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第3の刺客 キャッシュフロー計算書 登場

会計(基礎編) 会計(基礎)
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■ キャッシュフローを見る必要性

会計(基礎編)
前回、「信用取引」が行われた際の会計帳簿である「貸借対照表」と「損益計算書」の成り立ちを説明しました。会社が「どれくらい儲かったか」を見るために、2種類の利益の計算方法、「財産法」と「損益法」に対応するように、それぞれ「貸借対照表」と「損益計算書」が使用されることも学びました。どれくらい儲かったか計測したい期間の始まりと終わりの「貸借対照表」を差し引きしたり、どれくらい儲かったか計測したい期間の財産の増減取引を網羅的に記録した「損益計算書」があれば、「利益」は計算できることを確認しました。
ただし、前々回の「現金商売」のケースと前回の「信用取引」のケースでは、計算された「利益」の額は同じなのですが、「利益」が計算されたとき(決算時)、会社に残っている「現金」の金額も同じでしたでしょうか?
イタズラに、会計帳簿は種類が多くあるのではなく、それぞれ役割・役目があります。詳細は、全種類の会計帳簿が登場した時に再整理しますが(一体いくつあるのかはお楽しみに!)、「キャッシュフロー計算書」にも「貸借対照表」や「損益計算書」にはないものをチェックするために存在しています。

 

■ 「現金商売」と「信用取引」の会計帳簿を再確認

それでは、前々回と前回の玩具屋さんの経営の事例をもう一度おさらいしましょう。
《A.現金商売》
会計(基礎編)_貸借対照表_現金商売_決算
会計(基礎編)_損益計算書_現金商売_決算
《B.信用取引》
会計(基礎編)_貸借対照表_信用取引_決算
会計(基礎編)_損益計算書_信用取引_決算
まず、内容の精査に入る前に、ここで、一つ目のお約束事を皆さんに取り付けさせて頂きたいと思います。会社が手提げ金庫などで手元に保管している「現金(現ナマ)」と、金融機関に預けている「預金」は、合わせて「キャッシュ」と呼びたいと思います。現実世界でも、皆さんの財布には現金とキャッシュカードが入っていると思います。現金が不足したら、即時にATMに行って現金を下ろしてくると思います。両者にはあまり違いはないのでは、、、?
(ちなみに、筆者は結婚してからキャッシュカードは一切持たされておりません (´Д`。))
会計の世界では「現預金(げんよきん)」と呼び習わし、一括りに表現することがあります。「キャッシュフロー計算書」における「キャッシュ」は「現預金」のことを指します。
(もうちょっと勉強している方は「現金同等物」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これも全部「キャッシュ」とここでは簡単にご理解ください)
では、前置きはこれくらいにして、2つのケースを比較してみましょう。
「A.現金商売」の時には、「貸借対照表」上に残っている「キャッシュ」は、160万円です。
「B.信用取引」の時には、「貸借対照表」上に残っている「キャッシュ」は、60万円です。
「キャッシュ」は100万円も違うのに、「利益」はどちらも60万円で一緒です。
この「利益」は同じなのに、「キャッシュ」が異なる状態が、昔はそれほどありませんでした。しかし、産業革命以降、産業経済が発達して、いろんな為替取引や商取引形態が登場してきて、「利益」と「キャッシュ」のかい離がどんどん大きくなりました。
(厳密には後ほど説明します)
皆さんは素朴に、下のような等式が成り立つという感覚をお持ちだと思います。
「会社が儲かっている」=「利益が増える」=「キャッシュが増える」
2つ目のイコールが「利益額」と「キャッシュ」とで皮膚感覚として合わなくなったので、「利益」をダイレクトに計算する「損益計算書」とは別に、「キャッシュ」の増減を計算する「キャッシュフロー計算書」を見てみたくなったわけです。

 

■ キャッシュフロー計算書をつくってみる

それでは、「A.現金商売」と「B.信用取引」の2つのケースそれぞれの「キャッシュフロー計算書」をつくってみましょう。
《A.現金商売》

  1. 会社設立時に、株主(親父)から出資として100万円のキャッシュが入ってくる
  2. それとほぼ同時に、信用金庫から融資として100万円のキャッシュが入ってくる
  3. 店舗を不動産屋から購入した時に、100万円のキャッシュが出ていく
  4. 商品を問屋から購入した時に、100万円のキャッシュが出ていく
  5. お客様に商品を販売した時に、200万円のキャッシュが入ってくる
  6. 自分に給料を支払う時に、30万円のキャッシュが出ていく
  7. 信用金庫に利息を支払う時に、10万円のキャッシュが出ていく

ここで2つ目のお約束事として、ある一定期間(決算から決算の間)に、「キャッシュ」が出ていったり、入ってきたりする取引やその金額のことを「キャッシュフロー」といいます。そして、入ってくるキャッシュのことを「キャッシュ・イン・フロー(CIF: Cash In Flow)」、出ていくキャッシュのことを「キャッシュ・アウト・フロー(COF: Cash Out Flow)」と区別した言い方もあります。
下表では、紙面の都合もあったので、いきなり略称の「CIF」「COF」を使用させて頂きます。
会計(基礎編)_キャッシュフロー計算書_現金商売
ここでの気付きは2つです。

  • 「キャッシュフロー計算書」は、「貸借対照表」と「損益計算書」に記録されている項目をごちゃ混ぜにして計算されること
  • 「損益計算書」の時には、財産の増減に無関係ということで無視されていた「店舗購入」がCOFとして計算対象になっていること

《B.信用取引》

  1. 会社設立時に、株主(親父)から出資として100万円のキャッシュが入ってくる
  2. それとほぼ同時に、信用金庫から融資として100万円のキャッシュが入ってくる
  3. 店舗を不動産屋から購入した時に、100万円のキャッシュが出ていく
  4. 自分に給料を支払う時に、30万円のキャッシュが出ていく
  5. 信用金庫に利息を支払う時に、10万円のキャッシュが出ていく

会計(基礎編)_キャッシュフロー計算書_信用取引
ここでの気付きは1つです。
会社設立時の、会社立ち上げ資金以外にCIFが無いので、どんどん会社の中の「キャッシュ」が少なくなる一方で一切入ってきていないこと

■ 改めて確認 ―「キャッシュフロー計算書」の必要性

信用取引がどんどん発達していった結果、実際に「キャッシュ」を受け取らない、渡さない商取引が増えていって、「貸借対照表」と「損益計算書」の上では、プラスの「利益」が計算されたとしても、「キャッシュ」がどんどん不足していって、銀行に利息を支払えなくなる時が来るケースが発生する可能性が出てきました。
「利益」が出ている=「黒字」なのに、手元に「キャッシュ」が無いために、債務(金融機関や取引先から借りているお金)を返済できなくなり、いわゆる「倒産」する会社がぼちぼち出てきました。そうなると、銀行も、「貸借対照表」と「損益計算書」だけ見て、「利益」が出ているからといって、安心して融資した後、返済してもらえなくなることを恐れて「キャッシュフロー計算書」も見るようになったのです。
「資産(財産)」の増減を「利益」として表現した「損益計算書」と、「キャッシュ(残高)」の増減を「キャッシュフロー」として表現した「キャッシュフロー計算書」の2つを併用する必要性が出てきたということです。
このように、「利益」がプラス=「黒字」なのに借金を返済できなくなり「倒産」(=銀行取引停止)になることを「黒字倒産」といいます。こういう言葉が登場してきたというのは、そういう会社が増えてきて、銀行も注意をし始めたということです。
ちなみに、「キャッシュフロー計算書」が登場する前は、「キャッシュ」の増減を見る会計帳簿がいろいろありました。
「資金繰り表」
「資金移動表」
「資金運用表」 などなど。
筆者は、「キャッシュフロー計算書」が正式な会計帳簿になる前から、経理実務をしていたので、これらの帳票を使って実際に仕事をしていました。
今でも、会計実務の中で、これらの帳票が活躍しているのを見ることがあります。というより、少なくとも「資金繰り表」は無いと資金管理に困ってしまうので、逆に無いと困ります。まあ、世の中の偉い学者と賢い官僚が導入を決めた「キャッシュフロー計算書」より昔の会計帳簿の方が使い勝手があると思っている人は筆者以外にもいらっしゃると思いますが、「キャッシュフロー計算書」が華々しくデビューした時には、皆が万能帳簿として誤解をしたものであります。
ちなみに、「貸借対照表」と「損益計算書」の組み合わせで「キャッシュ」残高の安全性や擬似的な「キャッシュフロー」を計算したり、倒産の危険度を測ったりする会計技術があります。それは「財務分析(その中でも「安全性分析」)」というもので、これについては別シリーズで説明したいと思います。
ここまで、「第3の刺客 キャッシュフロー計算書 登場」を説明しました。
会計(基礎編)_第3の刺客 キャッシュフロー計算書 登場

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