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ビッグデータとIoTのどこで儲けるか(1)

経営管理会計トピック テクノロジー
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■ テクノロジーの進化の中でどう儲けるかを考える

経営管理会計トピック

2015年4月上旬の新聞記事から、ビッグデータやIoT:Internet of Things(モノのインターネット化)といういわゆるITの最先端の潮流の中でどうやって関係各社はビジネスを展開していくのか、煎じ詰めれば、どうやって儲けようとしているのか、「ビジネスモデル」の作り方の格好の教材として分析してみたいと思います。

2015/4/8|日本経済新聞|朝刊 コマツ、GEとビッグデータ提携 鉱山を効率運営 製品・サービス一体提供

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「コマツはビッグデータ解析で米ゼネラル・エレクトリック(GE)と提携する。世界の鉱山で生産設備の稼働データをインターネットから収集して共同分析する。採掘から物流、発電まで鉱山全体の最適な運用を実現し、生産コストを1割削減する。様々な機器がネットにつながる時代を迎え、サービスと製品を一体で提供する製造業の新しいモデルが広がってきた。」

両社はチリの銅鉱山で、昨年から実証実験を続けており、やろうとしていることを簡単に説明すると、コマツの鉱山機械の稼働状況を把握する技術と、GEのデータ解析技術を組み合わせて、例えば大型ダンプトラックの運転制御を行うことで燃費を節約するなど、鉱山設備の稼働効率を最適化し、最大13%程度の燃費向上を実現することを目指しています。

「機器同士をネット接続する手法は「モノのインターネット化(IoT)」と呼ばれる。世界の製造業大手は工場の設備や鉄道などインフラにIoT技術を活用。ネット経由で稼働状況のデータを解析して、運用効率化を提案するサービスに着手し始めている。」

こういう解析サービスの実現には、IoT(これ用語自体は特殊なテクノロジーを意味していないのですが)というネットワーキング技術を駆使することが前提となります。

(2015年4月8日:日本経済新聞朝刊より下図転載)

経営管理トピック_コマツとGEのビッグデータ解析サービス_日本経済新聞朝刊2015年4月8日掲載

 

■ 「ビッグデータ」「IoT」の世界をビジネス視点で斬ってみると

それではITが本職の企業はどのような「ビジネスモデル」を想定しているのでしょうか? ここでは、IBMの直近の動きを見てみたいと思います。

2014/11/7|日本経済新聞|朝刊 日本IBM、インフラ情報一元管理 改修を効率化

「日本IBMは7日、建設コンサルティングのオリエンタルコンサルタンツ(東京・渋谷)と組み、道路や上下水道などの公共施設を効率的に管理できるようにするサービスを始める。クラウド技術を使って様々な施設や設備をデータベースで一元管理し、老朽化の状況などを簡単に把握できるようにする。維持管理コストを引き下げられることから全国の自治体に売り込む。
 日本IBMの資産管理ソフトを使い、公的施設や設備の情報を集中管理する。道路の修理時期と、地下に埋めた下水道管の改修時期のタイミングを合わせるなど、設備の維持管理を効率化できる。公的施設・設備の維持費を2~3割減らせる可能性があるという。」

両者のビッグデータ・IoTへの攻略法の違いにお気づきになられたでしょうか?

それでは、簡単な模式図(これも死語ですね)を下記に示します。

経営管理トピック_ビッグデータとIOTのビジネス環境

「ビッグデータ」「IoT」と呼ばれる全体像の中で、テクノロジーや機器、サービスとしてだいたい4つに区分することができます。

① センサー
② 演算機能
③ アクチュエータ
④ 通信・ネットワーク

① センサー
自然現象や人工物の性質(機械的・電磁気的・熱的・音響的・化学的)や空間・時間情報を、人間や別の装置で認識しやすい信号に置き換えるものです。

② 演算機能
センサーからインプットされたデータを計算目的に応じた一定のアルゴリズムで、四則演算や論理演算を行うことを言います。ここでは、アルゴリズム自体はアプリケーション(プログラムサービス)で提供されると考え、特に注目する演算方法として「ビッグデータ解析」、この演算機能の実装形態として「クラウド」が主流になる、としておきます。

③ アクチュエータ
演算機能におけるアルゴリズムで、ある計算結果が得られたら、制御情報として受信し、物理的な作動原理(エネルギー)、方向・位置とか圧力・温度を変位させる力を発揮する機能です。

④ 通信・ネットワーク
ある種の通信プロトコルや、通信インフラ(キャリア)を意味し、上記①から③までの経路を通るサービスを実現するための情報伝達に必要な環境を提供するものです。

「ビッグデータ」「IoT」など、華々しい言葉が飛び交っている昨今ですが、各社各様で、上図の①から④のどこか、またはその組み合わせの中で一番収益性が高くなるような「ビジネスモデル」の構築に躍起になっています。

 

■ 「コマツ」「GE」と「IBM」のビッグデータ・IoT 攻略法の違い

新聞記事からの引用させていただくと、

コマツ・GEは、
「コマツとGEは今回のサービス提供から直接の収益を得ない。鉱山にコマツは鉱山機械、GEは発電設備などを納入している。稼働効率を最適化するソリューション提供により顧客のビジネスを支援し、自社の機器の販売増につなげる。」

とあり、②の部分を表面的には無償提供することで、高機能化された①と③を実装するハードウェアを売り込むことを狙いとしています。サービスの付加価値を考慮していますが、従来からの「製造業」の範疇にとどまっています。これは、両社がこれまで積み重ねてきたレガシーとして、販売チャネル(顧客資産)、長年のR&D投資(知的資産と人的資産)を有効活用しようというものであると考えることができます。

一方でIBMは、
「オリエンタルコンサルタンツは自治体への営業活動やデータ分析などを担う。利用料金は初期費用が500万円から。別にデータ分析などのサービス料金がかかる。」
とあり、あくまで本業のITサービスとして③の部分を、「クラウド」環境で提供することを目論んでいます。「ビッグデータ解析」をふくむ「アプリケーションサービス」の開発、そしてそのサービス提供の環境としての「クラウドサービス」を構築し、投資対象を有償サービスとして顧客に提供することで、投資回収を行い、マネタイズしよう(儲けよう)としています。

 

■ 「コマツ」「GE」や「IBM」のビジネスモデルに死角はないのか

上記の、①②③のどこが一番儲かるのか、アップルやサムスンの「ウェアラブル端末」はどうなのか、個々の製品や企業の評価は本稿の主眼ではないので脇に置いておきます。ひとつだけ、①~③で競っている企業が直面するであろう課題として、コンペチターとではない対立構造をご紹介しておきます。

2014/11/7|日本経済新聞|朝刊 (GLOBAL EYE)欧米通信規制 曲がり角 IT大手との競合課題

「欧米で通信業界を取り巻く規制環境が大きな節目を迎えている。インターネットサービスが音声通話などで既存の通信事業者と競合するようになり、規制の垣根が議論を呼んでいる。通信網の利用を巡っても特定のコンテンツ業者を優遇しない「ネットの中立性」を重視する傾向が強まり、通信網への投資とサービスの育成をどう両立させるかが課題となっている。」

記事の趣旨をサマリすると、
・通信事業者は、通信帯域の取得にコストがかかる上、利用者にサービス提供するのに通信網への巨額の設備投資が必要である
・通信サービス品質を当局に厳しく規制され、価格設定の自由度も小さい
・情報の流通をすべて平等に扱うという趣旨で、特定のサービス提供者から追加料金をもらって特定のコンテンツの通信速度だけはやめることが禁止されている

キャリア(通信業者)からすると、
「規制対象外のグーグルやフェイスブックのサービスは「オーバー・ザ・トップ」(OTT)と呼ばれ、通信網の利用に対価を払う必要がなく、通信網への投資も必要がない。税制面でも法人税の低い国から事業を運営することで節税が可能だ。通信事業者はあらゆる面で劣勢に立たされ」ている、ということになります。

つまり、④の箇所は、公共財的インフラではなくて、規制が厳しいといえども私企業が営んでいるサービスである以上、営利目的なので、その上部で競い合っている①から③までのどこかでビジネスをやろうとしている企業は、いつの日か、④の部分で自社を贔屓(ひいき)してもらって、コンペチターとの競争に有利になるように、規制緩和が行われる日が来ることが予想されるということです。

まだまだ、「ビッグデータ」「IoT」の領域における企業競争の前提条件が大きく変わる節目が幾度となく訪れるはずです。その度に、うまく変化に適応したものだけが勝者となり、市場に居続けることになりましょう。

最後に、余計な投げかけ。1949年(もしくは1948年)に起きた米国カリフォルニアでの「ゴールドラッシュ」。一番儲けたのはいったい誰でしょう?

「ゴールドラッシュで一番儲けたのは、金山を掘り当てた人ではなく、バケツとスコップを売った人だ」

正確には、ひと山当てようと金を探しにカリフォルニアに殺到した人々相手に「物販」「サービス(売春宿など)」「建築」を営んでいた人達だそうです。

「ビッグデータ」「IoT」が現代の「ゴールドラッシュ」だとしたら???

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