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■ CVP分析をチャート図解でとことん味わい尽くす!

管理会計(基礎編)

今回のテーマは、標題の通り、チャートで企業の損益状態を俯瞰し、ビジネスモデルへの理解を深めたり、期中損益予測での達成売上高の目標設定水準のための指標選びなど、もう少し実践的な場面でどうチャートを活用するかを突っ込んで解説していきたいと思います。さあ、徹底的にCVP分析-チャートを縦横斜めに味わい尽くしましょう!

その前に、CVP分析モデルのチャートモデルの別のタイプを紹介したいと思います。おっと、すでに「金額ベース」と「数量ベース」の違いは知っているとの抗議の声が聞こえてきそうです。いやいや、今度は、チャートを描く技法そのものの区別に、また別に2種類あるのだというお話になります。

従来は、このような、「固定費線」の上に「変動費線」を積み上げる技法でのチャートでCVP分析モデルを表現できるとしていました。

財務分析(入門編)_CVP分析のチャート A:固変分解モデル

特に、管理会計の業界で、この図法に命名が見たらないので、便宜上「A:固変分解モデル」と名付けておくことにします。

今度は、新規の紹介になる「B:限界利益モデル」をご覧に入れます。

財務分析(入門編)_CVP分析のチャート B:限界利益モデル

このチャートは、「固変分解モデル」の「固定費線」と「変動費線」を上下に入れ換えて描画してみたものです。こうしただけで、新しい情報を得ることができます。それは、チャート上に、「限界利益」(= 売上高 - 変動費)を表すことができることです。

さらに、この「B:限界利益モデル」と、「② 金額ベース」を組み合わせると、今度はどんな化学反応がおきるでしょうか?

財務分析(入門編)_CVP分析のチャート B-②:限界利益モデル – 金額ベース

なんと、「売上線」と「変動費線」の傾きから、「限界利益率」と「変動費率」もチャート上に描画することに成功しました。チャート上で把握できる情報量の多さから、この「B-②:限界利益モデル – 金額ベース」が最強!!! 

だったら、話はここで終わりなのですが。。。

 

■ ところがどっこい。「固変分解モデル」もなかなかやりますなぁ~

「固変分解モデル」は、期初の「短期利益計画」の際に、利益目標達成のための売上計画を一体いくらにすべきか、判断材料が欲しい時に、威力を発揮することが知られています。

(設例1)
あなたは、来期予算を組む担当者に任命されました。あなたに与えられた会計データは次の通りです。

・来期の目標利益:500
・来期の予算変動費率:40%
・来期の予算固定費:1000

この時、
① 来期の利益目標を達成できる売上高
② 損益分岐点売上高
③ 固定費回収売上高
の3つの売上高目標値を試算しなさい。

※ 固定費回収売上高の意義:
何とか、設備投資・開発投資からの減価償却費や正社員の人件費等は賄うことができる売上高水準。ギリギリ、そのビジネスを継続できる「生存利益」となり得る「限界利益」を最低限稼ぐことができる売上高

計算モデルで試算結果を出す前に、チャートでざっくりイメージをつかんで頂きます。この類の問題では、①金額ベースでも、②数量ベースでも、問題が解けるのですが、与件の2つ目として、変動費「率」が示されているので、①金額ベース でモデリングすることを自然と選択します。

財務分析(入門編)_「A:固変分解モデル」は、3種類の売上高を表現できる!

それでは、いつもの数式モデル(金額ベース)を下記に示します。

売上高 = (固定費 + 利益) ÷ (1 - 変動費率)

① 来期の利益目標を達成できる売上高
この場合、「利益」を「目標利益:500」と置くので、

売上高 = (1000 + 500)÷(1 - 40%)
        = 1500 ÷ 60%
        = 2500

② 損益分岐点売上高
この場合、「利益」はゼロになるので、

売上高 = (1000 + 0)÷(1 - 40%)
        = 1000 ÷ 60%
        ≒ 1667

③ 固定費回収売上高
この場合、お客から頂戴する売上金額で固定費が回収できればよいと考えるので、

売上高 = 固定費  が成立すれば事足りるので、

売上高 = 1000

これは、前回にお話しした、「売上線」を45°で描画すること、という業界標準の常識とされている知識があれば、チャートを見た瞬間に納得できるはずです。当然、この売上高では、会社は赤字になります。この事例では、最後の「固定費回収売上高」が計算するまでもない、たわいもない例になってしまいますね。じゃあ、「数量ベース」でもやってみましょうか。

 

■ 数量ベースによる「固変分解モデル」で売上数量目標値を求めてみます!

それでは、前章の設例を数量ベースに組み替えてみます。

(設例2)
あなたは、来期予算を組む担当者に任命されました。あなたに与えられた会計データは次の通りです。

・来期の目標利益:500円
・来期の販売単価:@100円
・来期の予算変動費単価:@40円
・来期の予算固定費:1000円

この時、
① 来期の利益目標を達成できる売上数量(個)
② 損益分岐点売上数量(個)
③ 固定費回収売上数量(個)
の3つの売上数量目標値を試算しなさい。

※ 「数量」の場合、「売上数量」より、「販売数量」の方を筆者は好みます。「売上」と「販売」の語彙の違いを厳密に区別されている会社は別として、お好きな方をどうぞ!

財務分析(入門編)_「A-②:固変分解モデル – 数量ベース」で売上数量目標を!

では、いつもの数式モデル(数量ベース)を下記に示します。

売上数量 = (固定費 + 利益) ÷ (販売単価 - 変動費単価)

① 来期の利益目標を達成できる売上数量
この場合、「利益」を「目標利益:500円」と置くので、

売上数量 = (1000円 + 500円)÷(@100円 - @40円)
          = 1500円 ÷ @60円
          = 25個

② 損益分岐点売上数量
この場合、「利益」はゼロになるので、

売上数量 = (1000円 + 0円)÷(@100円 - @40円)
          = 1000円 ÷ @60円
          ≒ 17個

③ 固定費回収売上数量
この場合、お客から頂戴する売上金額で固定費が回収できればよいと考えるので、

売上単価 × 売上数量 = 固定費  が成立すれば事足りるので、

@100円 × 売上数量 = 1000円

売上数量 = 1000円 ÷ @100円
          = 10個

こうすることで、来期は何個を売れば(作れば)、利益目標を達成できるか、損益トントンになるか、最低限として固定費が回収できるか、をそれぞれ試算することができます。このシンプルでかつ分かりやすいシミュレーションができることこそがCVP分析の醍醐味のひとつなのです。

 

■ 「変動費」と「固定費」の比率で分かるビジネスモデルの特徴とは?

前章、前々章で、来期の利益計画を立案する際に、どうやってCVP分析モデルを活用するかを見て頂きました。初学者向けといわれ、かつ、筆者としては3つの目標売上高(数量)が一目で分かることでお気に入りの「B:固変分解モデル」で、極端な2つの会社のチャートを下記に図示しますので、両者のビジネスモデルをCVP分析の視点から論評してみてください。

財務分析(入門編)_CVP分析でわかるビジネスモデルの違い

※「ビジネスモデル」の定義は様々。ここでは、CVP分析モデルにより、利益の上げ方で2種類に分かれることだけを取り上げます。それ以外の分析手法や類型化は、筆者の大好物とするものですが、それはまたの機会に。

この左右二つのチャートを眺めてお気づきになった点はございますか?

ここは考える時間




そう焦らすなって?
では、2つのビジネスモデルをCVP分析的に比較してみます。

● 変動費が中心のビジネスモデル
・損益分岐点が原点に近い (→ 収支トントンになるのにより小さい売上高で済む)
・多少売上高が増減しても利益の変動幅が小さい (→変動費線の傾きが大きいから)

● 固定費が中心のビジネスモデル
・損益分岐点が原点から遠い (→ 収支トントンになるのにより大きな売上高が必要)
・売上高が増減すると利益の変動幅が大きい (→変動費線の傾きが小さいから)

これは、CVP分析的に、変動費と固定費とに総費用を区別しているから分かることで、しかも会計的な利益の上げ方を後講釈で説明したもの。お客や市場、商材の用意の仕方から、自然とこのどちらかのタイプ(利益の上げ方 = 儲け方)になってしまいます。よく、「変動費中心のビジネスモデルにしたいから、企業戦略をそのように立てる」という経営者のセリフを聞きますが、それは論理が逆立ちしていると筆者は思うんです。

経営者が選んだビジネスモデルが、変動費型か固定費型かに自然に分類されるだけ。自分で選んだビジネスモデルが、どのような費用構造なのか(= 変動費と固定費の発生割合)を知ることで、そのビジネスモデルの運転時の注意事項が管理会計的に明らかになるだけです。

それゆえ、確信犯的に、「変動費型ビジネスモデル」とは言っていないでしょ。(^^) あくまで、管理会計学の領域外、例えばマーケティング理論だと、「ニッチャー戦略」なら「変動費型」と「固定費型」のどっちか、三谷氏のビジネスモデル論だと、「ジレット型」ならどっちか。それを管理会計的に、利益構造をデザインする視点で迫るのがCVP分析なのでした。

⇒「CVP分析/損益分岐点分析(1)イントロダクション - CVP短期利益計画モデル活用の前提条件について
⇒「CVP分析/損益分岐点分析(2)基本モデルを理解する - 数式モデルの成り立ちについて
⇒「CVP分析/損益分岐点分析(3)基本モデルを理解する - チャートモデルで可視化
⇒「CVP分析/損益分岐点分析(5)変動費型モデルと固定費型モデルの違い - 決算短信における業績予想の修正のカラクリ

財務分析(入門編)_CVP分析/損益分岐点分析(4)チャートモデルを味わい尽くす - ビジネスモデル分析や利益モデリングを試みる!

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CVP分析/損益分岐点分析(4)チャートモデルを味わい尽くす - ビジネスモデル分析や利益モデリングを試みる!http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/03/9313ed6460f7d58b8e62d9b27fdfc19d-e1428166718340.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/03/9313ed6460f7d58b8e62d9b27fdfc19d-150x150.jpg小林 友昭財務分析(入門編)CVP分析,チャート,ビジネスモデル,固変分解,固定費,固定費回収売上高,変動費率,損益分岐点分析,損益分岐点売上高,短期利益計画,財務分析,限界利益■ CVP分析をチャート図解でとことん味わい尽くす! 今回のテーマは、標題の通り、チャートで企業の損益状態を俯瞰し、ビジネスモデルへの理解を深めたり、期中損益予測での達成売上高の目標設定水準のための指標選びなど、もう少し実践的な場面でどうチャートを活用するかを突っ込んで解説していきたいと思います。さあ、徹底的にCVP分析-チャートを縦横斜めに味わい尽くしましょう! その前に、CVP分析モデルのチャートモデルの別のタイプを紹介したいと思います。おっと、すでに「金額ベース」と「数量ベース」の違いは知っているとの抗議の声が聞こえてきそうです。いやいや、今度は、チャートを描く技法そのものの区別に、また別に2種類あるのだというお話になります。 従来は、このような、「固定費線」の上に「変動費線」を積み上げる技法でのチャートでCVP分析モデルを表現できるとしていました。 特に、管理会計の業界で、この図法に命名が見たらないので、便宜上「A:固変分解モデル」と名付けておくことにします。 今度は、新規の紹介になる「B:限界利益モデル」をご覧に入れます。 このチャートは、「固変分解モデル」の「固定費線」と「変動費線」を上下に入れ換えて描画してみたものです。こうしただけで、新しい情報を得ることができます。それは、チャート上に、「限界利益」(= 売上高 - 変動費)を表すことができることです。 さらに、この「B:限界利益モデル」と、「② 金額ベース」を組み合わせると、今度はどんな化学反応がおきるでしょうか? なんと、「売上線」と「変動費線」の傾きから、「限界利益率」と「変動費率」もチャート上に描画することに成功しました。チャート上で把握できる情報量の多さから、この「B-②:限界利益モデル – 金額ベース」が最強!!!  だったら、話はここで終わりなのですが。。。   ■ ところがどっこい。「固変分解モデル」もなかなかやりますなぁ~ 「固変分解モデル」は、期初の「短期利益計画」の際に、利益目標達成のための売上計画を一体いくらにすべきか、判断材料が欲しい時に、威力を発揮することが知られています。 (設例1) あなたは、来期予算を組む担当者に任命されました。あなたに与えられた会計データは次の通りです。 ・来期の目標利益:500 ・来期の予算変動費率:40% ・来期の予算固定費:1000 この時、 ① 来期の利益目標を達成できる売上高 ② 損益分岐点売上高 ③ 固定費回収売上高 の3つの売上高目標値を試算しなさい。 ※ 固定費回収売上高の意義: 何とか、設備投資・開発投資からの減価償却費や正社員の人件費等は賄うことができる売上高水準。ギリギリ、そのビジネスを継続できる「生存利益」となり得る「限界利益」を最低限稼ぐことができる売上高 計算モデルで試算結果を出す前に、チャートでざっくりイメージをつかんで頂きます。この類の問題では、①金額ベースでも、②数量ベースでも、問題が解けるのですが、与件の2つ目として、変動費「率」が示されているので、①金額ベース でモデリングすることを自然と選択します。 それでは、いつもの数式モデル(金額ベース)を下記に示します。 売上高 = (固定費 + 利益) ÷ (1 - 変動費率) ① 来期の利益目標を達成できる売上高 この場合、「利益」を「目標利益:500」と置くので、 売上高 = (1000 + 500)÷(1 - 40%)         = 1500 ÷ 60%         = 2500 ② 損益分岐点売上高 この場合、「利益」はゼロになるので、 売上高 = (1000 + 0)÷(1 - 40%)         = 1000 ÷ 60%         ≒ 1667 ③ 固定費回収売上高 この場合、お客から頂戴する売上金額で固定費が回収できればよいと考えるので、 売上高 = 固定費  が成立すれば事足りるので、 売上高 = 1000 これは、前回にお話しした、「売上線」を45°で描画すること、という業界標準の常識とされている知識があれば、チャートを見た瞬間に納得できるはずです。当然、この売上高では、会社は赤字になります。この事例では、最後の「固定費回収売上高」が計算するまでもない、たわいもない例になってしまいますね。じゃあ、「数量ベース」でもやってみましょうか。   ■ 数量ベースによる「固変分解モデル」で売上数量目標値を求めてみます! それでは、前章の設例を数量ベースに組み替えてみます。 (設例2) あなたは、来期予算を組む担当者に任命されました。あなたに与えられた会計データは次の通りです。 ・来期の目標利益:500円 ・来期の販売単価:@100円 ・来期の予算変動費単価:@40円 ・来期の予算固定費:1000円 この時、 ① 来期の利益目標を達成できる売上数量(個) ② 損益分岐点売上数量(個) ③ 固定費回収売上数量(個) の3つの売上数量目標値を試算しなさい。 ※ 「数量」の場合、「売上数量」より、「販売数量」の方を筆者は好みます。「売上」と「販売」の語彙の違いを厳密に区別されている会社は別として、お好きな方をどうぞ! では、いつもの数式モデル(数量ベース)を下記に示します。 売上数量 = (固定費 + 利益) ÷ (販売単価 - 変動費単価) ① 来期の利益目標を達成できる売上数量 ...現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します