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会計原則・会計規則の基礎(1)会計原則の基本構成を知る

会計(基礎編) 財務会計(入門)
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■ 会計原則論を語ってみる!

会計(基礎編)

「企業会計原則」「会計規則」「会計法規」という会計の世界の成文法(文書の形で会計処理の原理原則や手続きが記述してあるもの)を順次解説していきたいと考えています。本稿では、「会計原則」「会計規則」と呼ばれる成文法が織り成す体系についてざっくりご紹介したいと思います。

通常、「会計原則」というと、固有名詞としては、大蔵省企業会計審議会の前身 (経済安定本部企業会計制度対策調査会) が1949年に制定した「企業会計原則」を想起する人が多いはずです。ここでは、そうした個別の成文法をなす「会計規則」「会計法規」全体の構成とその基礎となる考え方を説明する総体として「会計原則」という呼称を用いることにします。

会計原則は、「一般に公正妥当と認められた会計諸原則(Generally Accepted Accounting Principles : GAAP)」とも呼ばれます。会計原則は、社会的合意に基づき、ひろく会計実務の中から帰納法的に適切(適正)と考えられる会計行為を体系化したルールのことを意味します。会計行為とは、会計的計算ロジックや、財務諸表の表示方法など、いわゆる会計的な数値をハンドリングする全ての所作を含みます。

会計行為に基づいて公表された会計主体(一般的には株式会社)における会計数値は、財務諸表という一定の形式で公表され、それを利用する利害関係者に対してできるだけ有用で信頼性をもつ情報である必要があります。その一方で、会計行為はかなりの面で会計担当者の判断に基づいて作成される数値であるため、会計担当者の主観や会計的価値判断に左右される性格も併せ持ちます。

例)
棚卸計算として、「先入れ先出し法」や「総平均法」を選択適用できる
金額的重要性を考慮し、見越し計上の有無や科目表示の粗さを選択することができる

それゆえ、会計の主観的な面ができるだけ客観的なものに転化させる必要があります。その手段の一つとして、会計的判断の基本的なルール・ブックとして様々な「会計原則」「会計規則」が設定・公表されることになるのです。そうした総称としての「会計原則」は、「会計公準」を前提としたうえで、会計慣行および会計的実践から導き出されたもので、下図のような構成をとると一般的には理解されています。

財務会計(入門編)_会計原則の構造

(参考)
⇒「企業会計の基本的構造を理解する(5)「会計公準」とは ①企業実体、②継続企業、③貨幣的評価の3つから成る

 

■ 会計原則と会計基準の関係

「会計原則」と「会計基準」の用語の区別は必ずしも明確にされていません。むしろ同義語として取り扱われることが多いくらいです。いずれも、「会計公準」を前提として演繹的に導かれ、かつ同時に、「会計慣習」から広く帰納的に導かれた会計処理・会計的表示のルールである点については同じです。

しかし、あえて違いを強調して説明するならば、

「会計原則」
・基本的で、ある程度、包括的性格を持ったルールを示すもの
例)収益認識の基本原則である「実現主義の原則」

「会計規則」
・会計原則の具体的な展開形態としてのルールを示すもの
例)「実現主義の原則」の具体的な適用指針としての「販売基準」「回収基準」

なお、前章で紹介した固有名詞としての「企業会計原則」を構成する「一般原則」は、会計全般にかかる包括的な基本原則ではありますが、これは処理・表示の仕方を直接的に指示する原則ではなく、処理・表示の原則や規則を実際の会計行為に適用する際の基本指針を示しているにすぎません。

 

■ 会計基準と会計慣習の関係

「会計基準」は、「会計原則」の具体的な展開形態であるとともに、「会計慣習」から公正妥当であると認められた上で、導かれた会計的処理・表示の具体的な指針となるルールでもあります。つまり、会計目的から演繹的に導出された「会計原則」の展開形態としての理論性と、「会計慣習」から帰納的に導かれた基準体系としての実践性の2つが統合された会計的処理・表示の基準としての位置づけとなります。

「会計基準」の実践性は、「会計慣習」から導かれ、理論性は、「会計慣習」から基本的ルールを抽出する際に、理論的規範性を有する「会計原則」との整合性によって担保されています。簡単に言うと、「みんながやっている会計処理は、どこどこに記載のある会計規則に基づいているという結び付け、法文の解釈をして正しさを裏打ちしている」ということです。

みんなが正しいと思っている会計処理は、会計基準のどこどこを参照している。でもその会計基準は、みんなが正しいと思っている会計処理が慣習となって成文法化されたもの。ソシュール言語学における「ラング」と「パロール」の関係そっくりです。そのたとえの方が難しいか!(^^;)

具体的に、「会計慣習」とは、会計目的の達成のために、会計担当者のミッション遂行に対して必要性から考案された個々の会計処理・表示方法が、多年にわたっての実践的淘汰と洗練の歴史を経て、慣習として会計実務の世界に定着したものです。ひとつひとつの「会計慣習」それ自体は必ずしも理論的検討を経て体系化されたものではありません。しかし、英米法における判例法のように、幾度にわたる会計的判断を迫られる経験を経て、理論的体系化が自然にはかられ、「会計原則」や「会計規則」として成文化されていきました。

 

■ 会計行為と会計原則の体系の関係

会計行為を体系化し、ルールに準拠しているか、「会計原則」「会計基準」を用いてチェックするためには、会計行為自体が「会計原則」「会計基準」の中に記載のあるルールのどこと対応しているかを知っておく必要があります。

財務会計(入門編)_会計原則と会計行為の関係

「会計原則」は、一番上に「真実性の原則」が鎮座しております。会計の世界の「真実」とは、刑事事件や裁判における『真実』、つまり、名探偵コナンの決めゼリフ、「真実は1つ」という意味合いでは残念ながらありません。会計の世界における『真実』とは、「会計原則」に照らし合わせて、適切な処理と認められるものなら、なんでもOK。司法の世界で例えるなら、同じ法理を使っても、裁判ごとに異なる判例が出てくる「民事裁判」みたいなものです。
(法曹の専門家の皆さん、安易な例えですみません。m(_ _)m)

会計の世界における「計上」について、「認識」行為と「測定」行為の詳細な説明は下記投稿をご参照ください。

⇒「企業会計の基本的構造を理解する(1) 会計取引の計上に必要な「認識」と「測定」について

あえて繰り返し説明するなら、

「認識」
様々な企業活動から、会計取引として切り出す際の条件を確認し、資産・負債・収益・費用として会計帳簿に乗せるべき取引がこれだ! と洗い出す行為です。

「測定」
上記で認識された会計取引を帳簿に記録する際に、いくらの金額で乗せるか、その金額を決定する行為です。

「記録」
仕訳帳、総勘定元帳、試算表、精算表など、会計記録を残しておく様々な明細データを記載するフォームに計上額をひとつひとつ刻み込む行為です。

「表示」
ディスクロージャー制度に則って、社外・社内の利害関係者(ステークホルダー)に対して、会計取引をまとめた「財務諸表」を公開してあげる行為です。

(※ アカデミックな体系図というものは、どうしても同じ用語を重ねてしまうものです。広義の「表示」と、狭義の「表示」が同時に使用されています。筆者が実際に現場でコンサルティングサービスを提供する際に作成する説明資料では決してこのようなダブりはしでかしませんが。学者先生は、生徒の方に多大な理解力を求める傾向があります)

「会計原則」は、「真実性の原則」の下、「計上」行為を適正に行えるように、会計処理面の規則を体系化したもの、「記録」行為を適正に行えるように、会計の形式面に関連する規則を体系化したものに大別されます。みなさんが「会計原則」「会計規則」を学習される際に、効率的なのは、その規定文が会計行為の「認識」「測定」「記録」「表示」の一体どれをルール化することを意図したものかを、条文を読みながらイメージすることが、理解を促進する手助けとなると筆者は信じるものであります。(^^)

財務会計(入門編)_会計原則・会計規則の基礎(1)会計原則の基本構成を知る

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