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■ 現在、AIを使って人間の仕事を代替できること、人間より効果的にできること

経営管理会計トピック

テクノロジー専門書でなくても、AI(人工知能)の技術が進歩し、いつの日か人間の職場を奪う日がくることを予言している文献・コラム・記事もかなり出てきました。人事部と経理部の仕事を代替する機能を搭載したAIの事例が続けて日本経済新聞に紹介されていたので、ここでひとつにまとめて解説していきたいと思います。

2016/6/15付 |日本経済新聞|朝刊 (ビジネスTODAY)AIで人事部いらず? ビズリーチやヤフー、データで最適配置 人との役割分担、探る

「会社の人事が不透明との不満はつきもの。ここに目を付けた人工知能(AI)サービスが登場した。人材紹介のビズリーチ(東京・渋谷)とヤフー、米セールスフォース・ドットコムは14日、仕事ぶりなどのデータをもとにコンピューターが採用や評価、配属を決める事業を始めると発表した。いずれ人事部はAIに取って代わられるのか。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「IT(情報技術)を使って採用、評価、配属をする手法は「HRテック」と呼ばれる。独SAPや米オラクルがシステム作りで先行し、欧米では広がっている。金融とITを組み合わせた「フィンテック」や教育とITの「エドテック」に続くITの新しい潮流だ。」

ちなみに、「テレマティクス」とは、カーナビをはじめとした情報端末を利用して電子メールを送受信したり、交通渋滞情報を受信したりする最先端のテクノロジーで、この情報をドライバーが安全運転しているかどうかで自動車保険に係るコストを変動させることに活用したものを「テレマティクス保険」と呼びます。どの分野でも、IoT、ビッグデータ、AIの浸食が激しい、、、こちとらフィンテックだけでお腹いっぱいだというのに。(^^;)

 

■ ではHRテックの事例をひとつひとつ見ていきましょう!

● ビズリーチ
独自の勤怠管理、評価ツールを顧客企業に導入する。採用面接から現在に至る評価の積み重ねだけでなく、働きぶりを追跡調査してデータベース化。これを、大量のデータから特徴を自分で見つけて学習するAIの基幹技術、深層学習(ディープラーニング)で分析。評価や最適な職場、ポジションをはじき出す。通常料金は月額10万円から。2019年6月までに2000社以上の導入を目指す。

ビズリーチの南壮一郎社長は、
「これまで人事評価は(上司の)勘や経験に頼ることが多かった」と指摘されており、能力・実績主義が浸透してきたと言われながら、実際は飲み会の場で人事が固まることもあるなど不透明さは拭えない現状を打破するものとしてHRテックが紹介されています。

「デジタル革命が多くの部門で進むなか、勘や経験をベースにしたアナログな判断も目立つ人事部。好き嫌いで評価が左右され、社員が士気を下げてしまうことだって少なくない。だからこそAI人事の需要は大きいとの見方がある。一方、日本的な慣行のなかで順調に出世してきた人は、勢いをそがれかねない。」

どんな人事にも、傾向と対策というものがあり、AIが人事判断をするようになれば、今度はAIに好印象を持たれるように人々は行動様式を変えるようになるのでしょう。それは、Googleの検索アルゴリズムが変わる度に、SEO対策が打たれるのと一緒の道理です。

(同記事添付のAI人事導入で会社員はどう考えるようになるかのイメージ図を転載)

20160615_AI人事導入で会社員は_日本経済新聞朝刊

● クレディ・スイス
転職しそうな人を対象にこの仕組みを使い、最適な職場を割り出して異動させた。これにより、離職者を約300人減らすことに成功した。職場のミスマッチが減り、働きやすい環境づくりに生かせた。

こういうのは、プラスにとることもできれば、マイナスに考えることもできます。
皆さんの中には、次のNHKの番組をご覧になられた方もいらっしゃるかと思います。

⇒「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る NHKスペシャル 2016年5月15日

この番組の中で、
「国内最大のDBS銀行では、職員の不正摘発・防止のために、各行員の口座取引の様子やチャットやメールの文面など、24項目を常に監視し、90%以上の精度で収賄などの不正を発見する。」
というAIの活用法が紹介されています。全行員のパラメータが、まるで歴史シミュレーションゲーム(信長の野望や三国志のようなもの)で配下の武将の能力や忠誠心がデジタルで表現されているように、パソコン画面いっぱいに広がっていました。

「人事のAI化が日本でも進めば、社員の働き方や人間関係は変わるだろう。日本能率協会コンサルティングHRM革新センターの村上剛センター長は「それでも人事部がいらなくなることはない」とみる。
過去や現在のデータを駆使するAIは、変化の少ない経営環境で効果を発揮しやすい。しかし、技術革新や突然の環境変化でまったく新しい人事戦略を打ち出す必要に迫られたら、頼りになるのは人の力だ。
華々しい成果を裏で支えてきた人たちを正当に評価できるかも、ハードルになる。人事部でも人とAIの役割分担を探る必要がある。」

この記事では、人事評価の観点が強いですが、人事面でもっと有効なAIの使い方があるように思います。それは従業員ひとりひとりの生産性を高めるような人員配置や仕事へのアサインを考えること。

⇒「日立、研究費に年5000億円 16~18年度3割増、人工知能やロボ開発

この過去投稿では、日立ハイテクノロジーズが開発したウェアラブル端末により、従業員の就業時間中の幸福度をセンサーで感知し、どういう働き方(具体的には誰と誰が接触・会話している時)をしていると、脳波などのバイタル値が一番理想的になるかをモニタリングできる技術をご紹介しました。できれば、HRテックは、こういうふうに、従業員の幸福度を上げる、という観点で応用できる領域を広げていってほしいと思います。

これは、筆者の個人的な思いですが、信賞必罰、公平な人事、と固いことを言ってるより、従業員の幸福度や充実度を伸ばす人事制度や職場配置のためにテクノロジーを使った方が、会社の業績向上も、個人の生産性向上にもより効果的ではないかと思うのであります。

⇒「人間がAIに管理される日? - HRテックによる最適配置と社員の幸福感を高める「Hitachi AI Techology」の事例から

 

■ 次に財務経理部門へのインパクトを見ていきましょう

お金の話になると、株や投資ということで、数字の分析・解析に限定のことかと思いきや、今時のAIは、デジタル処理されたものであるならば、自然言語(テキスト情報)をも呑み込んで、高速アルゴリズムで処理してしまいます。

2016/6/14付 |日本経済新聞|朝刊 AIで調査リポート カブドットコム、中小型銘柄を1分で

「カブドットコム証券はフィンテックベンチャーのゼノデータ・ラボ(東京・港)と共同で人工知能(AI)で上場企業の調査リポートを1分以内で作成するシステムを開発する。企業の公開情報を読み込んで収益動向などを分析し、リポートにする。今夏にも個人投資家がスマートフォン(スマホ)などで見られるようにする計画だ。」

これは、単純に証券アナリストの代わりをAIが務めます、という表面的な事象が問題なのではなくて、

「決算短信や決算の説明資料などを読み込んでリポートにする。AIが自然言語処理やPDFファイルの解析を通じて「どの事業分野が利益成長しているのか」が分かるような内容にする。作成までの時間は企業が短信を公表してから1分もかからないという。
将来はAIを進化させて決算短信だけでなく、ニュースや市場データの分析もできるようにする考え。「人間が気づかない事象との関連性を発見し、企業業績の予想を独自につくりたい」(ゼノデータの関洋二郎社長)という。」

とあるように、財務分析はもちろんのこと、テキスト情報と財務数値の相関分析まで高速に(とても人間業では及びもつかない速さで)、しかも多量のデータを力技で処理してしまい、それまで結構職人技だった、業績予測とその業績変動をもたらす、PSI(production-sales-inventory)コントロールや、開発投資・設備投資の成功確率計算(期待値計算)もやれちゃうというこです。

そうなると、財務分析の腕を磨き、数字の追っかけ方、事業部ごとや特定市場固有の独特の数字・業績の推移を経験と勘で読みにいく手練れの会計職人は不要になってしまう、ということになります。そうするとですね、筆者のような管理会計・経営管理のコンサルタントは全員失業、ということになります。これはかなりやばい。(^^;)

 

■ 仮説検証型データ解析はもう古い データ分析の目的なんでどうでもいい!?

ここからは、筆者のもう一つの専門分野、BI(Business Intelligence)にも通じるお話です。従来、BIシステムを構築する際、

① きちんとユーザにデータ分析の目的を確認する
② データ分析目的(いわゆる仮説検証のためのロジック)を果たすようにデータベースを設計する
③ データ分析のために大量のデータを効率的に処理できる環境を構築する
④ ユーザが仮説検証を繰り返し、当初のビジネス改善に役立てる

というあらすじに則って、システム構築やデータ解析ロジックを開発してきました。

しかし、昨今、AIが大量データを高速に、それも多種多様の解析アルゴリズムを使って、分析結果をすぐさま提示してくれるようになったため、人間の脳みその限界を超えたデータ解析ができるようになったのです。つまり、「仮説検証」の「仮説」は人間の脳みそが頑張って考え付いたデータ解析のフレームワーム。そのフレームワークに従って構築されたデータベースとその解析ツールは、当初の人間の発想の枠を超えた問題を発見したり、因果関係を見つけ出したりすることは非常に苦手なんです。

一方で、AIはそんな仮説検証ロジックですら、ディープラーニングの材料にしてしまい、勝手に仮説検証ロジックから次々と編みだし、それまで人間が気付きもしなかったデータ解析結果を人間の目の前に提供してくれるのです。どうしてそうなるのか最初は分からないけど、AIに提供されてからじっくり考えて見ると、新しい切り口の、新しい発想の因果関係をビジネスロジックの中に発見した、ということが今すでに起きているのです。

画面のビジュアルだって、これまではどうすれば目で見た人間のインサイト(洞察)を引き出せるか、レイアウトにこだわったダッシュボードなどをこれまで設計してきましたが、全部生身の人間の脳みそがより問題や課題に気づけるように、これまた認識に限界のある人間の頭で考えたものにすぎないのです。AIは、そんな人間の脳みそがようやく理解できるようなビジュアル画面は不要なのです。

端的な例。
人間は、2次元、せいぜい3次元のデータしか、パソコン画面に可視化した場合に、画像として認識できません。AIは4次元以上の切り口で同時にデータを解析することができます。

昨今(といっても2011年ぐらいから)、セルフサービスBIということで、仮説検証型ではなく、問題発見型BIシステムを提供します、というのが業界の最先端とされてきましたが、それも人間の脳みそを相手にしたお話しに過ぎません。AIに代表される先端的なテクノロジーはずっとその先を行っています。

従来は、細かい手作業での記帳作業がどんどんコンピューター化、自動化されて、財務経理部門では、財務分析などに代表されるデータ分析作業が最後、人間の仕事として残る、と思われていましたが、AIはその判断・分析作業を代替するところまで来ています。イーロン・マスクがおっしゃっていますよね。

「自動運転されないクルマの方が危険なので、人間が運転することが法律で禁止される時代がその内に来る」と。

同じことが言えるかもしれません。

「人事評価や財務判断は、人間がやると間違いだらけなので、人間が行うことを法律で禁止する」

近未来の人事部や経理部は、全てAIに取って代わられる!?
(SFではなく、すでに香港の投資ファンドの社長はAIが代行していますが)

⇒「(新産業創世記)「土俵」が変わる(1)AI社長の下で働けますか 決断が人の役割 - 経営判断を下す日立のAI

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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AI(人工知能)が人事部と経理部から人間を駆逐する日はいつか? - HRテックとフィンテックの影響は?http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭テクノロジー人工知能,AI,仮説検証,フィンテック,ヤフー,ビズリーチ,セールスフォース・ドットコム,HRテック,エドテック,テレマティクス保険,クレディ・スイス,日立ハイテクノロジーズ,カブドットコム,ゼノデータ・ラボ,セルフサービスBI■ 現在、AIを使って人間の仕事を代替できること、人間より効果的にできること テクノロジー専門書でなくても、AI(人工知能)の技術が進歩し、いつの日か人間の職場を奪う日がくることを予言している文献・コラム・記事もかなり出てきました。人事部と経理部の仕事を代替する機能を搭載したAIの事例が続けて日本経済新聞に紹介されていたので、ここでひとつにまとめて解説していきたいと思います。 2016/6/15付 |日本経済新聞|朝刊 (ビジネスTODAY)AIで人事部いらず? ビズリーチやヤフー、データで最適配置 人との役割分担、探る 「会社の人事が不透明との不満はつきもの。ここに目を付けた人工知能(AI)サービスが登場した。人材紹介のビズリーチ(東京・渋谷)とヤフー、米セールスフォース・ドットコムは14日、仕事ぶりなどのデータをもとにコンピューターが採用や評価、配属を決める事業を始めると発表した。いずれ人事部はAIに取って代わられるのか。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 「IT(情報技術)を使って採用、評価、配属をする手法は「HRテック」と呼ばれる。独SAPや米オラクルがシステム作りで先行し、欧米では広がっている。金融とITを組み合わせた「フィンテック」や教育とITの「エドテック」に続くITの新しい潮流だ。」 ちなみに、「テレマティクス」とは、カーナビをはじめとした情報端末を利用して電子メールを送受信したり、交通渋滞情報を受信したりする最先端のテクノロジーで、この情報をドライバーが安全運転しているかどうかで自動車保険に係るコストを変動させることに活用したものを「テレマティクス保険」と呼びます。どの分野でも、IoT、ビッグデータ、AIの浸食が激しい、、、こちとらフィンテックだけでお腹いっぱいだというのに。(^^;)   ■ ではHRテックの事例をひとつひとつ見ていきましょう! ● ビズリーチ 独自の勤怠管理、評価ツールを顧客企業に導入する。採用面接から現在に至る評価の積み重ねだけでなく、働きぶりを追跡調査してデータベース化。これを、大量のデータから特徴を自分で見つけて学習するAIの基幹技術、深層学習(ディープラーニング)で分析。評価や最適な職場、ポジションをはじき出す。通常料金は月額10万円から。2019年6月までに2000社以上の導入を目指す。 ビズリーチの南壮一郎社長は、 「これまで人事評価は(上司の)勘や経験に頼ることが多かった」と指摘されており、能力・実績主義が浸透してきたと言われながら、実際は飲み会の場で人事が固まることもあるなど不透明さは拭えない現状を打破するものとしてHRテックが紹介されています。 「デジタル革命が多くの部門で進むなか、勘や経験をベースにしたアナログな判断も目立つ人事部。好き嫌いで評価が左右され、社員が士気を下げてしまうことだって少なくない。だからこそAI人事の需要は大きいとの見方がある。一方、日本的な慣行のなかで順調に出世してきた人は、勢いをそがれかねない。」 どんな人事にも、傾向と対策というものがあり、AIが人事判断をするようになれば、今度はAIに好印象を持たれるように人々は行動様式を変えるようになるのでしょう。それは、Googleの検索アルゴリズムが変わる度に、SEO対策が打たれるのと一緒の道理です。 (同記事添付のAI人事導入で会社員はどう考えるようになるかのイメージ図を転載) ● クレディ・スイス 転職しそうな人を対象にこの仕組みを使い、最適な職場を割り出して異動させた。これにより、離職者を約300人減らすことに成功した。職場のミスマッチが減り、働きやすい環境づくりに生かせた。 こういうのは、プラスにとることもできれば、マイナスに考えることもできます。 皆さんの中には、次のNHKの番組をご覧になられた方もいらっしゃるかと思います。 ⇒「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る NHKスペシャル 2016年5月15日」 この番組の中で、 「国内最大のDBS銀行では、職員の不正摘発・防止のために、各行員の口座取引の様子やチャットやメールの文面など、24項目を常に監視し、90%以上の精度で収賄などの不正を発見する。」 というAIの活用法が紹介されています。全行員のパラメータが、まるで歴史シミュレーションゲーム(信長の野望や三国志のようなもの)で配下の武将の能力や忠誠心がデジタルで表現されているように、パソコン画面いっぱいに広がっていました。 「人事のAI化が日本でも進めば、社員の働き方や人間関係は変わるだろう。日本能率協会コンサルティングHRM革新センターの村上剛センター長は「それでも人事部がいらなくなることはない」とみる。 過去や現在のデータを駆使するAIは、変化の少ない経営環境で効果を発揮しやすい。しかし、技術革新や突然の環境変化でまったく新しい人事戦略を打ち出す必要に迫られたら、頼りになるのは人の力だ。 華々しい成果を裏で支えてきた人たちを正当に評価できるかも、ハードルになる。人事部でも人とAIの役割分担を探る必要がある。」 この記事では、人事評価の観点が強いですが、人事面でもっと有効なAIの使い方があるように思います。それは従業員ひとりひとりの生産性を高めるような人員配置や仕事へのアサインを考えること。 ⇒「日立、研究費に年5000億円 16~18年度3割増、人工知能やロボ開発」 この過去投稿では、日立ハイテクノロジーズが開発したウェアラブル端末により、従業員の就業時間中の幸福度をセンサーで感知し、どういう働き方(具体的には誰と誰が接触・会話している時)をしていると、脳波などのバイタル値が一番理想的になるかをモニタリングできる技術をご紹介しました。できれば、HRテックは、こういうふうに、従業員の幸福度を上げる、という観点で応用できる領域を広げていってほしいと思います。 これは、筆者の個人的な思いですが、信賞必罰、公平な人事、と固いことを言ってるより、従業員の幸福度や充実度を伸ばす人事制度や職場配置のためにテクノロジーを使った方が、会社の業績向上も、個人の生産性向上にもより効果的ではないかと思うのであります。 ⇒「人間がAIに管理される日? - HRテックによる最適配置と社員の幸福感を高める「Hitachi AI Techology」の事例から」   ■ 次に財務経理部門へのインパクトを見ていきましょう お金の話になると、株や投資ということで、数字の分析・解析に限定のことかと思いきや、今時のAIは、デジタル処理されたものであるならば、自然言語(テキスト情報)をも呑み込んで、高速アルゴリズムで処理してしまいます。 2016/6/14付 |日本経済新聞|朝刊 AIで調査リポート カブドットコム、中小型銘柄を1分で 「カブドットコム証券はフィンテックベンチャーのゼノデータ・ラボ(東京・港)と共同で人工知能(AI)で上場企業の調査リポートを1分以内で作成するシステムを開発する。企業の公開情報を読み込んで収益動向などを分析し、リポートにする。今夏にも個人投資家がスマートフォン(スマホ)などで見られるようにする計画だ。」 これは、単純に証券アナリストの代わりをAIが務めます、という表面的な事象が問題なのではなくて、 「決算短信や決算の説明資料などを読み込んでリポートにする。AIが自然言語処理やPDFファイルの解析を通じて「どの事業分野が利益成長しているのか」が分かるような内容にする。作成までの時間は企業が短信を公表してから1分もかからないという。 将来はAIを進化させて決算短信だけでなく、ニュースや市場データの分析もできるようにする考え。「人間が気づかない事象との関連性を発見し、企業業績の予想を独自につくりたい」(ゼノデータの関洋二郎社長)という。」 とあるように、財務分析はもちろんのこと、テキスト情報と財務数値の相関分析まで高速に(とても人間業では及びもつかない速さで)、しかも多量のデータを力技で処理してしまい、それまで結構職人技だった、業績予測とその業績変動をもたらす、PSI(production-sales-inventory)コントロールや、開発投資・設備投資の成功確率計算(期待値計算)もやれちゃうというこです。 そうなると、財務分析の腕を磨き、数字の追っかけ方、事業部ごとや特定市場固有の独特の数字・業績の推移を経験と勘で読みにいく手練れの会計職人は不要になってしまう、ということになります。そうするとですね、筆者のような管理会計・経営管理のコンサルタントは全員失業、ということになります。これはかなりやばい。(^^;)   ■ 仮説検証型データ解析はもう古い データ分析の目的なんでどうでもいい!? ここからは、筆者のもう一つの専門分野、BI(Business Intelligence)にも通じるお話です。従来、BIシステムを構築する際、 ① きちんとユーザにデータ分析の目的を確認する ② データ分析目的(いわゆる仮説検証のためのロジック)を果たすようにデータベースを設計する ③ データ分析のために大量のデータを効率的に処理できる環境を構築する ④ ユーザが仮説検証を繰り返し、当初のビジネス改善に役立てる というあらすじに則って、システム構築やデータ解析ロジックを開発してきました。 しかし、昨今、AIが大量データを高速に、それも多種多様の解析アルゴリズムを使って、分析結果をすぐさま提示してくれるようになったため、人間の脳みその限界を超えたデータ解析ができるようになったのです。つまり、「仮説検証」の「仮説」は人間の脳みそが頑張って考え付いたデータ解析のフレームワーム。そのフレームワークに従って構築されたデータベースとその解析ツールは、当初の人間の発想の枠を超えた問題を発見したり、因果関係を見つけ出したりすることは非常に苦手なんです。 一方で、AIはそんな仮説検証ロジックですら、ディープラーニングの材料にしてしまい、勝手に仮説検証ロジックから次々と編みだし、それまで人間が気付きもしなかったデータ解析結果を人間の目の前に提供してくれるのです。どうしてそうなるのか最初は分からないけど、AIに提供されてからじっくり考えて見ると、新しい切り口の、新しい発想の因果関係をビジネスロジックの中に発見した、ということが今すでに起きているのです。 画面のビジュアルだって、これまではどうすれば目で見た人間のインサイト(洞察)を引き出せるか、レイアウトにこだわったダッシュボードなどをこれまで設計してきましたが、全部生身の人間の脳みそがより問題や課題に気づけるように、これまた認識に限界のある人間の頭で考えたものにすぎないのです。AIは、そんな人間の脳みそがようやく理解できるようなビジュアル画面は不要なのです。 端的な例。 人間は、2次元、せいぜい3次元のデータしか、パソコン画面に可視化した場合に、画像として認識できません。AIは4次元以上の切り口で同時にデータを解析することができます。 昨今(といっても2011年ぐらいから)、セルフサービスBIということで、仮説検証型ではなく、問題発見型BIシステムを提供します、というのが業界の最先端とされてきましたが、それも人間の脳みそを相手にしたお話しに過ぎません。AIに代表される先端的なテクノロジーはずっとその先を行っています。 従来は、細かい手作業での記帳作業がどんどんコンピューター化、自動化されて、財務経理部門では、財務分析などに代表されるデータ分析作業が最後、人間の仕事として残る、と思われていましたが、AIはその判断・分析作業を代替するところまで来ています。イーロン・マスクがおっしゃっていますよね。 「自動運転されないクルマの方が危険なので、人間が運転することが法律で禁止される時代がその内に来る」と。 同じことが言えるかもしれません。 「人事評価や財務判断は、人間がやると間違いだらけなので、人間が行うことを法律で禁止する」 近未来の人事部や経理部は、全てAIに取って代わられる!? (SFではなく、すでに香港の投資ファンドの社長はAIが代行していますが) ⇒「(新産業創世記)「土俵」が変わる(1)AI社長の下で働けますか 決断が人の役割 - 経営判断を下す日立のAI」 (注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します