社内仕切制度を構成する3要素とは - 物流、商流、金流のフローを考える!

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■ 会社は多様な部署の多くの人間に支えられている

前回、仕切制度における会計責任と原価差異について、あまりギリギリのやり過ぎると、社内の業績管理について逆作用が起きかねないリスクについて説明しました。

⇒「仕切取引制度における会計責任と原価差異について - やりすぎるな、ほどほどに!

組織は、「分業」することを前提に組織化されています。それゆえ、製造業を例にとるのですが、モノをつくる工場と、それを販売する営業部、モノをお客様の元に届ける物流部、それらに纏わるお金のやり取りを引き受ける経理部、という風に、原材料を仕入れて、製品を作って、商品として売る、という製造業の基本動作を行うだけでも、

1.工場
2.営業部
3.物流部
4.経理部

といった4つの組織が登場します。これに、原材料を買い付ける「調達部」とか、出荷前の製品の品質をチェックする「品質管理部」や、販売後の顧客フォローをする「サービス部」などを加えると、それこそ、単純に、買って・作って・売る、という製造業の基本プロセスに関係する部署をいくつ採り上げてもきりがなくなってしまいます。

それゆえ、製品販売という基本のプロセスについて、社内の各部署のミッションと会計責任を明確にし、行動規範や計数目標縛りでがんじがらめに管理・管理とやってしまうと、息苦しくなり、自由闊達な気風を失い、やがては組織として存立の危機を迎える可能性もあります。

(参考)
⇒「組織における分業(1)分業のタイプ 垂直分業、水平分業、機能別分業、並行分業の違いとは
⇒「組織における分業(2)事業部別組織は並行分業、機能別組織は直列型・機能別分業で

 

■ 社内における商流を考える

そこで、社内の風通しを良くしたい、かといってそれぞれの組織の会社全体の数字に対する責任も明確にして、会計業績目線から目標管理を行うことで、「儲け」に対する各組織のある程度の自律的な活動へのドライブを経営者は期待したいと、二律背反的な目標を両立したくなることがあります。そうした場合、いの一番に社内管理制度として各組織のインセンティブを重要視した取り組みを体現させようと議論されるのが、「社内仕切取引制度」ということになります。

製造業の場合、原料を調達して、工場で製品をつくり、営業部門が販売する。買って・作って・売る、が社内におけるビジネスモデルのメインストリームとなります。この流れを社内で、規模が拡大して、連結やグループで捉えるならば、子会社や関連会社を含めて、各組織・子会社間で、その企業が取り扱っている商材を組織間で売った・買ったの商取引を認識し、あたかも、組織内で市場(マーケット)を疑似的に存在するかのように、社内で商材に値付けを行い、疑似市場取引をもって、自律的に売った・買ったを行う組織がそれぞれ儲かれば、企業全体が儲かる体質になることを目指して、社内仕切制度が制度設計されます。

業績管理会計(入門編)仕切取引とプロフィットセンターの関係

上図は、前回からの抜粋であり、製品を作る「長野工場」とその製品を商品として外部顧客に販売する「東日本営業部」との間に疑似的な製品の売買取引を「仕切価格:100円」で認めた場合の、長野工場と東日本営業部それぞれの組織別損益計算書を作成できることを説明したものになります。

まず基本は、製品を作った、買った、売ったというポイントと商材としての製品が個別に認識できる単位(粒度)と流れ(商流)で社内取引を認識することができるかが制度設計上の最初の見極めとなります。

付加的に、品質管理や物流サービス、はたまた総務・人事・経理といった本社管理サービスについては、メインの商流上に乗ってくることはあまりありません。そういう社内における間接業務による社内サービスは、「間接費の配賦」または「間接サービス」の売買としてメインの商流とは別枠の管理とします。
(機会があれば、そうした社内の付加サービスの内部市場化のお話は別途することにしましょう)

そうした社内の付加サービス、間接サービスを別にしたとしても、メインストリームの社内商流において、3つの要素を考慮する必要があります。

 

■ 物流と商流とキャッシュフローは別々に動く

貴社が取り扱う商材がハードウェアである場合、必ず、外部顧客に提供するために「物流」、すなわちモノの流れが発生します。それに付随して、誰から誰へ売り渡される、聞こえは悪いですが、「転売」されるのが社内商流の性(さが)なので、売った・買ったの商取引の流れ、これぞ、「ザ・商流」が発生します。そして最後に、財/サービスの提供の対価として、お金を代金として頂戴するので、「金流(キャッシュフロー)」が生まれることになります。

業績管理会計(入門編)仕切取引を巡る3つのフロー

通常、外部マーケットでは、売る人と買う人の間で、商品の売買が行われる際には、「物流」「商流」「金流」は同時に、かつ同じ場所で行われるのが一般的です。たとえば、スーパーマーケットで夕飯の食材としておさかなを買う場面を思い描いてください。

店頭に並べられた「お刺身」を手に取ってカゴに入れ、レジまで運び(物流)、お金を渡して(金流)、レシートを受け取る(商流)。この3つの流(ストリーム)が同時に、そして自分と相手の間で執り行われます。

しかし、社内取引制度を考案せざるを得ない大きな組織では、その様相が少し違っていきます。もう少し、現実は複雑なのです。

長野工場から製品が「東日本物流部」の倉庫を介して、トラックで陸送されています。工場から倉庫までは社内物流で、倉庫からお客様の手元(配送先)までは、販売物流になります。もっと複雑な場合は、倉庫をはさんだそれぞれのパートを別の採算管理単位の組織が担当することすら珍しくはありません。

物流部が運ぶ製品(ハードウェア)は、東日本営業部のお客様に販売されるので、工場から直送されるか、物流部の倉庫を中継するかもしれません。しかし、そうした「物流」から営業部門が独立している場合は、商取引上のインボイスや契約書だけが、東日本営業部の営業担当デスクを経由して、書類だけが左から右に受け渡されることもあります。

組織が大きく複雑になったら、通常はまず「物流」と「商流」が最初に分かれます。

次に、顧客からの自社製品購入にあたって代金回収がきっちり行われることで、ビジネスが完結すると考えた時、モノを受け渡すだけでなく、対価としてのお金を受け取って初めて一つの商取引が完結します。さらに複雑性を増す近代組織において、この代金回収組織が、コストメリットを出すために、全社または全グループでひとつの代表的な組織にその機能を集中させることも多々あります。こうすることで、製品を作ってお客様に販売し、代金を受け取るまでに、「物流」「商流」「金流」が3つとも、それぞれ異なる組織の上を通り過ぎていくことになります。

上図では、経理部が全社を代表して外部顧客から代金回収の任に当たります。そして、長野工場から東日本営業部への仕切価格が@90円で、東日本営業部から外部顧客への最終販売価格が@100円だった場合、経理部は外部顧客から100円の販売代金を受け取ります。ここで登場する3つの組織のB/S(貸借対照表)または、売上債権や買入債務、在庫や現預金など、主要な資産・負債項目が組織別に管理されていなければ、3つ目の「金流(キャッシュフロー)」が意識されるケースは少ないでしょう。

しかし、長野工場、東日本営業部、そして経理部が所属する本社管理部門がそれぞれ、フルB/S、または主要な資産・負債項目を組織別に管理している場合、最後のお金のやり取りまで始末しないと、それぞれの組織の会計責任が真っ当されないことになります。

そこで、長野工場だけ遠隔地にあるため、社内仕切取引にまつわる債権債務および、代金決済を社内組織間といえども、明確に識別する必要がある場合は、長野工場に対する関東在住の組織から、長野工場に対する買入債務を買入代金(いずれも@90円)で資金決済まですることになります。

 

■ (応用)物流と商流を認識するタイミングと金流を認識するタイミングのギャップについて

本編は、あくまで業績管理会計(入門編)ですので、この章で言及する話は少し高度かもしれませんが、端的にさっと説明を済ませてしまいます。

⇒「業績管理会計の基礎(10)事業別組織における会計責任構造の設計 ④受注生産方式と在庫販売方式で異なる仕切価格の設定

社内振替制度、社内仕切制度において、個別受注生産方式と在庫販売方式とでは、デカップリングポイントの違いから、若干、「物流」「商流」「金流」の別れ方にそれぞれ特徴や傾向が出てきます。

業績管理会計(入門編)受注生産方式における振替価格制度

① 受注生産方式
この場合は、生産オーダーが直接受注オーダーに紐づいていることが多いので、工場直送だったり、営業部門の倉庫を経由しない物流形態を採ることが多くなります。しかも、販売部門は、販売手数料(コミッション)を事後的に受け取ることになります。

工場から外部顧客までの「物流」認識時に、工場と外部顧客の間に同時に物販としての「商流」も認識するのが一般的です。外部顧客からの回収サイトとは独立して、工場側から、販売部門に販売手数料を物販とは別の商流として認識します。

それゆえ、物販と販売手数料の支払いとで、タイミングが異なることが多いので、もちろん「金流」としての代金のやり取りは別々のタイミングで行われるのが自然になります。

業績管理会計(入門編)在庫販売方式における振替価格制度

② 在庫販売方式
この場合は、工場から営業部門が在庫として工場が作った製品を引き取るので、その時点で「物流」と「商流」が同時に認識されます。場合によっては、その引取り行為を起点にした支払いサイトに基づき、営業部門から工場側へ代金も支払います。これが「金流」となります。

営業部門は自組織の倉庫に入庫されたものを外部顧客に対して在庫販売するので、通常は、工場からの製品引取りが行われた後に、外部顧客への販売取引が認識されます。外部顧客への販売をトリガ―にして、「物流」と「商流」が同時に認識されます。とすれば、この外部販売時点を起点に、回収サイトに応じて、この外部顧客から代金を回収する「金流」が回収サイト分の時差だけ後ずれで認識されます。

このやり取りは、メーカーから卸、卸から小売り、小売りから最終消費者へ、ごくごく一般的な商取引をベースに社内取引制度に取り込まれているのでイメージが付きやすいでしょう。

ここまでの結論。
社内商流といっても、外部市場を真似て擬制的に社内市場があったと仮定して取引関係を考慮する必要があるので、3つの要素、「物流」「商流」「金流」を同時に織り込んだものにする必要があるのです。

こういう制度作りには一家言あります。ぜひ、貴社でこのような制度設計をする際には、小職までご用命ください。(^^)

業績管理会計(入門編)社内仕切制度を構成する3要素とは - 物流、商流、金流のフローを考える!

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