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企業会計の基本的構造を理解する(1) 会計取引の計上に必要な「認識」と「測定」について

会計(基礎編) 財務会計(入門)
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■ 企業会計の基本的バックボーンを説明します

会計(基礎編)

「企業会計原則」「会計規則」「会計法規」という会計の世界の成文法(文書の形で会計処理の原理原則や手続きが記述してあるもの)を順次解説していきたいと考えています。その前に、そもそもの「企業会計」の背景に流れる「会計的なものの考え方」をざっくりご紹介するのが本稿の目的です。

「会計」は、株式会社に代表される「営利団体」、地方公共団体や学校法人に代表される「非営利団体」を問わず、その組織における「お金」の出入りを記録して、

① 組織活動に必要な資金が不足しないで組織が存在し続けられるように資金の収支を管理する
② 特に営利団体では、組織目的である「儲け」がどれくらいになったかを計算する

ために、様々な法定または組織の裁量ルールで、その組織を取り巻く経済活動を記録して、その情報を必要とする人々(利害関係者:ステークホルダー)に伝達することを意味します。

上記では「お金」と表現しましたが、必ずしも「現金」の出入りだけに特定して記録するものではないので、「貨幣的価値」という用語で表現します。

会社とよばれる営利団体を例にとると、一般的に、3つの「財・サービス市場」「金融市場」「労働市場」に直面して、様々な経済的主体と取引関係を結びます。その中で、「貨幣価値」が移動したり生成されたりした場合に、会計取引として記録されるようになっています。

財務会計(入門編)_企業を取り巻く取引市場と経済活動

例)株式会社が他社と知的財産をお互いに共有利用するための提携契約(クロスライセンス契約)を締結
  ・提携契約締結や実際の共通利用の事実が発生しただけでは会計取引は発生しない
  ・共通利用の対価として使用料を支払うことを約束していた場合は会計取引が発生する

 

■ 会計取引を行う際に何が行われるか:「会計行為」とは?

以後は、非営利団体が用いる「非営利会計」「公会計」ではなく、株式会社など、営利団体が用いる「企業会計」に範囲を限定して解説を進めます。

企業の会計取引をステークホルダーに説明する際には、「貨幣的価値(金額)」で表示された数字による会計取引を提示する必要があります。その会計数字はどういう考え方によって作成・表示・伝達されるのでしょうか?

財務会計(入門編)_会計行為とは

①「計上」
企業の経済事象について、会計情報として記録するための具備条件を判断する行為です。いつの会計取引か、タイミングを決定する「認識」と、いくらの貨幣価値のある取引か、金額を決定する「測定」の2つの行為が相まって会計取引が記録されることになります。

②「記録」
会計は、「複式簿記」という計算構造によって、必ず2面性のある取引として、会計帳簿に記載されます。例えば、現金で商品を販売した時は、

・「現金」という資産が増えた
・「売上」という収益が増えた

という感じで記録されます。

③「表示」
会計はその記録を、その情報を欲する人の元にまで届けて、活用してもらうことを目的としています。したがって、会計情報を様々な意思決定に有効活用してもらうためには、

・分かりやすく一覧表示になっている
・一定の形式(フォーマット)で継続的に表示されている

ことが必要とされます。そうした表示・伝達の形式面を充足したものが「財務諸表」と呼ばれる会計情報です。「諸表」とは文字通り、活用目的に応じて複数種類の開示資料が存在することを意味しています。

 

■ 「計上」にともなう「認識」と「測定」の具体的説明 - 売上取引を例に

企業が製商品・サービスを顧客に販売した際の、売上取引を例に、「認識」と「測定」を説明します。

まず、会計取引を「計上」する際の準備として2つのものが必要になります。
① 証憑:会計取引の元になる証拠資料
② 判断基準:会計取引を記録する際に憑代となる考え方

財務会計(入門編)_会計取引の計上

証憑(しょうひょう)には、「認識」のベースになる「日付」と、「測定」のベースになる「金額」が記載されているはずです。現代において、証憑が紙製の伝票である必要はなく、電子媒体上のログでも構いません。

売上計上の場合には、関連する証憑は数多く存在しますが、上図では、4つに絞っています。そして、経理担当者はその証憑を見ると同時に、自社の会計処理規程(当然ながら法定のルール・会計基準などに準拠したもの)により、証憑から会計判断を行います。昨今では、領収書などを画像情報で取り込み、AI(人工知能)などを用いて、自動仕訳機能を搭載している会計システムを、いくつかのフィンテック企業が提供しています。その場合は、会計判断をある程度定型化しているのですが、筆者の実務経験から、ある程度、柔軟な人間の判断による会計処理が完全に消滅することはないと考えています。

現行の法定ルールでは、「実現主義」に基づく、「出荷基準」または「検収基準」が一般的です。実際の複雑なビジネス上の取引の全てに一様に適用可能な判断基準は存在しません。販売取引の内容を見て、法定ルールが定める範囲で、かつ同種の取引ならば継続的に同じ基準で売上取引を計上することになります。一つに定まらず、ある程度人間が判断する余地があることを、会計の世界では、絶対唯一のこれが正しいという正解(真実)は無い、という諦観から、「相対的真実」という会計用語があります。

上記の例では、「請求書」の発行タイミングは自社の恣意的な操作で動かすことができるため、通常は認められていません。値引額も自社の裁量である程度決定できることから、測定額も厳しく審査する必要があります。それゆえ、値引後の900円を売上高とするよりかは、値引前の1000円を売上高と一旦設定し、併せて、売上値引を100円という会計記録も残し、会計監査人や他の会計責任者が後から確認しやすくする方法も採用されることが多くあります。

仮に、3月決算の会社の場合、「出荷基準」と「検収基準」のいずれを採用するかで、当会計期間の売上高が変動することになります。検収書を3月中に客先からもらえそうにないから、勝手に3月末に請求書を発行して、3月中の売上にしてしまおうという恣意的な操作を誘発することがあります。それゆえ、継続的に採用すべき会計的判断というものを予め明確に決めておく必要があります。一度決めた会計的判断は、企業側の勝手でふらふらと自由気ままに変えることは控えるべき。こちらは「継続性の原則」という呼称で会計の世界では結構有名な大前提となっているルールのひとつです。

財務会計(入門編)_企業会計の基本的構造を理解する(1) 会計取引の計上に必要な「認識」と「測定」について

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