(Deep Insight)カープが説く「国民総株主」- 経営の神様 松下幸之助の「国民総株主論」か企業統治指針か?

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■ あの好調球団を支えているのは「株主」だった!?

経営管理会計トピック

現在、セリーグトップを走る好調広島東洋カープ。その誕生の裏には、「株式」があったというお話。市民球団という視点から語られることの多かった話題ですが、「市民」と同程度に「株主」がその成功の裏に存在していたのです。

2017/8/2付 |日本経済新聞|朝刊 (Deep Insight)カープが説く「国民総株主」

「1945年8月6日、原爆の投下を受けて広島は焦土化した。その後、奇跡的な復興を遂げたが、株式が重要な役割を果たしたことを、広島以外の人はほとんど知らない。
広島東洋カープの前身である「広島野球倶楽部」が設立されたのは、原爆投下から5年後の50年だった。野球の盛んな土地である。地元のリーダーは球団の活躍が人々のすさんだ心を癒やすと読んだ。そして設立資金は、株の購入を人々に広く呼びかけて集めた。」

(下記は、同記事添付の「ファンは今も「市民球団」と自負する」を引用)

20170802_ファンは今も「市民球団」と自負する_日本経済新聞朝刊

記事によりますと、
球団設立の翌1951年、広島県知事と広島市長が連名で、外国に住む広島出身の移民にカープへの資金支援を求めた手紙が残っています、その中で、株で幅広く資金を募る強みを「支援金の拠出者即株主であるから、大衆が自分のチームだということを意識している」と訴えているのです。

株を持つことで、多くのファンがチームと一体になるから、チーム成績は人ごとではなくなります。なけなしのお金を出したから、観客の声援もヤジも他球団に比較して激しかったとも。広島カープはそんな重圧を受け止めたからこそ努力を重ねて強くなり、広島復興の象徴になり、球団創立25年目の1975年に初優勝を達成します。ちなみに、経営面では創設以来の累積赤字をこの年に解消しているという広島カープにとって記念すべき年となりました。

(下記は、同記事添付の「球団創設時の株券」を引用)

20170802_球団創設時の株券_日本経済新聞朝刊

 

■ 広島東洋カープから松下幸之助まで、株主の経営参加の重要性を説く!

本記事から抜粋。
「数多くの株主がオーナーの自覚を持ち、企業を囲んで叱咤(しった)激励する。企業はそんな株主に報い、社会全体が栄える――カープ創生期に浮かぶのは、企業と株主の対話が生む好循環であり、経済成長に欠かせないメカニズムだ。」

「経営の神様」と呼ばれた伝説の人物、パナソニック(当時:松下電器)創業者:松下幸之助(1894~1989)もカープ再生と同じ発想での会社経営の理想像を描いていたことは特筆に値します。幸之助氏は、1967年に公表した論文「株式の大衆化で新たな繁栄を」で、「国民総株主論」について言及し、「国民のすべてがどこかの株主であるというようなところまでもってゆければ……」とぶち上げました。時は、戦後の財閥解体で株の分散が進んだ頃に重なり、幸之助氏の目には株式文化が日本にも根付く好機と映ったようです。

(下記は、同記事添付の「松下幸之助も大衆が広く株を持つよう説いた」を引用)

20170802_松下幸之助も大衆が広く株を持つよう説いた_日本経済新聞朝刊

この論文において、市場を担う株主、企業経営者、証券会社それぞれに変化を求めます。

① 株主には株を手放さず、何代にもわたって持ち続ける「永久投資」を提案
→企業の主人公としての自覚が生まれ、企業にも堂々と物が言える

② 経営者には、自分の主人(会社の所有者)である株主の利害に対しては、自分のこと以上に真剣になる
→緊張感のある経営が自然と経営規律を生み出す

③ 証券会社には、「大衆的個人株主をできるだけ多くつくってゆく」ことを使命とする
→株主数が増えれば、株主一人あたりの売買が減っても全体の売買は増えるため、証券会社の手数料収入も増える

最後の証券会社へのリクエストについて、自身が1948年に「ナショナル証券(現SMBCフレンド証券)」を設立し、「株式立国」という思いを実行に移します。その時の幸之助氏の提言が、的を射ていて、今でも色褪せることはありません。

(1)企業が成長する国
「株の問屋になれ」。企業が有す在庫の価値は、通常は時と共に減少する。しかし、株式はその逆で、値上がりもすれば配当も入る。企業の成長を前提すれば、証券会社は「一番確実で良い問屋業」となりえる

(2)人々が株を生活に組み込み、報われる国
米国におけるウォルト・ディズニー株の位置づけを引き合いに出し、「孫の誕生日にディズニー株を贈り、配当や値上がり益を将来の学費に使えるようにしている」という話から、長期保有の株主が増えることで企業との対話も深まり、良い経営規律が企業の成長をもたらし、結果としてインカムゲインとキャピタルゲインとして株主に報いる好循環を約束する

 

■ 現状の株式市場は、企業の成長に貢献するように正常化しているのか?

外国人投資家の日本株買いを促進するため、第一次アベノミクスで、「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」「スチュワードシップ・コード」を取り入れ、株主をはじめとするステークホルダーとの対話重視、機関投資家の規律強化を謳い、各種政策を導入しましたが、結果はどうでしょうか。

ROE礼賛の声が高まり、株主還元の美名のもと、自己株買いと高い配当性向を約束したり、逆に、内部留保を巡って、短期的な値ざやを狙う投資家や経営者との短期的な交渉でリターンを求めようとする(悪い意味での)アクティビスト(物言う株主)の横暴が目につく現状。それゆえ、株主の経営参加の口実を塞ぐため、議決権行使を制限する種類株式の発行や、目先の手練手管に頼った各種財務調達手段(例えばライツ・イシュー、リキャップCBなど)が横行したりしています。

また、企業側も経営陣に都合の良いサイレント株主を求めて、株主平等原則に反する可能性の高いギリギリの線で、金券などを用いた株主優待制度などで個人投資家集めに奔走したり、逆選別で都合の良い株主集めに知恵を使ったりしています。

本末転倒な株主対策に汲汲とする各社。

同記事では、

「そんな今だからこそ、カープの経験も幸之助の指摘も輝きを増す。株主は長期的なオーナーとしての責任感を持って企業に接しているか。企業はそんな投資家に株を持ってもらえるような経営をしているか。証券会社は長期的な株主の裾野を広げる使命を果たしているか――長期デフレは日本の「第2の敗戦」でもある。原点に戻って問い直すべき時は、とうにきている。」

という言葉で締めくくられています。

ここでコーポレートガバナンス・コードの真意を今一度確認します。
第5章:株主との対話 は次の通り。

20170806_コーポレートガバナンス・コード_株主との対話

経営者と株主をはじめとするステークホルダーとの対話の中心にあるべきなのは、

① 企業の持続的な成長
② 中長期的な企業価値の向上

であり、

経営者に求められる姿勢は、

① 対話を通じて、ステークホルダーと利害に関心を持つ一方で、経営方針の理解を深めるよう説明を重ねる
② 株主とそれ以外のステークホルダーと利害調整に心を砕く

です。

経営者は、これらたった、2つ(4つ)のことを、肝に銘じるだけ。簡単なことではありませんか。(^^)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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