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■ まずはしつこく数式モデルでCVP構造を頭に叩き込む!

管理会計(基礎編)

前回、長広舌でいろいろと「CVP分析」「損益分岐点分析」の理論的背景を文字だけでつらつらと説明してしまい、すぐに使える実践的知恵になっていない、とのご批判もあったかもしれません。今回は、ガラッとうって変わって、延々と基本モデルの紹介に努めます。それはそれで読むのが苦痛かもしれませんが。。。(^^;)

前回、後半部分において代表的な数式モデルで「CVP分析」の簡単な基本構造を解説させて頂きました。ここでは、しつこくおさらいすることにします。最初が肝心肝心。

売上高 = 変動費 + 固定費 + 利益  (式1)

このとき、変動費を、売上高の増減に比例して発生するものである性質から、

変動費 = 変動費率 × 売上高 (式2)

で表現できるので、この(式2)を(式1)に代入すると、

売上高 = (変動費率 × 売上高) + 固定費 + 利益

となり、これを売上高で整理すると、

(1 - 変動費率)× 売上高 = 固定費 + 利益

売上高 = (固定費 + 利益)÷(1 - 変動費率) (式3)

となり、
① 変動費率
② 固定費
③ 目標利益
の3つが与えられると、自動的に、稼がなくてはいけない売上高が求まるというわけ。

ここで、(式1)にいったん戻ります。

売上高 = 変動費 + 固定費 + 利益  (式1)

「短期利益計画」という、来年の利益をいくらにしようかと思案する時に、この(式1)またはこれを加工した(式3)を使うのに、何か違和感がありませんか? 筆者が最初にこの式を目にした時に2つの違和感があったことを懐かしく思います。まずひとつめは、「目標利益」「計画利益」「予算利益」がいくらになるかを求める式を作りたいなら、左辺に「利益」がこなくてはいけないのでは?

つまり、こういうこと。

目標利益 = 売上高 - 変動費 - 固定費 (式4)

別に、(式1)と(式4)は、左辺と右辺とで、各要素を移項して利益と売上高を入れ替えただけなので、どっちかを覚えておけば、後は中学生の数学の知識があれば、利益でも売上高でも、残りの3変数が与えられれば、どちらの方程式も解くことはできます。お好きな方でどうぞ。

ただ、あえて言うなら、(式1)や(式3)が意味するところは、与えられたコスト関数と、目標とする利益額を設定したら、いくらの売上高が必要になるか、を素直に表現したもの。特別な状況を除いて、通常、来期予算を立てる際、ボトムラインファースト(先に達成利益目標が設定されている場合)のケースでは、その利益を達成するための売上高がいくらかを求めるような、予算編成の組み立てになっているはず。そのために(式1)や(式3)が存在しているのです。

まずは、どれくらいの利益を上げるためにも、その源泉となるお客様から頂戴する御代がいくらになるのか、つまり収入(収益)がいくらになるのかが経営者にとって最大の関心事で、予算編成の最初の関門かと。

数学的に小難しく言うなら、何が「説明変数」で何が「目的変数」かということ。高校時代に数学が赤点だった筆者が言えるのは、「ひとつの公式を覚えておけば、あとは式の展開でどうにでも自力で新たな公式は作り出せる」と言い放ったクラスでの秀才の発言は、やはり正しかったのだと。(^^;)

 

■ どうして「費用」は「変動費」と「固定費」に分かれるのか?

2つ目の違和感は、どうして費用を「変動費」と「固定費」に2分割しなくてはいけないのか? でした。

売上高 = 費用 + 利益 (式5)

または、

利益 = 売上高 - 費用 (式6)

でいいじゃん、と考えた次第。

この場合、目標利益を達成するために、売上高と費用の2つの要素を別々に考える必要があります。これが意外と面倒くさい。CVP分析の基本モデルで簡単な利益計画をなぞってみましょう。

例)あなたは、りんご専門店を営んでいます。事例をシンプルにするために、りんご専門店の経営で発生するコストは、りんごの仕入金額と、お店の家賃だけに絞ります。

条件1) りんごの仕入金額は、りんごの販売額の40%とします。
条件2) お店の家賃は、りんごの売上に関わらず、1000とします。
条件3) 来期の目標利益を500と設定します。

この時、条件1~3を満たす、売上高はいくらになるでしょう?

(式5)に当てはめてみると、

売上高 = (りんごの購入代金 + 家賃) + 目標利益
        = (売上高 × 40% + 1000) + 500 

両辺に「売上高」が登場してしまったので、中学生数学の知識で式を整理して、

(1 - 40%)× 売上高 = 1000 + 500

売上高 = 1500 ÷ 60%
        = 2500

まあ、(式3)にいきなり代入してしまえば、一瞬で利益目標の達成に必要な売上高が求まるのですが。(^^;)

これを、(式5)または(式6)で考えた場合、費用全額を売上高の多寡とは全く別のところから、当たりをつけて持ってくる必要があります。支払家賃は、売上高の大小を問わずに、お店を借りたら毎月決まった額が発生するので、売上の増減とは全く切り離して、総務部などに聞けば分かることです。しかし、りんごの仕入れ代金の読みは、どうしてもりんごの売上高の大小が分からないと、どれだけ発生するのか雲をつかむような話になってしまいます。

こういう場合、りんごの仕入れ代金は「変動費」というカテゴリーに入れて、売上金額の何%か、または売上数量(1つとか1ダースとか1トンとか)の単位当たりの仕入単価として求めた方が手っ取り早く、元になる資料も手に入れやすくなります。そしてなにより一番の効用は、費用発生の読みがより正確になることです。

注)これまでの事例では、売上数量ではなく、売上金額の何%かという金額比で話を進めています。

それゆえ、費用の読み方として、楽に予想がつくように「変動費」と「固定費」とに区分するのです。費用を「変動費」と「固定費」とに分けることを「固変分解」と呼びます。会計処理上の手続きに対して、特別に名前がついているということは、これだけで語るべき論点であることの証左です。このシリーズでも「固変分解」だけで、延々説明を試みる予定です。(^^)

もし、逆説的に、簡単に費用を「変動費」と「固定費」とに分けられない部分が出てきたらどうするか? という疑問が生じるかもしれません。そういう場合は、無理に分けることに執着しないで、「固定費」にしておけばいいです。「固定費」にしておいて、売上高の増減を問わず、経営活動量の大小を問わず、「固定費」として、売上高とは独立的に読みに行けば済む話です。

実務において、この「固変分解」をもっとスマートに、もっと正確にやる方法を教えてください、と依頼を受けることがあります。100年以上も歴史のあるCVP分析ですから、会計技法的に、様々な「固変分解」のテクニックが存在します。それはそれで紹介していきますが、扱いに迷うくらいなら、それはどっちでもいい話。

注)上記の「固変分解」にまつわる話は、「勘定科目法」とそれに類する手法を採用した時に生じる迷いです。その他の手法では、人間の判断を問わずに「変動費」を認識することもできます。それが本当に当たっているかどうかは、また別のお話しですが。

 

■ もうひとつの数式モデル 販売数量を考慮するケース

これまで、変動費を経営活動量(volume)と結びつけるのに、売上金額の増減を使っていました。もし、これが売上数量の増減を使うことが可能な場合、どのように数式モデルが組み替えればいいでしょうか。

これまで扱っていた数式モデルを再掲します。

①「売上金額」ベース

売上高 = 売上高 × 変動費率 + 固定費 + 利益

財務分析(入門編)_CVP分析 数式モデル ①金額ベース

これを、1個2個と、数を数えられるものを扱っている会社という前提で話を進めると、

 

②「売上数量」ベース

売上高 = 売上数量 × 変動費単価 + 固定費 + 利益 (式7)

と表現することができます。

「変動費単価」というのは、1個当たりの「変動費」。つまり、前章の事例のりんご専門店の場合、りんごの仕入単価、りんご1個を何円で仕入れますか、を表した数字になります。そこで、(式7)の左辺の「売上高」はまだ金額を示しており、こちらも「売上数量」を使って下記のように表せます。

売上高 = 売上数量 × 売上単価 (式8)

そこで、(式8)を(式7)に代入することで、

売上数量 × 売上単価 = 売上数量 × 変動費単価 + 固定費 + 利益 (式9)

売上数量 × (売上単価 - 変動費単価) = 固定費 + 利益

売上数量 × 限界利益単価 = 固定費 + 利益

という式が求まります。この式は、経営活動量(Volume)が、これまで「売上金額」だったものが、「売上数量」に置き換わったもので、本質的には、CVP分析の基本構造としては同じままです。

財務分析(入門編)_CVP分析 数式モデル ②数量ベース

この式の理解を深めるために、簡単な事例で数字を当てはめてみましょう。

例)あなたは、みかん専門店を営んでいます。事例をシンプルにするために、みかん専門店の経営で発生するコストは、みかんの仕入金額と、お店の家賃だけに絞ります。

条件1) みかんの販売金額は、みかん1個あたり、100円とします。(@100円)
条件2) みかんの仕入金額は、みかん1個あたり、40円とします。(@40円)
条件3) お店の家賃は、みかんの売上に関わらず、1000円とします。
条件4) 来期の目標利益を500円と設定します。

この時、条件1~4を満たす、売上数量はいくつになるでしょう?

(式9)を使うと、

売上数量 × @100円 = 売上数量 × @40円 + 1000円 + 500円

売上数量 × (@100円 - @40円) = 1500円

売上数量 = 1500円 ÷ @60円
          = 25個

となります。

単価、数量、金額が入り乱れるので、上記の例では、意識的に単位を設定してみました。

 

■ 「金額ベース」と「数量ベース」をどう使い分けるか?

結論から言うと、厳密な経営活動量(Volume)を把握するという点では、「数量ベース」モデルの方が優っています。「金額ベース」の場合、「売上金額」を用いるケースが多いと思うのですが、常に「定価販売」できるとは限らないので、販売単価は変動するのが世の常です。それゆえ、「金額ベース」では「販売数量」の代理変数として、正確に経営活動量(Volume)を表現しきるのに、限界があるといえます。また、単価情報を使うので、販売単価は、販売カタログから、変動費単価は、原価情報(標準原価計算制度を採用している場合は、原価標準など)から取得することが容易であることが多々あるからです。

一方で、「金額ベース」の方が優れている点もあります。それは、「セールスミックス」問題を捨象できることです。前章・前々章ではあえて、事例に「りんご専門店」「みかん専門店」を持ち出しました。あえて、「フルーツ販売店」として、りんごやみかんやバナナを販売するお店を考えた場合、取り扱っている全てのフルーツの平均的な「変動費率」や「変動費単価」と「販売単価」を割り出すことは、あまり事務作業的に手間ではないかもしれません。

財務分析(入門編)_CVP分析 数式モデルの比較

それでも、「変動費率」だけを調べることと、「変動費単価」と「販売単価」の2つを調べることの手間は、想像以上に違うかもしれません。さらに実務的なことを言うと、普遍的な製造業では、完成品Aは1台、完成品Bは1個、修理用部品は1本、消耗品は1パック、保守点検作業は1時間と、もはや数量を足し合わせることが物理的にできても、合算された数字が経営的に意味のあるものになっているとは思えないケースが発生することが通常なのです。これに、ソフトウェア販売や、クラウドサービス等が組み合わさっていたら、もう目も当てられません。

それゆえ、セールスミックス問題を無視できる単位で、より厳密に経営活動量を把握できる場合は、「数量ベース」モデルを、それ以外は「金額ベース」モデルを活用する、という割り切りが実務的です。

財務分析(入門編)_CVP分析/損益分岐点分析(2)基本モデルを理解する - 数式モデルの成り立ちについて

⇒「CVP分析/損益分岐点分析(1)イントロダクション - CVP短期利益計画モデル活用の前提条件について
⇒「CVP分析/損益分岐点分析(3)基本モデルを理解する - チャートモデルで可視化
⇒「CVP分析/損益分岐点分析(4)チャートモデルを味わい尽くす - ビジネスモデル分析や利益モデリングを試みる!
⇒「CVP分析/損益分岐点分析(5)変動費型モデルと固定費型モデルの違い - 決算短信における業績予想の修正のカラクリ

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CVP分析/損益分岐点分析(2)基本モデルを理解する - 数式モデルの成り立ちについてhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/03/9313ed6460f7d58b8e62d9b27fdfc19d-e1428166718340.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/03/9313ed6460f7d58b8e62d9b27fdfc19d-150x150.jpg小林 友昭財務分析(入門編)財務分析,限界利益,固定費,CVP分析,損益分岐点分析,短期利益計画,変動費率,固変分解,セールスミックス,原価標準■ まずはしつこく数式モデルでCVP構造を頭に叩き込む! 前回、長広舌でいろいろと「CVP分析」「損益分岐点分析」の理論的背景を文字だけでつらつらと説明してしまい、すぐに使える実践的知恵になっていない、とのご批判もあったかもしれません。今回は、ガラッとうって変わって、延々と基本モデルの紹介に努めます。それはそれで読むのが苦痛かもしれませんが。。。(^^;) 前回、後半部分において代表的な数式モデルで「CVP分析」の簡単な基本構造を解説させて頂きました。ここでは、しつこくおさらいすることにします。最初が肝心肝心。 売上高 = 変動費 + 固定費 + 利益  (式1) このとき、変動費を、売上高の増減に比例して発生するものである性質から、 変動費 = 変動費率 × 売上高 (式2) で表現できるので、この(式2)を(式1)に代入すると、 売上高 = (変動費率 × 売上高) + 固定費 + 利益 となり、これを売上高で整理すると、 (1 - 変動費率)× 売上高 = 固定費 + 利益 売上高 = (固定費 + 利益)÷(1 - 変動費率) (式3) となり、 ① 変動費率 ② 固定費 ③ 目標利益 の3つが与えられると、自動的に、稼がなくてはいけない売上高が求まるというわけ。 ここで、(式1)にいったん戻ります。 売上高 = 変動費 + 固定費 + 利益  (式1) 「短期利益計画」という、来年の利益をいくらにしようかと思案する時に、この(式1)またはこれを加工した(式3)を使うのに、何か違和感がありませんか? 筆者が最初にこの式を目にした時に2つの違和感があったことを懐かしく思います。まずひとつめは、「目標利益」「計画利益」「予算利益」がいくらになるかを求める式を作りたいなら、左辺に「利益」がこなくてはいけないのでは? つまり、こういうこと。 目標利益 = 売上高 - 変動費 - 固定費 (式4) 別に、(式1)と(式4)は、左辺と右辺とで、各要素を移項して利益と売上高を入れ替えただけなので、どっちかを覚えておけば、後は中学生の数学の知識があれば、利益でも売上高でも、残りの3変数が与えられれば、どちらの方程式も解くことはできます。お好きな方でどうぞ。 ただ、あえて言うなら、(式1)や(式3)が意味するところは、与えられたコスト関数と、目標とする利益額を設定したら、いくらの売上高が必要になるか、を素直に表現したもの。特別な状況を除いて、通常、来期予算を立てる際、ボトムラインファースト(先に達成利益目標が設定されている場合)のケースでは、その利益を達成するための売上高がいくらかを求めるような、予算編成の組み立てになっているはず。そのために(式1)や(式3)が存在しているのです。 まずは、どれくらいの利益を上げるためにも、その源泉となるお客様から頂戴する御代がいくらになるのか、つまり収入(収益)がいくらになるのかが経営者にとって最大の関心事で、予算編成の最初の関門かと。 数学的に小難しく言うなら、何が「説明変数」で何が「目的変数」かということ。高校時代に数学が赤点だった筆者が言えるのは、「ひとつの公式を覚えておけば、あとは式の展開でどうにでも自力で新たな公式は作り出せる」と言い放ったクラスでの秀才の発言は、やはり正しかったのだと。(^^;)   ■ どうして「費用」は「変動費」と「固定費」に分かれるのか? 2つ目の違和感は、どうして費用を「変動費」と「固定費」に2分割しなくてはいけないのか? でした。 売上高 = 費用 + 利益 (式5) または、 利益 = 売上高 - 費用 (式6) でいいじゃん、と考えた次第。 この場合、目標利益を達成するために、売上高と費用の2つの要素を別々に考える必要があります。これが意外と面倒くさい。CVP分析の基本モデルで簡単な利益計画をなぞってみましょう。 例)あなたは、りんご専門店を営んでいます。事例をシンプルにするために、りんご専門店の経営で発生するコストは、りんごの仕入金額と、お店の家賃だけに絞ります。 条件1) りんごの仕入金額は、りんごの販売額の40%とします。 条件2) お店の家賃は、りんごの売上に関わらず、1000とします。 条件3) 来期の目標利益を500と設定します。 この時、条件1~3を満たす、売上高はいくらになるでしょう? (式5)に当てはめてみると、 売上高 = (りんごの購入代金 + 家賃) + 目標利益         = (売上高 × 40% + 1000) + 500  両辺に「売上高」が登場してしまったので、中学生数学の知識で式を整理して、 (1 - 40%)× 売上高 = 1000 + 500 売上高 = 1500 ÷ 60%         = 2500 まあ、(式3)にいきなり代入してしまえば、一瞬で利益目標の達成に必要な売上高が求まるのですが。(^^;) これを、(式5)または(式6)で考えた場合、費用全額を売上高の多寡とは全く別のところから、当たりをつけて持ってくる必要があります。支払家賃は、売上高の大小を問わずに、お店を借りたら毎月決まった額が発生するので、売上の増減とは全く切り離して、総務部などに聞けば分かることです。しかし、りんごの仕入れ代金の読みは、どうしてもりんごの売上高の大小が分からないと、どれだけ発生するのか雲をつかむような話になってしまいます。 こういう場合、りんごの仕入れ代金は「変動費」というカテゴリーに入れて、売上金額の何%か、または売上数量(1つとか1ダースとか1トンとか)の単位当たりの仕入単価として求めた方が手っ取り早く、元になる資料も手に入れやすくなります。そしてなにより一番の効用は、費用発生の読みがより正確になることです。 注)これまでの事例では、売上数量ではなく、売上金額の何%かという金額比で話を進めています。 それゆえ、費用の読み方として、楽に予想がつくように「変動費」と「固定費」とに区分するのです。費用を「変動費」と「固定費」とに分けることを「固変分解」と呼びます。会計処理上の手続きに対して、特別に名前がついているということは、これだけで語るべき論点であることの証左です。このシリーズでも「固変分解」だけで、延々説明を試みる予定です。(^^) もし、逆説的に、簡単に費用を「変動費」と「固定費」とに分けられない部分が出てきたらどうするか? という疑問が生じるかもしれません。そういう場合は、無理に分けることに執着しないで、「固定費」にしておけばいいです。「固定費」にしておいて、売上高の増減を問わず、経営活動量の大小を問わず、「固定費」として、売上高とは独立的に読みに行けば済む話です。 実務において、この「固変分解」をもっとスマートに、もっと正確にやる方法を教えてください、と依頼を受けることがあります。100年以上も歴史のあるCVP分析ですから、会計技法的に、様々な「固変分解」のテクニックが存在します。それはそれで紹介していきますが、扱いに迷うくらいなら、それはどっちでもいい話。 注)上記の「固変分解」にまつわる話は、「勘定科目法」とそれに類する手法を採用した時に生じる迷いです。その他の手法では、人間の判断を問わずに「変動費」を認識することもできます。それが本当に当たっているかどうかは、また別のお話しですが。   ■ もうひとつの数式モデル 販売数量を考慮するケース これまで、変動費を経営活動量(volume)と結びつけるのに、売上金額の増減を使っていました。もし、これが売上数量の増減を使うことが可能な場合、どのように数式モデルが組み替えればいいでしょうか。 これまで扱っていた数式モデルを再掲します。 ①「売上金額」ベース 売上高 = 売上高 × 変動費率 + 固定費 + 利益 これを、1個2個と、数を数えられるものを扱っている会社という前提で話を進めると、   ②「売上数量」ベース 売上高 = 売上数量 × 変動費単価 + 固定費 + 利益 (式7) と表現することができます。 「変動費単価」というのは、1個当たりの「変動費」。つまり、前章の事例のりんご専門店の場合、りんごの仕入単価、りんご1個を何円で仕入れますか、を表した数字になります。そこで、(式7)の左辺の「売上高」はまだ金額を示しており、こちらも「売上数量」を使って下記のように表せます。 売上高 = 売上数量 × 売上単価 (式8) そこで、(式8)を(式7)に代入することで、 売上数量 × 売上単価 = 売上数量 × 変動費単価 + 固定費 + 利益 (式9) 売上数量 × (売上単価 - 変動費単価) = 固定費 + 利益 売上数量 × 限界利益単価 = 固定費 + 利益 という式が求まります。この式は、経営活動量(Volume)が、これまで「売上金額」だったものが、「売上数量」に置き換わったもので、本質的には、CVP分析の基本構造としては同じままです。 この式の理解を深めるために、簡単な事例で数字を当てはめてみましょう。 例)あなたは、みかん専門店を営んでいます。事例をシンプルにするために、みかん専門店の経営で発生するコストは、みかんの仕入金額と、お店の家賃だけに絞ります。 条件1) みかんの販売金額は、みかん1個あたり、100円とします。(@100円) 条件2) みかんの仕入金額は、みかん1個あたり、40円とします。(@40円) 条件3) お店の家賃は、みかんの売上に関わらず、1000円とします。 条件4) 来期の目標利益を500円と設定します。 この時、条件1~4を満たす、売上数量はいくつになるでしょう? (式9)を使うと、 売上数量 × @100円 = 売上数量 × @40円 + 1000円 + 500円 売上数量 × (@100円 - @40円) = 1500円 売上数量 = 1500円 ÷ @60円           = 25個 となります。 単価、数量、金額が入り乱れるので、上記の例では、意識的に単位を設定してみました。   ■ 「金額ベース」と「数量ベース」をどう使い分けるか? 結論から言うと、厳密な経営活動量(Volume)を把握するという点では、「数量ベース」モデルの方が優っています。「金額ベース」の場合、「売上金額」を用いるケースが多いと思うのですが、常に「定価販売」できるとは限らないので、販売単価は変動するのが世の常です。それゆえ、「金額ベース」では「販売数量」の代理変数として、正確に経営活動量(Volume)を表現しきるのに、限界があるといえます。また、単価情報を使うので、販売単価は、販売カタログから、変動費単価は、原価情報(標準原価計算制度を採用している場合は、原価標準など)から取得することが容易であることが多々あるからです。 一方で、「金額ベース」の方が優れている点もあります。それは、「セールスミックス」問題を捨象できることです。前章・前々章ではあえて、事例に「りんご専門店」「みかん専門店」を持ち出しました。あえて、「フルーツ販売店」として、りんごやみかんやバナナを販売するお店を考えた場合、取り扱っている全てのフルーツの平均的な「変動費率」や「変動費単価」と「販売単価」を割り出すことは、あまり事務作業的に手間ではないかもしれません。 それでも、「変動費率」だけを調べることと、「変動費単価」と「販売単価」の2つを調べることの手間は、想像以上に違うかもしれません。さらに実務的なことを言うと、普遍的な製造業では、完成品Aは1台、完成品Bは1個、修理用部品は1本、消耗品は1パック、保守点検作業は1時間と、もはや数量を足し合わせることが物理的にできても、合算された数字が経営的に意味のあるものになっているとは思えないケースが発生することが通常なのです。これに、ソフトウェア販売や、クラウドサービス等が組み合わさっていたら、もう目も当てられません。 それゆえ、セールスミックス問題を無視できる単位で、より厳密に経営活動量を把握できる場合は、「数量ベース」モデルを、それ以外は「金額ベース」モデルを活用する、という割り切りが実務的です。 ⇒「CVP分析/損益分岐点分析(1)イントロダクション -...現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します