FANG台頭で、コンテンツ、通信、プラットフォーマー各社の勢力図に異変(2)規制緩和と市場競争促進は、市場における立場によって言い分が異なります

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■ 「FANG」「ネットの中立性」:キーワードのおさらいから

経営管理会計トピック

前回に引き続き、トランプ政権のIT・メディア産業における規制緩和について理解を深めていきたいと思います。

(前回)
⇒「FANG台頭で、コンテンツ、通信、プラットフォーマー各社の勢力図に異変(1)混乱に輪をかけるのが「ネットの中立性」を錦の御旗に掲げたトランプ政権

まずは、内容理解の前にキーワードの定義を明らかにします。

ネットの中立性(ネットワーク中立性、インターネット中立性:network neutrality)
「ユーザー、コンテンツ、サイト、プラットフォーム、アプリケーション、接続している装置、通信モードによって差別あるいは区別することなく、インターネットサービスプロバイダ(インターネット接続業者)や各国政府が、インターネット上の全てのデータを平等に扱うべきだとする考え方」

「FCC のブロードバンド政策綱領
2005年、アメリカ連邦通信委員会 (FCC) はブロードバンド政策綱領(インターネット政策綱領とも)を発表し、「ブロードバンド展開を促進し、公共のインターネットのオープンで相互接続された性質を保持し促進するため、消費者には次の4つの権利が与えられる」とした
① 合法なインターネットコンテンツに自由にアクセスする権利
② 法が許す範囲で、自由にアプリケーションを実行しサービスを利用する権利
③ ネットワークを傷つけない合法な手段で自由に接続する権利
④ ネットワークプロバイダ、アプリケーションプロバイダ、サービスプロバイダ、コンテンツプロバイダを選択する権利」(以上WiKiより)

FANG
米国のIT(情報技術)企業大手の頭文字をつないだ造語。2015年に米国の株式評論家ジム・クレイマー氏が提唱し、当時の米国市場で流行した。交流サイト(SNS)のフェイスブック(Facebook)、ネット通販のアマゾン・ドット・コム(Amazon.com)、動画配信のネットフリックス(Netflix)、検索エンジンのグーグル(Google、現アルファベット傘下)の4社を意味する。FANGには牙という意味もある。米国株高を牽引する主要銘柄として、FANGにアップル(Apple)を加えたFAANG、半導体のエヌビディア(Nvidia)を加えたFANNGなど新たな造語も誕生している。
野村證券 | FANG(証券用語解説集)

 

■ メディア・ネット業界大再編!? FNAG台頭の影響はどれくらいか?

今回も、日本経済新聞による報道を順に追って整理していきます。

2017/12/8付 |日本経済新聞|朝刊 メディア・シャッフル(上)FANG台頭 米国大再編 技術革新×規制緩和の波

「世界の有力メディアが集まる米国で再編機運が高まってきた。フェイスブックなど「FANG」と呼ばれるネット企業の台頭、トランプ政権の規制緩和路線で、テレビや新聞、ネットという垣根や伝統にこだわっていたら生き残れない。今までの秩序をひっくり返す「メディア・シャッフル(総入れ替え)」が起きようとしている。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

(下記は同記事添付の「メディア大手の利益の取り分は目減りしている」を引用)

20171208_メディア大手の利益の取り分は目減りしている_日本経済新聞朝刊

上記のグラフはFANGに代表されるネット企業(プラットフォーマー)4社、コムキャスト、AT&T、ベライゾン、スプリント4社(筆者類推)からなる通信大手、ディズニー、フォックス・ニューズコープ、ナショナルアミューズメント、タイム・ワーナー4社(筆者類推)からなるメディア大手の純利益推移を示しています。

その中でもメディア大手の凋落が2006年時点の46%が23%へと半減と顕著です。フェイスブックとグーグルだけでネット広告シェアの6割を占め、広告媒体として、もはやテレビなど伝統的なメディアは太刀打ちできない状況となりました。

「米国のメディア興亡は、コンテンツを「つくる側」であるメディアに対し、「運ぶ側」である通信などインフラ企業が巨大化していった歴史だ。1980年代のAT&T分割以降、インフラ企業がM&A(合併・買収)を繰り返して事業規模を広げていった分、メディア側の発言力は徐々に小さくなった。」

上記にあるように、当初はコンテンツメイカーが発言力を有していたのが、大型M&Aを通じて、キャリアが立場を強くし、ネット時代となった現在は、FANGに代表される「プラットフォーマー」がネット空間で巨大な存在感を誇るようになりました。

 

■ FNAG台頭への巻き返しの窮余の策としてキャリアが投じた一計とは?

そこで、「ネットの中立性」が焦眉の課題となったわけです。

2017/12/15付 |日本経済新聞|夕刊 米「ネット中立」撤廃決定 通信会社の課金自由に

「米連邦通信委員会(FCC)は14日、通信会社にインターネット上のコンテンツを平等に扱うよう求める「ネット中立性」原則の撤廃を決めた。回線に負荷がかかる動画配信会社に高速通信を提供する代わりに、特別料金を課すことなどが可能になる。通信会社の収益力は高まるが、新興ネット企業は不利な競争を強いられると反発している。」

2017/12/16付 |日本経済新聞|朝刊 米、ネットに「高速道路」 特定サービスに料金→速度優遇 遠隔医療 普及に弾み グーグルなど大手は反発

「トランプ米政権がインターネット事業の競争環境を大きく変える規制緩和に動き出した。動画配信などの特定サービスに対し、通信会社が速度を優先的に引き上げる代わりに追加料金を取る「高速道路」のような契約を認める。ネット企業や消費者は負担増を懸念するが、高速通信を使う自動運転や遠隔医療を後押しする可能性がある。」

(下記は同記事添付の「FCCは15年に導入した「ネット中立性」規制が通信会社の投資を阻害したと主張する」を引用)

20171216_FCCは15年に導入した「ネット中立性」規制が通信会社の投資を阻害したと主張する_日本経済新聞朝刊

従来は、通信会社にネット上のコンテンツを平等に扱うよう義務付けていた「ネット中立性」を米連邦通信委員会(FCC)が14日、規制緩和、通信会社の設備投資の裁量権回復、ネット回線を優先的に使いたいユーザ(そのための差別的料金を支払う覚悟がある人たち)保護の観点から、撤廃することを決めました。これまで同規制はネットを公共財と位置づけ、通信会社が特定のサービスやウェブサイトだけ速度や料金を変えることを禁じてきたのですが。

名目はどうであれ、この規制緩和は、勝ち組であるプラットフォーマーに傾き過ぎた優位な価格付けを市場競争に任せるという意味で自由主義的で極めて共和党支持者好みの政策です。政策には完全中立というものはなく、誰かの特は誰かの損になるゼロサムゲームになることはできるだけ避けたいものですが、残念ながら本件については、ゼロサムゲームとならざるを得ないようです。その是非は利害関係にしたがい、各社(各者)が様々な意見表明をしています。

 

■ 各業界の言い分を整理すると

以下は、12/8、12/15、12/16の日本経済新聞各記事からの抜粋・要約になります。

●通信会社
・回線に負荷がかかりやすい動画配信サービスでは、これまでお金をかけて築いた通信網に配信会社が「ただ乗り」している
・自由な課金で得た資金を通信網の設備投資に振り向ければ、地方の消費者も高速通信を安く使えるようになるとの期待もある
・高速通信を約束する代わりに特別の「通行料」を徴収することはユーザの利便性を向上させる
・大容量の情報を安定してやり取りできる回線を提供しやすくなれば、本格的な自動運転車や高度な遠隔医療の普及にも弾みがつく

●FANG
・スタートアップ企業が平等にネットにアクセスできることは、イノベーション(革新)と健全な経済にとって不可欠
・通信会社の市場支配力が強まり、消費者の負担が全体で増える恐れがある(寡占の影響のリスク)
・通信会社が傘下の動画配信サービスの利用者を通信料で優遇し、ライバルを競争から締め出す可能性がある

どちらも言い分にも一理あると思います。しかし政策とは片方に傾きすぎた振り子を元に戻すバランスをとるのが世の常です。稼ぎ過ぎたFANGに対して、党派別の対立が絡み、今回のFCCの判断になったと推察するのが妥当でしょう。それはロジックではなくてバランスの問題。そう思わないと納得性のある理屈は立たないので。(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です

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