みずほ、顧客別に組織 銀行・信託・証券、一体でサービス/「ワンみずほ」総仕上げ カンパニー制導入(後編)

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■ 前編では「カンパニー制」を取り上げました。後編は「アカウント・セールス体制」です!

経営管理会計トピック

前回は、新聞報道を中心に、みずほFGのカンパニー制への移行について解説をしました。後編では、その他の「顧客別組織」などについて引き続き組織変更の功罪を見ていきたいと思います。

<筆者が見た、みずほ組織変更の狙い>(再掲)
1.顧客別組織
・製品・サービス開発よりソリューション重視のセールス体制
2.カンパニー制
・法人(リーガルエンティティ)、資本系列よりビジネスプラットフォームの紐帯を重視
3.運用会社の統合
・調達資本コストの低減
4.リサーチ・コンサルティング部門の統合
・専門家利益の享受と、固定費の多重利用による負担軽減

日経新聞で、みずほFGの組織変更は2回取り上げられています。

2016/2/27付 |日本経済新聞|朝刊 みずほ、顧客別に組織 銀行・信託・証券、一体でサービス

2016/3/4付 |日本経済新聞|朝刊 「ワンみずほ」総仕上げ カンパニー制導入を発表

まずは、みずほFGのプレスリリースの確認を確認してみましょう。

顧客セグメント別経営体制の確立に向けた組織の見直しについて(プレスリリース)

下記、一部抜粋版です。

————————————-
みずほフィナンシャルグループ(以下「<みずほ>」)は、持株会社の下で銀行・信託・証券を一体的に運営する<みずほ>の特長と優位性を活かし、お客さまのニーズに即した最高の金融サービスを迅速に提供していくため、4月1日付で、顧客セグメント別のカンパニー制を導入いたします。

1.カンパニー制の導入
グループ全体のリスクアペタイト方針に則り、収益力の向上とリスク・リターン構造の改革に取り組んでまいりますとともに、本部スリム化とスピーディーな意思決定を実現し、現場力・営業力の一層の向上を目指します。

20160303_みずほFG_カンパニー制の導入

2.リサーチ&コンサルティングユニットの設置
グループ内のリサーチ機能とコンサルティング機能を集約し、お客さまのあらゆる課題解決に取り組む専門家集団として、リサーチ&コンサルティングユニットを新設いたします。
新しいユニットでは、グローバルな視点を強化してまいりますとともに、マクロ・ミクロ両面のアプローチにより、カンパニーと連携し、金融の実務的視点も踏まえ、幅広いお客さまの顕在的・潜在的な課題に対して包括的ソリューションを提供してまいります。

20160303_みずほFG_リサーチ&コンサルティングユニットの設置————————————-

ここから受け取れる主要メッセージは、次の通り。
① 顧客別営業体制
② カンパニー制
③ 機能別部門の集約

②は前編で散々、あくまで一般論として酷評しました。メインディッシュの①を後に取っておいて、③から説明していきます。

 

■ 専門家の利益を享受するために、リサーチ部門と資産運用部門を機能集約します!

リサーチ&コンサルティング部門の機能集約については、前章のプレスリリースにも触れていますが、なんとどっこい、資金運用機能も集約を図ります。それも金融持ち株会社の枠を超えて。。。(持ち分法適用会社の運用会社という意味です)

2016/3/4付 |日本経済新聞|朝刊 みずほ・第一、運用会社統合を発表

「みずほフィナンシャルグループと第一生命保険は3日、系列の資産運用会社を統合した新会社「アセットマネジメントOne」を10月1日に発足させると正式に発表した。運用残高は約54兆円とアジア最大となる。DIAMアセットマネジメントの西恵正社長が新会社の社長に就く。」

これも製造業が、購買部門を集約して、本社での集中購買・共同購買、部品の共通化・標準化の徹底を図り、調達コストの低減を図る動きと全く同じです。金融業においては、投融資に回す資金運用そのものの効率化がコストダウン施策ですから。さらに、この動きは2015年の中計の4本柱の一つでもあり、下記のカンファレンスでも既にお披露目済みです。

● 2015年9月9日 みずほ証券主催 2015 みずほインベストメントコンファレンス 東京
競争優位の確立に向けて~One MIZUHOの更なる進化~(PDF/1,458KB)

20150909_みずほFG_アセットマネジメントの「第4の柱」化

では、リサーチ&コンサルティング部門の集約についても、ここ数年来の取り組みだったことをお示ししましょうか。

● 2015年6月26日 部門別事業戦略説明会
“Mizuho IR Day 2015”(PDF/1,156KB)

20150626_みずほFG_みずほのソリューション提供力

ここに挙げられているのは、厳密に言えば、カンパニー側のお仕事が大半なのですが、こうした助言・アドバイザリー・サービスを、各顧客志向カンパニーが実行できるように、裏方も一倍岩になっておこうということです。

それでは、今回のメインディッシュ、顧客別営業体制についてのお話に入りましょう。

 

■ 顧客志向の営業体制って、要は「御用聞き」営業のことを意味するんじゃないですか?

今回のキャッチフレーズ、「ワンみずほ戦略」の「ワン(One)」は誰にとっての「ワン」なのでしょうか? 一般論的に言えば、当然顧客から見た「ワン」です。究極的には、顧客がありとあらゆる金融サービスにおけるお困りごとが起きた時、真っ先に、そしてなんでも聞ける、使い勝手のいい営業パーソンが存在したら、いつもそばに置いておきたくなるでしょう。

経営管理会計トピック_「クロスセル」と「アカウントセールス」体制へ

そうした、「なんでもお客様のご用件を承ります」という姿勢の営業スタイルを「御用聞き営業」とか、「アカウント・セールス」と呼びます。そうした特定のお客様に張り付く営業パーソンのことを、「アカウント(セールス)マネジャー」と呼んだりします。彼の仕事は、所属する企業グループが提供するすべての商品・サービスを、担当する顧客に買ってもらえるようにすること。つまり、自社(自グループ)が提供可能な商品・サービスならなんでも売り込む。そういうセールス手法のことを、「クロスセル」といいます。

しかし、くどいようですが、何かの施策には必ず功罪が存在します。これまで、銀行、信託、証券の出身部隊ごとに、営業パーソンがお客様の下に伺っていたはず。そして、その道の専門家として、担当する金融サービスの範囲なら、最高のソリューションを提供していたはずです。しかし、ちょっと担当商品から外れた依頼が起きたり、真に顧客のお困りごとを解決しようと思ったら、自分が属する部隊が提供していない金融サービスを考慮する必要が出てきた。だから、アカウントマネジャーに、顧客対応を一本化し、さらにアカウントマネジャーを鍛えて、自グループの金融サービスすべての熟知してもらって、積極的にクロスセルを実践してもらおうと。

こういうマーケティング手法では、業界全体のシェア(マーケットシェア)を云々しないで、ターゲット顧客が所望(需要)する金融サービスが自グループでどれだけ提供しきれているか、「顧客シェア」を問題視することになります。マーケティング視点も変われば、営業パーソンのスタイル・教育も180°変える必要があります。場合によっては、各プロダクトラインの専門家を連れて来るとか。行動様式もこれまでとは違ってきます。そして最大の課題は、業績評価制度なのです。

アカウントマネジャーは、自担当の顧客シェア最大化がKPIになります。各プロダクトラインの商品・サービス開発マネジャーは、自分が手掛けた商品・サービスの販売・利益がKPIとなります。顧客が所望するものが、自グループになかったら、両マネジャーの利益は相反してしまいます。アカウントマネジャーは、他社サービスを担いでも、本当に目の前の担当顧客の問題を解決しようとするでしょうか。これは、自社で商品・サービスラインを持っている企業ならば、メーカー、金融を問わず、どの企業でも直面するジレンマなのです。

 

■ 机上の空論は分かった。じゃあ、みずほはどこまで体制変更に耐性があるんだ?

前章では、少々理屈が先行してしまいました。では、みずほの今を、外部から分かる範囲で見てみましょう。

再び、「2015年6月26日 部門別事業戦略説明会」で使われた「“Mizuho IR Day 2015”(PDF/1,156KB)」からの抜粋で、新カンパニーとひもづけられるチャートを眺めて、何らかのインサイトが得られるか、観察してみましょう。

1.リテール・事業法人カンパニー

 ここは、事例が2つ紹介されています。

20150626_みずほFG_事例1:医療法人の継承ニーズへの対応

20150626_みずほFG_事例2:オーナー一族の相続ニーズへの対応

ターゲットとする顧客が、「医療法人」「オーナー一族」いずれの場合でも、まずフロントの営業体制が、「リテール・個人」と「法人」でまず2分されます。そして、顧客が求める金融サービスは、サービスラインごとに、「銀行」「信託」「証券」とこちらは3分されます。現実にはありえない組み合わせもありますが、単純に2×3=6、6パターンの金融サービスの提供パスが生じてしまいます。これを「御用聞き営業」に一本化することで、お客様側にメリットを生じさせる作戦です。

① アカウントマネジャー制により、お客様が営業とコンタクトする際の煩雑さを解消
② アカウントマネジャーが全グループのサービスを背負うことで、競合より豊富な品揃えで顧客ニーズを全て取り込む
③ クロスセルを行い、複数の金融サービスを組み合わせることで、単体サービスでは解決できなかった問題を解決できるようにする

こういうメリットがお客様サイドに生じることを期待して、アカウントマネジャー制をよく敷くのですが、2つの大前提を忘れてはいけません。

① アカウントマネジャーが、全金融サービスの内容を熟知している
  (または、熟知している専門家を連れてくるなどのパスができている)
② そもそも、自グループに、組み合わせで相乗効果が高くなる、もしくは顧客が欲しい金融サービスが全て自前で揃っている

という条件が満たされていないといけません。

 

2.大企業カンパニー

 こちらも、「銀・信・証連携営業の加速」と題して、2枚のチャートがあります。

20150626_みずほFG_2.大企業分野での圧倒的優位性の確立①

20150626_みずほFG_2.大企業分野での圧倒的優位性の確立②

施策が①~⑥まで並んでいるのですが、シンプルにまとめると、

① 販売チャネルの統一感の醸成(うまく、人と組織を連携させる)
② 活発な人材交流による他サービスラインの提供サービスの専門知識力を向上
③ Know how より Know who 重視(知っている人を知っていることが大事)

という感じになるでしょうか。

メガバンクのカンパニー制への移行という興味深いお話し、経営管理・管理会計を生業としている経営コンサルタントとしては、食指が動いてあたりまえじゃないですか。思わず筆が進んで、前後編となってしまいました。(^^;)

組織デザインについては、下記の過去投稿シリーズもあわせてどうぞ!!
⇒「組織管理(1)- 組織デザインを考える 「分業」の利益と「調整」コストのバランス
⇒「組織管理(2)- 組織デザインパターンの応用形 「機能別組織」と「事業部制組織」の間には
⇒「組織管理(3)- 組織デザインのための理論 「組織は戦略に従う」のか「戦略は組織に従う」のか?
⇒「組織管理(4)- 組織デザインのケーススタディ「資生堂」「トヨタ」「ソニー」の狙いは?


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