(選球眼 浜田昭八)よみがえる鉄人の名言 - 彷彿とさせた北風と太陽、ナッジのお話

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■ 鉄人二人の偉業を称える。

試合と試合に備えた練習に明け暮れるスポーツ選手の生き様は、ビジネスパーソンのお手本にもなるわけで。

2018/4/30付 |日本経済新聞|朝刊 (選球眼 浜田昭八)よみがえる鉄人の名言

「「1球目はファンのため、2球目は自分のため、3球目は西本君のために振った」。23日に亡くなった元広島・衣笠祥雄が残した名言が、再びクローズアップされた。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

衣笠選手は、1979年8月1日の巨人戦で、巨人の西本聖投手から死球を受けて左肩を骨折しました。これで更新中の連続試合出場記録もストップすると思われましたが、翌2日に代打で登場しました。この時の戦績は、江川卓の速球を3球フルスイングして、空振り三振に倒れました。

そういえば、阪神の現監督金本知憲さんは、連続イニング・連続試合フルイニング出場数の世界記録保持者ですが、2004年7月29日、金本さんも中日戦において左手首に死球を受けて、左手首軟骨剥離骨折の災難に見舞われました。この故障で、バットを振る際、左手を使えないという状態に陥るも、フルイニング出場を続け、その翌日の巨人戦では、右手1本でスイングしながら、2安打を放つという離れ業を成し遂げます。最終的には、そのシーズン、金本さんは、全イニング出場の上、何と113打点を挙げる活躍で初の打点王を獲得するという偉業を成し遂げます。

 

■ 北風と太陽

話は、衣笠さんに戻ります。鉄人である衣笠さん見たさに球場に足を運ぶファンを失望させてはならぬと、強行出場したサービス精神と、けがをものともしない敢闘精神はとても素晴らしいものです。しかし、まかり間違えば選手生命を縮めるかもしれないし、チームの勝利や選手起用に悪影響を及ぼすかもしれない。そこは、同じチーム、組織で仕事をするビジネスパーソンにも共通の考え所だと思います。

さて、衣笠さんの本当のすごい所は、そうしたリスクと危険を招くような骨折を伴う死球を受けても、相手投手を気遣う寛容精神のすばらしさなのです。特に在籍期間が短く、短期で成績を上げなくてはならない外国人選手。外国人選手枠というチーム内でも二重の出場機会争いの中で勝負をしている選手たちは、四球には不寛容です。一度当てようものなら、マウンドを睨み付け、時には、マウンドまで駆け寄り、投手に一発パンチを見舞うことも。

「1987年6月11日の対中日ドラゴンズ戦で、投手の宮下昌己から背中に死球を受けた際、帽子を取って謝るようジェスチャーも交えて要求したものの宮下が応じなかったため、マウンド上の宮下に駆け寄るやいなやその顔面に綺麗に右ストレートを入れる等暴行を加えたことにより、両軍入り乱れての大乱闘となった」(WiKiより)

冒頭の衣笠さんの名言は、寛容の精神で相手投手の西本さんを気遣ったもの。

外国人選手が執拗に相手投手に怒るのには、以後の対戦を有利に運ぶための打算もあるとみられています。威嚇された若手や気の弱い投手ならば、内角攻めが甘くなりがちになり、打者にとってコースの見極めが楽になるからです。

しかし、これは「北風」が旅人の外套を吹き飛ばそうとするもの。力には力を、目には目を。復讐法による恐怖による相手への働きかけ。

 

■ 衣笠さんのお人柄を偲びながら

「「和をもって……」の日本人勢は、和やかに、賢く危険を回避する。厳しい内角攻めに定評のある投手に機会あるごとにすり寄り、他愛ない話を交わす。相手の人柄にもよるが、以後の投球は「微妙に変わった」と打ち明けた巧打者がいた。」

衣笠さんには、厳しい内角攻めを回避させようと、相手投手を懐柔する気は毛頭なかったかもしれません。しかし、結果的に「3球目」のコメントは、内角攻めを真骨頂とするシュートが切り札の西本投手の攻めを骨抜きにする効果がありました。あの死球以後、両者の対戦は衣笠さんのワンサイドになったそうです。

「怒って、我を失っては何も生まれない、と鉄人は教えてくれた。」

これぞ、南風が、旅人が自ら外套を脱ぐように仕向けた話と同じです。

相手は、気持ちよく、こっちが意図するような行動をとるように、「気づき」とか「誘導」を行う。これを、「ナッジ(肘をつつく)」といい、行動経済学の真理のひとつです。

(参考)
⇒「ナッジで人の心理に働きかける(1) 2017年ノーベル経済学賞受賞のリチャード・セイラー教授の行動経済学

人伝に聞いたところによると、人間関係を重要視していた衣笠さんは、最後まで監督・コーチとしてユニホームを着ることはなかったそうです。そこまで、人間ができていない我々は、せめて、衣笠さんの言動から、「南風」「ナッジ」の効果をお人柄と一緒に偲ぶことといたしましょう。

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小林 友昭
小林 友昭
現役の経営コンサルタントです。経営管理の仕組み構築や経営戦略の立案、BIシステムを中心としたIT導入まで手掛けております。
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