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孫子 第3章 謀攻篇 12 将とは国の輔(たすけ)なり

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ 孫子の兵法(入門)
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■ 指揮命令系統の混乱を止めるのは経営トップにしかできない仕事!

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将軍(現場指揮官、事業部長に相当)とは、国家(会社、組織)の補佐役です。補佐役が君主(経営者)と親密であれば、その国家(会社)は必ず強力な体制となっていますが、二人の間のコミュニケーションに問題があれば、国家(会社)は必ず弱体化します。

君主(経営者)が組織に憂患をもたらす原因が3つあります。

1.組織の自由な行動を束縛するような、画一的な指示を出すこと
2.現場指揮官との権限分担を明確にせず、現場で働く人の判断を混乱に陥らせること
3.現場の変化を一切顧みず、現場指揮官による臨機応変的な指示出しを否定すること

組織の命令指揮系統を自らかき乱して、自ら勝利を引き去るとはこのことを言います。

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孫子が置かれていた時代背景を少々解説します。

孫子が活躍した古代中国においては、軍の統帥権は将軍ではなく、軍の所有者である君主の手中にあり、また君主直属の各種官僚(現代でいう本社コーポレートスタッフ)が、どこまでも同行して軍を監督していました。将軍(現場指揮官)は、官僚制度に基づいた契約によって、軍の指揮権を一時的に君主より委任された存在に過ぎませんでした。

そこで、軍隊が前線に出動した後も、君主は将軍の元に頻繁に使者を派遣し、軍の運用日手指示を与えるのが一般的でした。孫子は、こうした時代状況を背景に、軍事の専門家としての将軍の独立指揮権を強調したのです。そもそも軍事に無知な君主、現場の刻一刻と変わる状況認識に追い付けていない君主が、背後よりやかましく将軍を掣肘し、軍の命令指揮系統が二本立てとなって、軍が統制を乱し、勝機を逸する時代を恐れたからです。

ただこれは前提条件が2つあって、
① 「将の能にして君の御せざるは勝つ」とあるように、将軍(現場指揮官)が有能であること
② 独立指揮権といっても、それは前線での用兵に範囲が限定されており、君主の意向を無視して、将軍が独断で戦争を始めることはないこと

現代ビジネスにおいては、有能なCEOに全ての権限(およびその権限を発揮できるような情報も)を集中させて、凡人ではできない経営判断を求めやすくする組織設計をしている企業もあります。その場合は、集権的意思決定のメカニズムを効率的に発揮させるITなどのコミュニケーション手段の整備が必要であると共に、有能である前提のCEOの判断が誤っている時、どうやって修正をかけるのか、(社外)取締役や(社外)監査役によるチェック機構をどう機能させるかに心を砕く必要があります。

一方で、徹底的に分権化の方向で組織運営を実施することを決めた組織では、遠心力で組織が崩壊しないように、求心力を維持するための、会議体設置や投資意思決定ルールの明文化が必要になってきます。

企業が置かれている市場動向にもよるのですが、あえて一般論を申し上げると、先進国の経済成長率が高かった時代は、市場の規模拡大と共に、企業も事業を多角化して、パイの拡大に自社成長が乗り遅れないように、できるだけ、事業部長に意思決定権限を付与して、機動的な経営判断を随所で可能にしていた組織の勝率が高かったように思えます。

しかし、昨今では、市場の量的拡大は自国市場ではそれほど見込むことができなくなり、全社横断的な機能の効率化、共通固定費の多重利用によるコストダウン、有能な人材の多重利用と最適配置(社外からの登用もあり)、経営判断に課せられるスピードの早期化など、CEOに各機能の担当責任者が課題と解決策を迅速に提供し、CEOの最終判断を求める、という経営スタイルが勝率を高めているようにも観察されます。

CEOの権限設定には、各社様々な工夫があると思いますが、現場責任者(事業部長や機能組織長)との責任と権限の明確化は、どんな組織でも最重要課題のようです。

組織内でのコミュニケーション形態と、コミュニケーションのためのコスト・方法についての考察は、次の投稿もご参考ください。

⇒「(経済教室)企業組織、情報通信で変化 エコノミクストレンド 組織フラット化進む 鶴光太郎 慶大教授

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