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■ マーケティングを普及させた『マーケティング・マネジメント』

経営戦略(基礎編)_アイキャッチ

「経営戦略」の歴史を、三谷宏治著「経営戦略全史」(以下、本書)をベースに説明していきます。コトラーが著した『マーケティング・マネジメント』は1967年に初版が発行された後、今や12版を数えるに至っています。本著は、800ページを超える大著であるため、通読に骨が折れますが、CRMやSFA、e-commerce などにも言及されており、常に最新のマーケティング辞書の役割を担っています。日本経済新聞:私の履歴書でもその過去を邂逅されていましたが、彼がマーケティングを生み出したというより、本人も、「私がそれまでにあったマーケティング理論を体系化しただけ」という言い方をしています。

本書より、コトラーの偉業を的確にまとめた箇所を引用します。

「事業とは顧客の創造である」と看破したドラッカーが残した言葉に、「マーケティングの目的は販売を不要にすることである」があります。マーケティングという活動のもっとも優れた定義のひとつとして、いまでも使われ続けています。
 同時に彼は言いました。「企業のあらゆる機能の中で、マーケティングは、唯一アウトソーシングできない中核機能である」と。そういう意味で、マーケティングとは、事業そのものであるといっても過言ではありません。

マーケティングの神髄を語るのに、著者は、もうひとつ、レビットの次の言葉も大好きです。

「昨年、4分の1インチ・ドリルが100万個売れたが、これは人びとが4分の1インチ・ドリルを欲したからでなく、4分の1インチの穴を欲したからである」

この言葉は、「プロダクトアウト」から「マーケットイン」へ、顧客志向でマーケティングをしましょう、という文脈で紹介されることが多い言葉です。

 

■ コトラーのマーケティング・プロセスとSTP

本書によりますと、コトラーは、戦略的マーケティング・プロセスを作りました。それは、「R・STP・MM・I・C」と表記され、次の5ステップから構成されるものです。

①調査(Research)
②セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)
③マーケティング・ミックス(MM)
④実施(Implementation)
⑤管理(control)

経営戦略(基礎編)_コトラーの戦略的マーケティング・プロセス

●調査
まず企業内外の環境分析をする必要があります。
  ・PEST分析
  ・5F分析
  ・3C分析
  ・SWOT分析
  ・PPM分析
と呼ばれるフレームワークが多用されます。

●STP
・セグメンテーション
 自社が有利になるように市場に分割する
・ターゲティング
 自社が勝てる土俵を決める
・ポジショニング
 競合他社と差別化できる戦い方を決める

・RFM分析
顧客を、顧客の購買行動を「最終購買日(Recency)」「購買頻度(Frequency)」「累計購買金額(Monetary)」の3つの指標から分類し、顧客のこれまでの購買行動・購買履歴から、優良顧客の抽出などを行う顧客分析手法で、セグメンテーションの手法の一つとして採用されることがあります。ただし、RFM分析だけに頼ると、「潜在顧客」に対するデータが漏れてしまうため、有効性に欠けるという声も一部にはあります。

・アンゾフマトリクスの応用
自社が勝てる土俵(細分化された市場)を、顧客×製品・サービスのマトリクスで選び取る手法で、ターゲティングに活用されます。
(アンゾフマトリクスは、⇒「経営戦略概史(8)アンゾフは「市場における競争」の概念を持ち込んだ「経営戦略」の真の父」)

経営戦略(基礎編)_ターゲティング(アンゾフ・マトリクスの応用)

・ポーター流を避けたポジショニング
どうせ、ポーターの回で詳しくポジショニング理論にふれるので、ここでは、あえて違う視点で、あくまで提供される製品・サービスの特質を、価格帯と汎用特性で区分したポジショニング(筆者オリジナル)を例示してみました。当然、提供される製品・サービス以外の、オペレーショナルエクセレンスなどの要素は割愛しました。

経営戦略(基礎編)_ポジショニング(あえてポーター流を避けて)

●4P(MM:マーケティング・ミックス)
・製品(Production)
・価格(Price)
・流通チャネル(Place)
・プロモーション(Promotion)
STPの具体的施策と言われている「4P」。

本書によりますと、コトラーの真意は、「広告費」にばかりお金を使うのではなく、4Pにバランスよく経営資源を分配してね、ということらしいです。

 

■ PLC戦略と競争的マーケティング戦略の矛盾

コトラーのもう一つの慧眼は、

プロダクト・ライフサイクル(PLC:Product Life Cycle)戦略

です。しかし、これが経営戦略論の中で物議を醸した一大事だったのです。

PLC戦略は、製品自体の栄枯盛衰のステージ(黎明期、成長期、成熟期、衰退期)に合わせて、市場規模・収益性やターゲット顧客・とるべき手はだいたい決まる、というもの。
 競争的マーケティング戦略(Strategies Based on Market Dominance)は、市場におけるマーケットポジション(リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャー)によって基本戦略は異なる、というもの。

本書によりますと、
PLC理論:「ステージさえ決まれば、戦略は決まる」
競争的マーケティング戦略:「プレイヤーのマーケットポジションが決まれば、戦略は決まる」
と、真っ向勝負。PLC理論登場の際には、「経営戦略論は死んだ」「マーケティングは死んだ」と叫ばれたこともありました。

ここで、イノベーション普及理論を表した、エヴァリット・ロジャース作によるチャートを紹介します。

経営戦略(基礎編)_ロジャースのユーザー5分類

PLC理論(4ステージ)に、このイノベーション普及理論が加わり、4Pに代表されるマーケティング・ミックスが考慮されることにより、コトラーが整理したマーケティング体系がここに完成することになりました。

以下、本書P115に例示されているPLC戦略を引用します。

経営戦略(基礎編)_PLC戦略(例)

本書によりますと、
ここまで完成度の高いと思われた「イノベーション普及理論」とそれに対するマーケティング戦略についても、

・ロジャーズは、
「アーリーアダプダー(合計16%)まで普及すれば、後は勝手に他の顧客にまで普及する」
・ジェフリー・ムーアは、
「アーリーアダプダーとアーリーマジョリティの間には、容易に超えられない大きな溝(キャズム)がある」
とそれぞれ提唱し、顧客と企業を結びつける方法論としてのマーケティング理論は、まだ完成には至っていない模様です。(^^;)

経営戦略(基礎編)_経営戦略概史(12)コトラーによる「マーケティング・マネジメント」- STP・MM・PLC戦略を体系化

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

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経営戦略概史(12)コトラーによる「マーケティング・マネジメント」- STP・MM・PLC戦略を体系化http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-e1428423948658.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/ab47f6b60b2243be5165d08fde098dfb-150x150.jpg小林 友昭経営戦略(基礎編)ポジショニング,三谷宏治,経営戦略全史,経営戦略,コトラー,マーケティング,レビット,STP,セグメンテーション,ターゲティング,RFM分析,4P,プロダクト・ライフサイクル,PLC戦略,競争的マーケティング戦略,ロジャース,イノベーション普及理論■ マーケティングを普及させた『マーケティング・マネジメント』 「経営戦略」の歴史を、三谷宏治著「経営戦略全史」(以下、本書)をベースに説明していきます。コトラーが著した『マーケティング・マネジメント』は1967年に初版が発行された後、今や12版を数えるに至っています。本著は、800ページを超える大著であるため、通読に骨が折れますが、CRMやSFA、e-commerce などにも言及されており、常に最新のマーケティング辞書の役割を担っています。日本経済新聞:私の履歴書でもその過去を邂逅されていましたが、彼がマーケティングを生み出したというより、本人も、「私がそれまでにあったマーケティング理論を体系化しただけ」という言い方をしています。 本書より、コトラーの偉業を的確にまとめた箇所を引用します。 「事業とは顧客の創造である」と看破したドラッカーが残した言葉に、「マーケティングの目的は販売を不要にすることである」があります。マーケティングという活動のもっとも優れた定義のひとつとして、いまでも使われ続けています。  同時に彼は言いました。「企業のあらゆる機能の中で、マーケティングは、唯一アウトソーシングできない中核機能である」と。そういう意味で、マーケティングとは、事業そのものであるといっても過言ではありません。 マーケティングの神髄を語るのに、著者は、もうひとつ、レビットの次の言葉も大好きです。 「昨年、4分の1インチ・ドリルが100万個売れたが、これは人びとが4分の1インチ・ドリルを欲したからでなく、4分の1インチの穴を欲したからである」 この言葉は、「プロダクトアウト」から「マーケットイン」へ、顧客志向でマーケティングをしましょう、という文脈で紹介されることが多い言葉です。   ■ コトラーのマーケティング・プロセスとSTP 本書によりますと、コトラーは、戦略的マーケティング・プロセスを作りました。それは、「R・STP・MM・I・C」と表記され、次の5ステップから構成されるものです。 ①調査(Research) ②セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP) ③マーケティング・ミックス(MM) ④実施(Implementation) ⑤管理(control) ●調査 まず企業内外の環境分析をする必要があります。   ・PEST分析   ・5F分析   ・3C分析   ・SWOT分析   ・PPM分析 と呼ばれるフレームワークが多用されます。 ●STP ・セグメンテーション  自社が有利になるように市場に分割する ・ターゲティング  自社が勝てる土俵を決める ・ポジショニング  競合他社と差別化できる戦い方を決める ・RFM分析 顧客を、顧客の購買行動を「最終購買日(Recency)」「購買頻度(Frequency)」「累計購買金額(Monetary)」の3つの指標から分類し、顧客のこれまでの購買行動・購買履歴から、優良顧客の抽出などを行う顧客分析手法で、セグメンテーションの手法の一つとして採用されることがあります。ただし、RFM分析だけに頼ると、「潜在顧客」に対するデータが漏れてしまうため、有効性に欠けるという声も一部にはあります。 ・アンゾフマトリクスの応用 自社が勝てる土俵(細分化された市場)を、顧客×製品・サービスのマトリクスで選び取る手法で、ターゲティングに活用されます。 (アンゾフマトリクスは、⇒「経営戦略概史(8)アンゾフは「市場における競争」の概念を持ち込んだ「経営戦略」の真の父」) ・ポーター流を避けたポジショニング どうせ、ポーターの回で詳しくポジショニング理論にふれるので、ここでは、あえて違う視点で、あくまで提供される製品・サービスの特質を、価格帯と汎用特性で区分したポジショニング(筆者オリジナル)を例示してみました。当然、提供される製品・サービス以外の、オペレーショナルエクセレンスなどの要素は割愛しました。 ●4P(MM:マーケティング・ミックス) ・製品(Production) ・価格(Price) ・流通チャネル(Place) ・プロモーション(Promotion) STPの具体的施策と言われている「4P」。 本書によりますと、コトラーの真意は、「広告費」にばかりお金を使うのではなく、4Pにバランスよく経営資源を分配してね、ということらしいです。   ■ PLC戦略と競争的マーケティング戦略の矛盾 コトラーのもう一つの慧眼は、 プロダクト・ライフサイクル(PLC:Product Life Cycle)戦略 です。しかし、これが経営戦略論の中で物議を醸した一大事だったのです。 PLC戦略は、製品自体の栄枯盛衰のステージ(黎明期、成長期、成熟期、衰退期)に合わせて、市場規模・収益性やターゲット顧客・とるべき手はだいたい決まる、というもの。  競争的マーケティング戦略(Strategies Based on Market Dominance)は、市場におけるマーケットポジション(リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャー)によって基本戦略は異なる、というもの。 本書によりますと、 PLC理論:「ステージさえ決まれば、戦略は決まる」 競争的マーケティング戦略:「プレイヤーのマーケットポジションが決まれば、戦略は決まる」 と、真っ向勝負。PLC理論登場の際には、「経営戦略論は死んだ」「マーケティングは死んだ」と叫ばれたこともありました。 ここで、イノベーション普及理論を表した、エヴァリット・ロジャース作によるチャートを紹介します。 PLC理論(4ステージ)に、このイノベーション普及理論が加わり、4Pに代表されるマーケティング・ミックスが考慮されることにより、コトラーが整理したマーケティング体系がここに完成することになりました。 以下、本書P115に例示されているPLC戦略を引用します。 本書によりますと、 ここまで完成度の高いと思われた「イノベーション普及理論」とそれに対するマーケティング戦略についても、 ・ロジャーズは、 「アーリーアダプダー(合計16%)まで普及すれば、後は勝手に他の顧客にまで普及する」 ・ジェフリー・ムーアは、 「アーリーアダプダーとアーリーマジョリティの間には、容易に超えられない大きな溝(キャズム)がある」 とそれぞれ提唱し、顧客と企業を結びつける方法論としてのマーケティング理論は、まだ完成には至っていない模様です。(^^;) (注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します