売上高新基準、18年適用可 企業会計基準委が公開草案 百貨店などは目減りも – IFRSへのコンバージェンス強化

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■ JGAAPも収益認識基準を支配権の移動で考えることに。IFRSとのコンバージェンスが目的

経営管理会計トピック

1年半前に予告されていましたので、今回の報道は青天の霹靂というほどのインパクトはありませんでした。落ち着いて簡単な解説を付したいと思います。

2017/7/21付 |日本経済新聞|朝刊 売上高新基準、18年適用可 企業会計基準委が公開草案 百貨店などは目減りも

「日本の会計基準をつくる企業会計基準委員会(ASBJ)は20日、新しい売上高計上基準を導入すると発表した。国際会計基準(IFRS)や米国会計基準で予定する新基準とほぼ同じ内容で、2018年4月以降に適用可能となる。売上高として認められない取引が発生するため、百貨店など幅広い業種で影響が出そうだ。」

IFRSと米国SECが、売上高計上(収益認識)基準のコンバージェンスを図り、米国SEC基準が2017年12月以降、IFRSは2018年1月以降に新基準を適用する方針を明らかにしていました。

(参考)
IFRS 第15号「顧客との契約から生じる収益」|BBS

20160202_日本基準とIFRSの収益認識の違い

⇒「花王、売上高認識の新会計基準 今期から1年前倒し適用 - 「IFRS(国際会計基準)第15号 顧客との契約から生じる収益」の復習を兼ねて

ASBJも、この欧米の動向を鑑み、2015年から議論を重ねてきた結果、両者とのコンバージェンスの準備が整ったとみて今回の発表になりました。

⇒「会計基準委「売上高計上」への意見公募 18年から新基準導入へ 取引内容ごとの影響例公表

従来の日本の会計基準では、「企業会計原則」で「実現主義」と「総額主義」によることが示されているほかは、「ソフトウェア取引実務対応報告」や「工事契約会計基準」といった部分的な会計基準が制定されるに留まっており、包括的な取り決めがありませんでした。

そこで、各業界や業種における種々雑多な商習慣に基づき、収益認識基準の大原則である「実現主義」をどう解釈するか、会計実務にそのほとんどが任されていました。しかし、IFRS第15号に準じた収益認識基準を採ることで、国際間比較をしやすくする方向へ舵を切ることになります。その道程は、

・今年の10月までに公開草案に対する意見を募る
・来年3月までに最終案を決定する
・日本基準を採る企業は2018年4月以降に始まる会計年度から新基準を早期適用可能
・21年4月以降から強制適用
(3月期決算企業の場合、19年3月期から早期適用可能、22年3月期から強制適用)

 

■ 従来のJGAAPとの相違点は?

(1)認識
【従来】実現主義
① 財貨の移転又は役務の提供の完了
② 現金又は現金等価物(手形、売掛金等)の受領

【改正後】支配権の移動
企業が履行義務を充足した時、つまり顧客が当該資産に対する支配を獲得した時点で収益認識

(2)測定
【従来】総額主義
・費用の項目と収益の項目との直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない(企業会計原則)
・返品権付き販売、 製品保証やポイント制度などの個別の取り決め無し

【改正後】
販売企業側が得ると見込む対価の金額であること
① 変動対価:数量値引や価格リベート等、発生が確実な要素は予め収益から差し引いておく
② 現金以外の対価:契約履行に必要な活動や現物提供にかかるコスト
③ 貨幣の時間的価値:例えば支払い条件により、変動する「売上割引」等が該当
④ 顧客に支払われる対価:ポイントカードの点数(将来の値引)など

 

■ それではJGAAPの改正で大きく影響を受ける業態とは?

同記事によりますと、

「新基準で売上高が大きく目減りしそうなのは百貨店だ。百貨店は商品の所有権を取引先に残したまま陳列し、販売と同時に仕入れ・売り上げ計上している。新基準では売上高として販売額でなく、販売額から仕入れ値を差し引いた手数料部分のみを計上する。利益には影響しない。」

(下記は、同記事添付の「IFRSではJフロントの前期売上高が半分以下に」を引用)

20170721_IFRSではJフロントの前期売上高が半分以下に_日本経済新聞朝刊

これは、百貨店特有の「売仕(うりし)」「消化仕入」という商取引が要因です。テナントが実際に来店客に物販した時に、テナントから物販した品物の仕入と来店客への売上を同時に立てる取引です。

この取引が、IFRS15号における表示原則(測定基準)に従うと、
「すべての業種・取引で、本人・代理人の検討を行い、本人であれば総額表示、代理人であれば純額表示する」
という原則により、代理人(自ら在庫リスク、販売リスクを負わないという意味)と見なされ、純額計上になるのです。いち早く、IFRSを採用した総合商社はすべてこの洗礼を受けており、会計基準のIFRSへの変更要因だけで、その売上高を6~7割に減らしたのはまだ記憶に新しいと思います。

同記事では、

「IFRSを18年2月期から導入したJ・フロントリテイリングは今期の売上高見通しが4690億円と日本基準の17年2月期と比べて6割減る。評価指標と位置付ける売上高営業利益率は見かけ上、今期に9%と前期の4%から跳ね上がる。新基準が導入されれば同様の例が相次ぐと見られ、企業会計と経営管理をどう整合させるか、悩む企業も出てきそうだ。」

とありますが、既に、同じ業態のはずですがイメージが全く違うと思われるEC販売業(楽天など)は、純額スタイルで決算を普通に発表していますので、財務分析を生業とする筆者の目には、全く奇異には映りません。

まずは、楽天の2017年1Q決算資料からスライドを2枚ご紹介します。

20170724_楽天_1Q決算説明資料_国内EC流通総額

20170724_楽天_1Q決算説明資料_国内EC四半期業績推移

つまり、楽天の国内ECビジネスは、

(企業としての)売上高 = 楽天市場などのEC取扱高 × テイクレート(take rate)

即ち、ECビジネスの成長性は、取扱高(出店数の拡大、出店業態の開拓またはモール出店の増収)か、テイクレート(テナントからの手数料率など)の2つを収益ドライバーとして管理すれば済む話。

「企業会計と経営管理をどう整合させるか」という問題は、EC業界ではもうとうに終わっているお話なのでした。(^^;)

<補足>
同記事では、

「新基準ではこのほか、メーカーの小売店向け販売奨励金(リベート)をあらかじめ売上高から引くため減収要因となる。従来はリベート支払いの可能性が高まったときに費用計上するなどしていた。商品の代金を分割で受け取る割賦販売では販売時に売上高を一括計上する。入金日に合わせ何回かに分け計上していた従来より前倒しとなる。」

とありますが、リベートやポイント制度については、筆者の過去投稿記事をご参照くださいませ。

⇒「会計基準委「売上高計上」への意見公募 18年から新基準導入へ 取引内容ごとの影響例公表」(再掲)

本当の会計基礎なら、

⇒「企業会計の基本的構造を理解する(1) 会計取引の計上に必要な「認識」と「測定」について
⇒「不適切会計の手段 -利益操作(4)一時的または持続不可能な活動による利益の増大

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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