Pocket

■ デンソーのIoT戦略 2020年までに全世界の工場をひとつにつなげる!

経営管理会計トピック

面白いもので、メディアへの初出時期を後から振り替えると、世の中の動きと取り上げられた企業の先進性の対比、そしてメディアの注目度に温度差があることが分かります。4/22のネット記事でかなり詳細にわたり、デンソーのIoT戦略が取り上げられましたので、孫引きになるのですが、ここに紹介することにします。

ちなみに、本ブログで最初にデンソーのIoT戦略に言及したのは、この投稿でした。
⇒「ビッグデータとIoTのどこで儲けるか(5)

(注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。

日本経済新聞での最近の取り上げられ方を2つの記事から。

2016/1/18付 |日本経済新聞|朝刊 デンソー、全工場にIoT 20年までに、生産変動に即対応 「ネット直結」広がる

「デンソーは「IoT(モノのインターネット)」の技術を本格導入する。2020年までに国内外にある約130の全工場をネットでつなぎ、生産を効率化する。」

「デンソーはカーエアコンやエンジン部品など多様な製品を手掛け、世界の複数の工場で同じ製品を作る例も増えている。主力製品のひとつのメーターであれば、生産拠点は国内に加え、米国、メキシコ、フィリピンなどに広がる。IoTを通じた分析によって、ある工場で得られた効率生産の事例を同じ製品を作る別の工場にも応用する。「あたかも1つの工場のように運営する」(有馬浩二社長)ことで、生産変動などにも即座に対応する。」

(下記は、同記事添付のデンソーのIoT導入を予定している生産対象製品一覧を転載)

20160118_デンソーがIoTを利用して生産効率の向上を目指す製品の例_日本経済新聞朝刊

「まず18年に一部の工場を結んでIoTに対応した新たなシステムを稼働する。これを20年までに原則としてすべての生産拠点に広げる。検討している生産系の情報システムの刷新を含め、投資は100億円規模になる可能性がある。15年に設立した「ファクトリーIoT革新室」が現在、計画を策定しており、今春をメドに詳細を固める。」

(注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます

2016/4/22付 |日本経済新聞|朝刊 デンソー、130工場をネット接続

「デンソーは21日、あらゆる機器がインターネットにつながる「IoT」の技術を生産現場で本格導入することを正式に表明した。国内外全ての約130工場をネットでつなぎ、2020年までに本格運用する。設備や従業員の動きを把握し、品質や生産性を高める。
 IoTの導入で従業員の業務負担を軽減し、現場の改善などに取り組みやすくする。取引先の工場にもネットワークを拡大する考えだ。「日本のものづくりの強さを引き出したい」(有馬浩二社長)という。
 デンソーは17年にも同一製品をつくる国内外のモデル工場で試験運用を開始。18年には全工場をネットでつなぎ、20年に本格運用を始める。並行して19年から親密な取引先から順に、工場をつなぐことができるように働きかける。」

さあ、IoT導入で、柔軟な需給調整の元、SCMをさらに効率化するための方策はどうなるのでしょうか。そして、「人」中心の生産現場の構築は成功するのでしょうか。さらに、詳細にデンソーの取り組みを紹介してくれているネット記事を探し当てることができたので、次はこちらを紹介です。

 

■ デンソーの「ものづくり」スタイルを踏襲した先のIoT戦略

以下は、日経テクノロジー Online Factory 20XX の連載記事からの抜粋・整理版となります。基本的に、チャートもデンソーへの同社が取材から得た資料を孫引きの形で転載させて頂きますので、全ての出典はこのオンライン記事となります。

日経テクノロジー Online
デンソーはなぜ工場のIoT活用を急ぐのか 2020年、「ダントツ工場」実現に向けた道筋高野 敦 2016/04/22

デンソーは、世界130工場、15万人の知恵を「つなげる」ことで、2020年までに生産性を2015年比で30%高める「ダントツ工場」の構築を急速に進めています。その中核技術として同社が位置付けているのは、IoT(Internet of Things)です。ダントツ工場については、同社取締役社長の有馬浩二氏が2015年6月に「14人抜き」で社長に就任して以降、折に触れて構想を披露してきたものです。同月に実施した組織変更で、ダントツ工場づくりを担う「DP-Factory IoT革新室」を生産革新センターに設置しました。この取材記事は、同室の室長を務める加藤充氏がダントツ工場の実現に向けた道筋を明らかにしたものをベースにしています。

20160422_IoTに関するデンソーの認識

デンソーが工場におけるIoT活用を重視する背景には、製造業とIoTを巡る状況の急速な変化があります。特に注視している動向として加藤氏が挙げたのは、ドイツの「Industrie 4.0(インダストリー4.0)」と米国の「Industrial Internet Consortium(IIC)」。加藤氏によれば、「これらの動きによって業界の既存のルールなどさまざまなものが破壊され、製造業は大きな変革を迫られる」とのこと。「今後、IoTに対応できていないことは、すなわちグローバル企業としての信頼が低下することを意味する」という危機感を露わにしています。

 

■ デンソーのIoT活用の方向性は「つなぐ」と「分析する」

加藤氏によれば、IoT活用の方向性は大きく2つに分けられるそうです。

(1)「つなぐ」
具体的には、工場と工場、ラインとライン、設備と設備などさまざまな階層をネットワークで接続する。それによって、大量のデータを収集することが可能になる。
→情報の「量」を高めるアプローチ

(2)「分析する」
具体的には、人工知能(AI)やビッグデータ分析といった技術である。それによって、有用な知見を得られる。
→情報の「質」を高めるアプローチ

20160422_デンソーにおけるインダストリー4.0とIICの位置付け

デンソーとしては、前出のインダストリー4.0が「つなぐ」に比重を置き、データ収集やシステム連携を実現するための標準化を進めていると見ています。一方、米General Electric(GE)社などが主導するIICは「分析する」ことを重視し、「テストベッド」に代表される実証的な活動に積極的に取り組んでいると見ています。ものづくり企業のデンソーとしては「どちらか片方だけではなく、両方の潮流をしっかり押さえた上で、仲間づくりや標準化を進めていくことが非常に重要になる」(加藤氏)との見解です。

 

■ デンソーの「ものづくり」スタイルを踏襲した先のIoT戦略

デンソーは、「ものづくりを知る人」に有益な情報を提供するための生産現場カイゼンのツールとしてIoTによる情報武装を考えています。デンソーが提供する製品を内製する工場で使用される生産設備も自社内で内製されるため、「製品」と「設備」の両方に造詣が深い現場マンを支援するのがデンソーのIoTの在り方です。この辺は、高い生産技術を高い製品品質につなげようとするポリシーは、ジッパーの世界的企業であるYKKと同種のものです。

⇒「(そこが知りたい)ファスナー世界首位どう守る? YKK会長兼CEO 吉田忠裕氏に聞く 製法革新、汎用品でも勝負

20160422_デンソーにおけるものづくりの考え方

デンソーは以前も「1/Nライン」などに代表される革新的な成果を追求するプロジェクトに取り組んできました。それを支えてきたのは現場の「ものづくりを知る人」。今後は、IoT活用によって情報の「量」と「質」を高めることで、「ものづくりを知る人」がさらに有益な情報に基づいて革新活動に取り組めるようにして、生産性30%向上を目指す戦略なのです。

20160422_工場のIoT活用における基本的な考え方

 

■ デンソーの「ダントツ工場」は、「止まらない」「不良をつくらない」

デンソーが考えるIoT活用によりできることとは?

(1)予知・予兆管理
(2)重点管理
(3)全員オーナー/源流良化
(4)共創改善

(1)予知・予兆管理
設備の故障や品質のバラつきなど異常の兆候を早期に捉えることで、「止まらない」「不良を造らない」工場を実現する

(2)重点管理
大量のデータから分析・層別された情報に基づいて重要な管理ポイントを見極めることで、現地・現物確認の実効性を高める。これによって、人をルーチン業務から解放するとともに、革新的な改善につながる創造的な業務に集中させる

(3)全員オーナー/源流良化
・全員オーナー:人の立場や役割に合わせて適切な情報を提供し、改善を促進する
・源流良化:経営層から生産現場の作業者まで、それぞれが必要としている情報を手軽に使えるようにする

(4)共創改善
事業や地域の枠を超えて革新事例を導入する

20160422_デンソーがIoT活用で実現を目指すこと

欧米との差別化を図るポイントとしては、
(3)の「全員オーナー」において、欧米はIoT活用の目的として主に技術者への情報提供を念頭に置いているのと違って、デンソーは現場の技能者などへの情報提供を主眼とするところ。そして、(4)共創改善において、国内工場の取り組みを、映像を使って海外工場に現場教育により持ち込むことを容易にして、海外工場のレベルを引き上げることを狙う。

 

■ デンソーは、世界3極体制でダントツ工場づくりを推進する

デンソーが意識する工場のIoT活用の在り方は、「人」が中心であること。「システムに人が振り回されるのではなく、人を中心にシステムが可変していく共創型のIoTシステムをつくっていきたい」(加藤氏)。

IoT活用の中でビッグデータ分析やAIへの期待は大きいのですが、機械が判断して自己解決するというアプローチは極力避けたいそうです。「ものづくりを知る人」を中心に、「なぜそうなるのか」「こう変えれば良くなる」といったことをきちんと人が理解した上で現場に適用していくことを目指します。ここがデンソー流というか、現場中心のものづくりの伝統が残る日本流。新しい問題やその解決策を考えるのはあくまで現場にいる人であり、IoTはそのための情報を得る手段との位置付け。このアプローチによって、欧米とは異なる日本流スマート工場の実現を目指し、欧米のインダストリー4.0やIICとの差別化を図るのだとのこと。

とはいえ、「つなぐ」「分析する」のそれぞれについて欧米が先行している部分があるのも事実。そこで、DP-Factory IoT革新室を中心として、日本に「IoT本部」、北米および欧州に「IoT分室」を設け、是々非々でいいとこどりして、世界3極体制でダントツ工場づくりを推進するアプローチを採用しました。

20160422_IoT活用の世界3極体制

こうした「人」中心で、という考え方は、日本の「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)」と相通じるものがあります。そこには、他社とつながる、という点において、米独とは力点の置き方が少々異なります。

⇒「文系にも分かる! インダストリー4.0、インダストリアル・インターネット、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブの違い(1)
⇒「文系にも分かる! インダストリー4.0、インダストリアル・インターネット、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブの違い(2)

これについては、パナソニックの以下の動向が気になるところです。

2016/4/27付 |日本経済新聞|朝刊 パナソニック、シーメンスと共同でFAシステム

2016/4/8付 |日本経済新聞|朝刊 IoT時代のモノづくり提案 海外工場、スマホで制御 パナソニックがシステム外販 生産調整きめ細かく

2015/10/24付 |日本経済新聞|朝刊 パナソニック、工場向け制御システムを共同開発 台湾企業と

この台湾企業とは、産業用コンピューター大手、アドバンテックです。パナソニックは、どちらかというと、自社開発、自社技術にこだわらず、オープンイノベーション志向を強めています。この辺りが、企業と市場と業界の境界線を曖昧にする「IoT」の威力をどこまで脅威と考え、真摯に受け止めていくか、その真剣度と危機感への感応度が問われるところです。 (最近、まじめな締めが多いですね)(^^)

⇒「オープンイノベーション、脱自前主義ビジネスモデルのメリットとは? -(前編) 知財権のオープン&クローズ戦略の復習。トヨタと日立の事例から

(Visited 2,743 times, 28 visits today)
Pocket

デンソーのIoT戦略 世界130工場をつないでダントツ工場を構築する!http://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/1-e1427893099240.jpghttp://keieikanrikaikei.com/wp-content/uploads/2015/04/経営管理会計トピック1-150x150.jpg小林 友昭テクノロジー1/Nライン,DP-Factory IoT革新室,GE,IIC,Industrial Internet Consortium,IOT,IVI,YKK,インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ,インダストリー4.0,オープンイノベーション,ダントツ工場,テストベッド,デンソー,パナソニック■ デンソーのIoT戦略 2020年までに全世界の工場をひとつにつなげる! 面白いもので、メディアへの初出時期を後から振り替えると、世の中の動きと取り上げられた企業の先進性の対比、そしてメディアの注目度に温度差があることが分かります。4/22のネット記事でかなり詳細にわたり、デンソーのIoT戦略が取り上げられましたので、孫引きになるのですが、ここに紹介することにします。 ちなみに、本ブログで最初にデンソーのIoT戦略に言及したのは、この投稿でした。 ⇒「ビッグデータとIoTのどこで儲けるか(5)」 (注)職業倫理の問題から、公開情報に基づいた記述に徹します。また、それに対する意見表明はあくまで個人的なものであり、筆者が属するいかなる組織・団体の見解とも無関係です。 日本経済新聞での最近の取り上げられ方を2つの記事から。 2016/1/18付 |日本経済新聞|朝刊 デンソー、全工場にIoT 20年までに、生産変動に即対応 「ネット直結」広がる 「デンソーは「IoT(モノのインターネット)」の技術を本格導入する。2020年までに国内外にある約130の全工場をネットでつなぎ、生産を効率化する。」 「デンソーはカーエアコンやエンジン部品など多様な製品を手掛け、世界の複数の工場で同じ製品を作る例も増えている。主力製品のひとつのメーターであれば、生産拠点は国内に加え、米国、メキシコ、フィリピンなどに広がる。IoTを通じた分析によって、ある工場で得られた効率生産の事例を同じ製品を作る別の工場にも応用する。「あたかも1つの工場のように運営する」(有馬浩二社長)ことで、生産変動などにも即座に対応する。」 (下記は、同記事添付のデンソーのIoT導入を予定している生産対象製品一覧を転載) 「まず18年に一部の工場を結んでIoTに対応した新たなシステムを稼働する。これを20年までに原則としてすべての生産拠点に広げる。検討している生産系の情報システムの刷新を含め、投資は100億円規模になる可能性がある。15年に設立した「ファクトリーIoT革新室」が現在、計画を策定しており、今春をメドに詳細を固める。」 (注)日本経済新聞の記事へ直接リンクを貼ることは同社が禁じています。お手数ですが、一旦上記リンクで同社TOPページに飛んでいただき、上記リード文を検索すればお目当ての記事までたどり着くことができます 2016/4/22付 |日本経済新聞|朝刊 デンソー、130工場をネット接続 「デンソーは21日、あらゆる機器がインターネットにつながる「IoT」の技術を生産現場で本格導入することを正式に表明した。国内外全ての約130工場をネットでつなぎ、2020年までに本格運用する。設備や従業員の動きを把握し、品質や生産性を高める。  IoTの導入で従業員の業務負担を軽減し、現場の改善などに取り組みやすくする。取引先の工場にもネットワークを拡大する考えだ。「日本のものづくりの強さを引き出したい」(有馬浩二社長)という。  デンソーは17年にも同一製品をつくる国内外のモデル工場で試験運用を開始。18年には全工場をネットでつなぎ、20年に本格運用を始める。並行して19年から親密な取引先から順に、工場をつなぐことができるように働きかける。」 さあ、IoT導入で、柔軟な需給調整の元、SCMをさらに効率化するための方策はどうなるのでしょうか。そして、「人」中心の生産現場の構築は成功するのでしょうか。さらに、詳細にデンソーの取り組みを紹介してくれているネット記事を探し当てることができたので、次はこちらを紹介です。   ■ デンソーの「ものづくり」スタイルを踏襲した先のIoT戦略 以下は、日経テクノロジー Online Factory 20XX の連載記事からの抜粋・整理版となります。基本的に、チャートもデンソーへの同社が取材から得た資料を孫引きの形で転載させて頂きますので、全ての出典はこのオンライン記事となります。 日経テクノロジー Online デンソーはなぜ工場のIoT活用を急ぐのか 2020年、「ダントツ工場」実現に向けた道筋高野 敦 2016/04/22 デンソーは、世界130工場、15万人の知恵を「つなげる」ことで、2020年までに生産性を2015年比で30%高める「ダントツ工場」の構築を急速に進めています。その中核技術として同社が位置付けているのは、IoT(Internet of Things)です。ダントツ工場については、同社取締役社長の有馬浩二氏が2015年6月に「14人抜き」で社長に就任して以降、折に触れて構想を披露してきたものです。同月に実施した組織変更で、ダントツ工場づくりを担う「DP-Factory IoT革新室」を生産革新センターに設置しました。この取材記事は、同室の室長を務める加藤充氏がダントツ工場の実現に向けた道筋を明らかにしたものをベースにしています。 デンソーが工場におけるIoT活用を重視する背景には、製造業とIoTを巡る状況の急速な変化があります。特に注視している動向として加藤氏が挙げたのは、ドイツの「Industrie 4.0(インダストリー4.0)」と米国の「Industrial Internet Consortium(IIC)」。加藤氏によれば、「これらの動きによって業界の既存のルールなどさまざまなものが破壊され、製造業は大きな変革を迫られる」とのこと。「今後、IoTに対応できていないことは、すなわちグローバル企業としての信頼が低下することを意味する」という危機感を露わにしています。   ■ デンソーのIoT活用の方向性は「つなぐ」と「分析する」 加藤氏によれば、IoT活用の方向性は大きく2つに分けられるそうです。 (1)「つなぐ」 具体的には、工場と工場、ラインとライン、設備と設備などさまざまな階層をネットワークで接続する。それによって、大量のデータを収集することが可能になる。 →情報の「量」を高めるアプローチ (2)「分析する」 具体的には、人工知能(AI)やビッグデータ分析といった技術である。それによって、有用な知見を得られる。 →情報の「質」を高めるアプローチ デンソーとしては、前出のインダストリー4.0が「つなぐ」に比重を置き、データ収集やシステム連携を実現するための標準化を進めていると見ています。一方、米General Electric(GE)社などが主導するIICは「分析する」ことを重視し、「テストベッド」に代表される実証的な活動に積極的に取り組んでいると見ています。ものづくり企業のデンソーとしては「どちらか片方だけではなく、両方の潮流をしっかり押さえた上で、仲間づくりや標準化を進めていくことが非常に重要になる」(加藤氏)との見解です。   ■ デンソーの「ものづくり」スタイルを踏襲した先のIoT戦略 デンソーは、「ものづくりを知る人」に有益な情報を提供するための生産現場カイゼンのツールとしてIoTによる情報武装を考えています。デンソーが提供する製品を内製する工場で使用される生産設備も自社内で内製されるため、「製品」と「設備」の両方に造詣が深い現場マンを支援するのがデンソーのIoTの在り方です。この辺は、高い生産技術を高い製品品質につなげようとするポリシーは、ジッパーの世界的企業であるYKKと同種のものです。 ⇒「(そこが知りたい)ファスナー世界首位どう守る? YKK会長兼CEO 吉田忠裕氏に聞く 製法革新、汎用品でも勝負」 デンソーは以前も「1/Nライン」などに代表される革新的な成果を追求するプロジェクトに取り組んできました。それを支えてきたのは現場の「ものづくりを知る人」。今後は、IoT活用によって情報の「量」と「質」を高めることで、「ものづくりを知る人」がさらに有益な情報に基づいて革新活動に取り組めるようにして、生産性30%向上を目指す戦略なのです。   ■ デンソーの「ダントツ工場」は、「止まらない」「不良をつくらない」 デンソーが考えるIoT活用によりできることとは? (1)予知・予兆管理 (2)重点管理 (3)全員オーナー/源流良化 (4)共創改善 (1)予知・予兆管理 設備の故障や品質のバラつきなど異常の兆候を早期に捉えることで、「止まらない」「不良を造らない」工場を実現する (2)重点管理 大量のデータから分析・層別された情報に基づいて重要な管理ポイントを見極めることで、現地・現物確認の実効性を高める。これによって、人をルーチン業務から解放するとともに、革新的な改善につながる創造的な業務に集中させる (3)全員オーナー/源流良化 ・全員オーナー:人の立場や役割に合わせて適切な情報を提供し、改善を促進する ・源流良化:経営層から生産現場の作業者まで、それぞれが必要としている情報を手軽に使えるようにする (4)共創改善 事業や地域の枠を超えて革新事例を導入する 欧米との差別化を図るポイントとしては、 (3)の「全員オーナー」において、欧米はIoT活用の目的として主に技術者への情報提供を念頭に置いているのと違って、デンソーは現場の技能者などへの情報提供を主眼とするところ。そして、(4)共創改善において、国内工場の取り組みを、映像を使って海外工場に現場教育により持ち込むことを容易にして、海外工場のレベルを引き上げることを狙う。   ■ デンソーは、世界3極体制でダントツ工場づくりを推進する デンソーが意識する工場のIoT活用の在り方は、「人」が中心であること。「システムに人が振り回されるのではなく、人を中心にシステムが可変していく共創型のIoTシステムをつくっていきたい」(加藤氏)。 IoT活用の中でビッグデータ分析やAIへの期待は大きいのですが、機械が判断して自己解決するというアプローチは極力避けたいそうです。「ものづくりを知る人」を中心に、「なぜそうなるのか」「こう変えれば良くなる」といったことをきちんと人が理解した上で現場に適用していくことを目指します。ここがデンソー流というか、現場中心のものづくりの伝統が残る日本流。新しい問題やその解決策を考えるのはあくまで現場にいる人であり、IoTはそのための情報を得る手段との位置付け。このアプローチによって、欧米とは異なる日本流スマート工場の実現を目指し、欧米のインダストリー4.0やIICとの差別化を図るのだとのこと。 とはいえ、「つなぐ」「分析する」のそれぞれについて欧米が先行している部分があるのも事実。そこで、DP-Factory IoT革新室を中心として、日本に「IoT本部」、北米および欧州に「IoT分室」を設け、是々非々でいいとこどりして、世界3極体制でダントツ工場づくりを推進するアプローチを採用しました。 こうした「人」中心で、という考え方は、日本の「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)」と相通じるものがあります。そこには、他社とつながる、という点において、米独とは力点の置き方が少々異なります。 ⇒「文系にも分かる! インダストリー4.0、インダストリアル・インターネット、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブの違い(1)」 ⇒「文系にも分かる! インダストリー4.0、インダストリアル・インターネット、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブの違い(2)」 これについては、パナソニックの以下の動向が気になるところです。 2016/4/27付 |日本経済新聞|朝刊 パナソニック、シーメンスと共同でFAシステム 2016/4/8付 |日本経済新聞|朝刊 IoT時代のモノづくり提案 海外工場、スマホで制御 パナソニックがシステム外販 生産調整きめ細かく 2015/10/24付...現役の経営コンサルタントが管理会計をテーマに情報発信します