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組織における分業(2)事業部別組織は並行分業、機能別組織は直列型・機能別分業で

組織管理(入門)
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■ 「事業部別組織」と「機能別組織」における分業パターン

複数の人の集合体である組織。当然、個人では成し得ないミッションをサブタスクに分けることで、それぞれを得意な人、専業とできる時間を有する人に任せること。即ち分業することによって、集団でしか成し遂げられないことをするのが組織を形成する目的です。

ということで、現代ビジネスにおける代表的な組織形態である「事業部別組織」と「機能別組織」もある特定の分業スタイルによって性格づけられるはずです。それは「垂直分業」と「水平分業」の組み合わせで考えることになります。

組織管理(入門編)実務的な分業の組み合わせ

ある一定規模に達する組織は、組織全体のコーディネーションと方向づけを考える人達の集団がリーダーシップを取ったほうがよいという考え方があります。現在では常にそれが正しいという訳ではないのですが、あえて一般に迎合するなら、分業されるべきタスクを計画し、配置を考える職種の人が必要になります。この人達が現場に作業計画とタスク配置を伝え、それを現場で実行する人達が存在します。これが垂直分業の根幹です。それゆえ、事業部別組織も機能別組織にも、垂直分業は必ず存在するのです。

それでは、水平分業の方はどうでしょうか。実は、取り扱う商材や組織の構えから、こちらの方は相対的にバリエーションの幅が大きく、覚えることが多いのです。

 

■ 「水平分業」をタスク配置と調整の必要性から細分化する

(1)各タスクの配置
製造業の場合、ひとつの製品を作り上げるために、構成部品のそれぞれを外部調達するか内製するかして準備する必要があります。それを最終品に組み上げて完成させ、出荷できる品質を有しているかのチェック作業を経て、ひとつの製品を作り上げ、販売できる状態にできるのです。

その際の仕事の配置について、

ひとつの製品の完成を目指して、数珠つなぎ的に、前工程の作業結果を受けて後工程の作業が始まるというタスク配置を「直列型」といいます。

ひとつの製品の完成を目指して、それぞれのパーツを時間的にも地理的にも他部署の影響を考える必要がなく、半ば独立的に仕事の段取りを考えることが許されているタスク配置を「並列型」といいます。

(2)各作業のアウトプット調整
製造業の場合、ひとつの製品を作り上げるために、徹頭徹尾、自分一人の裁量で最初から最後まで、すなわち原材料の調達(もしくは準備されたものの加工)から、最終製品の品質チェックまで首尾一貫してひとりの人が担当する方法があります。この場合の分業の意味は、完成品15個の製造という仕事を数量的に分担してもらう、つまり、田中さん10個、山本さん5個を分担してもらうという形になります。

分業の開始時点で、原材料の調達・準備という調整作業を行っておけば、最終品までのタスクを一人一人が責任を持ち、アウトプットを単純に合計して仕事が終わりとなる成果の集計形態を「加算的集計」といいます。

一方、最終製品が自動車の場合、構成するパーツ、例えばエンジン、駆動系、車台の製造と、最終的に自動車に組み立てる仕事を分担するような、最終的なアウトプットを引き出すために、各個人が時間的にも作業段取り的にも事中・事後の調整が必要な成果の集計形態を「機能的統合」といいます。

この2つの要素、「各タスクの配置」×「各作業のアウトプット調整」の組み合わせで、水平分業は次の4パターンに区別することができます。

組織管理(入門編)水平分業の4パターン

 

■ 「水平分業」における分業タイプを整理する

① シフト制
・集団に属している個人の仕事の範囲は広いですが、同種の仕事を分業してもらっています。
・お互いのアウトプットを単純に足し算すれば組織全体のアウトプットになります。
・他の担当者の作業スピードに合わせる必要が無く、作業中の調整は比較的楽です。
・ただし、価格交渉を行うといった材料調達というインプットに必要なリソースを共有しています。
・また、アウトプットを販売するという機能を共有しているため、並行分業外の後工程のリソースからの制約で仕事量を調整せざるを得ない可能性はあります。
・生産設備という共通資源を時間制で共有しているので、時間割当という調整要素は存在します。

② 並行分業
・集団に属している個人の仕事の範囲は広いですが、同種の仕事を分業してもらっています。
・お互いのアウトプットを単純に足し算すれば組織全体のアウトプットになります。
・他の担当者の作業スピードに合わせる必要が無く、作業中の調整は比較的楽です。
・ただし、価格交渉を行うといった材料調達というインプットに必要なリソースを共有しています。
・また、アウトプットを販売するという機能を共有しているため、並行分業外の後工程のリソースからの制約で仕事量を調整せざるを得ない可能性はあります。
・それぞれが他人を意識せずに製造に従事できる(余剰人員を出さない)ように、個別の生産設備という資源を十分に準備しておく必要があります。

③ 直列型・機能別分業
・集団に属している個人の仕事の範囲は狭いため、習熟度を上げやすく、専門家利益を享受しやすくなります(学習曲線)。
・全員でひとつのアウトプットの完成を目指すため、工程間の調整業務負荷が最も高くなります。
・プロセス型産業で工程別に担当者を置く必要がある場合に適した人員配置となります。
・すべての工程の歩留まりは、掛け算でアウトプットの量を左右してしまいます。

④ 並列型・機能別分業
・集団に属している個人の仕事の範囲は狭いため、習熟度を上げやすく、専門家利益を享受しやすくなります(学習曲線)。
・全員で一つのアウトプットの完成を目指すため、最終工程との時間的・作業段取り的な調整作業が不可避となります。
・ディスクリート型産業で、製品がモジュール化されている場合、モジュール単位の製造に特化した担当者を配することができます。
・アウトプットの量は、どこかの工程の歩留まりや生産性が最も低い所に合わせた水準に決まります。

⇒「経営戦略概史(13)ヘンダーソンによるBCGの誕生と3つの飛躍- PPM、経験曲線、持続可能な成長率

 

■ ふたたび「事業部別組織」と「機能別組織」のお話

「事業部別組織」は、「②並行分業」を基本原理とする組織形態です。それぞれの組織が競争的にどこが一番収益性が高いか、生産性が高いか、お互いの利害を無視して、自組織の達成目標だけをよりどころにして仕事をするのに適しています。それは、あたかも市場原理を社内に導入しているようなものです。

一方、「機能別組織」は、「③直列型・機能別分業」を基本原理とする組織形態です。機能別組織とは、開発→生産→販売、生産の中においては、原料調達→部品加工→製品組立→品質チェックというふうに、順序関係を持つ活動が直列で社内で結び付けられているのです。

業績管理会計との関連で説明すると、機能別組織は工程間がそれぞれプロフィットセンターである場合、工程別・機能別組織間で社内取引が発生します。それは、仕切価格や振替価格で前工程から後工程の組織へあたかも社内販売があったかのように業績評価をする仕組みを構築する必要が生じることがあります。

⇒「業績管理会計の基礎(8)事業別組織における責任会計構造の設計 ②社内商流・社内取引による振替価格制度の功罪とは

事業部別組織においては、本社機構による間接支援、コーポレート・ブランドの使用、シェアードサービスの活用など、「一部事業部制」のバリエーションを採る場合、こうした業務支援や経営資源の利用の対価を事業部のプロフィット評価に組み入れる必要があります。その場合、コーポレートサービス使用における対価を決めて、あたかも社内販売があったかのように業績評価をする仕組みを構築する必要が生じることがあります。

いちいち、サービス対価をきめ細かく決めることが物理的・業務的に難しい場合は、共通固定費の各事業部への配賦を行うことになります。

直列型・機能別分業の場合、各作業者はリレー走者のような協働関係にあります。並列型・機能別分業の場合、各作業者は完成品(モジュール品)を一緒に作り上げる協働関係にあります。前者の方が、より全体最適というか、チームワークを要する働き方となります。

シフト制や並行作業は、すべての作業者はほぼ自律的な作業に携わっているので、全社に対して数量の分担を行っているだけなので、協働関係にあるとの意識は薄弱なものになりがちです。そもそも、全体最適をあえて捨てて、自由競争の原理を社内に持ち込むものです。

垂直分業により戦略策定を担う責任者の方々について、組織デザイン、業績管理会計制度の設計など、採用する組織形態の特性をしっかり認識したうえで、「事業部制だが全体最適で」「機能別組織だが、それぞれが競争意識をもって」というちぐはぐなスローガンで社内を混乱させないように心から願うばかりです。(^^;)

(連載)
⇒「組織における分業(1)分業のタイプ 垂直分業、水平分業、機能別分業、並行分業の違いとは
⇒「組織における分業(2)事業部別組織は並行分業、機能別組織は直列型・機能別分業で
⇒「組織における分業(3)分業の利益とは(短期と長期を合わせて8つ)
⇒「組織における分業(4)分業がもたらすデメリットとその対応策とは①ミクロ視点:働く人の意欲低下について
⇒「組織における分業(5)分業がもたらすデメリットとその対応策とは②マクロ視点:外集団均質効果を緩和するには?

組織管理(入門編)組織における分業(2)事業部別組織は並行分業、機能別組織は直列型・機能別分業で

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