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組織管理(2)- 組織デザインパターンの応用形 「機能別組織」と「事業部制組織」の間には

経営管理(基礎)
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■ 「分業」と「調整」のバランスで如何様にもバリエーションが考えられます!

経営管理(基礎編)

前回は、「組織管理(1)- 組織デザインを考える 「分業」の利益と「調整」コストのバランス」と題して、①組織管理の全体像、②組織デザインの決定要素についてお話しました。今回は、前回ご紹介した組織デザインの基本3形、「機能別組織」「事業部制組織」「マトリックス組織」から、主に「調整」面からどのような意思決定権限の配分に工夫をすると、分業の利益、専門家利益が享受できるのか、の知恵として、応用形をいくつかご紹介します。

何度も繰り返しになりますが、「組織デザイン」で留意すべきことは、つぎの2つです。

(1)分業
各従業員に専門担当者としての個別的な役割を与えることで、専門性を発揮させる、仕事に集中させる、担当領域の知見を蓄える、などして、何らかの機能・職務の集中・特化のメリットを引き出そうとするもの

(2)調整
分業のひとつひとつを担っている各従業員の働きが、時間的・空間的に整合するように整理され、多数の人々による活動が、全体最適をめざして、あたかも一つの全体(究極には一人)であるかのように、連動して機能するための社内コミュニケーションやコーディネーション

■ 組織デザインの応用パターン 「機能別組織」の欠点を補うには

まずは、ベーシックな「機能別組織」が各機能の集中化メリットを追求するあまり、横連携ができていないコミュニケーションレスによる不都合を解消するために、社内の伝達・情報の共有に関する工夫を行う知恵を見ていきます。

経営管理(基礎編)_プロダクトマネージャー制

1.プロダクトマネージャー制
プロダクトマネージャーとは、特定の製品またはブランドに対して、研究開発から生産、販売、マーケティング計画などのすべてのプロセスの調整を行うことをミッションにする役職です。会社によっては、「ブランドマネージャー」と呼ばれることもあります。呼称ばかりではなく、その権限についても各社によって様々です。

・軽量級プロダクトマネージャー
一般に担当する製品・ブランドに関する専門知識を有し、関連部署にアドバイスを行う。一つの製品・ブランドを通して、各部署が有機的に活動できるように調整(コーディネーション)に徹する。基本的に、当該製品・ブランドに対する人事権と予算権を持たない

・重量級プロダクトマネージャー
担当する製品・ブランドに関する予算権と人事権を有し、担当領域についてはその権限は機能部門長を上回る。しかし、その権限は担当製品・ブランドに限定されるため、各機能組織内での優先順位まで左右することはできない

プロダクトマネージャーは常設だったり、新規立ち上げ製品・ブランドの初期段階だけのテンポラリーなポジションだったり、その会社での機能別組織による集中化メリットがどこまであるかの調整で決まります。また、その会社が扱っている製品・ブランドのすべてに網羅的にプロダクトマネージャーを立てるのか、それとも重点管理領域の製品・ブランドだけに立てるのかも、その会社の戦略に強く依存します。

各機能別組織横断的な課題解決のために、関連部署にまたがってコンセンサス醸成と解決策提示が主なミッションなのですが、特定の機能部門出身(本籍地とも言われる)のプロダクトマネージャーは、出身部署の利益代表ともなりやすいのですが、その半面、出身部門への調整能力を大いに発揮することもあります。

また、各製品・ブランドにおける複数のプロダクトマネージャーをたばねるプロジェクトマネージャー統括部という組織が立ち上げられる場合もあります。その場合は、各機能部門長とプロダクトマネージャー間の利害衝突から来る調整事項は、この統括部門長がその利害調整に当たる、ということが考えられます。

経営管理(基礎編)_調整担当職制(リエゾン)

2.調整担当職制(リエゾン)
本来の上司たちが意思決定すべき重要でかつ日常的なオペレーション課題は、本来のライン組織における役職者が判断・指揮を行えばよいのですが、それ以外の簡単な調整、常態的かつ特定箇所での課題解決に対しては、その特任専門官を配置する、という手があります。ここでいう調整担当職は、特別の権限や予算は持たず、また結果責任も負わないようにすることもあります。

ここでも、ライトな調整役とヘビーな調整役の違いがあります。ライトな場合は、いわゆる事務局的な立ち回りで、機能別組織間で問題が起こった際、適時にすり合わせの会合を招集し、しかも適任者を出席者に選び、課題解決に当たります。ヘビーな調整役は、その担当領域の専門家知識を蓄えていることを前提として、さらに踏み込んで、課題解決策の提示・検討し、役職者への上申を通し、施策実行の監理・監督までを任とすることがあります。

上図例では、微妙に調整範囲を違えていることにお気づきになられましたか? 白物家電では、製販の需給調整が当該ビジネスでの最優先事項。したがって、工場の供給計画と、営業の発注計画の調整をその主要任務とします。パソコン事業では、新製品開発の早期化が当該事業のCSFであるため、試作、量産までの期間を如何に短縮するか、生産技術と製品技術の両方のすり合わせが不可避です。そのため、研究開発部門と生産現場である工場間に、技術と製品特性を良く知る熟達者を調整役に任命しています。AV事業では、新製品開発から、上市・販促キャンペーンまでの首尾一貫性が必要になるため、生・販・技全ての領域にまたがった調整役が必要となる、こういう具合です。

経営管理(基礎編)_連絡会・研究会制

3.連絡会・研究会制
上記2つの機能別組織間のスムーズなオペレーション運営とコミュニケーションに特定の担当者を設置する方式というのは、機能部門長からすれば、特定の人間が特権を有して、自組織に対する奇妙な権力行使に出ることを忌避したいケースも出てきます。その場合、各機能部門から特定の製品・ブランド担当者を、定期・不定期の機能部門横断的なすり合わせ会議(これが連絡会・研究会等と呼ばれる)に出席させて、当該製品・ブランドで起きている問題を自組織に持ち帰らせたり、自組織で起きている課題の解決策を他機能部門と相談する機会として利用することがあります。

やはり、利害を一にする小集団が一堂に会し、喧々諤々する方が問題解決性は高いと思われます。また、直接意見交換をすることで、横の組織、自組織の課題も見え、また問題が起きた時の相談相手を探すといった社内人脈作りの効用があったりもします。

ただし、強力な課題解決策は、これまでの仕事のスタイル、誰かの職務権限を変更させる強制力が必要になることが多く、連絡会・研究会での決定事項がそのまま、強制力を持つことは少ないため、課題解決性には他の手段に比べて劣ることが普通です。また、特定の問題が起きたのを契機として発足した連絡会は、その問題が終了した後も、ずるずると継続されてしまうと、会自体が形骸化する可能性が非常に高くなります。また、とある問題が発生した時に、機動的に連絡会を招集できずに手遅れや手詰まりを起こす要因になったりもします。

■ 組織デザインの応用パターン 「事業部制組織」の欠点を補うには

次は、「事業部制組織」における機能部門の権限と経営資源の集中のメリットがある場合の対処法を説明します。

経営管理(基礎編)_一部事業部制組織

4.一部事業部制組織
通常、「事業部」とは、担当する事業について自律的にオペレーションを行い、それにまつわる課題解決や関係者の指揮命令系統も一元化される単位で組織化されます。しかし、複数事業が共通して享受するサポート業務をひとつの機能別組織から受けることで、各事業部組織が重複して同一の機能を保持するコスト負担を軽減するため、事業部のとある機能だけを切り出して、事業部の外に独立した機能部門を設立した組織を、「一部事業部制組織」といいます。何を切り出すかはその企業が置かれた市場と企業独自の組織戦略次第です。

非常に高度化した事業多角化(裏返すと選択と集中が実践されていないという意味)、終身雇用・年功序列といった長期的雇用環境、明確な「職務記述書:job description」が存在しない等、日本的労働慣行から、一部機能の社内共通利用を促す方が、特定機能にかかる固定費の多重利用、専門家知識の最大限の発揮の見地から、日本企業では多くみられる形態です。

上記例では、研究開発、生産は個別の製品ごとに最適化された方がメリットがあると考えられた事業部別に組織化されていますが、販売チャネルが家電量販店や専門店など共通で、全商品を一括した販売・マーケティング施策を実施した方がメリットがあると考えられ、販売機能だけを事業部から切り出したものになっています。こうすることで、クロスセル、アップセル、セット販売(システム販売)がしやすい環境が整い、顧客満足度が高くなる、との考えが基底にあります。

一方で、特定製品に特化した販促キャンペーンの適時実施、プロダクトライフサイクルの違いによる所品鮮度の違いへの対応、セグメンテーションされた顧客への個別対応の点で、販売組織を一括りにしたことが、かえって弊害になる恐れもあります。

経営管理(基礎編)_ライン&スタッフ組織

5.ライン&スタッフ組織
これはさらに「一部事業部制」の類型のひとつなのですが、事業部から切り出された「機能」を全社利用可能な共通組織にするのと、複数事業部を統括するCEOの職責負荷を軽減するためのスタッフ組織を配置するのをひとつの組織図にまとめて考えるものです。事業部の区切りのバリエーションは大きいものがありますが、この「ライン&スタッフ組織」の原型というのは、現存する日本企業の大半に当てはまるものではないでしょうか。

スタッフ組織に配置される「機能」は、大変ざっくり分類すると次の2種類に分けられます。正直言うと、この2分類には厳密性は無いと思うのですが、世に出回っている教科書はそのように謳っているので、大勢に従って説明を試みます。

(1)事業共通サービス提供機能
物流、調達、アフターサービス、基礎研究、知的財産の管理など、独立した事業なら抱えていてもいい機能ですが、こうした機能の提供サービスを複数事業が多重利用可能で、その方が抱えるリソース(設備や人員)が全社ベースで節約できるのなら、事業部から切り出して、その提供サービスごとに専門家集団を作ってしまうというものです。

(2)CEOの2つの職責の代理機能
CEOには、①事業ポートフォリオの管理、②全社組織の維持、といった2つの職責(他にもありますがここで着目するのはこの2つ)があります。①は、各事業部がうまく運営されているか、モニタリングし、問題がある場合は、経営指導または事業ポートフォリオの組み替えを行います。そのために、経営企画、事業企画、予算管理などといった専門家チームの力を必要とします。

②は、通常会社として、法務、経理、人事、総務など、法人格を有するものとして必要な事務手続きをCEOから代行するスタッフ仕事を担う専門家チームが必要になります。ただし、経理や人事、総務など、地理的偏在性があったり(地方の工場のことは東京本社がすべて面倒を見ることはできない)、その事業が他社からの買収で成立していたりして独立性が高いままグループ化されていた場合、一部の専門家の仕事は事業部に残らざるを得ないケースも多々あります。

ここまで、「機能別組織」と「事業部制組織」の欠点を補うため、両者の間に様々なバリエーションの組織形態が存在することを説明してきました。そして、そのいずれもが、「機能視点」または「事業視点」で誰がどういう意思決定権限と専門知識を有しているかで組織デザインが左右される要因を見てきました。何個も「組織デザイン」を教科書的に見せられて、次は他社の組織戦略はどうなのか、実際のところが知りたくなった頃かとも思います。次回はこれで、ようやくケーススタディに入れますかね?(^^;)

経営管理(基礎編)_組織管理(2)- 組織デザインパターンの応用形 「機能別組織」と「事業部制組織」の間には

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