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ここがヘンだよ!日本の株”主”会社(3)(ゼロから解説)「複利」を投資の味方に 投信、毎月分配型は利点生かせず

経営管理会計トピック 実務で会計ルールをおさらい
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■ 短期売買のサヤ取りではなく、資産形成として株式投資を長期的視点で考えている人へ

経営管理会計トピック

「ここがヘンだよ!日本の株“主”会社」として、日本の株式会社と日本の株式市場の特徴をシリーズで見ていきたいと思います。筆者は、「だから日本の株式会社、株式市場は未熟でダメなんだ!」と一刀両断するつもりはなく、個人投資家でもある自身の経験と、経営コンサルタント視点で会社経営をみてきた体験から、株式会社制度をじっくり観察して感じた思いを読者の方と分かち合いたいと考えています。

2017/4/8付 |日本経済新聞|朝刊 (ゼロから解説)「複利」を投資の味方に 投信、毎月分配型は利点生かせず

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

「長期投資では「複利」を味方につければ、お金を大きく増やすチャンスが広がります。利益がさらに利益を生んでいく複利の効果の大きさは、物理学者アインシュタインが「人類最大の数学的発見」と言ったとされるほどですが、個人投資家には過小評価されがち。むしろ複利効果が働かない金融商品が売れ筋になっている実態もあります。」

短期売買でサヤ取りしたい人も、株式投資で儲けたい、という動機で短期売買を繰り返しているのだと思います。確かに、ファンダメンタルズ分析に基づく自分なりの理論株価を持ち、その価格から上方(または下方)乖離したらすばやく売り(または買い)を入れる。そういうスタイルも確かにありでしょう。しかし、そうした作業にかける時間・労力は並大抵のことではなく、AI活用のロボアドバイザーによる自動運用にでも任せた方がよいでしょう。AIに比べて人力でできることは限られていますから。

今回取り上げるのは、長期的株式運用の本道になります。「ここがヘンだよ!日本の株”主”会社(1)財団株主 じわり増加 「会社のいいなり」海外投資家NO」で、経営参加権(議決権)にこだわらずに、経済権(配当請求権・残余財産分配請求権)にのみ焦点を当てるなら、無議決権株式でより高配当を目指した方がよいと主張しました。そして、「ここがヘンだよ!日本の株”主”会社(2)日本株に優待バブル 裏技でタダ取り、株価高止まり… 機関投資家「配当を軽視」不満強める」で、株主優待券狙いで投資効率を上げるより、配当金の方が効率がよい。それより資金効率が良いのは、キャッシュアウトを抑制するための自己株取得によるEPSやPBRの上昇が賢い投資家の選択であることを説明してきました。最後にダメ押しで、株式長期投資による「複利効果」の偉大さを説明したいと思います。

 

■ ウォーレン・バフェット氏の資産形成のほとんどは50歳以降の30数十年で形成された秘訣について

バークシャー・ハサウェイの経営者、ウォーレン・バフェット氏は、2016年の米長者番付「フォーブス400」で保有資産655億ドル(推定)の第3位。IT企業の創業者が並ぶランキングの中で、株式投資をメインにして長年上位にランクインし続けています。彼の資産形成に大いに役立ったのが「複利効果」なのです。

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WiKiより)

● 複利の基本的なしくみとは
「100万円の元本を年5%の金利で運用すると、1年目に5万円の金利がもらえます。その金利は元本に上乗せされ、2年目は合計105万円から運用が始まります。2年目にもらう金利は5万2500円に増え、それがさらに3年目の元本に上乗せされます。
 これを繰り返すと、元利合計は10年で163万円、20年で265万円、30年で432万円と雪だるま式に増えていきます。元利合計を1.05倍にするかけ算の繰り返しで、運用期間が長くなるほど増え方が大きくなります。一方、同じ金利5%でも金利が元本に上乗せされない単利運用は年5万円ずつの足し算ですから30年たっても元利合計は250万円にとどまります。」

(下記は同記事添付の「長期運用では複利効果が大きい」を引用)

20170408_長期運用では複利効果が大きい_日本経済新聞朝刊

では、実際に「複利効果」を享受するにはどういった方法があるのでしょうか?
(1)DRIP:Dividend Reinvestment Plan(配当再投資制度)
(2)インデックス型の投資信託商品
(3)投資優遇税制(少額投資非課税制度(NISA)、確定拠出年金(DC))

(1)DRIP
これは、残念ながら米国の制度で、日本株では活用できません。

「配当を現金ではなくて株でもらう制度、配当再投資制度のことです。個人投資家にとっては手数料負担がないことや複利効果によって長期の投資において有利に働き、企業にとっては安定的な株主が増えることによって株価が安定するといった利点があります。」
DRIP(配当再投資制度)とは|ドル使いの海外投資 より)

日本では配当金領収書や、銀行口座や証券会社口座への振り込みで配当金を貰うのが一般的ですが、源泉徴収された税金支払い後の金額を受け取ることになります。また一般的な個人投資家の投資元額では、配当金が単位株に満たないことも多く、また改めて売買手数料がかかり、再投資には手動での発注作業も必要になります。

DRIPでは、
①自動的に再投資のための発注作業を行ってくれる
②単位未満金額の場合は端株で買い増しができる
③買付け手数料はタダ
④配当金代わりの株数は1株未満にも割り当てられる

小口投資でも、便利に複利効果に預かることができる、さすが金融リテラシーが高い国の制度だ、ということになります。

この制度を活用するには、直接投資対象企業または証券会社でDRIP口座を開く必要があります。どちらで口座を持った方がよいかは、上記で引用させて頂いた「DRIP(配当再投資制度)とは|ドル使いの海外投資」にてご確認ください。

(参考)
⇒「ADワークス、個人株主を調査 「配当を重視」87% - 配当崇拝の誤りを正す! 配当は企業価値を毀損し、株主の利得を減らすだけ

 

■ じゃあ、実践的に日本企業で複利効果に与れる方法とは?

(2)インデックス型の投資信託商品
アクティブ型と比較してインデックス型の方が運用成績がいいかどうか、投資商品としての品定め目線ではなく、単に、信託報酬料が安いという理由からお勧めしています。信託報酬の負担は長期になるほど、マイナスの複利効果となって、投資運用の重荷になるからです。「毎月分配金型投資信託」など、もっての外です。運用元本を減らしてしまう分配金は複利効果に対する最大の天敵のひとつです。元本を取り崩して分配金を出すような毎月分配型ファンドでは複利効果が完全に機能しないからです。

⇒「投信成績分かりやすく 通算損益を通知・報告書に簡易版
⇒「金融知識、知らぬは損 クイズに挑戦! 日本経済新聞より

(3)投資優遇税制
「少額投資非課税制度(NISA)」や「確定拠出年金(DC)」では、売却益や配当金に通常かかる20.315%の税金が非課税になります。これは、先述の相対的に安い信託報酬料と同じ意味で、投資元本と配当金の合計額を無駄に減らさずに、再投資に回せる金額をできるだけ大きくするという意味で、複利効果を最大限に生かすことができる商品ということができます。

でも、どうしてこうした分かりきった「複利効果」を改めて強調しなければならないのでしょうか。つまり、どうして「複利効果」がありますよ、という解説記事が断続的に掲載れるのか?

「行動経済学によると、人間には長期の利益よりも目先の利益をより重くみる「双曲割引」という傾向があります。これを肝に銘じ、長期の視点で複利を味方につけることが資産運用では重要です。」(同記事より)

 

■ で、どうして日本人には「複利効果」の福音が知られていないのか?

特別に日本人の風土やマインドが風変りで、または、事情通が痛烈に批判するように日本人の金融リテラシーの無さが原因で複利効果が一般的ではないのでしょうか?

2017/3/25付 |日本経済新聞|朝刊 投資のあるある(3)目先の利益に飛びつく 価値認識、「今」が一番高い

「今日が給料日前日として、どちらを選ぶか。
 A「今日10万円もらう」
 B「1年後11万円もらう」
 「お得度」は計算すれば明白。Bの利回りは10%。メガバンクの普通預金金利が0.001%というマイナス金利時代にあって1万倍の好条件。なのに……。」

一般的な投資家の心理状態は、「今の利益」に飛びつきがち。
<相場格言>
「利食い急ぐな、損急げ」
自然体では逆に動く投資家の心をいさめる言葉。
「損を恐れ、塩漬けるかと思えば、少し上がるとすぐ売却、その後の上昇に歯がみする――それが投資家だ。」

「一方、運用の要諦は複利効果。もうけが投資元本に加わり、新たな「元本」となり雪だるま式に膨らむ状況だ。前問Bのペースで複利運用すれば、10年後に約26万円と単利での増え方(20万円)を大きく上回る」

(下記は同記事添付の「複利は運用の王道」「双曲割引」を引用)

20170325_複利効果と双曲割引_日本経済新聞朝刊

「それを知りつつ「今欲しい」心理を行動経済学は「双曲割引」と呼ぶ。価値を縦軸、時間を横軸にとり価値認識の変化をグラフにすると、「今」が一番高く、離れるや一気に価値が減じ、後はなだらかに双曲線を描いて下落する。」

そういう日本人に多く見られる「双曲割引」を逆手に取った、毎月分配型投資信託はそんな投資家心をくすぐり、金融商品としては大ヒットしました。でもその毎月の分配金の原資は運用益だけでなく、時には元本の払い戻しも含まれているというのに。でも、こういう言い回しにも実は落とし穴があります。年代別の金融資産の保有比率は圧倒的に高齢者の方が多く、そうした人たちは、遺産として家族などに相続させる意志が無い場合は、自分自身の生活費としてキャッシュフローが必要で、そうした毎月分配型投資信託を購入するのも、少しでも運用成績の良い(銀行預金の金利などお話にならない、、、)リバースモーゲージ商品として理解して購入している可能性があります。

よくこうした議論の俎上に載せられる「割引率」もそうなのですが、投資家が置かれた個人的な状況は人それぞれです。何%の割引率が適正なのか? 複利効果が目に現われるまでにかかる時間と実際にお金が必要になるタイミングのギャップは? いろいろ、考えると、一人一人のお金の事情に即したアドバイスが必要である、という気づきが一番大事なことではないかと思うに至ったわけであります。(^^;)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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