・目的の対応について
⇒「
原価計算基準(全文参照できます)

原価計算(入門編)原価計算基準(18)原価計算の一般的基準 ①財務諸表作成のための一般基準 - 取得原価主義に基づいた全部実際原価を提供する

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