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■ 利益、キャッシュフローといった業績指標の過大表示のトリックを見る!

会計(基礎編)

前回の「不適切会計の手段 -キーメトリクスのトリック(2)経営成績を過大表示する指標の提示 - 収益の代替指標 日本マクドナルド、KDDIやホンダの事例を見る!」では、経営者が「業績指標」のうち、売上・収益について、開示・外部報告に関して自己に都合よく装飾する仕方について、日本企業の実例も含めて説明しました。今回は、引き続き、「利益」と「キャッシュフロー」について見ていきます。

本記事を書くのに参考にしている図書の紹介から。

この図書の内容を受けて、筆者が整理した不適切会計の全体見取り図は下記のとおり。

経営管理会計トピック_不適切会計の類型

経営成績を過大表示したくなる業績指標を提示するテクニックを復習がてら再掲すると、次の3つになります。
(1)誤認を招く収益の代替指標を強調する
(2)誤認を招く利益の代替指標を強調する
(3)誤認を招くキャッシュフローの代替指標を強調する

 

(2)誤認を招く利益の代替指標を強調する

投資の現代の神様でオハマの賢人、ウォーレン・バフェット氏は、不誠実な独自指標をつくり出すマネジメントチームを以前からからかってきました。この投稿の元本である「会計不正はこう見抜け」では、彼の発言として、次のセリフが紹介されています。

『白いキャンバスに矢を射た後に、刺さった矢のまわりに標的を描くようなものだ』

● EBITDA:earnings before interest, taxes, depreciation, and amortization(利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益)

全く、寿限無寿限無のネーミングから察せられるように、この指標は、2002年の米国ワールドコム経営破綻時に、いいように使われており、それ以来、知る人はその欠陥からもはや目配りをしない指標なのですが、こういうものは時差を伴うもので、現在まだ経営分析や株式評価の世界では大手を振って闊歩しています。

元本で取り上げられた米国グローバル・クロッシング社の例を引きます。

同社は、どうしても2007年3月四半期に1億2000万ドルの純損失を計上しましたが、どうしても利益を見せたいがために、独自基準(ここではGAAP以外のものを指す)で差し引くべき費用を差し引かないで利益が出ていることを強調しました。その手口は以下の通り。

① 調整後EBITDA
利息、税金、減価償却費、その他費用9700万ドルを引くのをやめました。それでもまだ2300万ドル赤字。

② 調整後キャッシュEBITDA
さらに、非資金費用(実際にはキャッシュアウトを伴わないの意)の株式報酬1500万ドルを差し引くのをやめました。それでもまだ、800万ドルの赤字!

③ 一時的項目控除後調整後キャッシュEBITDA
最後に、会社が考えた今期だけ特別に発生した費用を差し引くのをやめました。
その名目は以下の通り。
・徴収費用
・アジアの地震
・顧客の債務不履行
・退職金
・残留特別手当の現金部分
・ユーティリティ・クレジット
・メンテナンス費用

名前だけ見ると、日本基準の特別損失ではなく、営業外費用はおろか、販管費にすべきものまで含まれています。これが1200万ドル。ようやくここまできて、400万ドルの黒字になりました。そこまで必死になられると、黒字にみせかける利益数字をひねり出す企業の経営者と財務担当者の努力に頭が下がる思いです。(^^;)

 

■ EBITDAの時代的使命はもはや終わりました

「EBITDA」は、これを開示する大抵の企業の定義では、売上から差し引かれるべきコストから、「支払金利」「支払税金」「減価償却費」を除きます。その大義名分には2つ理由がありました。

① 世界の国家間で、金利負担(市中金利)、税金負担(法人税率)、償却費負担(税法等、償却方法と耐用年数の違い)の考え方が異なるため、国家の枠を超えて、グローバル企業同士の業績を正確に評価するためには、この3つをコストから除かなければならない。

② 期間費用は、「発生主義」でコストを認識するため、実際のキャッシュ・アウトフローとは異なる費用を計上しなくてはいけない。これでは、正しく企業業績をキャッシュフローの面から評価できなくなる。それゆえ、特に、「償却費(巨額になりがちなのれん含む)」はコストから外さなければならない。

①について
グローバル企業は、もはや、世界各国の金融市場にアクセスでき、世界で一番資本コストの安い市場で資金を集めることができます。しかも、間接金融から直接金融へ、資金調達手段もシフトしていっています(ハイブリッド債含む)。さらに、「タックスインバージョン」「パナマ文書」「「タックスヘイブン」というキーワードと共に、グローバル企業は、「節税」という美名の下、各国の税法の網の目をかいくぐり、租税回避に必死で、世界的な優良企業と呼ばれているどの企業も、法定実効税率以下しか、税金を納めていません。

したがって、コンペチターと公平な比較評価を担保するために、GAAP利益ではなく、EBITDAで業績評価をしてほしい、というのはもう通用しない時代となりました。これも世の中で誤解が多いのですが、IFRS(国際財務報告基準)の採用理由に、グローバルに同じ会計基準で企業業績を比較できるようにするため、というものがありますが、これも真実の評価を保証しません。

というのは、市中金利、税法、労働法など、企業はグローバルに活動するようになっても、国・地域に縛られたルールがIFRSを採用していたとしても、それと無関係にコストに地域差がヒットするからです。ましてや、日本の親会社が、グループ企業を公平に評価するため、管理会計の要請からIFRSを採用する、などということは、噴飯もの以外の何物でもありません。

(参考)
⇒「国際会計基準IFRSが変える(上)グループ経営のインフラに 共通モノサシ、内需企業も

②について
これは話が簡単です。キャッシュフロー・ベースで企業業績を評価したい場合は、キャッシュフロー計算書の方を見てください。P/L上の利益に非現金費用を足し戻して、利益を水増しして業績向上をいくら見せかけても、キャッシュフロー計算書をみれば、現金収支ベースの業績変動は分かります。しかも、営業キャッシュフローの方が、EBITDAと等しく減価償却費負担がないにもかかわらず、流動資産負債(在庫変動、債権債務変動)の営業循環へのインパクトまで分かる情報になっています。

いまさら、上場時に、EBITDAで業績開示を始め出した企業のIR戦略の巧妙さには、逆に頭が下がる思いがします。そして、裏を勘ぐってしまいますね。何を隠したい、何を見せたいのか、、、

(参考)
⇒「新規公開株の横顔 リクルートホールディングス メディア事業が収益源

EBITDAについては、最初に戻りますが、バフェットの警句を思い出すべきです。バフェットは直近でも、この問題について発言しています。それでも治らない経営分析・株式分析業界のEBITDA病。。。

2016/4/13付 |日本経済新聞|夕刊 (ウォール街ラウンドアップ)米ハイテク決算に期待と疑念

「例えば、15年10~12月期の最終損益は9023万ドル(約98億円)の赤字だったツイッター。株式報酬費用は1億5824万ドルにのぼり、これらがなければ黒字だった。
株式報酬は実際の現金支出を伴わない。企業は調整後EBITDA(利払い・税払い・償却前利益)などでも業績動向を示す。ツイッターの同指標を見れば、10~12月期まで3期連続増益だ。
投資家も成長途上の企業の収益力を図るにはこうした企業が開示する調整後利益を目安にすることが多い。ただこうした利益の調整には経営の実態がわかりやすくなるという利点がある半面、決算数値をよりよく見せようとする経営陣の思惑でゆがむリスクもある。
「経営陣が特定の費用項目を無視してほしいと株主に伝える行為が目に余る」。著名投資家ウォーレン・バフェット氏は今年の株主への手紙でこう警告した。「赤字企業」か「高成長企業」か。投資家がどの指標に注目するかで評価は異なる。高成長で米市場をけん引してきたハイテク業界だが、投資家の目線次第で雰囲気は一変する可能性がありそうだ。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

 

■ 再びEBITDAを使ったトリックに話を戻します

上書で、2007年6月決算で見せた、米スパンション(当時。2015年にサイプレス・セミコンダクタに吸収)の驚くべきテクニックを取り上げています。同社は、EBITDAが前四半期の6100万ドルから7200万ドルに増加したと公表しました。翌四半期、EBITDAが7100万ドルに減少したと公表しましたが、もし前四半期の一時的な不動産売却益を除けば、実際には800万ドルの増加だったと主張しました。この同社に都合の良い数字発表の仕方のおかしさに気がつかれました?

>2007年6月四半期決算発表
EBITDAは、1100万ドルの増益(この時点で、一時的な不動産売却益:900万ドルは含めている)

>2007年9月四半期決算発表
EBITDAは、実質800万ドルの増益(前四半期の、一時的な不動産売却益:900万ドルは除かれている)

四半期決算の発表ごとに、前期比較の基準値を自社(経営者)に都合のいいように改ざんする。そんなでたらめ、普通の投資家ならば騙されませんよね。

これは、非GAAPのEBITDAで実際に合った演出ですが、この種の2期間比較の演出は、何もEBITDAに限った話ではなく、GAPP利益でも同じことができます。

例えば、
・決算月の変更による変則決算
(前年の12か月と今年の15か月のP/Lを比べる)
・連結範囲の変更
(営業黒字会社を取り込んだときには、前期実績にはこの新会社の数字を含めない)
(営業赤字会社を取り込んだときには、前期実績にこの新会社の数字を含める)

なんと、EBITDAで盛り上がりすぎて、予定の字数が来てしまいました。続きは次回。(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

⇒「不適切会計の手段 -キーメトリクスのトリック(1)企業財務分析者が気にすべき財務指標について
⇒「不適切会計の手段 -キーメトリクスのトリック(2)経営成績を過大表示する指標の提示 - 収益の代替指標 日本マクドナルド、KDDIやホンダの事例を見る!

財務会計(入門編)_不適切会計の手段 -キーメトリクスのトリック(3)経営成績を過大表示する指標の提示 - 会計的利益とEBITDA

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不適切会計の手段 -キーメトリクスのトリック(3)経営成績を過大表示する指標の提示 - 会計的利益とEBITDAhttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/07/3c971502de75240f1831fd45c1169d291-150x150.jpg小林 友昭財務会計(入門編)EBITDA,不適切会計,租税回避,キーメトリクス,財務指標,GAAP,ウォーレン・バフェット,リクルートホールディングス■ 利益、キャッシュフローといった業績指標の過大表示のトリックを見る! 前回の「不適切会計の手段 -キーメトリクスのトリック(2)経営成績を過大表示する指標の提示 - 収益の代替指標 日本マクドナルド、KDDIやホンダの事例を見る!」では、経営者が「業績指標」のうち、売上・収益について、開示・外部報告に関して自己に都合よく装飾する仕方について、日本企業の実例も含めて説明しました。今回は、引き続き、「利益」と「キャッシュフロー」について見ていきます。 本記事を書くのに参考にしている図書の紹介から。 この図書の内容を受けて、筆者が整理した不適切会計の全体見取り図は下記のとおり。 経営成績を過大表示したくなる業績指標を提示するテクニックを復習がてら再掲すると、次の3つになります。 (1)誤認を招く収益の代替指標を強調する (2)誤認を招く利益の代替指標を強調する (3)誤認を招くキャッシュフローの代替指標を強調する   (2)誤認を招く利益の代替指標を強調する 投資の現代の神様でオハマの賢人、ウォーレン・バフェット氏は、不誠実な独自指標をつくり出すマネジメントチームを以前からからかってきました。この投稿の元本である「会計不正はこう見抜け」では、彼の発言として、次のセリフが紹介されています。 『白いキャンバスに矢を射た後に、刺さった矢のまわりに標的を描くようなものだ』 ● EBITDA:earnings before interest, taxes, depreciation, and amortization(利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益) 全く、寿限無寿限無のネーミングから察せられるように、この指標は、2002年の米国ワールドコム経営破綻時に、いいように使われており、それ以来、知る人はその欠陥からもはや目配りをしない指標なのですが、こういうものは時差を伴うもので、現在まだ経営分析や株式評価の世界では大手を振って闊歩しています。 元本で取り上げられた米国グローバル・クロッシング社の例を引きます。 同社は、どうしても2007年3月四半期に1億2000万ドルの純損失を計上しましたが、どうしても利益を見せたいがために、独自基準(ここではGAAP以外のものを指す)で差し引くべき費用を差し引かないで利益が出ていることを強調しました。その手口は以下の通り。 ① 調整後EBITDA 利息、税金、減価償却費、その他費用9700万ドルを引くのをやめました。それでもまだ2300万ドル赤字。 ② 調整後キャッシュEBITDA さらに、非資金費用(実際にはキャッシュアウトを伴わないの意)の株式報酬1500万ドルを差し引くのをやめました。それでもまだ、800万ドルの赤字! ③ 一時的項目控除後調整後キャッシュEBITDA 最後に、会社が考えた今期だけ特別に発生した費用を差し引くのをやめました。 その名目は以下の通り。 ・徴収費用 ・アジアの地震 ・顧客の債務不履行 ・退職金 ・残留特別手当の現金部分 ・ユーティリティ・クレジット ・メンテナンス費用 名前だけ見ると、日本基準の特別損失ではなく、営業外費用はおろか、販管費にすべきものまで含まれています。これが1200万ドル。ようやくここまできて、400万ドルの黒字になりました。そこまで必死になられると、黒字にみせかける利益数字をひねり出す企業の経営者と財務担当者の努力に頭が下がる思いです。(^^;)   ■ EBITDAの時代的使命はもはや終わりました 「EBITDA」は、これを開示する大抵の企業の定義では、売上から差し引かれるべきコストから、「支払金利」「支払税金」「減価償却費」を除きます。その大義名分には2つ理由がありました。 ① 世界の国家間で、金利負担(市中金利)、税金負担(法人税率)、償却費負担(税法等、償却方法と耐用年数の違い)の考え方が異なるため、国家の枠を超えて、グローバル企業同士の業績を正確に評価するためには、この3つをコストから除かなければならない。 ② 期間費用は、「発生主義」でコストを認識するため、実際のキャッシュ・アウトフローとは異なる費用を計上しなくてはいけない。これでは、正しく企業業績をキャッシュフローの面から評価できなくなる。それゆえ、特に、「償却費(巨額になりがちなのれん含む)」はコストから外さなければならない。 ①について グローバル企業は、もはや、世界各国の金融市場にアクセスでき、世界で一番資本コストの安い市場で資金を集めることができます。しかも、間接金融から直接金融へ、資金調達手段もシフトしていっています(ハイブリッド債含む)。さらに、「タックスインバージョン」「パナマ文書」「「タックスヘイブン」というキーワードと共に、グローバル企業は、「節税」という美名の下、各国の税法の網の目をかいくぐり、租税回避に必死で、世界的な優良企業と呼ばれているどの企業も、法定実効税率以下しか、税金を納めていません。 したがって、コンペチターと公平な比較評価を担保するために、GAAP利益ではなく、EBITDAで業績評価をしてほしい、というのはもう通用しない時代となりました。これも世の中で誤解が多いのですが、IFRS(国際財務報告基準)の採用理由に、グローバルに同じ会計基準で企業業績を比較できるようにするため、というものがありますが、これも真実の評価を保証しません。 というのは、市中金利、税法、労働法など、企業はグローバルに活動するようになっても、国・地域に縛られたルールがIFRSを採用していたとしても、それと無関係にコストに地域差がヒットするからです。ましてや、日本の親会社が、グループ企業を公平に評価するため、管理会計の要請からIFRSを採用する、などということは、噴飯もの以外の何物でもありません。 (参考) ⇒「国際会計基準IFRSが変える(上)グループ経営のインフラに 共通モノサシ、内需企業も」 ②について これは話が簡単です。キャッシュフロー・ベースで企業業績を評価したい場合は、キャッシュフロー計算書の方を見てください。P/L上の利益に非現金費用を足し戻して、利益を水増しして業績向上をいくら見せかけても、キャッシュフロー計算書をみれば、現金収支ベースの業績変動は分かります。しかも、営業キャッシュフローの方が、EBITDAと等しく減価償却費負担がないにもかかわらず、流動資産負債(在庫変動、債権債務変動)の営業循環へのインパクトまで分かる情報になっています。 いまさら、上場時に、EBITDAで業績開示を始め出した企業のIR戦略の巧妙さには、逆に頭が下がる思いがします。そして、裏を勘ぐってしまいますね。何を隠したい、何を見せたいのか、、、 (参考) ⇒「新規公開株の横顔 リクルートホールディングス メディア事業が収益源」 EBITDAについては、最初に戻りますが、バフェットの警句を思い出すべきです。バフェットは直近でも、この問題について発言しています。それでも治らない経営分析・株式分析業界のEBITDA病。。。 2016/4/13付 |日本経済新聞|夕刊 (ウォール街ラウンドアップ)米ハイテク決算に期待と疑念 「例えば、15年10~12月期の最終損益は9023万ドル(約98億円)の赤字だったツイッター。株式報酬費用は1億5824万ドルにのぼり、これらがなければ黒字だった。 株式報酬は実際の現金支出を伴わない。企業は調整後EBITDA(利払い・税払い・償却前利益)などでも業績動向を示す。ツイッターの同指標を見れば、10~12月期まで3期連続増益だ。 投資家も成長途上の企業の収益力を図るにはこうした企業が開示する調整後利益を目安にすることが多い。ただこうした利益の調整には経営の実態がわかりやすくなるという利点がある半面、決算数値をよりよく見せようとする経営陣の思惑でゆがむリスクもある。 「経営陣が特定の費用項目を無視してほしいと株主に伝える行為が目に余る」。著名投資家ウォーレン・バフェット氏は今年の株主への手紙でこう警告した。「赤字企業」か「高成長企業」か。投資家がどの指標に注目するかで評価は異なる。高成長で米市場をけん引してきたハイテク業界だが、投資家の目線次第で雰囲気は一変する可能性がありそうだ。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます   ■ 再びEBITDAを使ったトリックに話を戻します 上書で、2007年6月決算で見せた、米スパンション(当時。2015年にサイプレス・セミコンダクタに吸収)の驚くべきテクニックを取り上げています。同社は、EBITDAが前四半期の6100万ドルから7200万ドルに増加したと公表しました。翌四半期、EBITDAが7100万ドルに減少したと公表しましたが、もし前四半期の一時的な不動産売却益を除けば、実際には800万ドルの増加だったと主張しました。この同社に都合の良い数字発表の仕方のおかしさに気がつかれました? >2007年6月四半期決算発表 EBITDAは、1100万ドルの増益(この時点で、一時的な不動産売却益:900万ドルは含めている) >2007年9月四半期決算発表 EBITDAは、実質800万ドルの増益(前四半期の、一時的な不動産売却益:900万ドルは除かれている) 四半期決算の発表ごとに、前期比較の基準値を自社(経営者)に都合のいいように改ざんする。そんなでたらめ、普通の投資家ならば騙されませんよね。 これは、非GAAPのEBITDAで実際に合った演出ですが、この種の2期間比較の演出は、何もEBITDAに限った話ではなく、GAPP利益でも同じことができます。 例えば、 ・決算月の変更による変則決算 (前年の12か月と今年の15か月のP/Lを比べる) ・連結範囲の変更 (営業黒字会社を取り込んだときには、前期実績にはこの新会社の数字を含めない) (営業赤字会社を取り込んだときには、前期実績にこの新会社の数字を含める) なんと、EBITDAで盛り上がりすぎて、予定の字数が来てしまいました。続きは次回。(^^;) (注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。 ⇒「不適切会計の手段 -キーメトリクスのトリック(1)企業財務分析者が気にすべき財務指標について」 ⇒「不適切会計の手段 -キーメトリクスのトリック(2)経営成績を過大表示する指標の提示 - 収益の代替指標 日本マクドナルド、KDDIやホンダの事例を見る!」現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します